ふわふわで甘いマシュマロ。子どもから大人まで人気のあるお菓子です。
でもこの「マシュマロ」という名前が、ある薬草の名前に由来していることをご存じですか?
この記事では、マシュマロの語源になった「ウスベニタチアオイ」という植物と、マシュマロの関係について、わかりやすく紹介します。
マシュマロの名前の由来
マシュマロという言葉の元になったのは、ウスベニタチアオイ(学名:Althaea officinalis)という植物です。
英語ではこの植物を「Marsh Mallow(マーシュ・マロウ)」と呼びます。
「marsh(マーシュ)」は「湿地」、「mallow(マロウ)」は「アオイ科の植物」を意味します。
つまり、「湿地に生えるアオイ科の植物」という意味になります。
この「Marsh Mallow」が時代とともに変化して、現在のお菓子「marshmallow(マシュマロ)」という名前になったのです。
ウスベニタチアオイってどんな植物?
ウスベニタチアオイは、アオイ科の多年草(何年も育つ植物)です。特徴は次の通りです。
- 和名では「薄紅立葵(うすべにたちあおい)」と書きます
- ヨーロッパや西アジアが原産
- 沼地や湿った土地に育ちます
- 背の高さは1〜1.5メートルほど
- 花は淡いピンク色で、やさしい印象
- 根っこにネバネバした成分(粘液質)を多く含みます
このネバネバが、昔のマシュマロ作りに使われていた大事な成分です。
ウスベニタチアオイの薬としての働き
この植物には、次のような働きがあるとされています。
- 喉や皮膚の炎症を抑える(消炎作用)
- 咳をしずめる(鎮咳作用)
- 粘膜を守る(粘膜保護作用)
- 体のバランスを整える(免疫調整作用)
伝統的には、以下のような症状に使われてきました。
- 咳や喉の痛み
- 胃の不調や消化不良
- 肌のかゆみや炎症
- 体の中の炎症による痛みなど
昔のマシュマロはのど薬だった?
実は、マシュマロはもともとお菓子ではなく薬として使われていました。
古代エジプトでは、紀元前2000年ごろからウスベニタチアオイの根を使って、喉の痛みや咳を和らげるための天然のトローチのようなものが作られていました。
また、古代ギリシャの医師・ヒポクラテスも、この植物の薬効について書き残しています。
現代のマシュマロには使用されていない
今のマシュマロは、ゼラチンや卵白、砂糖などで作られており、ウスベニタチアオイは使われていません。
ただし、名前だけは昔の名残を残しており、「marshmallow」という言葉が使われ続けています。
マシュマロは世界ではなんと呼ばれている?
マシュマロは世界中で親しまれているお菓子ですが、呼び方は国によって少しずつ違います。
国・地域 | 呼び名 | 意味・特徴 |
---|---|---|
英語圏 | marshmallow | 元の名前に近い |
フランス | guimauve(ギモーヴ) | ラテン語の植物名由来 |
ドイツ | Mäusespeck(マウスの脂肪) | ユニークな呼び名 |
イタリア | caramella gommosa | 「ゴムのようなキャンディ」 |
スペイン | malvavisco(マルバビスコ) | 「mallow(アオイ)」の語源を持つ |
日本 | マシュマロ | 英語の音をそのまま使った言葉 |
マシュマロの歴史
伝統的なマシュマロの作り方
マシュマロはもともと、お菓子というより薬として作られていたものです。その原料となったのが、「ウスベニタチアオイ」という植物です。
この植物の根には、ぬるぬるした粘り気のある成分が含まれています。これを水に浸して抽出すると、ゼリーのような質感の液体が得られます。古代ではこの液体に砂糖と卵白(卵の白い部分)を加えて泡立て、冷やして固めることで、柔らかく甘いお菓子が作られていました。
この製法でできたマシュマロは、甘いだけでなく、のどの痛みを和らげたり、咳を止めたりする働きがあるとされ、薬として使われていたのです。
マシュマロは薬だった?歴史に見る使われ方
紀元前2000年ごろの古代エジプトでは、ウスベニタチアオイの根から取れる成分と蜂蜜を混ぜて、貴族のための「薬のお菓子」として使っていたという記録があります。
この甘い菓子は、体が弱ったときや喉の調子が悪いときに食べられ、薬とおやつの中間のような役割を果たしていました。
フランスで生まれ変わったマシュマロ
時代が進み、19世紀のフランスでは、菓子職人たちがウスベニタチアオイの粘液を使って、新しいお菓子を作り始めました。
これが「Pâte de Guimauve(パット・ド・ギモーヴ)」と呼ばれるマシュマロの原型です。
このお菓子は、パリの高級菓子店などで大人気となり、薬というより本格的なスイーツとして発展していきました。
現代のマシュマロはどう作られているの?
現在のマシュマロには、ウスベニタチアオイは使われていません。
理由は以下の通りです。
- 薬草を育てるには時間と手間がかかる
- もっと大量に早く作る必要があった
- ゼラチンや寒天など、代わりになる便利な材料が見つかった
そのため、現代のマシュマロは以下のような材料で作られています。
- ゼラチン(動物の骨や皮から作られる、固める材料)や寒天(海藻から作られる、植物性の固める材料)
- 砂糖
- コーンシロップ(トウモロコシのでんぷんから作った甘い液体)
- 水
- 香りづけのバニラなど
工場での大量生産とマシュマロの進化
マシュマロの生産は、20世紀に入って大きく変わりました。
1948年、アメリカのアレックス・ドゥマクという人物が、「押し出し成形法(おしだしせいけいほう)」という新しい製法を開発しました。
これは、マシュマロの材料を混ぜて空気を含ませたあと、長い管のような機械から押し出し、切って形を整える方法です。これにより、マシュマロを早く・たくさん・同じ形で作れるようになりました。
現代のマシュマロの製造工程
現代のマシュマロは、次のような工程で作られます。
- ゼラチンを水にふやかしておく
- 砂糖とコーンシロップを加熱して甘いシロップを作る
- シロップを冷やし、ゼラチンを混ぜる
- 高速でかき混ぜ、空気をたくさん含ませる
- 香料や色を加える
- 機械で押し出して細長い形にする
- カットして、小さなマシュマロにする
- 表面に粉砂糖やコーンスターチをまぶして完成
名前だけが残った「マシュマロ」
今のマシュマロは、材料も作り方も昔とは違います。しかし、その名前はウスベニタチアオイ(英語名:Marsh Mallow)から変わっていません。
なぜ今でも「マシュマロ」と呼ばれているのでしょうか?
それは、食べものには「名前にこめられた歴史や文化」があるからです。材料や作り方が変わっても、ふわっとした食感や人を癒やすような甘さは、昔と同じです。
名前を変えずに使い続けることには、「昔から大切にされてきたお菓子」という風にも感じられます。
まとめ
ふだん何気なく食べているマシュマロには、薬草から生まれたという意外なルーツがありました。
もともとは喉の薬だったという歴史を知ると、マシュマロのイメージが少し変わって見えるかもしれませんね。
このように、食べ物の名前や歴史には、知られざる面白い背景があることが多いのです。