筒型のパッケージにきれいに並んだ、サクサク食感のポテトチップス「チップスター」。どれも同じ形で、手を汚さずに食べられる便利さも魅力です。
でも、この均一な形や壊れにくさは、どうやって実現されているのでしょうか?
実はチップスターは一般的なポテトチップスとは異なる「成型(せいけい)ポテトチップス」という製法で作られているんです。
この記事では、チップスターの作り方から始まり、誕生の歴史、さらには環境への取り組みまで、幅広く紹介していきます。
チップスターとは?
チップスターは、1976年にヤマザキナビスコ(現在のヤマザキビスケット)が発売した日本初の「成型ポテトチップス」です。
ここでいう「成型ポテトチップス」とは、じゃがいもをそのままスライスして揚げる一般的なポテトチップスとは違い、じゃがいもを一度フレーク(粉末)状にしてから、成形・焼成するという特殊な製法で作られたチップスのことを指します。
この方法を使うことで、すべてのチップが同じ形や厚さに仕上がり、整然と重ねて筒状の容器に詰めることができます。見た目がきれいなだけでなく、割れにくく手に取りやすいのも特徴です。
成型ポテトチップスと通常のポテトチップスの違い
ポテトチップスには、大きく分けて2つの種類があります。
成型ポテトチップス
- じゃがいもを一度フレーク状に加工してから、型に入れて成形・焼成
- チップの大きさや厚みがすべて均一
- きれいに積み重ねられるため、筒型容器に収納できる
- 壊れにくく、手を汚さずに食べられる
通常のポテトチップ
- 生のじゃがいもをスライスして、そのまま揚げる製法
- じゃがいもの形によりチップのサイズや厚みにばらつきが出る
- 袋に詰められて販売されることが多く、割れやすい
ちなみに「チップスター」という名前には「ポテトチップス界のスターになってほしい」という願いが込められています。
同じような製法を採用したお菓子には、海外の「プリングルズ」があります。プリングルズはアメリカ生まれですが、チップスターは日本で独自に開発され、日本人の好みに合う味やパッケージ設計がなされています。その意味で、チップスターは「日本生まれのプリングルズ」とも言える存在なのです。
チップスターの作り方
まずは品質のよいじゃがいもを選び、しっかり洗って皮をむきます。
このじゃがいもがチップスターの土台となる素材です。
じゃがいもを蒸してやわらかくしたあと、つぶしてペースト状にします。
このペーストを乾燥させて、水分を抜くことで「じゃがいもフレーク」ができます。
この工程によって長期間保存できるようになります。
できあがったじゃがいもフレークに水を加えて練り直します。
このとき、食感を調整するために少しだけでんぷんや植物油なども加えます。
こうしてチップスターのもとになる生地ができあがります。
生地を薄く均一にのばし、特別な型で丸い形に切り抜きます。
同時に、チップスター特有の「カーブした形」もここでつけられます。
この形は、重ねやすく割れにくいという実用的な意味もあります。
成形されたチップはすぐに乾燥させます。
水分量を調整することで、揚げるときにサクサクの食感が生まれやすくなります。
チップを高温の油で短時間だけ揚げます。
この工程によって、チップスターらしい「軽くてパリッとした食感」が完成します。
揚げたチップに調味料をまぶします。
「うすしお味」や「コンソメ味」など、均一に味がつくよう工夫されています。
できあがったチップは品質をチェックしたうえでパッケージに詰められます。
チップがきれいに重なるように積み上げて、筒型の容器に収納されます。
サイズや形が合わないチップは取り除かれますが、捨てずに家畜の飼料などとしてリサイクルされています。
製造工程にも環境へのやさしさを
規格外チップの再利用
製造中に出るサイズや形の合わないチップは商品にはなりません。
しかし、そうしたチップも廃棄せず、家畜の飼料として再利用されています。
これにより食品ロスを防ぎつつ有効活用が可能となっています。
工場内での資源の有効利用
生産ラインでは水や電気などの使用量を見直し、できる限りムダを省いた運用が行われています。
製造工程で発生する廃棄物も、再資源化するなどの取り組みを通じて廃棄量の削減に努めています。
チップスターのパッケージ
チップスターは味や食感だけでなく、パッケージにも他にはない工夫が詰まっています。
その代表的な特徴が、筒型のパッケージです。
実はこれが見た目のインパクトだけでなく、使いやすさや環境への配慮まで考え抜かれた設計となっています。
筒型パッケージのメリットとは?
スペースを無駄にしない
チップスターは形のそろったチップを縦に積み重ねて収納しています。
これにより箱や袋タイプのスナックと比べて無駄な空間がほとんどありません。
効率的に詰められるため、パッケージのサイズをコンパクトに抑えられています。
割れにくく、持ち運びやすい
筒状の容器は強度が高く、中のチップをしっかりと保護します。
輸送中に揺れてもチップが崩れにくく、割れのリスクが少ないのが特徴です。
また形はカバンにもすっきり収まりやすく、外出先への持ち運びにも適しています。
食べやすい
開封したあともチップがきれいに積み重なっているため、手を入れて1枚ずつ取り出すのが簡単です。
底までスムーズに食べられるので最後の1枚までストレスなく楽しめる設計になっています。
紙製パッケージへの切り替え
1992年、チップスターは業界に先駆けてパッケージ素材の見直しを行いました。
それまで使用されていたプラスチックなどの素材から、全てを紙素材へと変更したのです。
リサイクル性の向上
紙素材に変更されたことで使用後の容器は資源ごみとして回収・再利用がしやすくなりました。
分別が簡単でリサイクル効率の高い容器として評価されています。
石油資源の使用を削減
従来のプラスチック容器は石油を原料とすることが多く、地球環境への影響が懸念されていました。
紙への切り替えにより、そうした化石燃料への依存を減らし、資源の持続可能な利用に貢献しています。
廃棄時の環境負荷を軽減
紙は自然に分解されやすく、焼却時にも有害なガスが出にくい特性があります。
そのため使用後の処分においても環境への影響が少なく、環境負荷の少ないパッケージといえるでしょう。
ユニバーサルデザインへ進化
2016年にはチップスターのパッケージにさらなる改良が加えられました。
目的は「子どもから高齢者まで、誰もが使いやすい容器にすること」です
開けやすく、捨てやすい工夫
新しいパッケージには容器の底に切れ込みが追加されました。
この構造により、食べ終わったあとに容器を簡単に潰せるようになっています。
また、開封時の力加減にも配慮されており、手が小さな子どもや力の弱い方でも開けやすくなりました。
特許取得の独自設計
これらの改良は特許も取得した技術です。
機能性とデザイン性を両立させたユニバーサルデザインは、多くのユーザーに支持されています。
チップスターは「おいしさ」と「楽しさ」に加えて「環境へのやさしさ」や「誰でも使えるデザイン」にも真剣に取り組んでいます。
これらの活動は国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標)の考え方にも合致しています。
日常的に食べるお菓子がこうした持続可能な社会づくりに貢献しているという事実は、私たち消費者にとっても新たな気づきになるでしょう。
チップスターの歴史と進化
チップスターは、日本のポテトチップス市場に革新をもたらしたお菓子として、長年にわたり愛されてきました。
ここでは、発売から現在に至るまでの歴史を振り返りながら、どのように進化してきたのかをわかりやすく解説します。
1976年:日本初の成型ポテトチップスが登場
1976年、ヤマザキナビスコ(現在のヤマザキビスケット)が「チップスター」を発売しました。
このチップスターは、日本で初めての「成型ポテトチップス」として登場しました。
「成型ポテトチップス」とは、じゃがいもを粉末状にして成型・焼成する製法で作られたチップのことです。
それまではスライスしたじゃがいもを揚げるタイプが主流だった中、チップスターは均一な形と味、そして筒型パッケージが大きな特徴で、当時のスナック市場に新しい風を吹き込みました。
1980年代:定番スナックとしての地位を確立
発売から数年後には、チップスターはその食べやすさと見た目のユニークさから人気を集め、日本のスナック菓子の定番としての地位を築きました。
この時期から「うすしお味」や「コンソメ味」などのフレーバー展開も始まり、多くの人にとって身近なお菓子となっていきます。
味のバリエーションが増えたことで、より幅広い層に親しまれるようになりました。
1992年:すべて紙製の環境配慮パッケージへ
1992年、チップスターはパッケージに大きな変更を加えました。
それまで使用していたプラスチック製のフタやスチール製の底部をやめ、すべてを紙素材に切り替えたのです。
この変更は「地球にやさしいチップスター」をテーマに掲げた取り組みであり、廃棄やリサイクルのしやすさを考慮した設計でした。
今でこそ「環境に配慮したパッケージ」は当たり前になりつつありますが、この取り組みはSDGs(持続可能な開発目標)が一般に広まるよりも約30年も前に行われたものであり、当時としては非常に先進的なアクションでした。
2016年:ユニバーサルデザインの導入と製造元の変更
発売40周年を迎えた2016年、チップスターはさらに進化を遂げます。多くの人が使いやすくなるよう、パッケージにユニバーサルデザインを取り入れました。
具体的には、容器の底に切り込みを加え、手で潰しやすくした設計が特徴です。
これにより、食べ終えた後の処理が簡単になり、力の弱い方でも楽に扱えるようになりました。この構造は、特許も取得している独自技術です。
また同年、チップスターの製造・販売元が「ヤマザキナビスコ」から「ヤマザキビスケット」へと変更されました。
ブランド名こそ変わりましたが、味や品質、製造方法はこれまで通り維持されており、長年のファンにも安心して親しまれています。
現在:時代とともに進化するロングセラー
発売から45年以上が経過した今もチップスターは変わらぬ人気を誇っています。
特長的な筒型パッケージや成型チップという基本は守りつつも、環境対策やユーザー視点の改良を重ねて進化を続けるお菓子です。
子どもから大人まで、世代を超えて愛されるチップスターは、これからも時代に合わせて変わりながら、おいしさと楽しさを届けてくれるでしょう。
チップスターのフレーバー
チップスターは、発売から長い年月を経て、たくさんの味を展開してきました。
定番の人気フレーバー
- うすしお味
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シンプルで飽きがこない味わいです。じゃがいもの風味を大切にし、ほどよい塩加減が特徴です。
- コンソメ味
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野菜の旨みを感じられる、まろやかな味です。濃すぎず、食べやすいのが人気の理由です。
- のりしお味
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海苔の香りと塩の風味が絶妙に合わさった、日本ならではの味です。
期間限定・地域限定のフレーバー
チップスターでは、特別な時期にだけ登場する「期間限定フレーバー」や、特定の地域でしか買えない「地域限定フレーバー」もあります。
たとえばご当地の名産品を使った味や季節を感じるフレーバーなどです。こうした限定商品はコレクションする人もいるほど人気があります。
チップスターの楽しみ方いろいろ
チップスターはそのまま食べても美味しいですが、少し工夫するだけで楽しみ方がぐんと広がります。場面に合わせて、いろいろなスタイルで味わってみましょう。
おやつやおつまみとして
ちょっと小腹がすいたときや、テレビを見ながらのリラックスタイムにぴったりです。
軽い食感とほどよい塩味で、ついつい手が止まらなくなる美味しさ。
お酒のおつまみとしても相性がよく、ビールやワインともよく合います。
パーティーやピクニックに
チップスターは筒型パッケージで持ち運びしやすく、割れにくいのが特徴です。
そのため、外出先のおやつや、みんなでシェアする場面にも向いています。
開けた瞬間からすぐに食べられる手軽さも人気のポイントです。
ディップソースと一緒に
すべて同じ形のチップスターは表面がなめらかでディップソースをすくいやすくなっています。
サルサソースやアボカドディップ、チーズソースなどと組み合わせると、ひと味違う楽しみ方ができます。
おもてなしの一品や、おしゃれなスナックタイムにもぴったりです。
まとめ
チップスターが同じ形で筒にきれいに並ぶ秘密は「成型ポテトチップス」という製法にあります。
じゃがいもを一度粉々にして水で練り直し、形を整えてから揚げることで、あのサクサク感と美しい形が生まれます。
さらに製造現場では環境にも気を配り、形の悪いチップを飼料にしたり、資源を節約したりする工夫も。
見た目も味も計算されたチップスターは、こうした細かな心遣いの積み重ねで私たちのもとに届いているのです。