マクロビオティックとは|食べられないものと実践する難しさ

現代社会の健康志向の高まりの中で注目される「マクロビオティック」。この言葉は古代ギリシャ語に由来し、「健康による長寿」を意味します。

玄米を主食とし、旬の野菜や海藻を「丸ごと」食すという独自の食事法は、体への優しさを追求する一方で、肉や卵、乳製品砂糖を避けるなど厳しい制限も伴います。

その哲学は現代人に警鐘を鳴らすものの、完璧な実践の難しさから広く普及するには至りませんでした。

この記事では、マクロビオティックの基本的な考え方から、その実践の難しさ、そして現代社会に与えた影響までを深掘りします。

目次

マクロビオティックとは

近年高まる健康志向の中で、その総仕上げとも言える社会現象が「マクロビオティック」です。

これは単なる食事法に留まらず、「陰陽のバランス」という東洋の伝統的な考え方を軸に、自然との調和を重んじながら心身の健康と幸福を目指す総合的な生き方、その哲学的な概念を指します。

具体的には、穀物を主食とし、旬の野菜や海藻、豆類を副食とする食事法を核としながら、その土地で育ったものを丸ごといただく(身土不二・一物全体)という原則に基づいています。

これは、私たちが日々の食事を通して、自然の摂理に沿ったバランスの取れた生き方を実践することを目指すものです。

マクロビオティックの語源

「マクロビオティック」という言葉は、「マクロ(Macro)」と「ビオティック(Biotic)」という2つの語の合成語です。

その語源は古代ギリシャ語の「マクロビオス(Macro-Bios)」に由来し、「健康による長寿」や「偉大なる生命」といった意味が込められています。

マクロビオティックの歴史的背景

歴史を顧みると、18世紀のドイツでクリストフ・ヴィルヘルム・フーフェラントという人物が「長寿法」という意味合いでこの言葉を使い始めたとされています。

そして現代のマクロビオティックは、日本の思想家である桜沢如一(さくらざわ じょいち)氏によって体系化され、世界に広められました。

彼は、日本の伝統的な食養生や東洋思想を基に、マクロビオティックの独自の哲学と実践法を確立しました。

マクロビオティックの基本的な食事

現代においてマクロビオティックは、特定の食事法を指す言葉として広く認識されています。

その核となるのは、自然との調和を重んじ、体に負担の少ない食材を選ぶという考え方です。

主食

玄米・雑穀・全粒粉

マクロビオティックの主食は、精白されていない穀物が中心です。具体的には、玄米や雑穀、全粒粉などが挙げられます。

これらは精白米や小麦粉に比べて、ビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富で、体の調子を整える上で重要な役割を果たすと考えられています。

副食

野菜・穀物・豆類・海藻類

主食を補う副食としては、野菜や穀物、豆類などの農作物、そして海藻類が推奨されます。

特に季節に応じてその地域で採れる旬のものを食べるという「身土不二(しんどふじ)」の思想は非常に重要視されます。

これは、その土地で育ったものを食べることが、その土地で暮らす人々の体に最も適しているという考え方に基づいています。いわば地産地消の典型とも言えるでしょう。

マクロビオティックで食べられないものと代替食

マクロビオティックを実践する上で、特に注意が必要となるのが食材の選択と制限です。

これは、単に何を食べるかだけでなく、何を避けるかという側面も重要になります。

砂糖

マクロビオティックでは、砂糖は原則として使用しません

これは精製された砂糖が体を冷やす「陰性」の性質を持つと考えられているためです。

代わりに、自然の甘みを活かす甘酒メープルシロップてんさい糖などの甘味料で補います。

動物性食品(肉類、卵、乳製品

さらに厳しい制限として、肉類や卵、乳製品も原則として使用しません

これらの動物性食品は、消化に負担がかかることや、陰陽のバランスを大きく崩すと考えられています。

特に現代の食生活に慣れ親しんだ私たちにとっては非常に厳しいと感じられるかもしれません。

例えば、スイーツを扱う業界にとっては、卵や乳製品が使えないとなると、アレルギー対応と同様に新たな研究課題となるほど、大きな制約となります。

化学調味料、添加物、特定の野菜

その他、マクロビオティックでは、化学調味料や食品添加物は自然の摂理に反すると考えられ、使用しません。

また、ナス科の野菜(トマト、ナス、ジャガイモなど)や、刺激の強い香辛料なども、体を冷やす「陰性」の性質が強いとして、少量にしたり、場合によっては避けたりすることがあります。

これは、食材が持つエネルギーや性質が身体に与える影響を重視する、マクロビオティック独自の考え方に基づいています。

マクロビオティックが普及しなかった理由

マクロビオティックは一時的に注目を集め、「騒がれた」感はあったものの、社会全体に広く普及するまでには至りませんでした。

その主な理由は、日常生活で完璧に実践することの「難しさ」と「厳しさ」にあると言えるでしょう。

しかしながら、贅沢な食生活に慣れ、生活習慣病に悩まされる多くの現代人に対し、その原則は確かな警鐘を鳴らす一石を投じたことは確かです。

地産地消、旬の食材、ホールフード(一物全体)といったマクロビオティックの考え方は、今日のオーガニック食品や自然食ブーム、SDGsの視点にも通じるものであり、私たちの食生活や健康に対する意識を大きく変えるきっかけとなっています。

マクロビオティックは、私たちが自身の食生活と健康を見つめ直し、自然との調和を考えるきっかけを与えてくれる考え方でもあります。

マクロビオティックの難しさ

マクロビオティックの原則をすべて完璧に実践しようとすると、正直なところ、現代の世の中ではまるで仙人のような生活を強いられるようで、非常に大変です。

例えば、外食が非常に難しくなったり、有機栽培の玄米や特定の調味料など、マクロビオティックに適した食材の入手が困難な地域もあったりします。

また、家族と一緒に食事をする場合、全員が同じ食事法を受け入れることは容易ではありません。

知識が不足している場合、厳格な実践により必要な栄養素が不足するリスクも考えられます。

特に動物性食品を完全に排除する場合、ビタミンB12などの栄養素を補う工夫が必要です。

確かに身体には良い効果が期待できるかもしれませんが、すべてを厳格に守るのは現実的ではありません。

完璧を目指しすぎると、かえってストレスとなり、心身の健康を損なう可能性もあります。

見習うべき考え方もある

しかし、その一方で、なんとなく納得させられる原則も少なくありません。

例えば「皮や根も捨てずに一つの食品は丸ごと摂取することが望ましい」という考えです。

これは、食材の持つ栄養を最大限に活かすだけでなく、自然に対する敬意や感謝の気持ちを表すものです。

まだ食べられる部分を平気で捨てる現代の風潮に浸っている私たちにとって、耳の痛い話かもしれません。

食材を無駄なく使い切るという思想は、現代社会において改めて見直されるべき点と言えます。

まとめ

マクロビオティックは、古代ギリシャ語の「健康による長寿」を語源とし、日本の桜沢如一氏が体系化した、自然との調和を重んじる生き方とその食事法です。

玄米や雑穀を主食に、旬の野菜や海藻、豆類を「丸ごと」食べる「身土不二」「一物全体」の原則を重視します。

一方で、砂糖や肉、卵、乳製品を避けるなど厳しい制限があるため、現代社会で完璧に実践するには多くの困難が伴い、その厳しさから広く一般に普及するには至りませんでした。

しかし、その哲学は、飽食の時代に生活習慣病に悩む現代人に対し、食のあり方や自然との向き合い方を問い直す重要なメッセージを投げかけ、今日の健康志向や持続可能な社会への意識に大きな影響を与えています。

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