シナボンとは|日本におけるシナモンテイスト普及の立役者

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シナボンとは

シナボンは、1985年にアメリカのシアトルで誕生したシナモンロール専門のベーカリーです。その甘く香ばしい香りと、しっとりとした生地、そしてたっぷりとかかったフロスティング(アイシング)が特徴で、瞬く間に人気を博しました。現在、シナボンは世界50か国以上に展開し、およそ1,800店舗を持つ国際的なブランドとして知られています。

シナボンの日本上陸

日本におけるシナボンの歴史は、1999年に始まります。当時の日本では、カラメルテイストが大きな話題となっていましたが、そのブームの余韻も冷めやらぬうちに、シナボンが新たな味覚の波として上陸しました。

1999年、吉祥寺に初出店

シナボンが日本に初めて出店したのは、1999年12月の吉祥寺でした。この初出店を皮切りに、翌2000年にはその人気が爆発的に広がり、多くの人々を魅了しました。東京の地下街を歩いていると、突然鼻をくすぐる独特の甘い香りが漂い、その香りの正体を探して足を向けると、驚くほど長い行列ができている光景が日常となりました。

シナボンの人気の理由

行列に並ぶ期待感

長い行列は、人々の「何かすごいものがあるに違いない」という心理を刺激し、つい並んでみたくなる衝動に駆らせました。そして、ようやく熱々のシナモンロールを手にできた時の幸福感は格別でした。苦労して手に入れたという達成感も相まって、その美味しさを一層引き立てたことでしょう。

魅せる製造工程

シナボンの人気の秘密の一つは、その独特の販売スタイルにありました。お客様から見えるように設計された店舗の厨房では、職人が豪快にパン生地を延ばし、ダイナミックにバターを塗りたくる様子がガラス越しに見えました。シナモンをたっぷりと使って作られるその過程は、まるで一つのショーのよう。見る人を飽きさせず、食欲をそそる素晴らしい体験を提供しました。

焼き立ての美味しさ

シナボンが多くのファンを虜にした最大の理由は、やはりその美味しさにありました。家に持ち帰り、いざ口にした時、「ああ、もっと熱いうちに食べればよかった!」と後悔する声も少なくありませんでした。そう、シナモンロールは熱々のうちに食べることで、その真価を発揮するパンだったのです。温かい状態であれば、シナモンの香りがより豊かに立ち上がり、溶けたバターの風味も際立って、まさに最高の味わいを楽しめます。この「焼きたて」にこだわった提供方法が、シナボンの美味しさを最大限に引き出していました。

シナモンテイストの普及

シナボンの大ブレイクは、日本におけるシナモンテイストの普及に大きな影響を与えました。

昔のシナモンのイメージ

実はそれまで、シナモン味は好みがはっきりと分かれる傾向があり、お菓子作りを生業とする職人にとっては、扱うことに悩む素材でもありました。シナモンの独特の香りと味わいは、慣れ親しんでいない人には少し強すぎると感じられることもあったためです。

現在のシナモンのイメージ

シナボンの成功を機に、多くの店舗がシナモンを取り入れた商品開発に果敢に挑戦するようになりました。生菓子、焼き菓子を問わず、シナモンテイストのケーキやタルトといったお菓子が店頭を飾り、多くのお客様にアプローチをかけていきました。それまで敬遠されがちだった味が、シナボンの人気を追い風に一気に市民権を得たと言えるでしょう。

海外におけるシナモン

シナモンテイストは、日本にとっては比較的新しいブームでしたが、海外では古くから親しまれているスパイスです。

例えば、オーストリアの伝統的なお菓子であるリンツァートルテは、シナモンテイストで有名です。ドイツやスイスでも古くからシナモンが愛され、お菓子作りに欠かせない材料として重宝されてきました。さらに、北欧のフィンランドなどにも、シナモン風味のお菓子が数多く存在します。これらの国々では、シナモンは日常的に親しまれているスパイスであり、その豊かな香りと風味が食文化に深く根付いています。

こうして見ると、シナボンの日本上陸は、単に新しい商品の導入にとどまらず、日本人の味覚の幅を広げる重要な役割を果たしたと言えるでしょう。それまで馴染みの薄かったシナモンという味わいが、多くの日本人にとって身近なものとなり、お菓子の選択肢も大きく広がったのです。

シナボンの撤退と再上陸

2009年の一時撤退

シナボンは2009年にいったん日本から撤退しました。ブームが一巡したことや、運営上の都合などが理由として考えられます。

2012年の再上陸

しかし、その数年後、シナボンは2012年に再び日本市場に戻ってきました。この再上陸は、日本においてシナモンテイスト、そしてシナボンというブランドに対する根強い需要があったことを物語っています。一度定着した味覚は、簡単には忘れられないものなのです。

まとめ

1999年の日本に上陸したシナモンロール専門店の「シナボン」は、当時のカラメルブームの後に新たなシナモンテイストの波を巻き起こしました。その人気は、焼きたてのシナモンロールの美味しさだけでなく、お客様に見せるダイナミックな製造工程が「ショー」として人々の心を引きつけ、長い行列を作り出したことにもありました。それまで日本では好みが分かれがちだったシナモン味は、シナボンの成功を機に一気に市民権を得て、様々なスイーツへと広がるきっかけとなります。一度は日本から撤退したシナボンですが、根強い人気に支えられ再上陸を果たし、今やシナモンテイストは日本人の味覚に深く浸透したと言えるでしょう。

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