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パチパチパニックとは|メーカーの変遷、売上UPの理由

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口の中でパチパチ弾ける、不思議な食感と音がクセになるキャンディ「パチパチパニック」。見た目は小さな飴のかけらなのに、舌の上で急に炭酸ガスがはじけることで“口の中の花火”のような体験ができるお菓子です。もともとは明治の子会社によって製造され、今はアトリオン製菓が展開するロングセラー商品として注目されており、近年はSNSや100円ショップ販路の拡大を背景に売上が急伸。大人も楽しめるユニークなキャンディとして再ブレイク中です。

目次

パチパチパニックとは

口の中で「パチパチ」とはじける不思議なキャンディーをご存知でしょうか。

5ミリメートルほどの小さなかけらが、舌の上ではじけるような刺激とパチパチという音を立てる「パチパチパニック」。

このお菓子は、一見すると普通の飴のかけらにしか見えませんが、口に入れた瞬間に驚きの体験が待っています。

なぜこんなにも不思議な現象が起こるのか、その秘密と、現代における驚くべき成長の背景に迫ります。

「パチパチ」する仕組み

この不思議な現象の正体は、実は科学的な原理に基づいた安全な仕組みです。

飴の中には高圧の炭酸ガスが封入されており、口の中で飴を舐めて薄くなると、中のガスの圧力に負けて飴が破れます。

この時に発生する衝撃と音が、あの独特のパチパチ感を生み出しているのです。

例えるなら、風船が割れる時に音が出るのと同じような現象が、口の中で小さなスケールで起こっているということになります。

製造方法

この技術は決して簡単なものではありません。

製造方法は非常に特殊で、まず砕いた飴を圧力の高いガスの中で溶かし、固め直して作ります。

圧力をかけながら加熱するため、特殊な設備が必要となり、高い技術力と専門的な知識が求められます。

この技術的な難しさから、日本でこのようなキャンディーを製造しているのは限られた会社だけという状況になっています。

安全性について

袋の裏面には「勢いよくはじけることがあります」といった丁寧な注意書きがありますが、これは危険性を示すものではありません。

子ども向けの商品であるため、不意にはじけた時の注意を促すためのもので、食べることによって何か問題が起こるということではないのです。

パチパチパニックの製造元

アトリオン製菓の成り立ち

パチパチパニックを製造・販売しているのは、現在アトリオン製菓という会社です。

この会社には興味深い歴史があります。もともとは明治産業という社名で、大手食品メーカーである明治の子会社として1945年に設立されました。

明治グループの技術力と製造ノウハウを活かしながら「ヨーグレット」など明治ブランドの商品を製造する一方で、自社商品の開発にも取り組んできました。

「パチパチ技術」の歴史

パチパチする技術自体の歴史は意外に古く、1979年から製造が行われています。

当初は明治の様々な菓子に活用されており、最も代表的だったのが「わたパチ」という商品でした。

これは綿飴にパチパチキャンディーが練り込まれた人気商品でしたが、残念ながら2016年に販売終了となりました。

商品名の変遷

現在の「パチパチパニック」という名前での販売が始まったのは2007年からですが、この「パチパチ」技術を用いた商品は、実はそれ以前の1999年には「シュワシュワパンチ」という商品名で発売されていました。

つまり、パチパチ弾けるキャンディー自体は約20年以上の歴史を持つロングセラー商品なのです。

現在のパチパチパニックは、グレープ味、コーラ味、ソーダ味の3種類が基本ラインナップとして展開されています。さらに、季節や時期によって変わる4つ目の味も用意されており、消費者を飽きさせない工夫がされています。

価格は1つ税別40円程度と、子どもでも購入しやすい価格設定になっています。

パチパチパニックが売上急成長!

この商品が近年、再び注目されるようになったのは、その驚異的な売上の伸びがあったからです。

2024年3月期の売上高は約7億円に達し、なんと10年前と比べて10倍もの成長を遂げました。

また、2021年度は2015年度の4倍以上の売上を記録するなど、長年販売している商品としては異例の急成長を続けています。

開発部の担当者も少し不思議に思っているほどで、明確な理由は完全には分かっていないのが現状です。

急成長を支える戦略

この急成長の背景には、いくつかの戦略的な要因が考えられます。

100円均一ショップという販路の開拓

特に重要だったのが、100円均一ショップという販路の開拓でした。100円均一ショップ最大手のダイソーを例に取ると、2024年2月時点で海外を含む店舗数は5325店となっており、20年前から2000店以上も増加しています。このような店舗数の拡大は、消費者との接点を飛躍的に増やすことにつながりました。

100円均一ショップでの販売方法も巧妙です。パチパチパニックは3つで100円で販売されているため、スーパーなどで個別に購入するよりも割安になります。主要な顧客層である子どもの数は少子化により減少していますが、販路の拡大により全体の売上は伸び続けています。

大人にも広がるターゲット層とSNS戦略

最近では、消費者層を子どもから大人にも広げようと、積極的なマーケティング活動を展開しています。

2024年7月には、SNSでアレンジレシピを募集するキャンペーンを実施しました。

このキャンペーンでは38案もの応募が寄せられ、その中からマシュマロ、ヨーグルト、チョコバナナにかけて食べる3つの案が選ばれました。

考案者には3種類のパチパチパニック計300袋が贈呈されるという、参加者にとっても魅力的な企画となりました。

「パチパチパニックの日」制定とアイドルコラボ

ブランドの認知度向上を目的として、日本記念日協会に申請して2024年から8月8日を「パチパチパニックの日」に制定しました。

この記念日制定と同時に、人気アイドルグループのSKE48とのコラボレーションも実現しました。

8期生のメンバー8人がパチパチパニックを食べながら「ママのおやつはママパチパチパニック、パパのおやつはパパパチパチパニック」というオリジナルの早口言葉に挑戦する動画を、SNSやホームページで公開。このような話題性のある企画により、従来の子ども向けの枠を超えた幅広い層へのアピールを図っています。

パチパチパニックに関わるグループ体制の変化

丸紅グループへの参入

アトリオン製菓の経営面でも、大きな変化がありました。

この会社はもともと明治の子会社でしたが、2023年3月期に丸紅が株式を100%取得し、丸紅の子会社となりました。

丸紅グループにとってアトリオン製菓は唯一のお菓子メーカーであり、丸紅は社長を送り込んで営業や開発力の強化を図っています。

生産能力の増強

新体制の下で、アトリオン製菓の山下奉丈社長は組織運営の改革を行いました。

「自社商品を充実させるために、営業と開発が一堂に会する商品戦略会議を新たに設けて、顧客の視点を取り入れやすい体制にした」と説明しています。

実際に、パチパチパニックのメロンソーダ味は、この新しい体制の中から生まれた商品です。

このような成長を受けて、アトリオン製菓は2024年春に生産設備を大幅に増強しました。生産能力を2.5倍に増やしたのです。これは、2024年3月期にかけて需要の伸びに生産が追いつかない状況が続いていたためです。

このような「嬉しい悲鳴」が上がるほどの需要拡大は、商品の人気の高さを物語っています。

野心的な売上目標と海外展開

今後の展望も非常に野心的です。

パチパチパニックは今後3~5年で、2024年3月期に7億円だった売上高を20億円にするという計画を立てています。

現在は国内でのみ販売していますが、長期的には海外展開も視野に入れており、30億~40億円程度まで売上高を伸ばしたいと考えています。

この海外展開において、丸紅が世界中に持つネットワークが大きな武器となります。

丸紅は総合商社として世界各地に拠点を持っており、このネットワークを活用することで、パチパチとした独特のおいしさを世界中に届けることができると期待されています。

パチパチパニック成功の要因

パチパチパニックの成功は、単なる商品の人気だけでなく、戦略的な販路開拓、効果的なマーケティング、技術的な差別化、そして適切な経営体制の構築など、様々な要素が複合的に作用した結果と言えるでしょう。

炭酸ガスを封入するという独自技術は、他社が簡単に真似できない技術的な参入障壁となっており、類似商品が出にくいという大きな競争優位性を生み出しています。

少子化という逆風の中でも成長を続けるこの商品の物語は、日本の中小企業にとって多くの示唆を与えてくれる事例となっています。

まとめ

パチパチパニックは、口内で弾ける独自の食感と音を生む炭酸封入技術によって、他社には真似できない強烈な個性を放つキャンディーとして長年親しまれてきました。

製造元であるアトリオン製菓は、100円ショップでの販路拡大やSNSを活用したマーケティング、そして丸紅グループによる経営支援を背景に急成長を遂げ、今や国内外への展開を目指す注目のロングセラー商品へと進化しています。

科学と遊び心が融合したこのキャンディーの成功物語は、中小企業の可能性と戦略的成長のヒントを多く含んでいます。

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