株式会社BAKEとは
BAKEは、東京・港区に本社を構える菓子メーカーです。
タルト専門店「BAKE CHEESE TART」やアップルパイ専門店「RINGO」など、工房一体型の専門店業態で焼きたての商品を提供することを特徴としています。
創業以来、品質はもちろんのこと、焼きたてのスイーツを提供する工房一体型の店舗が織り成す、ライブ感を重視した販促で多くのファンを魅了してきました。
品質の高さ、ブランド力、そして顧客体験の提供が、BAKEの成功を支える重要な要素です。
特定の商品やサービスに特化することで他店との差別化を図り、顧客に強い印象を与えてきた専門店業態の強みを活かすことで大きな成長を遂げました。
BAKEのプレスバターサンド
プレスバターサンドはBAKEが手掛ける人気ブランドの一つです。このブランド商品は年間2500万個を売り上げるヒット商品になりました。
東京駅の定番菓子を作りたいという思いから誕生し、そのスタイリッシュなデザインと高品質な味わいで、多くの顧客に愛されています。
プレスバターサンドの開発は「JR東京駅に出店しないか」という声をきっかけに始まりました。
BAKE初の箱菓子として開発されたこの商品は、従来の土産菓子とは一線を画すデザインと味わいで、多くの顧客に支持されています。
バタークリームとキャラメルを使用し、クリームがこぼれないようにクッキーを“コの字形”に設計することで、賞味期限が2週間あり、常温で持ち運びができるというメリットもあります。
BAKEのブランディング
- 商品
- 店舗設計
- パッケージ
商品
プレスバターサンドは、バターサンドの定番であるレーズンを抜き、バタークリームとキャラメルで仕上げることをひらめき、広く愛される商品を実現しました。
レーズンを抜くことで、レーズンが苦手な人でも楽しめる商品となり、バタークリームとキャラメルの組み合わせが多くの人に受け入れられたのです。
それだけでなくクッキーの型を工夫することでクリームがこぼれないように設計されており、持ち運びやすさも考慮されています。
店舗設計
プレスバターサンドの店舗は、鉄やコンクリートなどの素材で洗練されたシンプルなデザインを採用。従来の土産店とは一線を画すインダストリアルな空間を演出しています。
店舗の一角はガラス張りになっており、鉄板でクッキーをはさみ焼きする工程を見せ、さらに店舗付近は菓子の甘い香りも漂うため、視覚と嗅覚の両方で顧客を魅了します。
このライブ感が顧客にとって単なる買い物ではない特別な体験となり、店舗の前に列ができるのです。
パッケージ
プレスバターサンドのパッケージは、シンプルでかっこいいデザインが特徴です。
パッケージデザインにも工業的な要素を取り入れることで、全体のブランドイメージを統一。このイメージはスーツ姿で持っても違和感のないように考案されており、ビジネスシーンでも手に持ちやすいという狙いもあります。
色彩はグレーを基調とし、持ち手には蛍光オレンジをアクセントとして取り入れました。グレーはインダストリアルな工場や鉄のプレス機をイメージし、蛍光オレンジは鉄を熱するときの炎を象徴しています。
シンプルで洗練されたデザインは従来の土産菓子とは異なり、スタイリッシュで高級感のある商品として多くの顧客に支持されています。
BAKEのブランディング戦略
- 8割主義
- 1ブランド1プロダクト
- ブランドの擬人化
8割主義
BAKEは「8割主義」という考えを持っています。
これは、10人中8人が知っているカテゴリーで勝負をかけ、その中で8割の人が好きになる商品を作るという方針です。
プレスバターサンドはこの「8割主義」に基づき、社内での試食と開発を繰り返し、最終的に8割の社員が「おいしい」と評価するまで改良を重ねて生まれました。
1ブランド1プロダクト
BAKEは「1ブランド1プロダクト」の専門店業態を採用しています。
これはブランドとして1つの商品に特化することで、ブランディングの方向性がぶれることなく、工場や人員のオペレーション効率を向上させるためです。
結果として、原材料にこだわった高品質な商品を提供することが可能になります。
この方針により、BAKEはブランドの良さをダイレクトに顧客に伝えることができ、商品選びに迷う手間を省くことができます。
ブランドの擬人化
例えば、プレスバターサンドでは「ひげを生やした鉄をたたく男性のベテラン職人」という設定です。
BAKEではブランドのイメージや世界観を共有するために、ブランドを“擬人化”しています。
ブランドキャラクターを設けることで、ブランドに関わる全ての人が共通のイメージを持ち、ブランドの一貫性を保つことができるというのです。
擬人化されたブランドキャラクターは、ブランドのストーリーを顧客に伝える役割も果たし、ブランドの魅力を高める要素となっています。
BAKEのブランディング戦略の見直し
- コロナの影響
- 1ブランド1プロダクトの限界
コロナの影響
2020年から最近まで、新型コロナウイルス禍により、多くの専門店が休業を余儀なくされました。
特に焼きたての商品を提供するライブ感が売りの店舗は、顧客の前で魅力を満足に披露できない営業停止の影響が大きかったです。
プレスバターサンドも移動自粛により土産需要が激減して業績が悪化。BAKEの全ブランドで売り上げが9割減少したことで専門店業態の弱さが浮き彫りになりました。
この状況を受けてBAKEはブランド戦略の見直しをします。
従来の専門店業態では顧客に直接商品を提供することが難しいコロナ禍において、新たな販売チャネルの開拓が必須となり、EC事業の強化やブランド間の回遊促進など、新たな戦略が模索されることとなりました。
1ブランド1プロダクトの限界
コロナ禍を機にBAKEは1ブランド1プロダクトの専門店業態の限界を感じるようになりました。
特に移動自粛や観光客の減少により土産需要が大幅に減少したことは大きな打撃です。
そして1つの商品に特化することは顧客に飽きが来るリスクがあり、売り上げの安定性にも課題が生じます。
これを克服するために、BAKEは商品ラインナップの多様化やブランド間の回遊促進を図ることを決定しました。
これにより顧客が飽きることなく、常に新しい商品を楽しんでもらい、売り上げの安定化を図ることが目的です。
BAKEのブランディング改革
- EC事業
- スピンオフブランド
- ギャラリー形式の店舗
BAKEは顧客が別ブランドにも回遊するような施策を考えるようになりました。
具体的には、EC事業の強化やスピンオフブランドの展開などが挙げられます。
顧客のブランドロイヤルティを高め、売り上げの安定化を図ることが目的です。
EC事業
新型コロナ禍に始めたEC事業では、同社ブランド横断のECサイト「BAKE THE ONLINE」を開設。
ブランドごとにECサイトを立ち上げるのではなく、あえてブランド回遊ができる楽しみを取り入れ、ブランド間のシナジー効果を高めることにしました。
ECサイトでは複数のブランドの商品を一度に購入できますし、各ブランドの商品が一目でわかるように工夫されており、顧客は簡単に商品を比較・選択できます。
また、限定商品や期間限定のフレーバーなど、オンライン限定の商品も取り扱うことで顧客の興味を引き続け、EC事業は新たな収益源として重要な役割を果たしています。
スピンオフブランド
プレスバターサンドでは、九州限定の「あまおう苺」、関西限定の「宇治抹茶」など、各地限定品や期間限定のフレーバーを展開。各地限定品や期間限定のフレーバーは、地域ごとの特性を活かした商品であり、顧客に特別な体験を提供します。
バタークッキー生地にも変化を持たせた商品を提供し、22年にはスピンオフブランド「八 by PRESS BUTTER SAND」も誕生しました。スピンオフブランドの展開により、BAKEは新たな顧客層を開拓し、ブランドの多様性を高めています。
ギャラリー形式の店舗
プレスバターサンドギャラリーは、プレスバターサンドの魅力をさらに引き出すための特別な店舗です。ここでは、バタークッキー生地に変化を持たせた商品や、限定フレーバーの商品を展開しています。
ギャラリー形式の店舗では、商品の製造過程を見学できるだけでなく、限定商品や新しいフレーバーを試すことができる他、ブランドのストーリーを顧客に伝える場としても機能しています。
BAKEのブランディングに今後も注目
BAKEは、「8割主義」と「1ブランド1プロダクト」の専門店業態を基にしたブランドづくりを行い、成功を収めました。
しかし、新型コロナウイルス禍を機に、ブランド戦略の見直しと改革を進め、EC事業やスピンオフブランドの展開、プレスバターサンドギャラリーの導入など、新たな施策を導入しています。
BAKEの成功の背景には、徹底したクラフトマンシップと革新的なブランディング戦略があります。
今後も、顧客のニーズに応じた商品開発やサービス提供を行い、ブランド価値を高めていくことでしょう。
BAKEの取り組みは、他の企業にとっても参考になる成功事例と言えるのではないでしょうか。ぜひ今後の動向にも注目していきましょう。