和菓子とは|日本の菓子文化の成り立ちと魅力

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目次

和菓子とは

和菓子とは「日本の伝統的なお菓子の総称」です。

この簡潔な言葉の背後には、私たちの祖先が築き上げてきた長い文化的な歴史の流れが反映されています。

和菓子の起源から現代までの歩み、その種類や特徴、そして日本の文化とどのように結びついているのかを、詳しく解説していきます。

和菓子の歴史と成り立ち

和菓子がどのようにして現在の形になったのか、その長い歴史をたどってみましょう。

「菓子」という言葉の起源

「菓子」という言葉は、もともと「果物」や「木の実」を意味する言葉でした。

これは、和菓子の始まりが自然の恵みにあることを物語っています。

現代では甘いお菓子として親しまれている和菓子ですが、その起源は縄文時代まで遡ります。

当時の人々は食べ物が十分でなかったため、木の実や果物を砕いて水でアクを抜き、丸めたものを食べて空腹を満たしていました。

これが、現在私たちが食べている団子の原型となったのです。

外来文化との出会い

和菓子は、様々な外来文化の影響を受けながら、独自の進化を遂げてきました。

唐菓子の伝来

飛鳥時代から平安時代にかけて、遣唐使が中国から持ち帰った「唐菓子(からがし)」は、米や麦、大豆、小豆などを原料とした、独特な形のお菓子でした。

当時の日本では、お菓子は主に神様を祀るための祭祀用として扱われており、唐菓子は宮廷や貴族の間で珍重されていました。

この唐菓子が日本の菓子文化に大きな影響を与え、やがて日本独自の菓子へと変化していきます。

茶道による菓子文化の変革

鎌倉時代になると、中国から羊羹や饅頭が伝わりました。

ただし、当時の饅頭は現在の甘い和菓子とは程遠く、むしろ食事に近いものでした。

この時代に茶道が確立されたことで、お茶とともに楽しむための菓子が必要となり、菓子文化は大きな転換期を迎えます。

室町時代に入ると、砂糖饅頭という甘い菓子が誕生し、和菓子の原型が作られていきました。

南蛮菓子の影響

戦国時代や安土桃山時代には、ポルトガル人やスペイン人によってカステラや金平糖、ボーロなどの南蛮菓子が伝えられました。

これらの菓子は、それまでの和菓子にはなかった砂糖を大量に使う製法や、オーブンで焼くといった新しい技術をもたらし、和菓子の多様性をさらに広げることになります。

江戸時代に花開いた和菓子文化

和菓子文化が本格的に発展したのは江戸時代です。

鎖国時代にもかかわらず、長崎の出島を通じて貴重だった砂糖の輸入量が増え、菓子づくりが盛んになりました。

庶民の間では、手軽に食べられる「駄菓子」文化が栄えるようになりました。

また、京都では公家向けの繊細な「京菓子」、江戸では武家や裕福な商人向けの豪華な「上菓子」が生まれ、互いに競い合いながら、洗練された日本独自のお菓子へと発展していったのです。

現在、私たちが親しんでいる和菓子の多くは、実はこの江戸時代に生まれたものです。

明治時代になると、西洋文化が流入し、チョコレートケーキなどの洋菓子が入ってきたことで、それまでのお菓子を「和菓子」と呼び分けるようになりました。

和菓子と洋菓子の違い

和菓子洋菓子は、見た目だけでなく、使用する原材料や作り方にも大きな違いがあります。

原材料の違い

和菓子の主な原材料は、米や麦、豆類といった植物性のものが中心です。

特に小豆を使った餡が中心的で、約60パーセントが水分で構成されています。

バターや生クリームなどの動物性脂肪を使わないため、ふんわりとした優しい甘さが特徴的です。

また、小豆にはタンパク質や食物繊維、ビタミン、ミネラルも含まれており、単なる嗜好品以上の栄養価値も持ち合わせています。

一方、洋菓子は水の代わりにバターや生クリーム、卵、牛乳といった動物性の材料を多く使うため、高脂質で比較的甘く、濃厚な味わいに仕上がることが多いです。

作り方の違い

和菓子は煮る、練る、蒸すといった職人の手作業が中心で、ミキサーやオーブンなどの機械に頼らず、人の手の温もりと技術によって作られます。

そのため、職人の手の中で細工できるような、小さく繊細な形のものが多いのです。

これに対して洋菓子は、ミキサーで一気に材料を混ぜたり、オーブンなどの家電を多用したりして作られることが多く、サイズや形も多彩です。

和菓子の種類

和菓子は、製法、材料によって様々な種類に分類されます。

また、和菓子の分類は複雑で、同じ名前の和菓子でも水分量によって異なる分類に属することがあります。

例えば、水分の多い求肥は生菓子の練り物に分類されますが、水分量が少ない場合は半生菓子の練り物となります。

この複雑さは、長い歴史の中で全国各地でさまざまな食材を取り入れながら製造や加工方法を発展させてきた結果であり、和菓子の奥深さを示すものでもあります。

水分量による和菓子の分類

和菓子は、含まれる水分量によって大きく3つの種類に分類されます。

生菓子

水分量が30パーセント以上のもので、餅や餡を使ったものが多く、日持ちは当日中から2〜3日程度です。

大福、おはぎ、どら焼き団子カステラ、ういろう、羊羹などがこれに該当します。

水分が多いため傷みやすく、特に餅や団子は時間が経つとでんぷん質が硬くなる「老化」という現象が起こるため、できるだけ早く食べる必要があります。

半生菓子

水分量が10〜30パーセントのもので、生菓子よりも日持ちするため、お土産や贈答品として適しています。

最中、甘納豆、栗きんとん、きびだんごなどが代表例です。

同じ種類の半生菓子でも、水分量によって日持ちする期間が異なるため、購入時には賞味期限の確認が重要です。

干菓子

水分量が10パーセント以下で、最も日持ちする和菓子です。

落雁、金平糖、せんべい、あられ、おこしなどがあります。

水分量が少ないためカビが生えにくく、長期間保存が可能です。

また、あられやおかきといった味のある米菓子も干菓子の一種で、甘いものが多い生菓子や半生菓子とは異なる特徴を持っています。

製法・材料による和菓子の分類

水分量による分類以外にも、和菓子は製法や材料によってさらに細かく分けることができます。

餅物

もち米や餅粉を主原料とした和菓子で、もちもちとした食感が特徴です。

柏餅、草餅、大福、おはぎなどが該当します。

蒸し物

せいろで蒸して作る和菓子で、しっとりとした口当たりが特徴です。

蒸し饅頭、ういろうなどが該当します。

焼き物

平鍋やオーブンで焼いて作る和菓子です。

どら焼き、きんつば、カステラなどが該当します。

流し物

寒天やゼラチンを型に流して固める和菓子で、つるりとしたのどごしが楽しめます。

羊羹、水羊羹などが該当します。

練り物

餡に餅粉などを加えて練って作る和菓子で、職人の手で形作られるため、見た目の美しさが際立ちます。

練り切り、求肥などが該当します。

揚げ物

油で揚げて作る和菓子で、香ばしい風味が特徴です。

あんドーナツ、揚げ饅頭などが該当します。

和菓子文化の魅力

和菓子は、ただ食べるためのお菓子ではなく、日本の文化や美意識を表現する芸術品です。

季節との深い結びつき

和菓子の最も大きな特徴の一つは、四季との深い結びつきです。

春には桜餅やうぐいす餅、夏には水羊羹や葛切り、秋には栗きんとんや月見団子、冬には雪平や椿餅といったように、それぞれの季節に特有の和菓子があります。

これは、四季がはっきりしている日本の気候風土と深く関係しています。

和菓子職人は、季節の花や動物、風景などをモチーフにして、見た目でも季節感を表現します。

特に練り切りなどの上生菓子では、同じ材料を使いながらも形状や色合いを変えることで、四季折々の美しさを表現するのです。

和菓子は「五感の芸術品」

和菓子の魅力は「五感の芸術品」とも称されるその総合性にあります。

視覚の美

職人が一つ一つ手作業で季節の風景や花を表現した上生菓子は、まさに食べられる芸術作品です。

細工の繊細さや色彩の美しさは、目で見て楽しむだけでも価値があります。

味覚の繊細さ

上品で優しい甘さと、小豆や抹茶、きな粉など、素材本来の風味を活かした繊細な味わいを楽しむことができます。

香りの豊かさ

素材本来の香りが、和菓子の美味しさを引き立てます。

例えば、桜餅の桜の葉や、柏餅の柏の葉の香りは、季節を感じさせてくれます。

食感の楽しさ

もちもちとした餅、つるりとした羊羹、サクサクとした最中など、和菓子は多様な食感を持っています。

菓銘(かめい)から想起される情緒

和菓子には「菓銘」という独特な名前が付けられることがあります。

これは主に練り切りに付けられる詩的な名前で、短歌や俳句、花鳥風月、地域の歴史や名所に由来することが多いです。

例えば「東風(こち)」は、菅原道真の有名な歌から取られた名前で、春一番に咲く梅をかたどった練り切りに付けられます。

これらの菓銘は、和菓子が単なるお菓子を超えて日本の文学や歴史と深く結びついていることを示しています。

茶道における和菓子の役割

茶道の世界では、和菓子は「主菓子」と「干菓子」の2つに分けられます。

主菓子

生菓子や半生菓子のことで、その中でも四季の移ろいや花鳥風月を表現した最も格式高いものを「上生菓子」と呼びます。練り切りなどがこれに該当し、通常の2倍量の抹茶が入った「濃茶」と合わせて出されます。また、作られた当日中に食べなければならない主菓子は「朝生菓子」と呼ばれ、大福などがこれに該当します。

干菓子

水分量の少ない和菓子で、抹茶の風味を引き立てる役割を持っています。一般的にイメージされる「薄茶」と合わせられます。

まとめ

和菓子は日本の自然観、美意識、季節感、歴史、文学、宗教観など、日本文化のエッセンスが凝縮された総合芸術作品です。

一つ一つの和菓子には作り手の技術と心が込められ、食べる人に季節の喜びや日本の美しさを伝えています。

現代では、苺大福のように新しい素材を取り入れたものや、生クリームを使った和洋折衷のものなど、伝統を守りながらも新しい挑戦を続ける和菓子職人たちの努力によって、和菓子は国内だけでなく海外でも注目を集めています。

長く繋がれてきた芸術を食すこと、和菓子を味わうということは、日本文化そのものを味わうことに他ならないのです。

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