和菓子の種類を徹底解説|製法・原材料・水分量で分類する名称

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和菓子の世界は非常に奥深く、その種類は多岐にわたります。

和菓子の種類を理解するためには、まず基本的な分類体系を把握することが重要です。

この分類は、和菓子の美味しさと品質を保つために、長い歴史の中で職人たちが培ってきた知恵と技術の結晶です。

本記事では、和菓子がどのように分類されているのか、その背景とそれぞれの種類の特徴について、詳しく解説していきます。

目次

和菓子の種類 水分量による分類

和菓子は、含まれる水分量によって大きく「生菓子」、「半生菓子」、「干菓子」の三つに分けられます。

この分類方法が生まれた背景には、現代のような科学的な食品保存技術がなかった時代に、お菓子の日持ちと品質を管理するという実践的な必要性がありました。

生菓子:みずみずしさと新鮮さが魅力

生菓子は、水分含有率が30パーセント以上のもので、その名前が示すとおり「生き生きとした」新鮮さが特徴です。

ここで重要なのは、なぜ30パーセントという数字が基準になったかという点です。

この水準を超えると、でんぷん質を含む材料(特に餅類)の老化が進みやすくなり、また微生物の繁殖リスクが高まるため、品質保持の観点から設定された実用的な基準なのです。

生菓子は、日持ちが当日中から2〜3日程度と短いため、作ったばかりの風味を楽しむことが推奨されます。

半生菓子:日持ちとお土産に最適

生菓子は、水分含有率が10から30パーセントの間に位置する和菓子です。

生菓子と干菓子の中間的な位置づけにあるため、適度なしっとり感を保ちながらも、数日から一週間程度の日持ちが可能になります。

この絶妙な水分バランスにより、お土産や贈答品として重宝されています。

干菓子:長期保存に優れた和菓子

干菓子は、水分含有率が10パーセント以下の和菓子で、三つの分類の中で最も保存性に優れています。

「干菓子」という名前からは「乾燥させた」というイメージを受けますが、実際には最初から水分を少なく作る場合と、作った後に乾燥させる場合の両方があります。

この分類の和菓子は、茶道において「干菓子」として薄茶と組み合わせて使われることも多く、実用性と文化性を兼ね備えています。

和菓子の種類 類製法と材料による分類

水分量による基本分類だけでなく、和菓子は製法や主要な材料によってさらに細かく分類されます。

それぞれの分類には、職人の独自の技術と歴史が詰まっています。

生菓子の細分類

水分量の多い生菓子は、製法によってさらに細かく分けられます。

餅物

餅物はもち米や餅粉を主原料とする和菓子で、大福、おはぎ、柏餅、草餅などがこれに該当します。

餅の特性を理解すると、なぜこれらが同じカテゴリーに分類されるかがわかります。

もち米に含まれるアミロペクチンという成分が、加熱と冷却を通じて独特の粘りと弾力を生み出すのです。

しかし、この同じ成分が時間の経過とともに水分を失って硬くなるため、餅物は「朝生菓子」とも呼ばれ、作ったその日のうちに食べることが推奨されます。

蒸し物

「蒸し物」は、せいろなどを使って蒸気で加熱して作る和菓子の総称です。

蒸し饅頭、蒸し羊羹、ういろう、わらび餅などがこれにあたります。

蒸すという調理法の特徴は、材料を均一に、そして優しく加熱できることです。

直火や乾熱と違い、蒸気による加熱は100度以下の温度で行われるため、デリケートな餡の風味を損なうことなく、しっとりとした食感を保てます。

また、蒸すことで材料同士がよく馴染み、口当たりの良い仕上がりになるのです。

焼き物

「焼き物」には大きく分けて二つの系統があります。

平鍋で焼くものとオーブンで焼くものです。

どら焼き、きんつば、今川焼きなどは平鍋系の代表例で、カステラ、栗饅頭などはオーブン系です。

この違いは単なる道具の違いではなく、熱の伝わり方と仕上がりの質感に大きく影響します。

平鍋での焼きものは直接的な熱により表面に香ばしさを生み出し、オーブンでの焼きものは間接的で均一な熱により全体をふっくらと仕上げます。

興味深いのは、同じ「焼き物」でも桜餅の場合、関東風は薄く焼いた皮で餡を包むため焼き物に分類されますが、関西風は道明寺粉を使うため餅物に分類されることです。

流し物

「流し物」は寒天、ゼラチン、葛などの凝固剤を使って型に流し入れて固める和菓子です。

羊羹、水羊羹、錦玉羹、ところてんなどがその代表例です。

ここで重要なのは、使用する凝固剤の特性の違いです。

寒天は海藻由来で常温でも固まりを保ち、独特の歯切れの良い食感を生み出します。

ゼラチンは動物性で口の中でとろけるような食感、葛は植物の根から作られ、上品な透明感とのど越しの良さが特徴です。

これらの特性を理解した職人が、求める食感や季節感に応じて使い分けているのです。

練り物

「練り物」は餡に餅粉や白玉粉などを混ぜて練り上げる和菓子で、練り切り、こなし、求肥などがあります。

この分類で最も重要なのが「練り切り」です。

練り切りは白餡をベースに、つなぎとなる求肥や餅粉を加え、職人の手によって季節の花や風物を表現する芸術的な和菓子です。

同じ材料を使いながら、色付けや形成技術により無限の表現が可能になるのが練り物の魅力です。

水分調整も繊細で、少し多めにすれば柔らかく成形しやすくなりますが崩れやすく、少なめにすれば形は保てるものの硬くなってしまうという、職人の技術が問われる分野です。

揚げ物

「揚げ物」は比較的新しい分類で、あんドーナツや揚げ饅頭などがあります。

他の製法で作られる和菓子を油で揚げることで、外側の香ばしさと内側のしっとり感のコントラストを楽しめます。

揚げることで保存性も向上し、また新しい食感と風味を生み出すことができるのです。

半生菓子の細分類

生菓子も、その製法によって細かく分類されます。

おか物

「おか物」は、異なる素材を火を使わずに最後に組み合わせる和菓子です。

最中がその代表例で、別々に作った最中種(もなかだね)と餡を、食べる直前や販売直前に組み合わせます。

この製法により、最中種のパリパリとした食感を保ちながら、餡の美味しさも楽しめるのです。

最中種は薄く延ばした餅を型で抜いて焼き上げたもので、湿気を吸いやすい性質があるため、餡と組み合わせるタイミングが味を左右する重要な要素となります。

あん物

「あん物」は、砂糖や水の特性を活かして保存性を高めた和菓子を扱います。

石衣(いしごろも)やぜんざいがその例です。

石衣は小豆の粒餡に砂糖をまぶしたもので、砂糖の結晶化により表面に美しい白い衣をまとったような見た目になります。

この砂糖の膜が保存性を高める役割を果たしているのです。

流し物

生菓子の流し物は、生菓子の流し物との違いは、より水分を少なくして日持ちを良くしながらも、流し込んで成形するという製法を保っていることです。

羊羹はその代表例で、熟練した職人は、季節や湿度を考慮しながら微妙な水分調整を行います。

干菓子の細分類

長期保存が可能な干菓子も、様々な製法で多様な種類に分かれます。

打ち物

「打ち物」は粉類に砂糖を加えて型に打ち込んで成形する和菓子です。

落雁(らくがん)がその代表で、米粉や麦粉に砂糖と少量の水を加え、木型に打ち込んで抜き取って作ります。

この製法の面白さは、同じ材料でも型を変えることで全く異なる見た目の和菓子を作れることです。

家紋や季節の花、縁起物の形など、様々な意匠を表現できます。

また、打ち込む際の力加減により密度が変わり、食感も調整できるのです。

押し物

「押し物」は粉に砂糖や餡を加えて型に入れて押し固める製法です。

しおがまや村雨(むらさめ)などがこれにあたります。

打ち物との違いは、押し固める際により強い圧力をかけることで、より密度の高い仕上がりになることです。

これにより長期保存が可能になり、また独特のほろほろとした食感を生み出します。

掛け物

「掛け物」は素材にシロップをかけたり浸したりして作る和菓子です。

おこし、あられ、砂糖漬けなどがその例です。

この製法の興味深い点は、ベースとなる素材(米、豆、芋など)の特性を活かしながら、糖分を加えることで保存性と甘さを付与することです。

例えば、おこしの場合、米や粟などの穀物を炒って軽くした後、水砂糖でコーティングして固めます。

地域によって使用する穀物や甘味料が異なるため、同じ「おこし」でも様々な味わいが楽しめます。

焼き物

「焼き物」の干菓子は、せんべい、あられ、ボーロなどがあります。

生菓子や半生菓子の焼き物との大きな違いは、水分を徹底的に飛ばすことで保存性を高めていることです。

せんべいは米を原料として、薄く延ばして焼くことで水分を1パーセント程度まで減らし、パリパリとした食感と長期保存を可能にしています。

醤油やみそなどの調味料を塗って焼くことで、甘味以外の味わいも楽しめる点が特徴的です。

飴物

物」は砂糖を煮詰めて固めた和菓子で、金平糖や有平糖(ありへいとう)などがあります。

この分類は技術的に最も高度なものの一つです。

砂糖の結晶化をコントロールして、求める食感や見た目を作り出すには、温度管理と時間管理の両方において高い技術が必要です。

金平糖の製造には数日間かけて少しずつ砂糖を重ねていくという、極めて根気のいる工程があります。

表面の突起は偶然できるものではなく、回転させながら砂糖液をかけることで規則的に形成されるのです。

和菓子のその他の分類

水分量や製法だけでなく、和菓子は季節や行事、そして地域によっても様々な種類に分けられます。

行事で用いられる和菓子

和菓子は日本の年中行事と密接に結びついており、それぞれのお菓子に特別な意味が込められています。

ひなまつり(3月3日)

ひなまつりには、ひなあられ菱餅が欠かせません。

ひなあられは、一年を通して女の子の健やかな成長を願うという意味があります。

また、菱餅は緑、白、ピンクの三色で、それぞれが健康、清浄、魔除けを意味すると言われています。

こどもの日(5月5日)

こどもの日には、ちまき柏餅が食べられます。

ちまきは、魔除けや無病息災を願う中国の故事に由来しています。

柏餅は、柏の葉が新芽が出るまで古い葉が落ちないことから、「家系が絶えない」という縁起の良い意味が込められています。

お彼岸

春と秋のお彼岸には、おはぎぼたもちが供えられます。

これらは、もち米と餡子を混ぜて作るもので、ご先祖様への感謝と供養の気持ちを表すものです。

お月見(中秋の名月

お月見には、月見団子が供えられます。

これは、収穫への感謝を捧げるとともに、新しい五穀豊穣を願う意味が込められています。

地域で変わる和菓子

和菓子は、同じ名前でも地域によって作り方や味が異なることが多く、その土地の文化や風土を反映しています。

桜餅

桜餅は、関東風と関西風で製法が大きく異なります。

関東風桜餅は、小麦粉などを溶いた生地をクレープのように薄く焼いて餡を包むため、**長命寺(ちょうめいじ)**とも呼ばれます。

関西風桜餅は、道明寺粉(もち米を蒸して乾燥させ粗挽きにしたもの)のつぶつぶとした食感が特徴で、**道明寺(どうみょうじ)**と呼ばれます。

ひなあられ

ひなあられも、関東と関西で違いがあります。

関東では、お米を炒って砂糖をまぶした甘いポン菓子が主流です。

一方、関西では、小さく切ったお餅を揚げて味をつけたおかきが主流です。

ういろう

ういろうは、名古屋のものが有名ですが、山口や京都など各地で特徴が異なります。

名古屋のういろうは、もちもちとした弾力と強い甘みが特徴です。

一方、山口のういろうは、わらび粉を使用しているため、ぷるんとした口当たりと上品な甘みが特徴です。

まとめ

和菓子の種類を理解する上で最も重要なことは、これらの分類が単なる学術的なものではなく、実用的な必要性から生まれたということです。

保存期間、食べ方、提供する場面、季節性など、様々な要因を考慮した職人たちの知恵の結晶なのです。

そして、この複雑で多様な分類体系こそが、和菓子文化の豊かさと奥深さを物語っています。

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