パンケーキとは
パンケーキの「パン」は、食べ物の「食パン」ではなく、フライパンや平たい鍋を意味する英語の「pan」が語源です。
したがって、「パンケーキ」とは「平鍋で焼くケーキ」という調理法を示す言葉です。
パンケーキの歴史
パンケーキの歴史は古く、その起源を辿ると驚くほど昔に遡ります。
確実な記録は残っていませんが、約3万年前にはすでに植物から作った粉を水と混ぜて石の上で焼く調理法が存在していたという説があります。
古代ギリシャやローマ時代には、はちみつで甘味をつけたパンケーキが食べられていました。
この頃から現在のパンケーキの原型が形作られていたことが分かります。
文献に初めて登場するのは16世紀のことです。
19世紀に入ると、アメリカでパンケーキ粉が発売され、一般家庭でも手軽に作れるようになりました。
日本独自によるパンケーキの発展
「ホットケーキ」の誕生
1931年、日本で初めて市販された際、商品名は「ホットケーキの素」となりました。
元々は「パンケーキ」という名前でしたが、当時すでに出回っていた食パンと区別するため、また温かい状態で食べることから「ホットケーキ」と名付けられました。
「ホットケーキ」という呼び方は、日本独自のものです。
海外での呼び方
海外では「ホットケーキ」という表現は一般的ではありません。
アメリカでも地域によっては「ホットケーキ」と呼ぶこともありますが、基本的には「パンケーキ」が標準的な呼び方です。
日本での普及
ホットケーキが本格的に普及したのは第二次世界大戦後です。
各社からミックス粉が発売され、手軽に作れるおやつとして家庭に浸透しました。
喫茶店でもデザートとして広まっていきました。
日本におけるパンケーキとホットケーキの違い
日本のパンケーキとホットケーキには、明確な定義上の違いはありません。
しかし、製菓企業の見解や消費者の間で、使い分けの傾向があります。
呼び方の違い
ホットケーキは、甘くてふっくらとした、昔ながらの家庭的なおやつという印象があります。
パンケーキは、甘さ控えめの食事系や、海外風の薄焼き、ふわふわのスフレタイプなど、より多様なスタイルを指す傾向があります。
材料と調理法
基本的な材料は、小麦粉、砂糖、卵、牛乳、ベーキングパウダーで同じです。
ただし、パンケーキミックスには砂糖を含まないものや、量を抑えたものも存在します。
これは、食事として楽しむ用途を想定しているためです。
世界各国のパンケーキ
イギリスのパンケーキ
クレープのように薄い生地が特徴で、ベーキングパウダーは使いません。
レモン汁と砂糖をかけて食べるのが伝統的です。
キリスト教徒が断食前に家に残った卵やバター、乳製品を使い切るためにパンケーキを作った習慣から、断食前日を「パンケーキ・デイ」と呼んでいます。
アメリカのパンケーキ
小麦粉、卵、牛乳にベーキングパウダーを加えて膨らませた厚めの生地が特徴です。
生地にブルーベリーやチョコチップなどを混ぜることもあります。
バターやメープルシロップ、ベーコンなどを添え、朝食として食べられることが多いです。
オランダのパンケーキ
「パンネクック」と呼ばれ、直径約30センチメートルの大きな薄焼きパンケーキです。
ベーコンやチーズ、りんごなどの具材をトッピングして、一食分の料理として食べられます。
近年の日本のパンケーキブーム
2010年頃から始まった「パンケーキブーム」は、日本のパンケーキ文化に新たな展開をもたらしました。
従来のホットケーキの定番スタイルとは異なり、生クリームやフルーツをトッピングした華やかなスイーツとして人気を博しました。
厚くふわふわしたスフレパンケーキや、しらすをトッピングした食事系パンケーキなど、各店舗が工夫を凝らした商品を提供しました。
ホットケーキとの共存
このブームの中でも、従来のホットケーキミックスは「ホットケーキ」の名前のままで販売され続けました。
これは、消費者の中でホットケーキとパンケーキは異なるものという認識が定着していることを示しています。
2020年代には、昭和レトロブームで昔ながらの喫茶店風ホットケーキが再評価されるなど、両者はそれぞれ独自のジャンルとして共存しています。
パンケーキは、古代から続く長い歴史を持ちながら、各国の文化に合わせて様々な形に発展しました。
日本においては、「ホットケーキ」という独自の文化を育みつつ、近年は海外由来の「パンケーキ」文化も受け入れ、両者が共存する独特な食文化を形成しているのです。