ずんだ餅とは
ずんだ餅とは、枝豆をすりつぶして作った餡を、白いお餅にからめた料理のことです。
この料理の名前にもなっている「ずんだ」は、枝豆から作られる淡い黄緑色の餡そのものを指します。
主に宮城県をはじめとする東北地方の郷土料理です。
日本の餅食文化とずんだ餅
日本では古くから、餅が特別な日や人生の節目に食べる重要な食べ物として位置づけられてきました。
特に宮城県は餅をよく食べる地域として知られています。
正月や婚礼、法事、葬儀など、年間を通して様々な行事で餅が食されてきました。
宮城県の多様な餅料理
餅を食べる文化が発達した宮城県では、実に様々な種類の餅料理が生まれました。
どじょうを使ったふすべ餅、くるみを使ったくるみ餅、ごま餅、納豆餅などがあります。
これらの中でも、来客をもてなす際によく出されるのが、ごま餅、くるみ餅、そしてずんだ餅でした。
ずんだという名前の由来
ずんだという言葉がどこから来たのかについては、複数の説があります。
それぞれの説について解説します。
農夫「甚太」に由来する説
甚太という農夫がこの食べ方を考案したため、「甚太餅」と呼ばれたという説です。
この「甚太餅」の音が変化して「ずんだ餅」になったとされています。
武将「伊達政宗」に由来する説
戦国武将である伊達政宗が、合戦中に陣太刀の柄を使って枝豆を潰して食べたという説です。
この「陣太刀」が音の変化を経て「ずんだ」になったと伝えられています。
豆を打つ音に由来する説
豆を打つ音を「ずんだ」と表現したことが、名前の起源になったという説です。
これは「豆ん打(ずんだ)」という言葉から来ているとされています。
ずんだ餅の歴史
起源は戦国時代
ずんだ餅の歴史は古く、500年以上前の戦国時代にまで遡ると考えられています。
ただし、現在私たちが食べているような甘いずんだ餅になったのは、もう少し後の時代のことです。
江戸時代後期には、枝豆を使った和え衣がずんだとして定着していました。
味付けの変化
砂糖が一般的に手に入るようになったのは、幕末から明治時代にかけてのことです。
それまでのずんだは甘さが控えめで、枝豆本来の風味がより強く感じられるものでした。
ずんだ餅の材料
シンプルな材料構成
ずんだ餅の材料は、枝豆、砂糖、そして少量の塩と水だけという非常にシンプルな構成です。
この材料の少なさこそが、枝豆本来の味を活かすための工夫といえます。
枝豆の選び方
ずんだ餅に使う枝豆は、良質なものを選ぶことが大切です。
枝豆の旬は6月から9月までで、この中でも特に8月と9月に収穫されるものが味が良いとされています。
新鮮な枝豆は、鮮やかな緑色をしており、さやがふっくらとしてうぶ毛がびっしりと生えています。
枝から外されて販売されているものよりも、枝付きのままの方が鮮度を保ちやすいため、可能であれば枝付きのものを選ぶとよいでしょう。
ずんだ餅の作り方
枝豆の下ごしらえ
ずんだ餅用には、通常の枝豆の茹で方よりも長めの約15分間、柔らかくなるまで茹でることが重要です。
柔らかく茹でることで、後の工程で餡を作りやすくなります。
茹で上がったら、流水で軽く冷まし、さやから豆を取り出します。
薄皮むき
次の重要な作業は、枝豆についている薄皮を一つずつ丁寧にむくことです。
この作業は手間がかかりますが、薄皮が残っていると口当たりが悪くなってしまいます。
この工程を行うことで、なめらかで美しい緑色のずんだ餡ができあがります。
餡の製作
薄皮をむいた豆は、まずまな板で粗く刻み、その後すり鉢でよくすりつぶします。
つぶしすぎないよう、豆の食感が少し残る程度にとどめるのが一般的です。
完全になめらかにするよりも、つぶつぶとした食感を残すことで枝豆らしさを保つことができます。
すりつぶした豆に砂糖と少量の塩を加えて味を調え、水を少しずつ加えて餅に絡めやすい固さに調整します。
これでずんだ餡の完成です。
餅との和え方
最後の工程は、つきたての温かい餅にずんだ餡を絡めることです。
餅が温かいうちに行うことで、餡がよく絡み、一体感のある仕上がりになります。
このようにして完成したずんだ餅は、白い餅と淡い緑色の餡の対比が美しく、見た目にも食欲をそそる一品となります。
ずんだ餅の文化的な役割
ずんだ餡を作るには多くの手間がかかるため、昔は家族全員で協力して作業を行っていました。
特に子どもたちは、さやから豆を取り出したり薄皮をむいたりする作業を担当することが多くありました。
このような共同作業を通じて、家族の絆を深める機会ともなっていました。
ずんだ餅は、単なる食べ物としてだけでなく、家族のコミュニケーションを促進する文化的な役割も果たしていました。
ずんだ餅の味わい
ずんだ餅は、主材料が枝豆と砂糖という非常にシンプルな構成です。
そのため、枝豆本来の味をストレートに感じることができます。
砂糖による甘さは控えめで、枝豆特有の豆らしい風味と自然な甘みが前面に出ています。
食感は、もっちりとした餅と、つぶつぶとした豆の粒感の組み合わせが特徴的で、この対比が食べる楽しさを生み出しています。
全体的には上品で素朴な味わいです。
ずんだ餅の栄養
ずんだ餅の主材料である枝豆は、大豆が未成熟な状態で収穫されたものです。
大豆は「畑の肉」と呼ばれるほど栄養価が高い食材として知られていますが、枝豆もその特徴を受け継いでいます。
高タンパクでありながら低脂質という特徴があり、さらにビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンC、カリウム、食物繊維、葉酸、そしてイソフラボンなど多くの栄養素を含んでいます。
ビタミンB1とビタミンB2はエネルギー代謝を高める効果があり、疲労回復にも役立つとされています。
このような栄養特性があったからこそ、昔から夏バテ防止や栄養補給の目的でずんだ餅が食べられていたのです。
ずんだ餅の現代における広がり
地域の名物としての位置づけ
ずんだ餅は、笹かまぼこ、牛タンと共に宮城県の三大名物の一つとして定着しています。
仙台駅を中心とした宮城県内の各地でお土産として販売されており、冷凍での配送により全国どこでも購入することが可能になっています。
製造元によって味わいに違いがあるため、食べ比べを楽しむこともできます。
多様な商品開発
伝統的なずんだ餅の枠を超えて、様々なアレンジ商品が生まれています。
ずんだシェイク、ずんだどら焼き、ずんだケーキ、ずんだかき氷など、多様な商品が開発されています。
コンビニエンスストアでもずんだを使った商品が販売されており、全国的に知名度が高まっています。
観光と継承
地域の食文化を次世代に伝えるため、「ずんだ作り」を体験できるツアーも企画されています。
これにより、食文化の継承と観光振興の両方に貢献しています。
食材面でも、枝豆については収穫時期の早い品種の開発が行われるなど、継続的な改良が図られています。