フランス菓子の流行
この時期、フランスから帰国したパティシエたちが注目を集めるようになりました。彼らはリアルタイムのフランス菓子の情報を持ち帰り、日本各地で新しいスタイルの洋菓子を展開していきました。トラディショナルなお菓子に加え、現代的なフランス菓子の技術を取り入れ、洗練されたデザインでショーケースを彩るようになったのです。
当時のフランス菓子のイメージ
しかし、日本のメディアは「フランス菓子とは小ぶりで瀟洒なもの」というイメージを強調し始めました。このイメージは徐々に強まり、ファッション誌や女性誌に登場するフランス菓子はますます小型化し、デザインも繊細でデリケートなものが主流となっていきました。消費者の間でも「小さく美しいフランス菓子こそが高級である」という認識が広がり、小さいほど高評価を得るようになったのです。
フランス菓子に対する意識の変化
上記の流れの中で、消費者の一部には食後の満足感が得られないという不満が募っていきました。美しく繊細なスイーツであることは評価されながらも、実際に食べると「もっと食べたい」と感じる人が増えていったのです。この心理的な物足りなさが、新しいタイプのスイーツの登場を後押しすることになりました。
アメリカンタイプのカットケーキの流行
この消費者のニーズに応える形で登場したのが「イタリアン・トマト」、通称「イタトマ」というお店が提供するアメリカンタイプのカットケーキでした。それは従来のフランス菓子のようにあらかじめ決まったサイズで提供されるのではなく、オーダーを受けた後、その場で適度な大きさにカットするスタイルのものです。
アメリカンタイプのカットケーキのイメージ
この販売スタイルは、既存の洋菓子の提供方法とは異なるものでした。店頭でケーキが切り分けられる様子を見ることができるという演出は、消費者にとって新鮮であり、購入の楽しみを増す要素となりました。こうした斬新なスタイルは、多くのスイーツファンの関心を引き、次第に広まっていきました。
アメリカンタイプという名称も、当時の消費者には魅力的に響きました。それまでフランス菓子が絶対的な存在としてもてはやされていた中で、新しい選択肢としてアメリカンタイプのスイーツが登場したことは、消費者にとって新鮮な驚きとなったのです。
日本人による独自の感覚を反映
実際のアメリカのスイーツは、ざっくばらんで大雑把に作られることが多いですが、日本で登場したアメリカンタイプのカットケーキは、美しく仕上げられていました。これは、日本人の職人精神や美的感覚によって生み出された独自のスタイルといえます。
この新しい流れは、スイーツ業界に大きな衝撃を与えました。それまでフランス菓子を追求していたパティスリーの中には、方向転換を考える店も出てきたほどです。また、このトレンドを感じ取った新しい店舗も次々と開業し、アメリカンタイプのカットケーキを提供する店が増えていきました。
フレンチ対アメリカンという対立
この状況を受け、マスコミは「フレンチ対アメリカン」という対立構図を取り上げ、話題性を煽りました。フランス菓子とアメリカンタイプのカットケーキという異なる文化が共存し、消費者にとっては選択肢が広がる結果となったのです。
アメリカンタイプのカットケーキは、単なる一時的なブームではなく、日本のスイーツ業界に大きな影響を与えました。これまでのフランス菓子中心の価値観に一石を投じる形となり、洋菓子の世界に多様性をもたらしたのです。
まとめ
フランス菓子の小型化が進む中で、消費者の「もっと食べたい」というニーズに応える形で登場したアメリカンタイプのカットケーキ。この新しいスタイルは、日本人ならではの美的感覚と職人技によって洗練され、スイーツ業界に大きな影響を与えました。フレンチとアメリカンという異なるスタイルが共存し、日本のスイーツ文化はさらに豊かになっていったのです。