ベーグルとは|茹でる工程「ケトリング」の効果

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ベーグルとは

ベーグルについて理解するには、まず私たちが日常的に食べているパンとの違いから考えると分かりやすいでしょう。

パンと聞くと、多くの方は食パンや菓子パン、惣菜パンなどを思い浮かべるかもしれません。

これらのパンには共通して、小麦粉の他にバター、牛乳、卵といった材料が使われています。

ところがベーグルは、これらの材料を一切使わずに作られるパンです。

ベーグルの基本材料

ベーグルの基本的な材料は、小麦粉、水、砂糖、イーストだけです。

これらのシンプルな材料がベーグルの素朴な風味と独特な食感の基礎を築いています。

一般的なパンとの材料の違い

一般的なパンに含まれている油脂分や乳製品、卵がベーグルには入っていません。

油脂分や乳製品を一切使用しない点が、ベーグルと他の多くのパンとを明確に区別する点です。

ベーグルの作り方

ベーグルがベーグルたる理由は、形だけではありません。

作り方の工程に、他のパンにはない独特の手順が含まれているのです。

一般的なパンの製法との違い

一般的なパンの作り方を思い浮かべてみましょう。

通常、パンは生地を練った後、酵母の働きで生地を膨らませる「発酵」という工程を経ます。

多くのパンでは、この発酵を一次発酵と二次発酵の2回行い、その後オーブンで焼き上げます。

ところがベーグルの場合、二次発酵を行わないことが多く、さらに焼く前に生地を茹でるという工程が加わります。

茹でる工程「ケトリング」

この茹でる作業は「ケトリング」と呼ばれています。

生地をただお湯で茹でるだけでなく、はちみつ砂糖、または麦芽糖などを加えたお湯を使います。

生地をこのお湯に入れて茹でることで、ベーグルならではの食感が生まれるのです。

ケトリングの工程で、ベーグルの表面のデンプンが熱によって**糊化(こか)**し、表面に固い膜が作られます。

この膜が、ベーグルの独特な食感を作り出す重要な鍵となります。

ベーグルの食感と噛みごたえ

ケトリングを経ることで、ベーグルには他のパンにはない独特の食感が生まれます。

茹で時間による食感の変化

茹でる時間の長さを調整することで、完成品の固さや食感を変えることもできます。

短時間茹でると、焼き上げた際に比較的ソフトで弾力のある食感になりやすいです。

長時間茹でると、ケトリングの膜が厚くなり、より硬く引き締まった、強い噛みごたえのある食感になります。

焼き上げ後のベーグルの食感

こうして茹でられた生地は、その後オーブンで焼かれます。

茹でる工程を経ることで、外側はカリッと焼き上がり、内側はもっちりと詰まった独特の歯触りになります。

油脂分が含まれていないため、生地の目が詰まっており、噛みごたえがあるのが特徴です。

この噛みごたえのある食感により、少量でも咀嚼回数が増え、満腹感を得やすいという側面もあります。

ベーグルが持つ栄養的な側面

ベーグルの栄養面について、他のパンと比較しながら具体的に見てみましょう。

ベーグルと他のパンとのカロリー比較

ベーグルは100グラムあたり270キロカロリーとされています。

他のパンと比較すると、クロワッサンは406キロカロリー、フランスパンは289キロカロリー、角形食パンは248キロカロリー、コッペパンは259キロカロリーです。

このように並べてみると、ベーグルのカロリーは他のパンと比べて極端に低いわけではないことが分かります。

脂質とタンパク質の割合

ただし、油脂や卵、牛乳を使用していないことから、他の一般的なパンと比べると脂肪分は少なくタンパク質の割合は多い傾向にあります。

この点は、油脂を多く使うパンと比較した場合の、ベーグルの栄養的な特徴の一つです。

GI値による血糖値への影響

また、血糖値の上昇速度を示す指標として**GI値(グリセミック・インデックス)**というものがあります。

この値が低い食品ほど、血糖値の上昇が緩やかで、ゆっくりと吸収されるという特性があります。

食パンのGI値が91であるのに対して、ベーグルは75という数値を示しています。

この数値は、ベーグルが比較的緩やかに血糖値を上げる食品であることを示しており、食事の選択肢として参考になります。

ベーグルの保存方法

保存の面では、乾燥を防ぐことができれば品質は数日間保たれます。

ベーグルは水分量が少ないという特徴があるため、冷凍保存であれば家庭用の冷蔵庫でも1ヶ月程度は十分に保存することが可能です。

冷凍保存する際は、一つずつラップで包み、さらにアルミホイルで包むか密閉容器に入れることで、乾燥と冷凍焼けを防ぐことができます。

ベーグルの多様なバリエーション

ベーグルには様々な味のバリエーションがあります。

何も混ぜ込まない素のベーグルはプレーンベーグルと呼ばれます。

伝統的な具材のベーグル

伝統的なものとしては、表面に白ゴマ、ニンニク、芥子の実(けしの実)、刻みタマネギや、それらを混ぜ合わせたものなどがトッピングされます。

これらのトッピングは、ベーグルの風味に香ばしさや風味のアクセントを加えます。

生地への混ぜ込みによるバリエーション

さらに、生地にシナモンとレーズンやリンゴ、ブルーベリー、クランベリーといったドライフルーツ、ライ麦などを加えたものも作られるようになりました。

これにより、食事用だけでなく、菓子パン感覚で楽しめるベーグルも登場し、多様な嗜好に対応しています。

ベーグルの歴史的な起源

ベーグルの歴史を辿ると、その起源は東ヨーロッパにあります。

ベーグルの起源は、17世紀に東ヨーロッパのユダヤ人コミュニティーで食べられていたことにあるとされています。

ポーランドのクラクフでユダヤ人コミュニティーから発祥したという説があります。

中世ポーランドには「オブヴァジャーネック」という円形のパンがありました。

これは「一度茹でて焼いたパン」という意味を持つ名称で、このパンもベーグルと同様に発酵後に一度茹でてから焼き上げる製法でした。

「ベーグル」という名前の由来

「ベーグル」という呼び名は、「円形のパン」を意味するイディッシュ語の**「bugel」**から来ているという説があります。

イディッシュ語は、アシュケナジムと呼ばれる東欧系ユダヤ人が使っていた言語です。

このように、ベーグルは東欧系ユダヤ人の食文化と深く結びついているパンなのです。

ベーグルのアメリカ大陸への伝播

アメリカ大陸には、1880年代にユダヤ系ポーランド人移民によってニューヨークから広まりました。

当初は、大規模な東欧系ユダヤ人社会のある都市でしか見られない珍しい食べ物でした。

しかし、20世紀の後半、特に最後の20年ほどの間に、北アメリカ全体で一般的な食べ物として普及していきました。

地域によって異なるベーグルのスタイル

アメリカでは、地域によって異なるベーグルのスタイルが発展しました。

ニューヨーク式のベーグルの特徴

ニューヨーク式のベーグルは、麦芽とを使い、様々な味のバリエーションがあります。

生地を茹でた後は普通のオーブンで焼き上げます。

仕上がりの特徴として、膨れて表面が堅くなる傾向があり、伝統的な食感を保っています。

モントリオール式のベーグルの特徴

一方、モントリオール式のベーグルは、生地に麦芽と鶏卵を使い、を使いません。

蜂蜜を入れた湯で茹で上げ、薪を使った窯で焼き上げます。

仕上がりの食感は異なり、モントリオールのベーグルはもっちりとして全体に詰まった食感になります。

製法や材料の違いが、それぞれの地域のベーグルの個性を生み出しています。

ベーグルの多様な食べ方

ベーグルは、時代とともに食べ方にも変化が見られます。

ヨーロッパにおける伝統的な食べ方

ヨーロッパでは、ベーグルにはバターだけを塗って食べるのが一般的でした。

これは、ベーグルが持つシンプルな味わいをそのまま楽しむための伝統的な方法です。

アメリカで生まれた挟み方

クリームチーズやロックス(スモークサーモンのイディッシュ語での呼称)、トマト、タマネギなどをスライスしたベーグルに挟んで食べる食べ方は、アメリカ合衆国に移民したユダヤ人の間で生まれました。

これは、経済的な余裕ができた後に、ベーグルをより豊かな食事として楽しむために生まれたものです。

この食べ方は、ベーグルサンドイッチとしてアメリカで広く定着しました。

20世紀後半からの多様なアレンジ

20世紀の終わり頃になると、様々なアレンジが生まれました。

ベーグルサンドイッチが普及し、横半分に切ったベーグルの断面にピザソースとチーズをのせて焼いたベーグルピザなども作られるようになりました。

また、ベーグルをスライスして焼いたベーグルチップスも市販されるようになりました。

さらに、マクドナルドやダンキンドーナツといったファーストフードチェーンのメニューにも加えられ、より一般的な食品として受け入れられています。

日本におけるベーグル

日本では、1990年代の終わりから2000年代のはじめにかけて、健康食への関心の高まりを背景にベーグルが紹介されました。

油脂や卵を使わないというベーグルの特徴が、健康志向の人々や、よりあっさりとしたパンを好む層に受け入れられました。

現在では、ベーグル専門店、ベーカリーショップ、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、通信販売など、様々な場所で購入することができます。

日本独自のベーグルの展開

日本では独自の展開も見られ、ソフトな食感に仕上げたものや、生地に乳製品を用いるなど、伝統的な製法とは異なる作り方のものもベーグルとして販売されています。

これにより、ベーグルはより広い層の日本人の嗜好に合うように変化しています。

アレルギー対応としての側面

基本的なベーグルは卵や乳製品を使わないため、卵アレルギーや乳アレルギーの方でも食べられる選択肢となり得ます。

これは、パンの中でも比較的珍しい特性です。

しかし、中に包む具材やトッピングには卵や乳が使われている場合もあるため、アレルギーのある方は、購入前に原材料の確認が必要です。

ベーグルのまとめ

このように、ベーグルは東欧のユダヤ人コミュニティーから始まり、アメリカ大陸へと広がり、現在では世界各地で様々な形で楽しまれているパンとなっています。

シンプルな材料と独特の製法であるケトリングにより生まれる食感と風味が、多くの人々に受け入れられてきたのです。

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