バウムクーヘンの名前の由来
バウムクーヘンはドイツ発祥の伝統的なお菓子です。
その名前はドイツ語で「木」を意味する「バウム」と「ケーキ」を意味する「クーヘン」に由来します。
この名前の通り、輪切りにしたときに木の年輪のような模様が現れることが特徴です。
この模様は棒に生地を層ごとかけて焼き上げるという独特の製法から生まれます。
バウムクーヘンの発祥起源
バウムクーヘンの起源には諸説あります。
最も有力な説の一つは、紀元前のギリシャに存在した「オベリアス」という棒に巻きつけて焼いたパンがその原型だというものです。
また、中世ポーランドの伝統菓子「シャコティス」や、フランスの「ガトー・ア・ラ・ブロッシュ」が影響を与えたともされています。
バウムクーヘンが日本に伝わったのはいつ?
バウムクーヘンが日本に伝わったのは第一次世界大戦時。
ドイツ人菓子職人カール・ユーハイム氏が捕虜として日本に送られた際、収容所でバウムクーヘンを焼いたことがその始まりです。
戦後、ユーハイム氏は日本で洋菓子店を開き、その後バウムクーヘンは日本中に広がりました。
カール・ユーハイムとバームクーヘンの歴史
青島でお菓子と喫茶の店「ユーハイム」を開業
カール・ユーハイム氏はドイツ生まれの洋菓子職人でした。
彼は1913年(大正2年)、当時ドイツの租借地であった青島(現在の中国)でお菓子と喫茶の店「ユーハイム」を開業します。
この頃、彼の洋菓子技術はすでに高い評価を得ていました。
第一次世界大戦で日本の捕虜になる
しかし1914年(大正3年)、第一次世界大戦が勃発。青島は日本軍の攻撃を受け、カール・ユーハイム夫妻も捕虜となりました。
夫人エリーゼと離れ離れになったカールは、大阪や広島の収容所を転々とする生活を余儀なくされます。
しかし、彼は困難な状況にも屈せず、収容所内で得意のバウムクーヘンを焼き、仲間たちに振る舞いました。
洋風喫茶店「カフェ・ユーロップ」製菓部主任へ
戦後、カールは解放されましたが当時の日本はインフレが激しく、捕虜たちの生活は困窮していました。そんな中、カールを支えたのが、横浜の食料品店「明治屋」の三代目社長・磯野長蔵氏でした。
磯野氏は、銀座に新しい洋風喫茶店「カフェ・ユーロップ」を開業する計画を進めており、その製菓部主任としてカールを雇用しました。この支援により、カールは家族と再会し、鎌倉で新たな生活を始めました。
1919年(大正8年)、銀座に「カフェ・ユーロップ」がオープン。エリーゼ夫人は接客に尽力し、カールはバウムクーヘンをはじめとする洋菓子作りに専念。彼らの作る洋菓子は、従来の日本のものとは異なり、バタークリームを使用した滑らかな味わいが特徴で、多くの人々を魅了しました。
現在のユーハイムの原点ができる
1922年(大正11年)、契約が終了したカール夫妻は横浜に独立店舗「E・ユーハイム」を開業。しかし翌年の関東大震災で店舗が全焼し、再び全てを失います。
絶望的な状況の中、夫妻は神戸に移り住みました。運命的に再会したロシア人の友人に励まされ、三宮に新店舗を構えることができました。
この店が現在のユーハイムの原点となります。
カール・ユーハイムの逝去
その後も順調に営業を続けましたが第二次世界大戦が勃発。戦争の影響で経済的困難が続く中、カールは健康を害し、療養のために帰国。エリーゼ夫人が後を追いましたが、カールは戦争末期に帰らぬ人となりました。
日本におけるバウムクーヘンの普及
夫人エリーゼは悲しみに暮れる中、息子カール・フランツも戦死するというさらなる不幸に見舞われます。その際、日本ではかつてのスタッフたちがユーハイムの再興に尽力。戦後の1953年(昭和28年)、エリーゼ夫人は日本に再び招かれます。
この出来事は、当時の新聞でも美談として大きく報じられました。こうしてユーハイム夫妻が生み出したバウムクーヘンは、日本の洋菓子文化に深く根付くことになります。
バウムクーヘンは、戦後の日本で独自の発展を遂げました。お中元やお歳暮、結婚式の引き菓子として人気を博し、洋菓子文化の一部として定着。日本独自のアレンジも加えられ、多様な味や形が楽しめるようになりました。
バウムクーヘンの作り方
バウムクーヘンの製法は、棒に生地をかけて回転させながら焼き上げるという特殊な技術を必要とします。
この方法により、一層ごとにしっかりと焼き色がつき、木の年輪のような美しい模様が生まれるのです。
現代のバウムクーヘンは、抹茶やチョコレート風味、さらには健康志向の低糖質タイプなど、幅広いニーズに応える製品が登場しています。
まとめ
バウムクーヘンは、ドイツで生まれた伝統菓子でありながら、日本で独自の発展を遂げました。その背後には、カール・ユーハイム氏とエリーゼ夫人の感動的な物語があります。このお菓子は、今後もその歴史とともに多くの人々に愛され続けることでしょう。