創業100年を迎えるブルボン
ブルボンは、1924年に創業され、今年で創立100周年を迎えました。
創業当時、初代社長の吉田吉造氏は関東大震災の影響で地方に菓子が届かなくなったことをきっかけに、地方にも菓子の量産工場を作ろうと決意し、その第一歩としてビスケットの製造を始めました。
1974年には、今でも多くの人に愛されている「ルマンド」というクレープクッキーが大ヒット。
これを機にブルボンはさらに事業を拡大していきます。
1982年にはチョコレート市場に参入し、1989年には社名とブランド名を「ブルボン」に統一して、さらなる成長を遂げました。
ブルボンはお菓子だけでなく、1995年からはミネラルウォーターの生産も始めました。
この水は、阪神淡路大震災の際に支援物資として多くの人々に届けられました。
ブルボンはお菓子や飲み物など、幅広い商品を提供する企業として成長してきました。
2024年3月期の売上高は1037億1700万円、そのうち菓子類の売上は994億5700万円に達しています。
創業から100年を迎えたブルボンは、これからも高品質で価値ある商品を提供することを目指し、さらなる品質向上に取り組んでいます。
また、環境に配慮した製造や社会貢献活動、働きやすい職場環境の整備にも力を入れ、次世代商品開発やブランドの育成にも積極的です。
ブルボンは「強さの再構築」を掲げ、次の100年に向けたさらなる成長を目指しています。
これからも多くの人々に愛され続ける商品を提供し、社会に貢献する企業として、挑戦を続けていくでしょう。
ブルボンの新工場
新工場の建設は、事業拡大に伴う生産拠点の再編成の一環として始まりました。
新しい第1期工場棟は、鉄骨造の2階建てで、延床面積は約8800平方メートルです。
2016年に新潟県魚沼市の水の郷工業団地内に約6万平方メートルの土地を取得し、新しい工場の建設を決定しました。
まずはチョコレート原液を製造し、各工場に供給することを最優先に考えました。その後、市場のニーズを踏まえて製品を決め、生産ラインを立ち上げました
建設経過
2021年6月には第1期工事がスタートし、2022年4月にチョコレート原液を製造する工場棟、原料保管倉庫、そして雪を使った冷蔵庫「雪室」が完成。11月から本格的に操業を開始しました。
2023年4月には第2期工事も完了し、生産設備の導入後、2024年3月から本稼働に至りました。
最初の工場立ち上げには、新潟県内の既存工場から9名のスタッフが選抜され、他のチョコレート工場で研修を受けることで、スムーズな立ち上げができました。
しかし、第2期工事では外国製の設備の調整やトラブル対応に苦労し、技術的な課題を克服するために多くの時間がかかりました。
一度に多くの従業員を募集して教育するよりも、新潟県内の各工場からメンバーを選抜し、核となる人材を育ててから新たな人を採用していく方が効率的だと判断しました
立地
この新工場は、豪雪地帯である魚沼市に位置しています
「市場のニーズに応えるため、新しい工場が必要」(小林取締役)との判断から、2016年に約6万平方メートルの土地を取得。
この土地は、地盤が安定しており、関東へのアクセスも良いことが決め手でした。
さらに、豊富な地下水を工業用水や雪を溶かすために活用できる点も魅力です。
この地域には、ブルボン以外にも多くの食品メーカーが進出しており、ブルボンは4社目となります。
ブルボンにとって豪雪地帯での工場運営は初めての試みです。
品質と安全性
魚沼工場では、チョコレート菓子だけでなく、他の工場に供給するチョコレート原液も製造しています。
そして、2023年12月に「FSSC22000」という国際的な食品安全認証を取得しました。
この認証は、HACCPやGMP(適正製造規範)を組み込んだ、同社独自の品質保証システム「BQAMS」(Bourbon Quality Assurance Management System)と組み合わせて運用されています。
このシステムで、魚沼工場はチョコレートの安全性を確保しながら、品質向上にも取り組み、安心できる製品を安定して供給しています。
1階
1階では、カカオ豆を焙煎し、胚乳部分(カカオニブ)を分離、カカオマスを作る工程が行われています。
これに他の原料を混ぜ、細かく粉砕して、じっくり練り上げることで、チョコレートの原液を作っています。
この工程は、集中制御室からすべての機械の稼働状況がモニターで管理されており、作業員が複数の業務に取り組める「多能工化」が進んでいます。
また、暑い環境での作業が減り、職場環境の改善につながっています。
第2期工場
完成したチョコレート原液は、すぐに成型工程へと送られ、コンテナに入れて他の工場に運ぶことも可能です。
第2期工場では、モールドにチョコレートを流し込み、型抜きして包装する工程が行われています。
この工場の面積は約3168平方メートルで、1つのラインで5種類の一粒チョコレート「ミニビットアソート(ミルク・ストロベリー・アーモンド・クリスピー・ウエハース)」という一口サイズのチョコレートを製造しています。
新倉庫
この新工場では、太平洋側の倉庫に加えて内陸部にも原料を保管できる倉庫を設けています。
この倉庫は2000平方メートル以上の広さを持ち、十分な容量を誇ります。
これまでブルボンの原料は横浜港近くの倉庫に保管されていました。
新たな倉庫は南海トラフ地震などの自然災害を想定した、リスク分散を図ることも目的とされています。
自動倉庫の導入
包装工程の改善には、初の自動倉庫が導入されました。
自動倉庫は、個包装されたチョコレートを一時的に保管し、必要なタイミングで必要な量だけ自動で取り出して計量・包装を行う仕組みです。
以前は、個包装のチョコレートを1種類ずつコンテナに入れて、人が手作業で計量機に投入していました。
しかし今では、チョコレートが自動倉庫に運ばれ、必要なときに自動で取り出されるため、計量作業が大幅に効率化された上にコンテナを置くスペースも不要になっています。
現在、工場で働く従業員は約50名ですが、これは従来の工場の半分の人数です。
今は2交代制で稼働中ですが、今後の需要次第で新しいラインを増設する計画もあるようです。
雪室
この倉庫の特徴の一つは「雪室」が併設されていることです。
天然の冷気を利用して食品を保存する施設で、温度変化が少なく湿度が高いため、食品の保冷や熟成に適しています。
雪室は、豪雪地帯ならではの自然の冷蔵庫で下記2つの方式が採用されています。
強制循環方式
室内に300トンの雪を貯める「貯雪庫」が設置され、そこで作られた冷気を循環させて「雪室カカオ倉庫」に送り、一部のカカオ豆を低温で熟成させます。
雪室で熟成されたカカオ豆を使うことで、余分な苦みや渋みが取り除かれ、まろやかで食べやすいチョコレートに仕上がります。
ハイカカオチョコレートは一般的に苦みが強いですが、雪室熟成により、弊社が目指すバランスの取れた高品質のチョコレートを作り出せるようになりました
氷室貯蔵方式
魚沼工場では、150トンの雪を貯めた貯雪庫があり、ここは「氷室貯蔵方式」のテストルームとして利用されています。
このテストルームでは、コーヒー豆などさまざまな食品の保存効果を調べており、低温での保存がどのように品質に影響するかを検証しています。
これにより新たな商品開発の準備も着々と進められているとのことです。
小林部長によると、様々な原料を扱う中で、雪室にカカオ豆を入れて熟成させたところ、従来とは異なる風味が生まれたそうです。「この雪室熟成カカオ豆を使って、他にはないチョコレートを作ろうと考えました。自然エネルギーを活用することで、環境にも優しく、保管のための電力消費も少なくて済むという大きなメリットもありました」と小林部長は語ります。
生産しているチョコレート商品
熟成させたカカオ豆は、県内の別の工場で焙煎され、チョコレートの原料として使用されます。
2022年11月には、この雪室で熟成させたカカオ豆を使った「雪室ショコラ」を発売。
低温保存で品質が保たれるだけでなく、揮発性の酸が雪に吸着され、カカオの香りが引き立つのが特徴です。
一般的なハイカカオチョコレートに比べ、渋みや酸味が抑えられ、まろやかな味わいになっています。
さらに、2023年11月には「雪室ショコラアイス」、2024年3月には「雪室研ぎ澄ます珈琲」も発売され、雪室の活用が広がっています。
ブルボンのチョコ製造の強み
ブルボンのチョコレート作りの大きな強みは、カカオ豆の加工からチョコレート製造までを一貫して行えることです。
国内でもこの工程をすべて自社で手掛けているメーカーは限られています。
「カカオ豆から加工することで、自社の商品コンセプトに合った多様なチョコレートを製造できるのが強みです。雪室での熟成という発想も、そうした一貫生産から生まれました」と小林部長は話します。
ブルボンの未来
この土地にはまだ余裕があり、事業拡大に合わせて第3期、第4期の工事も計画中。
将来的にはカカオ豆のロースト工程も魚沼工場で行う考えです。
「目標はナンバーワン品質のチョコレート」と語るのは、30代の若き工場長。
チョコレートはわずかな温度変化で味が変わります。お客様の声に耳を傾け、毎日チョコレートと向き合い、品質を確立していきたいです
ブルボンは品質を最優先にしたものづくりを通じて、消費者の健康にも貢献する「健康増進総合支援企業」を目指しています
100年、いや1000年先まで続く企業集団になるために、全力で取り組んでいるのです。