クリスマスプディングとは|イギリスの『プリン』の意味

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クリスマスプディングとは何か

クリスマスプディングは、イギリスで古くから親しまれている伝統的なクリスマスデザートで、名前に「プディング」と付いていますが、日本で一般的に知られるプリンとはまったく異なるお菓子です。

小麦粉やパン粉、牛脂(スエット)、ドライフルーツ、ナッツ、スパイスをたっぷり混ぜ込んで作り、ブランデーやラム酒などのお酒を加えて蒸しあげるのが特徴で、仕上がりはずっしりと重く濃厚な食感になります。

作った後は数週間から数か月熟成させることで味がなじみ、深いコクが生まれます。

当日は温かく温め、ブランデーを注いで火をつける「フランベ」という演出とともに食卓に登場するのが定番で、イギリスのクリスマスを象徴する存在として知られています。

イギリスでの「プディング」の意味

日本で「プリン」や「プディング」と聞くと、多くの人はカスタードプリンを想像します。

しかし、イギリスでの「プディング」という言葉は、型に入れて蒸して作る料理全般を指します。

この意味には、甘いデザートだけでなく、肉や野菜を使った料理も含まれます。

この言葉の広さを知ることで、なぜクリスマスプディングが日本のプリンとは違う形をしているのかが分かります。

クリスマスプディングの見た目

クリスマスプディングは、まず色が黒に近い濃い茶色をしています。

形は完全な半球状で、ずっしりとした重さがあります。

この黒い色は、使用される黒ビールやダークラム、そして長時間の蒸し調理によるものです。

クリスマスプディングの中身

クリスマスプディングの中には、ぎっしりと材料が詰まっています。

重量感の正体は、中にぎっしりと詰め込まれたドライフルーツとナッツ類です。

生地の中には、レーズン、サルタナ、カレンツといった多くの種類のドライフルーツが使われています。

さらに、クルミなどのナッツ類や、柑橘類の皮も混ぜ込まれます。

クリスマスプディングの基本的な材料

生地に使用する材料

基本的な生地の材料は、生のパン粉、小麦粉、牛の脂肪であるスエット、卵、砂糖です。

スエットは、動物の脂肪を細かく刻んだもので、生地をしっとりとさせます。

風味を加える材料

この生地に、大量のドライフルーツやナッツ類、柑橘類の皮が混ぜられます。

香り付けには、シナモン、ナツメグ、クローブなどの香辛料が使われます。

これらの香辛料が、プディング独特の香りを生み出します。

アルコール類

さらに特徴的なのは、ラム酒、ブランデー、黒ビールといったアルコール類が重要な材料として含まれることです。

これらのアルコールが、プディングの深い味わいを形作ります。

クリスマスプディングを作る時期

クリスマスプディングには、作る時期に伝統的な決まりがあります。

この伝統は、クリスマスを待つ期間と深く関わっています。

「スターアップサンデー」という日

12月25日のクリスマスから5週間前の日曜日を、「スターアップサンデー」と呼びます。

この日にプディング作りを始めるのが伝統です。

「スターアップ」は英語で「かき混ぜる」という意味で、この日に生地をかき混ぜることから名付けられました。

プディング作りの開始日

この日に作り始めるのは、クリスマスまでの期間を家族で大切に過ごすためです。

12月25日から4週間前は、アドベントと呼ばれるキリスト教の宗教的な期間にあたります。

そのさらに1週間前から準備を始めることに意味があります。

クリスマスプディング作りの伝統的な習慣

プディング作りには、宗教的な意味合いを持つ習慣が数多く存在します。

これらの習慣は、単なる調理法を超えた、文化的な背景を持っています。

13種類の材料

まず、使用する材料は必ず13種類でなければなりません。

この数字は、イエス・キリストと12人の使徒の合計人数に由来するとされています。

願いを込める儀式

材料をボウルに入れた後、家族が一人ずつ順番に、願い事を心に込めながら生地をかき混ぜます。

このとき、かき混ぜる方向は東から西へ、つまり時計回りで行われます。

これは、イエスの誕生を祝うために東方から来た三賢者の旅路を象徴しているとされています。

小さな品物を混ぜる習慣

生地を蒸す前に、小さな品物を混ぜ込む伝統もあります。

昔は硬貨、指輪、指ぬき、ボタンなどが使われました。

クリスマス当日にプディングを切り分けたときに、どの品物が当たるかで翌年の運勢を占いました。

硬貨が当たれば金運、指輪なら結婚を意味するとされています。

現代では安全上の理由から、市販品にはこれらの品物は入れられていません。

クリスマスプディングの作り方

クリスマスプディングは、時間をかけてじっくりと作られます。

その製造工程は、単に焼くのではなく、蒸して熟成させるという方法です。

長時間蒸す工程

生地の準備ができたら、陶器製の型に流し込み、蓋をして長時間蒸します。

蒸す時間は最低でも4時間、大きなものでは10時間を超えることもあります。

この長い加熱時間により、アルコールの刺激が和らぎ、材料同士がよく馴染みます。

クリスマスプディングの熟成

蒸し上がったプディングは、すぐに食べずに約1ヶ月間保存します。

この期間中、時々表面にラム酒やブランデーをかけながら熟成させます。

この熟成によって、ドライフルーツの甘みや香りが生地全体に浸透し、より深い味わいになります。

この過程は、チーズやワインの熟成と同じように、時間をかけることで味の深みが生まれます。

クリスマス当日の食べ方

クリスマス当日のクリスマスプディングの食べ方には、特別な演出が伴います。

再び温めて盛り付ける

1ヶ月間熟成させたプディングを、クリスマス当日に再び1時間ほど蒸して温めます。

温まったプディングを皿にひっくり返して盛り付けます。

フランベの演出

温めたブランデーやラム酒をプディングの表面にかけ、火をつけます。

アルコール度数の高いお酒が燃えると、美しい青い炎がプディング全体を包みます。

このフランベの演出は、クリスマスディナーの締めくくりとして行われます。

フランベによってアルコールは飛び、お酒の香りがプディングに残ります。

添えられるソース

火が消えた後、柊の木と実を飾ることがあります。

濃厚なブランデークリームやブランデーバターを添えて食べられます。

この組み合わせが、クリスマスプディングの伝統的な食べ方です。

クリスマスプディングの歴史的な背景

クリスマスプディングの歴史は、15世紀まで遡ることができます。

最初は現在とは全く違う料理でした。

15世紀のプラム・ポタージュ

クリスマスプディングの起源は、15世紀前半の「プラム・ポタージュ」と呼ばれる料理です。

これは、肉を細かく刻んだものにドライフルーツやスパイスを加えた、濃厚なスープ状の料理でした。

ここで使われる「プラム」という言葉は、特定の果物ではなく、レーズンなどのドライフルーツ全般を指す古い表現でした。

この名残から、現在でもクリスマスプディングを「プラム・プディング」と呼ぶことがあります。

19世紀の地位確立

16世紀には、より甘いお粥のような「フィギー・プディング」に発展しました。

19世紀になると、ヴィクトリア女王がクリスマスに豪華な食事をすることを奨励しました。

女王がクリスマスプディングを王室の公式デザートとして採用したことで、イギリス全土でクリスマスに欠かせないものとしての地位を確立しました。

文学作品への登場

1843年にチャールズ・ディケンズが書いた小説「クリスマス・キャロル」にもクリスマスプディングが登場します。

この作品が世界中で読まれることで、クリスマスプディングはイギリスのクリスマス文化を象徴する存在となりました。

クリスマスプディングの現代における状況

現代のイギリスでも、クリスマスプディングは伝統的なデザートとしての地位を保っています。

イギリスでの位置づけ

健康志向の高まりから、より軽いデザートを好む人もいますが、多くの家庭でクリスマスには欠かせません。

家庭で作られることもあれば、デパートやスーパーマーケットで購入することも一般的です。

日本での位置づけ

日本では、クリスマスプディングに触れる機会はまだ少ないです。

しかし、近年ではイギリス料理専門店などで、日本人の味覚に合わせたものが販売されるようになりました。

また、インターネット通販を利用して、本場のプディングを取り寄せることも可能です。

クリスマスプディングの価値

クリスマスプディングは、単なるデザートではありません。

その製造過程から食べ方、そして歴史のすべてに意味が込められています。

プディングは、イギリスの宗教的な背景や歴史の移り変わり、家族の絆を感じさせる文化的な食べ物です。

長時間かけて作られ、熟成されるプディングには、作り手の愛情と伝統が詰まっています。

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