大福とは|発祥起源や縁起が良い理由

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日本の和菓子の中でも、おそらく最も身近で愛されている「大福」。白くてふんわりとした餅に包まれた甘いあんこは、お茶の時間を豊かに彩る特別な存在です。しかし、この親しみやすい和菓子には、意外に深い歴史と文化が込められています。

目次

大福とはどんなお菓子か

大福は、小豆でできたあんこを餅で包んだ和菓子のことを指します。その大きな特徴は、餅の量と同じかそれ以上のたっぷりのあんこが入っていることです。また、表面には、手につかないようにコーンスターチなどの白い粉がまぶされているのも特徴の一つです。

大福の歴史

大福の歴史は、室町時代から江戸時代にかけて大きく変化しました。

大福の原型「うずら餅」

大福の歴史を辿ると、室町時代後期にまで遡ります。当時は「うずら餅」と呼ばれる和菓子大福の起源とされています。白い餅が丸くふっくらとした形で、まるで鶉の卵に似ていることからこの名前が付けられました。ただし、砂糖が非常に貴重だった時代のため、中身は小豆をで練ったあんこが使われており、甘味はほとんどありませんでした。

江戸時代に「大腹餅」へ

江戸時代に入ると、大福は大きな転機を迎えます。1771年(明和8年)、生活に困っていた江戸の未亡人「おたよさん」が、砂糖あんこを入れた小ぶりの餅菓子を考案し、売り歩き始めました。このお菓子は、もともと存在していた「腹太餅(はらふともち)」という大きなあんこ餅を改良したものです。

腹太餅の改良

腹太餅は、その名の通り、ひとつ食べるとお腹がいっぱいになるほど大きな餅でした。おたよさんは、この形を小さくして食べやすくし、中身をあんこから砂糖あんこに変えたところ、大衆的なお菓子として大成功を収めました。

「大福」という名前の由来

甘くなったこの餅菓子は、やがて「大腹餅(だいふくもち)」と呼ばれるようになります。そして、現在使われている「大福」という名称は、縁起の良い「福」という漢字に置き換えたことが由来とされています。このようなより良い意味を持つ漢字に置き換える習慣を「佳字(けいじ)」と呼びます。

縁起の良い食べ物としての側面

大福は、その名前からもわかるように、縁起が良い食べ物としても親しまれています。

大きな福」と書くこの名前は、見るからに幸運を呼び込みそうな響きを持っています。また、大福の前身が「お多福餅」であったという説もあります。「お多福」は、「おかめ」とも呼ばれる女性のお面で、「福を呼ぶ面相」として日本の伝統的な存在です。

大福の製法

大福の基本的な作り方は、蒸したもち米をついて作った餅であんこを包むというシンプルなものです。しかし、このシンプルさゆえに、素材の良さと職人の技術が如実に表れます。餅のもちもちとした食感と、なめらかで上品な甘さのあんことのバランスは、まさに日本の和菓子文化の粋を集めたものといえるでしょう。

多様な大福の種類

時代とともに、大福は様々なバリエーションが生まれ、多くの人々に愛されるようになりました。

豆大福

最も親しまれているのが「大福」です。餅に赤えんどう豆を練り込んだもので、豆にほんのりを効かせることで、甘いあんことの絶妙なバランスを生み出しています。もともとは節分の福豆を使用した餅がルーツとされており、厄除けの意味も込められています。

草大福(よもぎ大福)

大福」または「よもぎ大福」は、餅にヨモギを練り込んだものです。ヨモギは平安時代から薬草や食用として使われてきました。やかな香りは心地よく、ビタミンやミネラルが豊富に含まれており、香りにはリラックス効果もあります。

塩あんびん

あんびん」は、砂糖を用いずにで味付けした大福です。江戸時代中期から伝わる埼玉北部の郷土料理で、あんこのうま味をで引き出すのが狙いです。そのまま食べるほかに、焼いて砂糖醤油で食べたり、お雑煮に入れたりもします。

大福の進化系

昭和後期以降、大福はさらに多様な進化を遂げ、新しいブームを巻き起こしました。

いちご大福

昭和後期の1980年代に登場し、大きなブームとなったのが「いちご大福」です。甘酸っぱいいちごが丸ごと入った斬新な大福は、従来の和菓子の概念を覆し、若い世代にも広く受け入れられました。

フルーツ大福と求肥

現在では、いちごだけでなく、オレンジ、キウイフルーツ、ピーチ、メロンなど、様々なフルーツを使った「フルーツ大福」が和菓子業界を席巻しています。フルーツ大福は、従来の餅ではなく、「求肥(ぎゅうひ)」という薄い生地で包まれていることが多いです。求肥は白玉粉などに砂糖を加えて練り上げたもので、柔らかいためフルーツを丸ごと包むのに適しています。

現代の大福バリエーション

いちご大福以降も、大福の進化は止まりません。クリーム大福やチーズ大福など、和洋折衷の新しい味が次々と生まれています。伝統的な和菓子でありながら、時代に合わせて変化し続ける大福は、まさに日本の食文化の柔軟性と創造性を象徴する存在です。

大福の楽しみ方

大福は、そのまま食べるだけでなく、温めたり焼いたりすることで、また違った美味しさを楽しめます。

温めて食べる大福

大福は時間が経つと硬くなってしまいます。昔は火鉢で温めて柔らかくして食べていました。焼くと香ばしくなるため、昭和に入っても焼いて食べるのが当たり前でした。硬くなってしまった大福は、軽く焼いてから食べると、また違った美味しさを楽しむことができます。

季節を楽しむ大福

大福は、季節の行事と結びついて楽しまれています。

立春大福

2月4日頃の立春の時期には「立春大福」が販売されます。これは、厄除けのおまじないである「立春大吉」のお札に由来するとも言われており、春の訪れを喜ぶ縁起物とされています。鬼を祓うと言われる黒大豆を使ったものも多く見られます。

かぼちゃ大福

冬至には「かぼちゃ大福」もあります。冬至は一年で最も昼の時間が短い日で、翌日から運気が上がるとされています。「」のつく食べ物を食べると運気が上がるという言い伝えから、かぼちゃ(南瓜/なんきん)を使った大福は、縁起の良い食べ物として親しまれています。

まとめ

大福は、そのシンプルさにこそ魅力があります。やわらかくてきめ細かい餅の中に、どっしりとしたあんこがたっぷり入っており、一口食べると幸せな気持ちになれる、まさに「大きな福」をもたらしてくれる和菓子なのです。その一つ一つに込められた歴史と文化を知ることで、いつもの大福がより特別な存在に感じられるのではないでしょうか。

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