ドンパッチとは
ドンパッチは、1979年に味の素ゼネラルフーヅ(現・味の素AGF)から登場した、ユニークな食感で一世を風靡したキャンディーです。口に含むとパチパチと音を立てながら弾ける驚きの体験が特徴で、多くの子どもたちの心をつかみました。2000年に製造・販売が終了したものの、今なお多くの人々の記憶に残り、懐かしむ声が絶えない伝説のお菓子として語り継がれています。
ドンパッチの特徴
ドンパッチは、アメリカ生まれの炭酸キャンディーを日本向けにアレンジした商品です。1979年に販売が始まり、2000年までの約20年間、多くの子どもたちに親しまれました。最大の特徴は、口に入れるとパチパチと弾ける感覚。この音と刺激が楽しく、ただ甘いだけの飴とは一線を画していました。
口の中でキャンディーが弾ける刺激は、ほかのお菓子にはないユニークな体験となり、子供から大人まで幅広い層に受け入れられ、大ヒット商品となりました。
当時の価格は1袋80円程度。子どものお小遣いでも買える手軽さも人気の理由でした。味はレモン、オレンジ、コーラの3種類があり、とくにオレンジ味とコーラ味が圧倒的な人気を誇っていました。パッケージはポップな色合いで、駄菓子屋の棚に並ぶと目を引くデザインでした。
パチパチする仕組み
ドンパッチの最大の魅力は、口に入れた瞬間に広がるパチパチとした刺激。この正体は、キャンディーの中に閉じ込められた二酸化炭素ガスです。製造時に高圧下で炭酸ガスを飴に封入することで、常温では安定していても、口の中の水分(唾液)で飴が溶け始めるとガスが一気に放出され、発泡現象が起こります。
- 砂糖
- 乳糖
- コーンシロップ
- 香料
- 二酸化炭素(炭酸ガス)
- 合成着色料
このシンプルな材料から、まったく新しい体験が生み出されるのですから驚きです。
もちろん、火薬などの危険物は一切使われておらず、完全に安全な食品として提供されていました。
ドンパッチの発祥起源
ドンパッチの原型は、アメリカのゼネラルフーヅ社が開発した「POP ROCKS(ポップロックス)」という商品です。
そもそもこのキャンディーは、開発の過程で偶然生まれた商品でした。当初、炭酸入りジュースの開発中に、意図せずして飴の中に二酸化炭素ガスが閉じ込められる現象が発生しました。失敗作とされていた試作品が、開発者の目に留まり、その独特な食感を活かして新しいお菓子として商品化。これが刺激的な食感を持つお菓子の誕生へとつながったのです。
アメリカでは1970年代に爆発的ヒットを記録。その後、日本市場向けに味の素ゼネラルフーヅがライセンス契約を結び、「ドンパッチ」として販売されることになります。日本でのネーミングは、口の中での弾ける感覚や、それに対する驚きを表現したものです。
ドンパッチの人気
ドンパッチは発売直後から非常に人気を博しました。テレビCMでは当時の人気バンド「爆風スランプ」が出演し、商品の認知度を一気に高めました。
そのパチパチと弾ける刺激的な食感は強烈なインパクトを与え、特に子供たちの間で話題に。そしてあまりの人気により店頭で品切れが頻発。親たちは、子供の要望に応えるためにドンパッチを探し回ることもあり、一時は入手困難な状態になるほどでした。
強烈なパチパチ感を活かした遊びも子どもたちの間で流行し、友達と一袋を回しながら食べたり、一気に全量を口に入れて“根性試し”のように盛り上がることも。口に入れた瞬間のリアクションを競う「リアクションゲーム」のような使い方までされていたのです。
ドンパッチへの安全面の指摘
ドンパッチの強烈な刺激は、小さな子供には刺激が強すぎるとして、一部では敬遠されることもありました。特に幼児にとっては飲み込みづらいことから、安全面での懸念が指摘されることもありました。
さらに人気が高まるにつれ、根拠のない噂も広がりました。「ドンパッチを食べすぎてお腹が破裂した」「口の中で爆発して火傷した」など、都市伝説のような話が子どもたちの間でまことしやかに語られました。しかし、実際にこれらのような事故が起きたという正式な報告は一切ありません。
アメリカ本国では一時期、誤解を払拭するためにゼネラルフーヅ社が広告を出して安全性を訴える事態にもなりました。日本でも厚生労働省や消費者庁などから警告が出された例はなく、あくまで噂が一人歩きした結果と考えられています。
ドンパッチの製造終了
2000年、ドンパッチは惜しまれつつ販売を終了しました。具体的な理由は公表されていませんが、人気のピークを過ぎたことや製造コスト、安全性への配慮などが影響していると考えられます。
現在でも楽しめる代替商品
ただし、ドンパッチの影響はその後の“弾けるお菓子”ブームに引き継がれました。つまり、ドンパッチの成功は後の日本のお菓子開発にも大きな影響を与えています。独創的な食感を持つ商品が次々と生み出され、消費者へ新しい体験を提供することも重要視されるようになったのです。
たとえば、明治産業の「パチパチパニック」や、弾けるガム「ガムパッチ」、綿あめと融合させた「わたパチ」などが登場し、新たな定番商品として定着しています。
パチパチパニックは炭酸ガスを封入した弾けるキャンディーとラムネ菓子を組み合わせたもので、味はコーラ、グレープ、ソーダの3種類。通販サイトやスーパー、コンビニなどで販売されており、20袋で1,000円前後と手頃な価格帯です。ドンパッチに親しんだ世代にもおすすめです。
ドンパッチがもたらした影響
ドンパッチは、ただの駄菓子にとどまらず、日本のお菓子文化における重要な存在です。それまで味や見た目が重視されていた中、「食感」や「驚き」といった五感に訴える体験型の商品が脚光を浴びるきっかけとなりました。
さらに、その存在はポップカルチャーにも影響を与えています。たとえば、人気漫画『ボボボーボ・ボーボボ』に登場する「首領パッチ(ドンパッチ)」は、名前も姿もまさにあのドンパッチのオマージュ。こうしたキャラクター化は、当時のお菓子がどれだけ強い印象を残したかを物語っています。
まとめ
ドンパッチは、味の素ゼネラルフーヅが販売していた画期的なキャンディーであり、パチパチと弾ける独特の食感で多くの人々を魅了しました。その誕生は偶然の産物でしたが、結果的に日本のお菓子市場に大きなインパクトを与えました。現在は製造されていませんが、その刺激的な体験と革新的なアイデアは、今でも語り継がれています。復活を望む声が多く、今後もその存在は多くの人の記憶に残り続けるでしょう。