森永製菓の「おかしプリント」とはなんですか?【活用事例】
森永製菓の「おかしプリント」
イベントで配られるノベルティーグッズが、見慣れた商品のパッケージであれば、受け取った人は安心感を覚えることがあります。
しかし同時に、そのパッケージに通常とは違う文字やデザインが施されていたら、思わず二度見してしまうかもしれません。
森永製菓が提供している「おかしプリント」というサービスは、まさにこの効果を狙ったものです。
このサービスは、企業が親しみやすい菓子を使って、独自のデザインを施したノベルティーを制作し、企業のメッセージを効果的に伝えることを可能にしています。
ノベルティーグッズとは
ノベルティーグッズの定義
ノベルティーとは、企業が販促活動やイベント、周年記念などの際に、顧客や来場者に無料で配布する記念品のことを指します。
企業名やロゴが入った文房具、カレンダー、エコバッグなどが一般的なノベルティーとして知られています。
近年では、食品を使ったノベルティーも増えており、親しみやすさや消費されるという特性から、選択肢の一つとなっています。
ノベルティーグッズの目的
ノベルティーグッズを配布する主な目的は、企業の知名度向上やブランドイメージの浸透です。
受け取った人が日常的に使用したり消費したりすることで、企業名やメッセージを記憶に残す効果が期待されます。
ノベルティーとして菓子を選ぶ意義
菓子をノベルティーとして選ぶことは、受け取った人に親しみやすさや喜びを直接伝える効果があります。
特に森永製菓の市販品のように広く認知された菓子は、受け取った人が品質に対して既に信頼感を持っているため、ノベルティーとしても安心して渡すことができます。
菓子は消費されるため、受け取った後に捨てられにくく、短い期間で人々の手元からなくなるという特性があります。
この特性は、メッセージを確実に伝えつつ、企業やイベントの鮮度の高い情報を伝えるのに適しています。
森永製菓のおかしプリントの仕組みとサービスの内容
おかしプリントは、森永製菓が既に市販している菓子のパッケージに、企業が独自のデザインを印刷できるサービスです。
このサービスを利用すると、企業は自社のメッセージやイベント名などを盛り込んだオリジナルパッケージの菓子を、ノベルティーとして配布できます。
重要なのは、中身の菓子そのものは市販品と全く同じという点です。
変わるのはあくまでパッケージのデザインだけなので、品質に対する信頼感は保たれます。
企業は安心感のある既存の菓子を利用しながら、パッケージデザインという視覚的な要素を通じて独自のメッセージを発信できます。
森永製菓が定めるオリジナルデザインの対象となる菓子
オリジナルデザインの対象となる菓子は、現在8品目が用意されています。上記は5種類なのでこれ以外にも3品目が用意されています。
これらの広く認知された商品をノベルティーとして使うことで、受け取った人に対して親しみやすさを感じさせることができます。
ただし「森永ミルクキャラメル」と「小枝」については、おかしプリント用に外箱のサイズが既存商品とは変更されています。
これは、ノベルティーとしての配布のしやすさや、デザインを印刷する工程に適応させるためであると考えられます。
森永製菓が達成した事業実績
このサービスが始まったのは2016年のことでした。
当時、森永製菓は新規事業としてこの取り組みをスタートさせました。
それから約9年が経過した2025年までに、累計で7000社を超える企業がこのサービスを導入しています。
出荷されたセット数は1000万を超えており、多くの企業やイベントで利用が広まっていることがわかります。
森永製菓が掲げる売り上げ目標
売り上げも着実に伸びており、具体的には、2019年度と比較して2024年度の売り上げは約2.1倍になりました。
森永製菓は2027年度には2024年度の2倍増という目標を掲げ、事業の拡大を目指しています。
この目標達成に向けて、今後も商品のラインアップを増やし、サービスの認知度を高めていく方針です。
企業による具体的な活用事例の紹介
実際にどのような企業がこのサービスを活用しているのか、具体的な事例を紹介します。
神戸製鋼所の活用例|親しみやすさアップ
神戸製鋼所は「CO₂削減チュウ」という文字をデザインした「ハイチュウ」を作成しました。
これを企業向けの広報ツールとして、また自社工場での住民向けイベントで配布しました。
受け取った人からは「面白い」「これは忘れない」といった反応があったといいます。
鉄鋼メーカーという硬質なイメージの企業が、親しみやすい菓子に駄じゃれを組み合わせたことで、受け取った人の印象に残りやすくなった事例です。
住友建機の活用例|競合との差別化
建設機械メーカーの住友建機は、展示会や営業活動の場で建設機械のイラストを配した「ハイチュウ」や「プリングルズ」を使いました。
この企業では、ノベルティーで他社との違いを打ち出したいという考えがありました。
おかしプリントはデザインの自由度が高く、かつ手頃な価格で提供できることが採用の理由でした。
岳南建設の活用例|採用応募の増加
建設会社の岳南建設は、高校や大学での企業説明会という場面でこのサービスを活用しました。
「ガクナンケンセチュウ」という駄じゃれをデザインした「ハイチュウ」を学生たちに配布したのです。
この会社では過去に雑貨や文房具などのノベルティーも試していましたが、「ハイチュウ」が最も好評だったとのことです。
学生にとって馴染み深い菓子を用いることで、企業の親しみやすさを伝えることができました。
横浜マリノスの活用例|お客様の喜びアップ
サッカーチームの横浜マリノスは、VIP向けイベントで「日産スタジアムで夏休みチュウ」とデザインした「ハイチュウ」を提供しました。
横浜マリノスにとって、ノベルティーとして食品を採用したのはこれが初めてでしたが、大人も子どもも喜んだそうです。
この事例では、発注できる最小の数量が少なかったことも採用の決め手となりました。
森永製菓が定める最小ロット
おかしプリントでは、300個から発注が可能です。
一般的な商業印刷では、小ロットでの対応は難しく、少量の発注を受け付けてもらえても単価が非常に高くなってしまう傾向があります。
しかし企業がイベントなどで配布するノベルティーの数量は、そこまで大量ではないことも多いのが実情です。
300個という最小ロットは、中小規模のイベントや特定の顧客層向けの配布にちょうど良い数量といえます。
森永製菓が設定する納期
デザインが決まってから納品されるまでの期間は、最短で約3週間です。
企業のイベントや販促活動には準備期間があり、あまりに納期が長いと計画が立てにくくなりますが、3週間という期間は比較的急ぎの案件にも対応できる速さであると言えます。
森永製菓が実現したデザインの自由度
森永製菓はクライアント企業に対して、デザイン用のテンプレートをダウンロードできる形で提供しています。
テンプレートとは、デザインの雛形(ひながた)のことで、これを使えばどこに文字を配置できるか、どのような色を使えるかなどが分かります。
「ハイチュウ」の場合は、専用のフォントも用意されています。
森永製菓が提供するデザイン作成の利用しやすさ
企業の担当者は、テンプレートとフォントを使って、自分たちで言葉を考え、色を選び、レイアウトを決めます。
「創業100チュウ年!」「CO₂削減チュウ」「ガクナンケンセチュウ」「日産スタジアムで夏休みチュウ」といった駄じゃれの文言も、すべてクライアント企業自身が考えたものです。
デザインデータは「イラストレーター」という専門的なデザインソフトで作成できますが、多くのビジネスパーソンが使い慣れている「パワーポイント」でも作成できるようになっています。
これにより、デザインの専門知識がない担当者でも、自分でオリジナルパッケージを作ることができます。
子どもの頃から食べていた「ハイチュウ」のパッケージを自分でデザインできたことを喜んだ担当者もいたというエピソードもあります。
森永製菓が当初直面した課題
当初の大きな課題は、小ロットでの印刷に対応してくれる印刷会社を見つけることでした。
市販されている菓子の生産規模は数十万個という単位ですが、おかしプリントで想定していたのは、当時は最少10個からという小さな規模でした。
森永製菓の既存の取引先である印刷会社では、このような少量の発注は受け付けていませんでした。
仮に受け付けてもらえたとしても、設備や人件費を考えると、ビジネスとして成り立たないほど高い単価になってしまうため、事業化の障壁となっていました。
森永製菓による課題解決
この問題を解決したのは、あるイベントで出会った名刺専門店でした。
名刺専門店は、少量単位かつ短納期の印刷に対応するノウハウを持っていたため、森永製菓はこの名刺専門店と契約を結びました。
おかしプリントは、これにより小ロットの要望にも応えられるサービスとしてスタートすることができました。
現在では名刺専門店ではなく、印刷会社に依頼する体制になっています。
サービスが軌道に乗り、発注量が増えたことで、印刷会社との取引が可能になったと考えられます。
森永製菓の今後の展望
森永製菓は、このサービスを自社のウェブサイトで直接受注するルートと、パートナー企業を経由して受注するルートの両方を持っています。
これにより、より多くの企業にサービスを届けることができる仕組みとなっています。
森永製菓でおかしプリント事業を担当する大森貴裕氏は、同社は安心・安全という森永製菓のブランド力を生かしながら、今後は商品のラインアップも増やし、おかしプリントの認知度を高めることで、ノベルティー市場を開拓していきたいと考えているそうです。
既に7000社以上が利用し、1000万セット以上が出荷されているこのサービスは、企業のノベルティーという分野で一つの選択肢として定着しつつあります。