日本の洋菓子界において独特の存在感を放つゴーフル。その薄くサクッとした食感とまろやかなクリームの組み合わせは、世代を超えて愛され続けています。ゴーフルは単なるお菓子ではなく、日本の菓子文化の中で和と洋の融合を象徴する存在として発展してきました。この記事では、ゴーフルの歴史から特徴、そして現在のバリエーションまで詳しく解説します。
ゴーフルとは
ゴーフルは、フランス語の「gaufre」に由来する洋菓子です。本来フランスでは凹凸模様のついた平たい菓子を指します。日本では、直径約15cm、厚さ約1mmの薄い円形のせんべい状の生地に、バニラ、チョコレート、ストロベリーなどのクリームを挟んだ焼き菓子として親しまれています。「浮き出し模様を付ける」という意味のフランス語「gaufrer」が名前の由来となっており、日本独自の進化を遂げた洋菓子と言えるでしょう。
ゴーフルの魅力
サクサクとした食べ心地
ゴーフル最大の魅力は、軽やかでサクサクとした食感です。その食感は、生地に使われる小麦粉や卵、砂糖のバランスによって実現されています。
やさしい味わい
生地の間にはバニラやチョコレート、ストロベリーなどの風味豊かなクリームがサンドされており、甘さの中にもやさしさを感じる味わいが特徴です。口の中でほどけるように広がる甘さが、世代を問わず親しまれてきた理由と言えるでしょう。
贈り物としての品格
贈答品として親しまれてきた背景もあり、美しい缶や箱に個包装されて販売されるのも特徴です。特別な日の贈り物や手土産として選ばれることも多く、日本の菓子文化の中で確固たる地位を築いています。
ゴーフルの歴史
発祥と起源
ゴーフルの日本での誕生は1920年代に遡ります。大正15年(1926年)頃、洋行帰りのある人物がフランスの焼菓子を持ち帰り、「日本でもつくってみてはどうか」と提案したことが始まりとされています。この提案を受けて、当時の和洋菓子の技術者たちが試作研究に取り組みました。
彼らはただフランスの焼き菓子を模倣するのではなく、日本人の嗜好に合わせた新しい菓子の開発を目指しました。フランス製の長所を活かしつつ、和菓子の技術も取り入れた独自の製法を模索した結果、昭和2年(1927年)に初めて販売されるに至りました。
発展と改良
発売当初のゴーフルの製法は現在とかなり異なっていました。初期のゴーフルは、神戸名物の「大瓦せんべい」と同様の焼き方で作られていました。直径約18.2cmの型を使い、木炭を主燃料とした火床で一枚ずつ表裏を返しながら焼いていました。焼き上がったせんべいに手作業でクリームを挟んで完成させるという、非常に手間のかかる製法でした。
この製法では一日の生産量はわずか800枚程度にとどまり、当時の価格は1枚8銭でした。当時の物価と比較すると、浴用石鹸1個が10銭、キャラメル1箱が5銭、ハヤシライスが25銭という時代のことです。
戦時中の中断と戦後の再開
独特の食感と香りを持つゴーフルは、発売当初は主に進物用として利用される程度で、一般に広く普及するには時間がかかりました。数年を経てようやく販売量が増加し始めた矢先、第二次世界大戦による原料統制のため、製造を中止せざるを得なくなりました。
戦後、ゴーフルの生産が再開されたのは昭和26年(1951年)のことです。原料の調達が可能になったことで製造が再開され、その後は品質向上への努力や積極的な広告活動によって知名度が高まり、販売実績も順調に伸びていきました。
商標登録と保護
ゴーフルの知名度が高まるにつれ、全国各地で類似品が出回るようになりました。品質保護と商品の信頼性維持のため、神戸凮月堂は昭和27年(1952年)に特許庁へ「ゴーフルの商標と意匠の登録」を出願し、昭和28年(1953年)には商標権を取得しました。
凮月堂とゴーフル
ゴーフルと言えば「凮月堂」という名前が強く結びついていますが、実は「凮月堂」には複数の会社が存在します。
これらは全て大坂屋(後に凮月堂総本店)をルーツとしています。
- 米津凮月堂
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明治5年(1872年)に総本店の番頭が独立してまず米津凮月堂を開きます。
- 東京凮月堂
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米津凮月堂が後に銀座に本拠を移して東京凮月堂となりました。
- 神戸凮月堂
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米津凮月堂で徒弟奉公した吉川市三が明治30年(1897年)に暖簾分けを受けて神戸凮月堂を創業。
- 上野凮月堂
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凮月堂総本店の創業家の一人が明治38年(1905年)に上野に上野凮月堂を開きました。
このように、のれん分けによって複数の凮月堂が独立した会社として存在するようになりました。
現在、ゴーフルを販売している主な会社は「東京凮月堂」「上野凮月堂」「神戸凮月堂」の3社です。
ゴーフル発祥の説
凮月堂のゴーフル発売の起源については、「東京発祥説」と「関西発祥説」の二つの説があります。
東京発祥説
東京発祥説では、昭和初期に「カルルス煎餅」という薄焼き煎餅をヒントに開発されたとされています。上野凮月堂によれば、このカルルス煎餅は明治時代から凮月堂一門で販売されていた商品で、ゴーフル煎餅に酷似した形状の素焼き煎餅でした。昭和初期、南鍋町米津凮月堂の工場では和菓子工場と洋菓子工場が共に存在し、職人たちの試行錯誤により、粉の配合やアメリカ製ショートニングをクリームに使用するなどの工夫を経て、現在のゴーフルが完成し、昭和4年(1929年)に発売されたとされています。
関西発祥説
関西発祥説では、大正末期から昭和初期にかけて、北浜凮月堂において開発されたとされています。神戸凮月堂の記録によれば、大正15年(1926年)頃にフランスの焼き菓子をモデルとして開発が進められ、昭和2年(1927年)に米津凮月堂、北浜凮月堂、神戸凮月堂で同時に発売されたとされています。
3大凮月堂のゴーフル比較
上野凮月堂のゴーフル
上野凮月堂のゴーフルは、直径14.8cm、厚み1.1mmと、他社と比較してやや厚みがあるのが特徴です。
クリームには低脂肪乳が使用されており、せんべいは甘さの中にほんのりとした塩味も感じられ、ツルツルとした表面とザクザクとした食感を持ちます。全体としては、せんべいの味わいが主役となっている印象です。
パッケージも特徴的で、ギラギラとした華やかなデザインの缶を採用しています。9枚入りの商品では、全て個包装されています。
東京凮月堂のゴーフル
東京凮月堂のゴーフルは、直径15cm、厚み1mmで、3種の中で最も重量があります(約28g)。
クリームには牛乳が使用され、さわやかな甘さが特徴です。せんべいはザラザラとした表面を持ち、シャクシャクとした食感があります。全体としては、クリームの風味が前面に出ている印象です。
パッケージはエレガントなデザインで、缶の裏側には独自の型押しがあり、洗練された印象を与えます。8枚入りの商品構成となっており、他社より1枚少ないですが、乾燥剤と緩衝材が入っているのが特徴です。
神戸凮月堂のゴーフル
神戸凮月堂のゴーフルは、直径14.8cm、厚み1mmで、クリームには脱脂乳が使用されています。
クリームはもったりとした食感で甘みが強く、せんべいはザラザラとした表面を持ち、バリバリとした食感が特徴です。せんべいとクリームのバランスが良く、全体として調和のとれた味わいを楽しめます。
パッケージはレトロで可愛らしいデザインで、3枚1パックで全9枚入りという独自の包装形態を採用しています。
ゴーフルの製造方法
材料と製法
ゴーフルは和菓子の技術を取り入れた洋菓子です。主な材料は小麦粉、砂糖、牛乳、バターなど。
これらを和菓子のせんべいを焼く技術を活かして直径15cm、厚さ1mm程度の円形に焼き上げます。その後、薄く延ばしたクリームを2枚のせんべいで挟んで完成させます。
現代の製造方法は発売当初とは大きく異なり、効率的な生産が可能になっています。しかし、基本的な製法の考え方は変わらず、和菓子の技術と洋菓子の風味を融合させる独自の方法が守られています。
味と食感の特徴
ゴーフルの魅力は、そのサクサクした食感と口の中でほどける甘さのバランスにあります。
せんべい部分はさっくりとして軽く、噛むとザクッと心地よい音を立てます。クリームは程よい甘さで、せんべいとの相性が絶妙です。
一般的にクリームの種類は、バニラ、チョコレート、ストロベリーの3種類が主流ですが、メーカーによって配合や風味に微妙な違いがあり、それぞれ独自の味わいを持っています。
パッケージと販売形態
ゴーフルは通常、個包装されたものが紙箱や缶に入れられて販売されています。
特に贈答用としては、四角い缶や浅底の丸い鉄製の缶に入れられたものが人気です。
各メーカーによってパッケージのデザインや形状には違いがあり、それぞれのブランドイメージを反映しています。
これらのパッケージも、ゴーフルの魅力の一部となっています。
ゴーフレットとは
ゴーフレットはフランス語の「gaufrette」(小さいゴーフル)という意味で、文字通り小型のゴーフルを指します。
直径約7cmほどの小型のゴーフルのほか、葉巻状に巻いたゴーフルの中にクリームやジャムを詰めたものを指す場合もあります。
ゴーフレットも、ゴーフルと同様に各メーカーが製造販売しており、それぞれ独自の特徴を持っています。小さいサイズながら、ゴーフルと同様の食感と味わいを楽しむことができます。
ゴーフルとの違い
どちらも言葉の意味、製品の内容としては正確に定められていません。
しかし市販で出回っている商品を見ると、ゴーフレットとゴーフルによく見られる最大の違いはそのサイズです。
ゴーフルが直径15cm前後であるのに対し、ゴーフレットは約半分の7cm程度です。
このサイズの違いにより、一口で食べやすく、よりカジュアルに楽しめるのがゴーフレットの特徴です。
また、形状にも違いがあり、平たいタイプだけでなく、巻き型のゴーフレットも存在します。
巻き型は中にクリームやジャムが詰められており、食感や味わいの変化を楽しめます。
ゴーフルの楽しみ方
ゴーフルは、薄く焼き上げたせんべい状の生地とクリームの組み合わせが特徴の洋菓子です。そのため、食べ方によって異なる食感や風味を楽しむことができます。ひと口に「食べる」といっても、工夫次第で味わい方が広がるのが魅力です。自分だけの楽しみ方を探してみるのも面白いですよ。
そのままクリームと一緒に楽しむ
最もシンプルで王道の食べ方は、何もせずにゴーフルを丸ごと食べる方法です。薄く焼かれたせんべい生地と、中に挟まれたクリームが絶妙に調和し、サクサクとした食感とほどよい甘みを同時に楽しめます。バニラ、チョコレート、ストロベリーなど、クリームのフレーバーごとに味の個性があり、食べ比べをするのもおすすめです。生地の香ばしさとクリームのなめらかさが一体となったこの食べ方は、ゴーフル本来の魅力を存分に味わえるスタイルと言えるでしょう。
クリームをダイレクトに味わう
ゴーフルを少しずらして、あえて中のクリームを見せながら食べる方法も人気です。この食べ方では、クリームの香りや口あたりをよりダイレクトに感じられます。せんべい生地を少しスライドさせて食べることで、味の変化を細かく楽しめるのが特徴です。甘さや食感のバランスを自分の好みに調整できるため、「一口ごとに味わいを変えたい」と感じる方に向いています。見た目にも楽しく、子どもにも喜ばれる食べ方です。
せんべいとクリームを分けて楽しむ
中には、ゴーフルを丁寧に開いて、せんべい部分とクリーム部分を分けて食べる人もいます。この方法では、それぞれの素材が持つ味や食感をじっくりと味わうことができます。せんべいだけを先に楽しみ、後からクリームだけを味わうことで、組み合わせでは気づかなかった風味の奥深さに気づくこともあります。素材への関心が高い方や、甘さのバランスにこだわりたい方におすすめの食べ方です。
飲み物との相性を楽しむ
ゴーフルは、飲み物と一緒に食べることで、さらに美味しさが引き立ちます。中でもおすすめなのが、紅茶やコーヒーなどの温かい飲み物です。ゴーフルのほんのりとした甘さは、紅茶の上品な香りや、コーヒーのほろ苦さとよく合います。特にブラックコーヒーとの組み合わせは、甘みと苦味のコントラストが際立ち、大人向けの贅沢なティータイムを演出してくれます。ゆったりとした時間の中で、飲み物と一緒に楽しむことで、ゴーフルの魅力が一層深まります。
冷やして食べる、温めて食べるアレンジも
意外な楽しみ方として、ゴーフルを冷蔵庫で軽く冷やしてから食べる方法もあります。クリームが引き締まり、ひんやりとした口当たりが楽しめるため、夏の暑い時期にぴったりです。逆に、せんべい部分をほんの少し温めてから食べると、生地の香ばしさが際立ち、クリームとの温度差によって新しい味わいが生まれます。レンジ加熱は避け、オーブントースターで軽く温めるのがポイントです。
特別なひとときに、おしゃれに盛り付けて
ゴーフルをただ袋から取り出すだけでなく、皿に並べたり、果物やナッツと一緒に盛りつけることで、見た目にも華やかなデザートになります。クリームの色合いに合わせて器を選んだり、ミントの葉を添えると、まるでカフェのスイーツのような一皿が完成します。友人を招いたお茶会や、家族との休日のおやつタイムなど、特別なシーンにぴったりの楽しみ方です。
最適な食べ方
ゴーフルの最も基本的な食べ方は、そのままクリームと共に味わうことです。しかし、せんべいをずらしてクリームを露出させて食べたり、せんべいとクリームを分けて別々に味わったりする人もいます。どの食べ方も、ゴーフル独自の食感と味わいを楽しむことができます。
また、紅茶やコーヒーなどの温かい飲み物と一緒に楽しむと、さらに風味が引き立ちます。特に、ほんのり甘いゴーフルは苦みのあるコーヒーとの相性が抜群です。
ゴーフルの保存方法と賞味期限
ゴーフルは湿気に弱いお菓子です。開封後は、なるべく早めに食べきることをおすすめします。
保存する場合は、元の包装に戻して密閉容器に入れるか、乾燥剤と一緒に保存すると良いでしょう。
未開封の場合でも、直射日光や高温多湿を避け、涼しい場所で保管することが大切です。
賞味期限は一般的に製造日から数ヶ月程度ですが、メーカーによって異なりますので、パッケージの表示を確認するようにしましょう。
まとめ
ゴーフルは、フランスの焼き菓子を起源としながらも、日本の和菓子技術を融合させることで生まれた独自の洋菓子です。大正末期から昭和初期にかけて誕生し、戦時中の中断を経て、戦後再び製造が再開されました。現在では「東京凮月堂」「上野凮月堂」「神戸凮月堂」の3社が主にゴーフルを製造販売しており、それぞれが独自の特徴を持ちながらも、共通する「ゴーフル」としての魅力を守り続けています。
薄くサクッとしたせんべいとまろやかなクリームの組み合わせは、贈答品や手土産として多くの人々に愛され続けてきました。ゴーフルは単なるお菓子ではなく、日本の菓子文化の発展と和洋の融合を象徴する存在として、これからも多くの人々に親しまれていくことでしょう。
何世代にもわたって愛され続けてきたゴーフルの魅力は、伝統的な製法と現代の技術の融合にあります。時代が変わっても変わらない味わいと、常に進化し続ける品質向上への取り組みが、ゴーフルの価値を高め続けているのです。