感情はしばしば特定の順序で発生すると言われています。
人はまず悲しみや困惑、心配といった感情を感じやすいです。
心理学者の多くは、人々がこういったストレスや不安が未解決のまま限界に達すると、脳がストレスを処理するためにそれを怒りとして表出することを指摘しています。
実際、困ったり悲しんだりしたときにストレスホルモンであるコルチゾールやアドレナリンの分泌が増加し、それが怒りの感情を引き起こすことが研究で示されています。
また、怒りという感情は「どうしてこうなったのか」という心情から生じることが多いです。
これから紹介する子供の怒りについての話も参考にしながら、怒りの前にある悲しみや不安、そこからどうして怒りという感情が沸き起こったのか、お子さんの気持ちをできる限り理解しようとする姿勢を見せてあげてください。
【怒りっぽくなる原因1】我慢を強いられている
子どもが怒りっぽくなる原因の一つ目として、感情や意思を抑圧されたり否定された経験があります。
わがままが通る家庭で育った子どものほうがすぐに怒るイメージがありますが、実際には我慢を強いられてきた子どものほうが怒りっぽくなる傾向にあるのは意外ですよね。
例えば、乳幼児期に泣きわめく子どもに対して「うるさい、黙りなさい」と怒鳴って感情を押さえつけようとする場合をイメージしてみましょう。
そもそも家庭で常に我慢を強いられる環境は、子どもにとってフラストレーションの源です。
その子どもは「泣くこと」や「寂しいと感じること」は悪いことだという考えが植え付けられるため、自己評価が低下し、自分の感情を否定的に捉えるようになります。
よって子どもは感情を抑えつけられて、その子が自身の感情を健全に表現する方法を学ぶ機会が奪われることに。
感情を表現できないと未解決の感情が蓄積され、ストレスが増します。このストレスが限界に近づくと、小さなきっかけで感情が爆発するようになり、すぐ怒りとして表出してしまうのです。
【怒りっぽくなる原因2】愛情不足を感じている
そして他人に対して過度に警戒したり、深い関係を築くことに不安を感じたりして、どんどん自信を持つ機会も減ってしまうことに。
親は子供に対して十分な愛情を注ぎ、子供の気持ちを理解しようと努めることが大切です。
愛情を充分に感じられない子供は自分が人や世の中にとって大切だと感じることができず自尊心が低くなってしまいます。
そして他人に対して過度に警戒したり、深い関係を築くことに不安を感じたりして、どんどん自信を持つ機会も減ってしまうことに。
そうならないよう子供が安心して感情を表現できる環境を整え、日常の小さな成功や努力を認めてあげましょう。また、親自身も子育てを楽しむ姿勢を持つことで、愛情と安心感が子供に伝わります。
【怒りっぽくなる原因3】環境に戸惑っている
子供は入園や入学をきっかけに怒りっぽくなることがあります。
これは新しい生活環境や友達との関係構築に対する不安や戸惑いが大きな心理的負担となるからです。
そんな中で家に帰って家庭という安心できる場所に戻ると緊張が緩み、学校で抑えていた感情や欲求不満が一気に怒りっぽい行動として現れます。
子供にとって、この時の感情を整理したり理解したりするのは難しいため、親が子供の気持ちを言葉にして説明することが重要です。
例えば「新しい学校で疲れたね」「友達ができるまで少し不安だよね」と具体的に言葉にしてみることで、子供自身もその感情を認識しやすくなります。
自分の感情を理解することは感情をコントロールする上で大切なことです。
【怒りっぽくなる原因4】親が怒りっぽい
親から怒鳴られて育った子どもは、自分が人と接する際にも怒鳴ってしまう傾向があります。
これは鏡の神経細胞と呼ばれるミラーニューロンが関係しているためです。
ミラーニューロンとは他者の行動を観察すると、それを模倣する機能を持つ神経細胞です。
ミラーニューロンは行動だけでなく感情も模倣する性質も持っています。
そのため、親が怒りながら怒鳴っている場面を見た子どもは、無意識にその行動と感情を模倣し、自分自身も怒りながら怒鳴りやすくなるのです。
また、子どもにとって親は最も身近なロールモデルであり、親の言動や反応を見て学びます。
親の行動が日常的に怒鳴るものであれば、それが子どもにとって「普通」であり「正しい」と認識され、子どもが成長して同様の行動をとる一因となります。