明治会員IDとは
明治会員IDは、株式会社明治が2025年1月から本格的に運用を開始した顧客向け会員サービスです。
このサービスは、明治のすべての商品やサービスを横断して利用できる共通のIDプラットフォームとして設計されています。
従来は各ブランドがそれぞれ独立して顧客との関係を築いていましたが、このシステムにより、顧客情報を一つのIDで統合し、顧客が明治のどの商品やサービスを利用する場合でも、同じIDでアクセスできる仕組みを構築しました。
会員登録の方法
会員登録の手続きは比較的簡単です。
メールアドレスの登録
まず、スマートフォンやパソコンから専用サイトにアクセスし、メールアドレスを登録します。
登録したメールアドレス宛に、本人確認のための認証用メールが自動的に送信されます。
基本情報の入力
送られてきたメールに記載されたURLをクリックすると、登録画面に移動します。
そこで、氏名や住所、生年月日などの基本情報を入力することで登録が完了します。
IDによるサービス利用
登録が済むと、ユーザーは自分だけの明治会員IDを持つことができます。
このIDを使って、明治が提供する様々なデジタルサービスや公式アプリに、共通のIDでログインして利用できるようになります。
明治ポイントの特徴
明治会員IDには、独自のポイントシステムである「明治ポイント」があります。
ポイントの獲得
このポイントは、会員限定のキャンペーンに参加したり、特定のアンケートに答えたり、商品を購入してレシートをアップロードしたりすることで獲得できます。
ポイント獲得のための条件は、サービスごとに異なる場合があります。
クーポンへの交換
貯まったポイントは、デジタルクーポンに引き換えることができます。
このクーポンは、明治商品と実際に交換できる引換券として利用できます。
ポイントと商品の交換例
例えば、明治ガルボチョコポケットパックの引換券が192ポイント、明治エッセルスーパーカップ超バニラ200mlの引換券が198ポイントで獲得できます。
交換できる商品は定期的に変わる場合があります。
ポイントの活用法
明治ポイントをパートナー小売店の店頭で明治商品と交換できることは、食品業界では初の試みとされています。
この仕組みは、顧客をオンラインのサービスからオフラインの実店舗へと誘導する効果があります。
小売業側からも、確実に明治商品を購入する顧客を店舗に呼び込めるため、評価されています。
デジタルマーケティングの戦略
明治会員IDは単なるポイントサービスではなく、明治が推進するデジタルマーケティング戦略の中核を担っています。
このシステムを通じて、明治は顧客の購買履歴や行動データを一元管理し、それぞれの顧客のライフステージに最適なタイミングで商品やサービスを提案できるようになります。
これにより、顧客一人ひとりに合わせた提案が可能となり、顧客との長期的な関係構築を目指しています。
サービスの内容
明治会員IDに登録すると、複数のデジタルサービスにアクセスできるようになります。
健康・栄養関連サービス
インナーガーデン
「インナーガーデン」は、腸内細菌を検査し、その結果に基づいて個人に最適化された商品を提供するサービスです。
専門の検査キットを使い、自宅で簡単に検査できます。
免疫チェック
「免疫チェック」では唾液検査により現在の免疫レベルを測定し、改善のためのアドバイスを提供します。
検査結果は会員IDを通じてパーソナライズされた形でフィードバックされます。
商品開発サービス
「ミラマル」というプラットフォームでは、まだ市場に出ていない明治の新商品を試すことができます。
これは一般に販売される前のテスト段階の商品を会員が体験し、フィードバックを提供することで、商品開発に協力できる共創型のサービスです。
育児支援アプリ
育児支援アプリ「赤ちゃんノート」は、乳幼児の成長記録をつけたり、育児に関する情報を得たりできるサービスです。
また、スポーツ栄養管理アプリ「ザバス」は、アスリートや運動をする人が栄養管理を行うためのツールを提供しています。
さらに、カカオ育成ゲーム「ほのぼのカカオ育成ゲーム」など、多岐にわたるアプリケーションも利用できます。
会員数の推移
サービス開始当初の2025年1月時点では約2万件だった会員数が、9月1日時点で13万人まで増加しました。
会員数の増加
実質7カ月で10万人を突破しました。
この急成長の背景には、効果的なキャンペーンの実施があります。
特に1月の「新規登録キャンペーン」や6月の「きらめく純金アポロが当たる!ドキドキ夢のプレゼントキャンペーン」が好評を博し、想定を上回るペースで会員数が増加しました。
成果の具体例
この会員数増加により、明治は具体的な成果を上げています。
新規会員向けの「インナーガーデン」紹介メールでは、Web広告と比較して顧客獲得コストを約7割削減しました。
また、複数のサービスを利用する「クロスユース」も拡大しています。
ザバスアプリ利用者の12%が免疫チェックを併用し、免疫チェック利用者の12%がインナーガーデンを併用するなど、ブランド間の相互利用が進んでいます。
キャンペーン利用者のうち42%が2つ以上のキャンペーンに参加しており、複数ブランド間での利用が促進されています。
会員属性
明治会員IDの会員属性を見ると、女性が57%、30代が25%という構成になっています。
想定通りの結果
この傾向は、セルフケアやライフスタイル改善を支援するサービス群との親和性が見られ、明治が想定していた接点設計の狙いに沿った結果となっています。
今後の目標
明治は2026年春までに会員数15万人を目標としています。
現在の成長ペースを考えると、この目標達成は現実的と考えられます。
特別キャンペーン
10万人突破を記念して、2025年9月1日から30日まで特別キャンペーンを実施しており、プラチナインゴットと商品詰め合わせなどが当たる抽選を行っています。
このキャンペーンは開始から7日でエントリー数2万件を超える反響を得ています。
専門会社の支援体制
このような取り組みを支えているのが、明治の出資を受けた株式会社Wellnizeという専門会社です。
業務内容
Wellnizeは明治のマーケティングDX推進を専門的に担当しており、東京都渋谷区に本社を置いています。
代表取締役は木下寛大氏が務めており、同社は明治会員IDの運営だけでなく、データ分析や新しいサービスの企画開発なども手がけています。
明治エコシステムの構築
明治の担当者は、明治会員IDを中心とした取り組みを「明治エコシステム」と呼んでいます。
エコシステムとは
エコシステムとは本来「生態系」を意味する言葉ですが、ビジネスの世界では「複数の要素が相互に関連し合いながら、全体として一つの価値を生み出すシステム」という意味で使われます。
エコシステムの内訳
明治の場合、会員ID、ポイントシステム、各種アプリ、商品、キャンペーン、店舗との連携など、様々な要素が組み合わさって、顧客にとって価値のある体験を作り出しているのです。
担当者の見解
明治のコミュニケーション部でデジタルソリューションを担当している川端善也氏は、この取り組みの意義について次のように説明しています。
明治には確かに幅広いブランドがあるものの、従来はそれぞれが独立した「点」として存在していました。
明治会員IDを共通基盤にすることで、これらを人生を通じた「線」として、さらには横断的に展開する「面」として拡張できるようになったということです。
ブランド間のつながり
会員数が10万人を超えたことで、ブランド間でのつながりが実現し始めています。
例えば、チョコレート好きでゲームアプリを楽しんでいた人が健康チェックサービスを利用するようになったり、育児アプリを使っていた人がスポーツ栄養サービスに関心を持つようになったりといった、従来では考えられなかった顧客の行動パターンが見られるようになっています。
今後の展望
明治は、お客さんのライフステージに合わせた健康課題を解決する商品やサービスを提供していく方針を打ち出しています。
ライフステージごとの課題
ライフステージとは、人生の各段階のことで、具体的には乳幼児期、学童期、青年期、成人期、中年期、高齢期といった人生の各フェーズを指します。
それぞれの段階で人が抱える健康上の課題は異なります。
提供する解決策
明治が考えているのは、こうした各段階の課題に対して、キャンペーンやポイント、クーポンといった特典と組み合わせながら、最適な解決策を提供することです。
企業と顧客の関係
明治は、従来の企業と顧客の関係を根本的に変え、お客さんの人生の様々な段階で継続的に価値を提供し続ける関係へと発展させることを目指しています。