モンブランとは
モンブランとは、栗を使ったクリームをメインにした洋菓子で、フランスやイタリアが発祥とされています。細い絞り口で絞り出した栗のペーストが山のように盛り付けられることから、ヨーロッパ最高峰「モンブラン山」にちなんで名付けられました。土台にはスポンジケーキやメレンゲ、クリームが使われることが多く、滑らかな栗の甘みと豊かな風味が特徴です。日本では和栗を使用したアレンジも多く、季節感を楽しむスイーツとして広く親しまれています。
モンブランの発祥起源
モンブランのルーツ
モンブランの起源を海外に遡ると、詳細な記録は見つかりませんが、フランスの製菓技術と深く関係しています。1888年に出版されたギュスターヴ・ギャルランの『ル・パティシエ・モデルヌ』には、モンブランの主要材料であるマロンペーストについての記述が見られます。しかし、実際にモンブランというデザートが登場したのは、1911年のピエール・ラカンの著書『ル・メモリアル・デ・グラス』です。さらに、イタリアでは「モンテ・ビアンコ」という類似のデザートが存在し、これもアルプスの名峰モンブランをモチーフにした名前が付けられています。
モンブランの日本での始まり
モンブランは日本人に愛されているスイーツの一つで、ショートケーキやシュークリームと並ぶ人気を誇ります。そのモンブランが日本で初めて作られたのは、1933年(昭和8年)に東京・自由が丘で創業した「モンブラン洋菓子店」とされています。創業者の迫田千万億氏はフランス旅行中にモンブランを知り、その感動を元に日本でも作り始めました。当時の日本にはマロングラッセを用いたマロンペーストがなく、黄色い和栗を使用した独自のモンブランが生み出されました。これが、現在でも「和風モンブラン」と呼ばれるものの原点です。
和風モンブランの特徴
日本では、戦時中や戦後の物資不足の時代でも、パティシエたちは工夫を凝らしてモンブランを作り続けました。当時の和風モンブランは、白餡に砂糖と黄色い色素、栗の香料を加えて作られたものが主流でした。これにより、日本独自の黄色いモンブランが完成しました。この和風モンブランは、和の素材と洋の製菓技術を融合させた「和魂洋才」の象徴ともいえるスイーツであり、日本の洋菓子文化の発展を象徴する一品です。
茶色いモンブランへの移行
茶色いマロンペーストを使用した現在のモンブランが日本に浸透し始めたのは1970年代以降のことです。この頃、多くの日本人パティシエがフランスで修行を積み、本場のモンブランの製法や材料を日本に持ち帰りました。また、一般のスイーツファンに広く認知されたのは1984年、東京・有楽町のプランタン銀座内にフランスの有名店「アンジェリーナ」が出店したことがきっかけです。このアンジェリーナのモンブランは濃厚で上品な味わいが特徴で、日本の洋菓子文化に新たな風を吹き込みました。
自由が丘「モンブラン洋菓子店」のモンブラン
創業者の努力によって誕生した自由が丘「モンブラン洋菓子店」のモンブランは、現在でも独自の形を保っています。スポンジ状のカップケーキにカスタードクリームと栗の甘露煮を詰め、その上に生クリームとバタークリームを重ね、黄色いペーストを絞り出して仕上げられています。さらにトップには乾燥焼きしたメレンゲが載せられており、その工夫と完成度の高さに創業者の熱意が感じられます。
日本人によるモンブランの創作性
和風モンブランは、日本人の創意工夫が生み出した特別なスイーツです。古くから親しまれてきた餡を使いながら、洋菓子として仕立て上げるセンスが光ります。このスイーツは、日本と西洋の文化を融合させた独自の形で進化を遂げ、現在でも多くの人々に愛されています。