長崎の老舗カステラ店「御三家」
店舗名 | 創業年 | 特徴 | 主な功績 |
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福砂屋 | 1624年 | 最古のカステラ店、伝統の手作り製法 | 添加物不使用・職人制による品質保持 |
松翁軒 | 1681年 | 水あめ使用、チョコラーテ発祥 | パリ万博での国際的評価 |
文明堂総本店 | 1900年 | 全国展開と印象的なCM | カステラの全国普及とブランド化 |
長崎には「カステラ御三家」と呼ばれる、歴史ある三つの名店があります。それぞれ異なる歴史やこだわりを持ちながら、日本のカステラ文化を支え続けています。伝統を守るだけでなく、新しい挑戦も続けるその姿勢が、多くの人に愛される理由です。
【福砂屋(ふくさや)】──日本最古のカステラ店
まず紹介するのは、1624年に創業した「福砂屋」です。
江戸時代の初期、外国人居留地としてにぎわっていた長崎で、ポルトガル人から直接カステラの製法を学び、現在まで伝統の味を守り続けています。添加物を一切使わない、シンプルで自然な味わいが特徴です。
福砂屋では「一人一貫主義」を採用しており、1人の職人が材料の計量から焼き上げ、仕上げまでのすべてを担当します。こうすることで品質のばらつきを防ぎ、熟練の技術を次世代に引き継ぐことができるのです。保存料を加えないため、賞味期限は9日前後と短めですが、そのぶん素材本来の風味が生きたやさしい味わいが楽しめます。
福砂屋のシンボルマークには「コウモリ」が使われています。これは中国文化で幸福の象徴とされる動物で、長崎の中国寺院「崇福寺」から正式に授けられたものです。このように福砂屋には、日本、ポルトガル、中国という異なる文化が重なり合った長崎ならではの背景が色濃く感じられます。
【松翁軒(しょうおうけん)】──革新を続ける老舗
続いて「松翁軒」は、1681年に創業した老舗です。
伝統を守りながらも、時代に合わせた革新を重ねてきたことでも知られています。たとえば、カステラに水飴を加えることで、しっとり感を保ちやすくする工夫を施しています。日本の湿度の高い気候に適した改良といえるでしょう。
明治時代には、カカオを使った「チョコラーテ」というチョコレート風味のカステラを開発しました。これは当時としてはとても斬新な試みで、日本のカステラに新たな可能性を切り開く出来事でした。
さらに、松翁軒は明治33年(1900年)のパリ万博に出品し、受賞を果たしています。ヨーロッパ生まれのお菓子であるカステラが、日本で独自に発展し、逆にヨーロッパで評価されたというのは象徴的なエピソードです。
【文明堂総本店】──カステラを全国に広めた立役者
最後にご紹介するのは「文明堂総本店」。
明治33年に創業し、「カステラ1番、電話は2番」のCMで全国的な知名度を得ました。この短く覚えやすいフレーズと歌は、テレビの普及とともに全国の家庭に広まり、カステラをより身近なお菓子として定着させました。
文明堂は、全国展開にも力を入れており、各地の支店では地域の好みに合わせたカステラ作りも行われています。これにより、長崎生まれのカステラが全国各地に広がり、親しまれるきっかけとなりました。
変わり種のカステラ
日本各地では、昔ながらのカステラにその土地ならではの工夫を加えた「変わり種カステラ」が作られています。どれも地域の食文化や暮らしを反映した、ユニークで魅力的なお菓子です。
こうした地域色豊かなカステラは、それぞれの風土や文化、時代のニーズに合わせて進化してきました。昔ながらの良さを大切にしつつ、新しい素材や技術を取り入れて生まれ変わるカステラには、日本のお菓子文化の奥深さと柔軟さが詰まっています。
秋田の伝統菓子「豆腐カステラ」
秋田県では、豆腐を使って作る「豆腐カステラ」が古くから親しまれています。江戸時代にはすでに存在していたといわれ、今でも冠婚葬祭などの特別な行事で用いられる大切な郷土菓子です。
このカステラは、仏教の教えに深く関係しています。仏教では「殺生(せっしょう)」、つまり動物を殺すことを避ける考え方があります。そのため、卵などの動物性食品を使わずに作られた豆腐カステラは、精進料理の一つとしても受け入れられてきました。
作り方は一般的なカステラとは異なり、裏ごしした豆腐に砂糖や小麦粉を加えてよく混ぜ、蒸して仕上げます。卵を使わない分、味はとてもあっさりしていて、やさしい甘さが特徴です。植物性のたんぱく質が豊富で、健康を気づかう人にもぴったりのお菓子です。
バスクと和の融合「バスクチーズカステラ」
バスクチーズカステラは、スペインの伝統菓子「バスクチーズケーキ」と日本のカステラを組み合わせた、現代的な創作スイーツです。見た目はカステラですが、味わいは濃厚なチーズの風味が際立ち、しっとりとした口当たりも特徴的です。
このお菓子を作ったのは、40年以上にわたりカステラを焼き続けてきた熟練の職人です。長年の経験と技術をもとに、カステラの新しい可能性を引き出しました。
山形のお米から生まれた「お米のカステラ」
山形県では、地元産のブランド米「はえぬき」と地酒を使った「お米のカステラ」が開発されました。このカステラには小麦粉が使われておらず、グルテンフリー(小麦由来のたんぱく質を含まない)という特徴があります。
そのため、小麦アレルギーを持つ方でも安心して食べることができ、多くの人に喜ばれています。実際に、この商品は復興庁が主催するコンテストで特別賞を受賞するなど、高い評価を受けています。
お米のカステラは、山形の豊かな米作りの伝統や、酒造りの技術といった地域の強みを活かして作られたお菓子です。地酒を加えることで香りが引き立ち、ほのかな甘さとコクのある風味が楽しめます。
とろける食感が魅力「半熟たまごカステラ」
高知県の「たまごファミリー」が手がける「じゅわっと半熟たまごカステラ」は、外側は香ばしく焼き上げられている一方で、中はとろっととろけるような食感が楽しめる、新感覚のスイーツです。切ると中からクリーミーな生地がとろりとあふれ出し、まるでプリンやクリームのような味わいが口いっぱいに広がります。
このブームの背景には、ポルトガルの伝統菓子「パン・デ・ロー」の存在があります。パン・デ・ローは日本のカステラのルーツともいわれるお菓子で、もともとは中が半熟の状態で焼き上げるのが特徴です。現代では、加熱や衛生の技術が進化したことで、安全に半熟のまま提供できるようになり、その人気が再燃しています。
このカステラに使われている卵「炭たま」は、鶏の飼料に炭を加えて育てられた、特別な卵です。臭みが少なく、黄身が濃厚で甘みも強いことから、お菓子作りにぴったりの素材です。炭たまを使うことで、一般的な卵で