カトルカールとは
カトルカール(Quatre Quarts)は、フランスで昔から親しまれている伝統的な焼き菓子です。
日本ではまだあまり知られていませんが、フランスでは家庭でよく作られており、「ママの味」として多くの人に愛されています。
材料も少なく、作り方もシンプルなので、お菓子作りが初めての人でも挑戦しやすいケーキです。
カトルカールの名前の由来
カトルカール(Quatre Quarts)は、フランス語で「4分の4」という意味です。
これは「4つの材料を同じ重さで使う」というレシピからきています。
その4つの材料はこちらです。
たとえば、卵150gなら、砂糖も小麦粉もバターもすべて150gにそろえます。
この「1:1:1:1」の割合は、パウンドケーキの基本配合とも呼ばれ、お菓子作りの基本として広く使われています。分量が覚えやすく、失敗しにくいのも大きな魅力です。
フランスにおけるカトルカールの存在
カトルカールは、特別なイベントのために作る高級なお菓子ではありません。
フランスでは、毎日のように家で作って食べる、家庭的な焼き菓子です。
小さいころから親に作ってもらった思い出がある人が多く、「おふくろの味」や「ママの味」として親しまれています。
また、材料が少なくて手に入りやすく、作り方も複雑ではないため、お菓子作りの入門レシピとしても人気です。
焼き上がったカトルカールは、外は香ばしく中はしっとり。甘さも控えめで、子どもから大人まで楽しめる味わいです。
カトルカールの基本材料と選び方
材料 | 分量(基本) | 主な役割 |
---|---|---|
薄力粉 | 150g | 生地の骨格を作り、軽やかでふんわりとした食感にする |
無塩バター | 150g | コクと風味を与え、しっとりとした食感に仕上げる |
グラニュー糖 | 150g | 甘味を付け、生地の保湿性を高める |
卵 | 約150g(約3個) | 材料をまとめてふくらませる |
カトルカールに使用する4つの材料は、それぞれが生地の味わいや食感を左右する重要な役割を担っています。
薄力粉
カトルカールには薄力粉が使われます。薄力粉はグルテン(タンパク質)の含有量が少なく、生地をふんわり軽く仕上げるために欠かせない材料です。グルテンは水と混ざると粘りや弾力を生み、パンなどには必要ですが、カトルカールのような軽い食感のお菓子では多すぎると生地が硬く重たくなります。強力粉を使うとグルテンが多くなり、ずっしりとした食感になってしまい、カトルカールの口どけの良さが損なわれるため、薄力粉が最適です。
バター
バターはカトルカールの風味としっとり感に大きく影響します。基本的には無塩バターを使うのが一般的です。有塩バターも使えますが、塩分の調整が難しくなるため、お菓子作りには無塩バターが適しています。
バターは常温に戻してから使うのがポイントです。冷たいままだと他の材料と混ざりにくいため、指で押して跡がつくくらいの柔らかさが理想的です。これにより、生地が均一に仕上がります。
レシピによっては溶かしバターを使う場合もありますが、熱すぎると他の材料に影響するため、粗熱を取ってから加えましょう。
卵
卵はカトルカールの生地をふくらませ、しっとり感を出すのに欠かせません。
新鮮な卵を使うことが大切です。使う前には常温に戻すと、他の材料とよくなじみます。冷たいままだと混ざりにくく、生地が分離することもあります。
また、卵のサイズはメーカーによって異なるため、レシピ通り「2個」とあっても重さを計るのが望ましいです。卵の量が多すぎたり少なすぎたりすると、生地の水分やタンパク質のバランスが崩れ、仕上がりに影響します。
カトルカールの基本的な作り方
準備段階
カトルカールを美味しく焼き上げるには、材料の下ごしらえがとても大切です。この段階をしっかり行うと、ケーキの食感や風味が大きく変わってきます。
薄力粉をふるう | 粉を2回ほどふるうことで、粉のダマがなくなり、空気が入ってふんわり軽い生地になります。ふるいは目の細かいものを使いましょう。 |
バターを常温に戻す | 冷たいバターは硬くて混ざりにくいので、使用する30分〜1時間前に冷蔵庫から出しておきます。指で押して少しへこむくらいの柔らかさがベストです。もし溶かしバターにするなら、熱くなりすぎないよう注意しましょう。 |
オーブンの予熱 | オーブンはあらかじめ170〜180℃に温めておきます。生地を作ってから予熱を始めると時間がかかり、生地の泡がしぼんでしまうことがあります。最初に予熱しておくのがコツです。 |
卵と砂糖を泡立てる
ふんわりとしたケーキに仕上げるためには、この泡立て作業がとても重要です。
ボウルに卵とグラニュー糖を入れて、泡立て器で混ぜます。そのあと、ボウルの底を40℃くらいのお湯につけて湯せんしながら泡立てましょう。この「40℃」というのは、人が触ってほんのり温かいと感じるくらいの温度です。
しっかり泡立ってくると、卵の色が白っぽくなり、泡立て器を持ち上げたときに生地で「の」の字が書けるようになります。この状態になるまで泡立てることで、ふんわりしたケーキになります。
薄力粉を加える
泡立てた卵に粉を混ぜるときは、せっかく作った泡を潰さないように注意が必要です。
ふるっておいた薄力粉を、2〜3回に分けて加えましょう。一度に全部入れてしまうと混ぜにくくなります。ゴムべらを使って、ボウルの底からすくい上げるように、やさしく混ぜてください。「の」の字を描くように動かすと、全体が均一に混ざります。
混ぜすぎると、粉に含まれる「グルテン」という成分が働いて、ケーキがかたくなることがあります。粉っぽさがなくなったら、すぐに混ぜるのをやめるのがコツです。
バターを加える
最後にバターを加えると、生地にコクとしっとり感が加わります。
常温で柔らかくしたバターや、溶かして粗熱を取ったバターを使います。バターをそのまま全部入れるのではなく、生地の一部と混ぜてから全体に加えると、むらなく混ざりやすくなります。ここでも混ぜすぎないよう注意し、バターが生地にちゃんとなじんだらOKです。
焼成と仕上げ
生地を型に流し入れるときは、あらかじめバターを型の内側に薄く塗っておきます。これで焼きあがったあとに型から取り出しやすくなります。
170〜180℃に予熱したオーブンで、30〜40分ほど焼きます。表面にこんがりとした焼き色がつき、竹串を刺して何もついてこなければ焼き上がりのサインです。
焼きあがったら、型ごと少し冷まし、その後、ケーキを型から取り出して完全に冷やします。熱いうちにラップで包むと、しっとりした仕上がりになります。
カトルカールを美味しく作るコツ
カトルカールは、材料の配合がシンプルだからこそ、作り方の基本が仕上がりに大きく影響します。ここでは、ふんわり軽く、しっとりした理想のカトルカールを作るためのポイントを紹介します。
温度管理の重要性
お菓子作りでは、材料や工程の温度をしっかり管理することが、とても大切です。特にカトルカールでは、「卵の泡立て」における温度が、仕上がりの食感や膨らみに直結します。
卵を泡立てるときは、人肌より少し温かい約40℃が理想です。指で触って「お風呂より少し熱いかな」と感じるくらいが目安になります。
熱すぎるお湯で湯せんすると、卵が固まってしまい、泡立ちません。逆に冷たいままでは、気泡がうまく作れず、生地がふくらみにくくなります。
おすすめは、沸騰したお湯を少し冷ましてから湯せんに使う方法です。この温度帯で泡立てれば、卵の中にたっぷりと空気が入り、キメの細かいふんわり生地になります。
混ぜ方のテクニック
材料をどう混ぜるかによって、生地の食感が変わります。特に、空気をたっぷり含んだまま粉やバターを混ぜるためには、混ぜる方向や手の動きが重要です。
まず、泡立てた卵に粉類や溶かしたバターを加えるときは、ゴムべらを使いましょう。ボウルの底からすくい上げるようにし、切るように手を動かすのがコツです。
具体的には、「の」の字を描くように混ぜたり、生地を縦に切るように動かしたりすると、泡をつぶさずに混ぜられます。
混ぜすぎると、生地に含まれる小麦粉の「グルテン(粘り成分)」が出すぎてしまい、焼き上がりがかたくなってしまいます。
粉っぽさが見えなくなったら、すぐに混ぜるのをやめてください。多少粉が残っていても、焼いている間に自然になじみます。
焼き加減の見極め
オーブンの焼き時間や温度は、メーカーや機種によって微妙に異なります。そのため、表示された焼き時間だけを頼りにせず、生地の状態を見ながら調整することが必要です。
焼き上がりの目安は、表面がきつね色に色づき、指で軽く押して弾力があるかどうかです。押したあと、指の跡がすぐ戻れば、しっかり焼けています。
また、竹串を刺してみて、生地がついてこなければ中まで火が通っています。
もし、指で押してへこんだまま戻らない場合や、竹串にべたっと生地がついてくるなら、もう少し焼く必要があります。
アレンジの楽しみ方
アレンジ素材 | 特徴 |
---|---|
レモン・オレンジの皮 | 爽やかな香り。すりおろして使うのが効果的 |
レモン汁 | さっぱりとした風味に。甘さが控えめになる |
バニラエッセンス | 手軽に上品な香りをプラスできる |
バニラビーンズ | 自然で豊かな香り。より本格的な仕上がりに |
アーモンドプードル | コクが増し、しっとり感もアップ |
クルミ・アーモンド | 香ばしさとカリッとした食感をプラスできる |
カトルカールは基本のレシピがとてもシンプルなので、素材を加えて自分だけのアレンジを楽しむことができます。
例えば、レモンやオレンジの皮をすりおろして加えると、柑橘系の香りが生地に広がります。レモン汁を少し加えると、後味がさっぱりとします。
バニラエッセンスは使いやすく、手軽に香りを付けたいときに便利です。より深い香りを楽しみたい方は、バニラビーンズを使いましょう。さやを開いて中の黒い種をこそげ取って加えます。
また、アーモンドプードルを小麦粉の一部と入れ替えると、しっとりとした生地に仕上がります。ナッツ類を刻んで入れれば、香ばしさとカリッとした食感が加わります。
トッピングとデコレーション
焼き上がったカトルカールは、そのままでも十分美味しい焼き菓子です。しかし、ちょっとした工夫を加えることで、見た目も風味もぐっと引き立ちます。シンプルな生地ですが、トッピング次第で贈り物やおもてなしにもぴったりな一品になります。
粉砂糖 | 茶こしなどでふりかけると、上品でやさしい印象に。手軽にできる定番の仕上げ。 |
ココアパウダー | ほろ苦さが加わり、甘さとのバランスがとれた大人っぽい味わいに変化します。 |
フルーツ(いちご、ブルーベリーなど) | 旬の果物を添えることで彩りが豊かになり、華やかさと特別感が加わります。 |
どのトッピングも、カトルカールの素朴な美味しさを引き立てるためのアクセントになります。用途や好みに合わせて、自由に楽しんでみてください。
カトルカールの保存方法と日持ちの目安
保存方法 | 保存期間の目安 | 注意点 |
---|---|---|
常温 | 2〜3日 | ラップ+密閉容器、涼しい場所で保管 |
冷蔵 | 約1週間 | 食べる前に常温に戻すと◎ |
冷凍 | 約1ヶ月 | 1切れずつ包み、自然解凍がおすすめ |
常温保存
カトルカールは焼きたての風味を楽しむなら常温保存がおすすめです。ただし、日本の高温多湿な気候では傷みやすいため注意が必要です。美味しく食べられる期間は2〜3日程度で、涼しい冬場なら少し長持ちします。保存の際は、ラップで包んでから密閉容器に入れ、直射日光の当たらない涼しい場所に置くことが大切です。こうすることで空気中の湿気や他の食品のにおいを防ぎ、乾燥によるパサつきを防止し、しっとりとした食感と風味を保てます。
冷蔵保存
冷蔵庫に入れることで酸化や菌の繁殖を抑え、約1週間ほど日持ちします。特に気温の高い季節には安心して保存できます。冷えるとバターが固まるため、焼きたてよりやや硬めの食感になることがありますが、品質には問題ありません。食べる際は、冷蔵庫から出して30分から1時間ほど室温に戻すと、バターが柔らかくなり、生地もふんわりして焼きたてに近い味わいが楽しめます。
冷凍保存
カトルカールをさらに長期間保存したい場合は冷凍保存が最適です。冷凍すれば約1ヶ月間保存できるため、多めに作ってストックしたり、少しずつ楽しみたい時に便利です。保存する際は、ケーキを1切れずつラップで丁寧に包み、さらに冷凍用保存袋に入れて冷凍庫で保管します。これにより乾燥や霜の付着、他の食品の匂い移りを防げます。食べる時は、冷蔵庫で自然解凍するか、急ぎの場合は電子レンジで20〜30秒ほど軽く温めるのがおすすめです。ただし、温めすぎるとパサつくため注意が必要です。こうすることで、焼きたてのようなしっとりした食感がよみがえります。
カトルカールの楽しみ方
ティータイムのお供に
カトルカールは温かい飲み物とよく合い、ティータイムを特別な時間にしてくれます。香り豊かな紅茶やコーヒーと特に相性がよく、アールグレイやダージリン、ミルクティー、カフェオレがおすすめです。しっとりした生地の甘さとバターの風味が、紅茶のベルガモットやダージリンの芳醇な香りを引き立てます。また、ミルクのコクがある飲み物は、カトルカールのしっとり感とよく調和し、心温まる穏やかなひとときを演出します。
手土産やギフトにも
カトルカールはシンプルで飽きのこない味わいが特徴で、手土産やギフトにぴったりです。手作りの温かみが伝わり、感謝やお祝いの気持ちを表すのに適しています。華美な装飾はなくても、丁寧な手仕事で作られたカトルカールは贈る人の思いが伝わる温かい贈り物になります。老若男女問わず好まれやすく、お礼や友人宅への手土産、誕生日や記念日のプレゼントとしても喜ばれるでしょう。
子どものおやつに
カトルカールは添加物を使わず、バター・卵・砂糖・小麦粉だけで作られるため、小さな子どもにも安心して与えられます。シンプルな材料で作られているので、市販のお菓子に比べて余計な成分が含まれていません。やさしい甘さで飽きにくく、家庭のおやつとして重宝します。アレルギーが気になる子どもや、手作りおやつを大切にする家庭にぴったりです。日々の健康的なおやつとして、子どもの成長を支える役割も果たします。
まとめ
カトルカールは、シンプルな材料と分かりやすい作り方が特徴のフランス伝統の焼き菓子です。家庭で日常的に作られ、「ママの味」として親しまれてきました。材料の配合が均等で覚えやすく、お菓子作り初心者にも挑戦しやすいのが魅力です。作り方のポイントを押さえれば、外は香ばしく中はしっとりとした理想的な食感に仕上がります。誰でも手軽に楽しめるため、日本でもぜひ多くの人に味わってほしいお菓子です。家庭で作る素朴な美味しさが、日々のティータイムを豊かに彩ってくれるでしょう。