雷鳥の里とは
信州長野県を代表するお土産菓子として半世紀以上にわたって愛され続けている「雷鳥の里」。これはサクサクとした欧風せんべいにクリームを挟んだ、シンプルながらも味わい深いお菓子です。雷鳥の里の最大の特徴は、当時としては新しかった「欧風せんべい」という和と洋が一つになった新しいスタイルにあります。

味・食感・風味
サクサクとした軽い食感の欧風せんべいに、ほんのり甘いクリームを挟んだシンプルな作りですが、その味わいには奥深さがあります。欧風せんべいの小麦の香ばしさとクリームのまろやかな甘さが絶妙にマッチし、少しきな粉のような風味も感じられます。
甘さは控えめに作られているため、甘いものが苦手な方でも食べやすく、幅広い年齢層に受け入れられています。お茶菓子として緑茶にも、洋風のコーヒーや紅茶にもよく合うように計算されており、このどんな飲み物にも合うという汎用性の高さが、長く愛され続ける理由の一つでもあります。
パッケージ
画家による美しいイラスト
知人の画家である故関亂山氏が描いた雷鳥の絵を使用しており、大きく描かれた雷鳥のイラストは、一目で商品が分かる印象的なデザインとなっています。この絵は単なる商業デザインではなく、芸術性も兼ね備えた美しい仕上がりで、商品の品格を高める要素として機能しています。
箱を開けた時のサプライズ
さらに興味深いのは、箱を開けると雷鳥の切り抜きが入っているという粋な演出です。これは単なる飾りではなく、購入者への心遣いであり、日本の「おもてなし」の精神を表現していると言えるでしょう。こうした細やかな配慮が、商品への愛着を深める要因にもなっています。
個包装で便利
一つ一つを個包装にすることで、食べたい時に食べられる便利さを提供しています。これは単に保存性を高めるだけでなく、職場などでの配布にも適しており、お土産としての使いやすさを高める工夫でもあります。個包装により、湿気を防いでサクサクとした食感を保つことができ、品質の安定にも貢献しています。
誕生の背景
昭和38年、関西電力による「世紀の大工事」と呼ばれた黒部ダムが完成しました。高さ186メートルという当時日本最大級のアーチ式コンクリートダムの完成は、多くの人々を魅了し、観光地としても注目を集めるようになりました。黒部ダムの玄関口である長野県大町市も、北アルプス観光の中心地として急速に発展していきます。
この時代の変化の中で、後に雷鳥の里を生み出すことになる田中勝氏は、北アルプスや黒部ダムの壮大な景色に身震いするほどの強い感動を受けました。雄大な自然の美しさに心を打たれた田中氏は、この感動に見合うお土産のお菓子を作りたいという強い思いを抱くようになります。昭和47年、田中氏は製造業者と共に研究を重ね、試行錯誤の末に「雷鳥の里」を完成させました。
名前の由来
「雷鳥の里」という商品名の由来となった雷鳥は、北アルプスに生息する特別な鳥です。この名前には、お菓子に込めた深い願いが込められています。
田中氏は、氷河の時代からひっそりと山に暮らすこの愛らしい雷鳥のように、誰からも愛されるお菓子でありたいという願いを込めて「雷鳥の里」と名付けました。この名前には、厳しい自然環境の中でも力強く生きる雷鳥の姿に重ねて、人々に末永く愛される商品でありたいという深い思いが込められているのです。
雷鳥とはどんな鳥か
雷鳥は、標高3000メートル級の北アルプスに生息する鳥です。日本の特別天然記念物に指定されているこの高山鳥は、長野県の県鳥でもあり、昔から地域の人々に愛されてきました。雷鳥の一番印象的な特徴は、季節によって羽の色を大きく変えることです。夏は茶褐色の保護色で山肌に溶け込み、冬になると純白の美しい羽に衣替えします。この自然への適応力と、人を恐れずに親鳥とひなが愛らしい姿を登山者に見せてくれる人懐っこさが、多くの人々を魅了してきました。
雷鳥の里の商品展開
現在、雷鳥の里は様々な用途に応じた多様なサイズ展開を行っています。
9個入りのミニサイズから始まり、16個入りの小サイズ、25個入りの大サイズ、そして42個入りの特大サイズまで、様々なニーズに対応しています。
特に42個入りの特大サイズは、贈答用として厚めの化粧箱に入っており、会社への手土産や正式な贈り物としても重宝されています。
価格は2025年3月1日より、ミニサイズが810円、小サイズが1,188円、大サイズが1,728円、特大サイズが3,240円となっています。
雷鳥の里の販売場所
販売は長野県内を中心に、観光お土産店やホテル・旅館の売店、主要駅のキオスク売店、サービスエリア、道の駅などで行われており、観光客が長野県内のどこにいても雷鳥の里を購入できます。また、オンラインストアやフリーダイヤル(0120-01-3020)での直接注文も可能で、遠方の方でも手軽に購入することができます。
雷鳥の里は富山県でも人気
興味深いことに、この長野県生まれのお菓子が、近年富山県でも人気のお土産として定着しつつあります。
2015年3月の北陸新幹線金沢延伸をきっかけに、富山県の県鳥も雷鳥であることから親しみを持たれ、現在では北陸新幹線の糸魚川、黒部宇奈月温泉、富山、新高岡、金沢、福井の各駅売店で販売されています。
特に富山駅と新高岡駅では好調な売り上げを記録しており、「富山土産」と間違われることもあるほど地域に馴染んでいます。
これは決して偶然ではありません。実は雷鳥の里の開発当初から富山との縁は深く、黒部ダムを訪れる観光客向けの土産菓子として開発され、商品のデザインと名称には立山地域に生息するニホンライチョウが採用されていました。
つまり、雷鳥の里は長野県と富山県を結ぶ文化的な橋渡しとしての役割も果たしているといえるのではないでしょうか。
雷鳥の里を製造する有限会社田中屋
雷鳥の里を製造販売する有限会社田中屋は、1975年3月1日に設立され、大町市文化会館のすぐ近くに本社を構えています。
天気の良い日には雄大な北アルプスを間近に見ることができる絶好のロケーションで、創業者の田中勝氏が北アルプスの美しさに魅せられて事業を始めたことを象徴しているとも言えるでしょう。
現在は曽根原光重氏が代表取締役社長を務め、創業者の理念を受け継ぎながら事業を発展させています。
地域への貢献
田中屋は単なるお菓子メーカーではなく、地域の文化と観光業を支える重要な存在として機能しています。雷鳥の里は信州土産の定番として長野県の観光業に大きく貢献してきましたし、大町市のふるさと納税返礼品としても提供されており、地域振興に積極的に参加しています。遠方の方でも、寄付という形で大町市を応援しながら雷鳥の里を受け取ることができるこの仕組みは、地域と消費者、そして企業の三者すべてが幸せになれる理想的な関係を築いています。
今後の展望
現在、売り上げの8割近くは長野県内が占めていますが、北陸新幹線の大阪延伸計画を見据えて、西日本への展開も期待されています。これは単なる事業拡大ではなく、信州の文化を全国に発信する使命感に基づいた戦略と言えるでしょう。
まとめ
50年以上という長い歳月を経てもなお愛され続ける雷鳥の里は、単なるお菓子を超えて、信州の自然と歴史、そして地域の人々の思いが込められた文化的なシンボルとして位置づけられています。北アルプスの雷鳥のように、厳しい環境の変化にも適応しながら、これからも多くの人々に愛され続けることでしょう。その味わいには、50年前に田中勝氏が感じた黒部ダムへの感動と、誰からも愛される商品でありたいという願いが、今もなお生き続けているのです。
