シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテとは|由来・歴史

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シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテとは

シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテは、ドイツが起源の伝統的な洋菓子です。

名前の意味

この長い名前には、それぞれの言葉に意味があります。

「シュヴァルツヴェルダー」は「シュヴァルツヴァルトの」、「キルシュ」は「サクランボ」、「トルテ」は「デコレーションケーキ」を意味します。

直訳すると「黒い森のサクランボケーキ」となり、日本では「ブラックフォレストケーキ」という英語名でも知られています。

「黒い森」の由来

このケーキが「黒い森」と呼ばれるのには、理由があります。

シュヴァルツヴァルト地方の自然

シュヴァルツヴァルトは、ドイツ南西部に広がる山岳地帯です。

モミの木やトウヒなどの針葉樹が森を覆っており、遠くから見ると黒く見えるため、「黒い森」と呼ばれています。

この地域は、グリム童話の「ヘンゼルとグレーテル」の舞台にもなった場所です。

特産品との関連

シュヴァルツヴァルト地方は森林に覆われているため、ブドウの栽培には適していません。

代わりに、牧畜業が発達し、良質な乳製品が豊富に生産されています。

また、古くからサクランボの産地としても知られており、特にサワーチェリーという酸味のあるサクランボの栽培が盛んです。

これらのサクランボから、キルシュヴァッサーという透明な蒸留酒が作られます。

キルシュヴァッサーは、この地域の特産品の一つです。

シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテは、これらの地域の特産品を組み合わせて作られています。

シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテの構成

基本的な構成要素は、チョコレートスポンジ、生クリーム、サクランボ、そしてキルシュヴァッサーです。

チョコレートスポンジはココアパウダーを加えて焼かれ、濃い茶色をしています。

このスポンジは通常2から3層に切り分けられ、各層にはキルシュヴァッサーを加えたシロップが染み込ませてあります。

生クリームもキルシュヴァッサーで風味付けされており、サクランボとアルコールの香りが効いています。

ケーキの組み立て

まず、スポンジにキルシュヴァッサー入りのシロップを染み込ませます。

その上に、キルシュヴァッサーで風味を付けた生クリームを塗り、サクランボのフィリングを配置します。

サクランボのフィリングは、缶詰のサワーチェリーを煮て、とろみを付けたものが使用されることが多いです。

この作業を繰り返して層を重ね、最後に全体を生クリームで覆います。

美しいデコレーション

仕上げの装飾にも、意味が込められています。

ケーキの表面全体にふりかけられた削りチョコレートは、シュヴァルツヴァルトの黒い森を表現しています。

生クリームを絞って作った小さな山の上には、サクランボが飾られます。

赤と黒のコントラストが美しい外観を作り出しています。

時には粉砂糖も振りかけられ、雪が積もった森のような雰囲気を演出します。

シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテの味わい

このケーキは、複数の要素が絶妙なバランスで組み合わさっています。

チョコレートスポンジのほろ苦さ、サクランボの甘酸っぱさ、生クリームのまろやかさ、そしてキルシュヴァッサーのフルーティーで香り高い風味が口の中で調和します。

しっとりとしたスポンジ、なめらかな生クリーム、パリッとした削りチョコレートが、食感に変化を加えています。

ドイツ本場のスタイル

本場ドイツの伝統的な製法で作られたものは、日本でよく見かけるものよりもやわらかいのが特徴です。

キルシュヴァッサーをたっぷりと使うため、ケーキが自立できないほど軟らかく、皿に寝かせた状態で提供されることもあります。

ウィーンなど一部の地域では、より固めに作られたものも存在します。

シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテの歴史

このケーキの歴史には、複数の説があります。

最も古い文献記録は1934年のものですが、実際にはそれより100年ほど前から、シュヴァルツヴァルトの農家で作られていたと考えられています。

一つの伝説では、19世紀前半にシュヴァルツヴァルトの農家の女性が、手元にあった材料を使って即席で作ったケーキが始まりとされています。

別の説では、オランダの商人が結婚式で珍しいチョコレートを使って作ったケーキが起源だとされています。

また、1927年に菓子職人ヨセフ・ケラーが考案したという記録も残っています。

シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテの人気

このケーキは、ドイツだけでなく、世界中に広まりました。

特に、ドイツフランスの国境に近いアルザス地方を経由してフランス全土に伝わりました。

フランスでは、「フォレ・ノワール」(フランス語で「黒い森」を意味する)という名前で親しまれています。

フランス版では、伝統的な円形のケーキだけでなく、長方形や、グラスに盛り付けたデザート版など、新しい形でも楽しまれています。

ドイツのカフェ文化との結びつき

現代のドイツでは、このケーキはカフェ文化と深く結びついています。

ドイツのカフェでは、午後のコーヒータイムにシュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテを楽しむのが定番です。

特に、シュヴァルツヴァルト地方には、このケーキを専門とする店が数多く存在します。

自宅で作る際のヒント

家庭で作る場合、キルシュヴァッサーが手に入らない場合は、ラム酒やチェリーリキュールで代用することができます。

スポンジは焼いた後一晩寝かせると、よりしっとりとした食感になります。

クリームの甘さを控えめにすると、サクランボやチョコレートの風味が引き立ちます。

組み立てに時間がかかるため、前日から準備を始めることが推奨されます。

郷土色豊かな伝統菓子

シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテは、オーストリアのザッハトルテと並んで、ドイツ語圏でよく知られているケーキです。

このケーキは、単なるお菓子ではなく、シュヴァルツヴァルト地方の自然、産業、文化を表現した、郷土色豊かな伝統菓子です。

黒い森を模した見た目、地元特産品を活かした味わい、そして受け継がれてきた製法が組み合わさって、この地域を代表する菓子として今も愛され続けています。

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