煎餅(せんべい)とは
日本人にとって、昔から身近にあるお菓子「せんべい」。
香ばしい香りと、パリパリ、サクサクの食感がとってもおいしいですね。
でも、このせんべいが、どうやって生まれたのか、どんな種類があるのか、知っている人は少ないかもしれません。
せんべいには、昔の人たちの知恵や、地域の文化がぎゅっと詰まっています。
せんべいの歴史
せんべいの歴史は、私たちが思っているよりもずっと古く、遠い昔の中国から始まりました。
中国で生まれたせんべいの祖先
せんべいの祖先は、紀元前200年ごろの中国で、お祝いの日に食べられていた特別な食べ物でした。
このときのせんべいは、小麦粉を水でこねて、油で焼いたり揚げたりした、今のクラッカーに近いものでした。
今のように薄くて丸いものではなく、宮廷で食べられる、とても高級で、かたい食べ物でした。
日本に伝わったせんべい
中国のせんべいが日本に伝わったのは、今から1400年ほど前の飛鳥時代(あすかじだい)のことです。
遣隋使(けんずいし)や遣唐使(けんとうし)たちが、中国から持ち帰ったと言われています。
でも、このときに日本に来たせんべいは、お米でできていませんでした。
小麦粉と水をこねて、油で焼いた、今のクラッカーのようなお菓子だったと考えられています。
日本に伝わってからも、せんべいは長い時間をかけて、日本独自の発展を遂げていきました。
日本独自のせんべいへ
平安時代には、昔の辞書にも、小麦粉を使ったせんべいが食べられていたことが書かれています。
一方で、さらに昔の弥生時代には、稲作が始まったことで、お餅の原型(げんけい)が食べられていました。
余ったお米を粉にして、お餅を作り、それを薄く伸ばして焼いたものが、今のお米のせんべいの祖先になったのかもしれません。
こうして、せんべいは小麦粉からお米へと、原料が変わっていったのです。
せんべいの名前の由来
せんべいの名前は、江戸時代に生まれた、あるおばあさんの物語から来ています。
おせんさんの団子から生まれた「せんべい」
江戸時代、今の埼玉県にあった草加宿(そうかしゅく)という場所は、日光街道の宿場町としてとてもにぎわっていました。
ここに、「おせん」という名前のおばあさんが、団子屋さんをしていました。
ある日、売れ残った団子を川に捨てていたのを見たお侍さんが、「その団子を平らにして焼いてみたらどうですか?」と教えてくれました。
おせんさんがその通りにやってみると、丸くて平らな、香ばしいお菓子ができました。
これを売ってみたところ、大変な評判になりました。
この「おせんさんが焼いた団子」から「せんべい」という名前が生まれた、というお話が残っています。
せんべい、あられ、おかきの違い
せんべいと似ているお菓子に、「あられ」や「おかき」があります。
これらも同じお米から作られますが、3つのお菓子には、はっきりとした違いがあります。
原料となるお米の違い
せんべいの原料は、私たちがいつもごはんとして食べている「うるち米(うるちまい)」です。
うるち米はもち米よりも収穫量が多く、手軽に手に入れることができました。
うるち米を粉にしてから、生地を作って焼きます。
一方、あられやおかきの原料は、お正月のお餅を作るのに使う、ねばねばしたお米**「もち米(もちごめ)」**です。
この原料の違いが、食感の大きな違いを生み出しています。
大きさと食感の違い
もち米で作られる「あられ」と「おかき」は、大きさで名前が分かれています。
もち米でできているので、口の中に入れるとシュワッと溶けるような、軽い食感になります。
対して、うるち米で作られるせんべいは、製法によって、バリバリと硬い食感になったり、パリッと軽くなったり、色々な食感が楽しめます。
いろんな種類のせんべい
せんべいには、作り方や味付けによって、たくさんの種類があります。
焼き方による種類
堅焼きせんべい
その名前の通り、硬く焼かれたせんべいです。
バリバリとした歯ごたえが特徴で、一枚でも満足感があります。
お米の旨味がしっかりと感じられるので、醤油味がよく合います。
うす焼きせんべい
薄く焼かれたせんべいで、パリッとした軽くて、食べやすい食感です。
ついつい何枚も手が伸びてしまうおいしさです。
塩味やサラダ味が定番です。
味付けや材料による種類
海苔せんべい
せんべいに海苔が巻かれていて、口に入れた瞬間に磯の香りが広がる、日本らしいせんべいです。
米つぶせんべい
お米のつぶつぶがそのまま残っていて、おこげのような香ばしい味がします。
お米の食感も楽しむことができます。
サラダせんべい
当時、高価だったサラダ油を使い、塩味であっさりとした味付けが特徴です。
ざらめせんべい
表面にざらざらしたお砂糖がついていて、甘くてしょっぱい味が楽しめます。
この甘じょっぱい味付けが、一度食べるとやみつきになります。
日本各地にあるご当地せんべい
日本には、その土地ならではの特別なせんべいがたくさんあります。
草加せんべい
埼玉県草加市の名物で、押し瓦(おしがわら)を使って手焼きでじっくりと焼き上げられるため、硬くてパリパリした食感が特徴です。
ぬれせんべい
千葉県銚子市で生まれた、焼き上げたせんべいを、熱いうちに特製のお醤油のタレに漬け込んで作ります。
しっとりやわらかい独特の食感が楽しめます。
南部せんべい
青森県や岩手県のせんべいで、お米ではなく小麦粉でできています。
ピーナッツやごまが混ぜ込まれているものもあり、耳と呼ばれる縁の部分も香ばしくておいしいです。
めんべい
福岡県のお土産で有名で、明太子(めんたいこ)のピリッとした辛さがクセになります。
お土産屋さんに行くと、たくさんの種類が並んでいます。
まとめ
せんべいは、ただのお菓子ではなく、昔の人々の「食べ物を無駄にしない」という知恵から生まれた、日本の大切な食文化です。
昔から伝えられてきた作り方を守りながら、今でもたくさんの種類が作られています。
今度せんべいを食べるときは、そんなお話を思い出して、ゆっくりと味わってみてくださいね。