シベリアは、カステラの間にようかんや小豆餡を挟んだ日本の伝統的な和洋折衷菓子です。その独特の組み合わせと製法から生まれる絶妙な味わいが特徴で、昭和初期には「子供達が食べたいお菓子No.1」と言われるほど人気を博しました。
近年では映画『風立ちぬ』などの影響で再び注目されています。かつては多くのパン屋で製造されていましたが、手間のかかる製法から次第に姿を消していきました。
この記事では、シベリアの特徴や歴史、名前の由来から人気店や作り方まで詳しく解説します。
シベリアとは
シベリアは、カステラとようかんまたは小豆餡が融合してできた和洋折衷菓子であり、伝統と革新が同居する日本ならではのお菓子です。
昭和初期には「子供達が食べたいお菓子No.1」として親しまれ、多くのパン屋で製造されるほどに広く愛されていました。
冷蔵庫が普及していなかった時代、ひんやりとした食感と涼しげな名前が好まれた背景もあり、その魅力は時代を超えて受け継がれています。
シベリアの特徴
シベリアは、一見シンプルな構造ながら、実は緻密な製法で作られるお菓子です。
カステラとようかんが単にサンドイッチ状に挟まれるのではなく、溶かしたようかんを流し込み、冷やし固めるという独特の手法を用いています。
これにより、ふわふわのカステラと滑らかなようかんが密着し、一体感のある食感と豊かな風味を実現しています。
シベリアの構造
シベリアは、2層から4層の構造を持ち、カステラとようかんが交互に重ねられた状態で仕上げられます。
カステラ部分は卵をたっぷり使ったふんわりとした生地であり、ようかんは寒天で固めたものが使用されます。
溶かした状態のようかんをトレーに流し込み、その上からカステラを被せて冷やし固めることで、両者が密着して一体化する独特の仕上がりとなります。
店舗ごとに茶色、緑色、赤色など様々な色合いやアレンジが加えられており、伝統的な製法に新たな創意工夫が見られます。
シベリアの形状
シベリアの形状は主に長方形と三角形の2種類が一般的です。
長方形は均整の取れた四角い形状が特徴であり、三角形は対角線でカットされたシルエットが印象的です。
特に映画『風立ちぬ』で描かれた三角形のシベリアは、多くの人々の記憶に残る象徴的な存在となりました。
さらに、内側に挟むようかんの種類も多様で、こしあん、抹茶、いちご、モカ、キャラメルなど季節や店舗ごとに異なる風味が楽しめるよう工夫されています。
シベリアの美味しい食べ方
シベリアは常温でも美味しく召し上がれますが、特に夏場は冷蔵庫で冷やして食べると、羊羹の冷たさとカステラのしっとり感が一層際立ちます。コーヒーや紅茶との相性も抜群で、昔ながらの懐かしさと現代のニーズが融合し、多くの人々に支持されています。
シベリアの発祥起源
シベリアの起源については諸説ありますが、一般には明治後期から大正初期にかけて誕生したとされています。
記録によれば、1916年創業のコテイベーカリーなどが製造していたことから、関東圏で広く親しまれていたお菓子であることがうかがえます。
昔はパン窯の余熱を利用してカステラを焼き、あんぱんに使う餡から作られたとの説もあります。
シベリアの歴史
シベリアは、旧制早稲田中学在籍時代の思い出や古川ロッパの著書『ロッパの悲食記』に登場するなど、既に大正時代には関東の都市部で広く親しまれていました。
冷蔵技術が未発達な時代に、ひんやりとした食感と涼しげな名前が評価され、昭和初期には子供たちに大人気のお菓子として定着していました。
しかし、手間のかかる製法から次第に製造店が減少し、現在では限られた名店のみが伝統の味を守り続けています。
シベリアの名前の由来
シベリアという名称の由来については、いくつかの説が存在します。
一説には、カステラを雪原、ようかんをシベリア鉄道の線路や永久凍土に見立てたというものがあり、また別の説では、日露戦争時に従軍していた菓子職人が考案したとの説もあります。
これらの説はいずれも確定的なものではなく、複数の伝説が交錯することでシベリアの神秘的な魅力を一層引き立てています。
シベリアが再び注目を浴びた理由
かつて多くのパン屋で製造されていたシベリアは、製法の手間や多様な食品の登場により一時姿を消しつつありました。
しかし、近年は映画やテレビドラマへの登場がきっかけとなり、再び若い世代を中心に注目されています。
現代の消費者は、昔ながらの味わいと独特の食感に新たな魅力を見出し、伝統菓子としての価値が再評価されています。
映画『風立ちぬ』がもたらした人気再燃
2013年に公開されたスタジオジブリの映画『風立ちぬ』で、シベリアが登場したことが大きなきっかけとなりました。
映画内で主人公が帰宅途中に購入し、同僚と一緒に味わうシーンは多くの視聴者に強い印象を与えました。
若い世代を中心に「これを食べてみたい」という関心が急速に高まり、再び認知が上昇しました。
テレビドラマでの登場とその影響
また、NHK大河ドラマ『いだてん~東京オリンピック噺~』や連続テレビ小説『とと姉ちゃん』など、複数のテレビ番組でシベリアが取り上げられたことも人気再燃に寄与しています。
これらの作品では、シベリアが登場人物の日常の中で大切なお菓子として描かれ、視聴者に懐かしさと共に新たな味わいの魅力を伝えています。
シベリアの有名店
現在でもシベリアを製造している名店は各地に存在し、伝統の味を守りながらも独自のアレンジを加えた商品が提供されています。
コテイベーカリー(横浜)
コテイベーカリーは1916年、大正時代に創業した老舗のパン屋で、横浜の地元で愛されています。
このお店のシベリアは厚みのある水羊羹を三角形にカットした美しい見た目が特徴です。羊羹は上品な甘さとみずみずしさがあり、カステラのふんわりとした食感との相性が抜群。さらに製造工程では創業当時からの技術が今も継承されており、「変わらぬ味」を求めるファンが多く訪れます。
また、地元産の厳選された素材を使用しており、その品質の高さが評価されており、横浜という港町の歴史的背景とともに、このパン屋の存在は地域文化にも深く根付いています。
関根製菓(埼玉)
関根製菓は、昭和30年頃に開業した和菓子店で、家庭的な雰囲気と職人技が魅力のお店です。
このお店のシベリアは、カステラのしっとり感と羊羹の風味が一体となった逸品です。特徴的なのは、羊羹に季節ごとの素材を使用している点で、黒餡や柚子餡、紫芋餡、モカ餡など、多彩なフレーバーを常時楽しむことができます。一年を通じて10種類ものフレーバーを展開しており、季節限定の商品が特に人気です。
伝統的な製法に加え、現代の味覚に合わせたアレンジが施され、幅広い年代のお客様に支持されています。また、店内はアットホームな空間で、試食を提供することもあるため、購入前に味を確かめられる点も魅力です。
村岡総本舗(佐賀)
村岡総本舗は、明治32年に創業した佐賀県の老舗であり、小城羊羹の元祖として広く知られています。
このお店のシベリアは、カステラと羊羹の組み合わせが非常にユニークで、使用されるカステラには2つのタイプがあります。まず、三角形のシベリアには「長崎カステラ」を使用しており、その軽やかな食感が特長です。一方、丸形のシベリアでは「ポルトガル風バターカステラ」を採用しており、しっとりとした濃厚な味わいが堪能できます。
このシベリアでは5層構造が採用されており、カステラと羊羹の間に挟む自家製餡が絶妙なアクセントを加え、より柔らかな食感と味の広がりを楽しめます。使用される素材は全て厳選されており、地域の特産品や自家栽培の素材が活かされています。また、小城羊羹の伝統的な製法や歴史についても学べる展示コーナーが併設されており、観光名所としても人気があります。
自宅で楽しむシベリアの作り方
シベリアは伝統的なお菓子でありながら、手間をかければ自宅でも作ることが可能です。基本的な材料と工程をしっかりと把握すれば、昔ながらの味わいを再現することができます。家庭で作る場合、カステラ生地とようかんをそれぞれ丁寧に作り、組み立てることが大切です。時間をかけて仕上げることで、見た目にも美しく、食感や風味に優れたシベリアを楽しむことができます。
カステラ生地の作り方
カステラ生地は、全卵、上白糖、強力粉、はちみつ、みりんなどを使用。
基本的な手順としては、まず型にスプレーオイルとオーブンシートを準備し、全卵と上白糖を湯せんで温めながら泡立てます。
はちみつとみりんを加え、ふんわりとした状態になったら、ふるった強力粉を加え、ゴムベラで底からすくい上げるように混ぜ合わせます。
180℃に予熱したオーブンで焼き上げた後、ラップで包み一日寝かせることで、カステラのふんわりとした食感が引き立ちます。
ようかんの作り方と組み立て方法
ようかんは、上白糖、粉寒天、水、そしてこしあんを使用。
鍋に水、粉寒天、上白糖を加えホイッパーで混ぜながら加熱し、沸騰後に弱火で煮詰めます。
とろみが出たところでこしあんを加え、さらに煮詰めると、滑らかで固めのようかんが完成します。
組み立てる際は、まずラップを敷いた型にカステラを1枚入れ、溶かしたようかんを流し込んだ後にもう一枚のカステラを重ね、冷蔵庫や常温で冷やし固めます。
しっかり冷やすことで、カステラとようかんが一体となり、切り分けた時に美しい断面が現れます。
シベリアのカットのコツ
シベリアはカステラが柔らかいため、カットする際は専用の鋭い包丁を使用し、刃をこまめに濡らして滑らかに動かすことが大切です。
無理に力を加えず、時間をかけて丁寧にカットすることで、カステラがつぶれるのを防ぎ、見た目にも美しい仕上がりになります。
カットの際は、均等な厚さを意識することで、食感のバランスも良くなります。
シベリアの魅力と今後の展望
シベリアは、ふわふわのカステラとしっとりとしたようかんの組み合わせが織りなす独特の食感と風味が特徴のお菓子です。
和と洋が融合したこの伝統菓子は、長い歴史の中で育まれてきた味わいと手間暇かけた製法により、単なるお菓子を超えた文化的シンボルともなっています。
現代においては、若い世代にもその魅力が再評価され、季節限定のフレーバーや新しい形状のシベリアが登場するなど、伝統を守りつつも進化を続ける可能性を秘めています。
伝統の継承と新たな挑戦
シベリアの魅力は、昔ながらの手作りの温かみと、現代の技術やアイデアによって生み出される新しい風味の両面にあります。
大手製パン会社から地域の老舗まで、様々な店舗がそれぞれの特色を生かしてシベリアを提供しており、今後も伝統の継承とともに新たな挑戦が期待されます。
消費者の嗜好やライフスタイルの変化に合わせ、より多彩なシベリアが登場することで、その人気はさらに高まると考えられます。
文化的シンボルとしてのシベリア
シベリアは、単なるお菓子以上に、日本の近代化と食文化の融合を象徴する存在として評価されています。
映画やテレビドラマでの取り上げにより、多くの世代がその魅力を再発見し、懐かしさと新鮮さが交錯する味わいが支持されています。
これからもシベリアは、伝統的な味わいを守りながら、新しい試みや工夫によって進化し、さらなる文化的価値を生み出していくことでしょう。
まとめ
シベリアは、カステラでようかんや小豆餡を挟んだ日本の和洋折衷菓子で、明治後期から大正初期にかけて誕生し、昭和初期には子供たちに大変人気がありました。名前の由来には、シベリア鉄道の線路や永久凍土を模した説、シベリア出兵時に考案された説など諸説あります。近年、映画『風立ちぬ』やNHKのドラマ『いだてん』で取り上げられたことで再び注目を集めています。現在でも、横浜のコテイベーカリーや埼玉の関根製菓などの老舗が伝統の味を守り続けています。