シュトーレンとは
シュトーレンは、ドイツで生まれたクリスマスの時期に食べられる伝統的な菓子パンです。
白い粉砂糖で覆われた楕円形の見た目を特徴とし、その形は坑道やトンネルを意味するドイツ語の「Stollen」に由来しています。
生地には、洋酒に漬け込んだドライフルーツやナッツ、そしてマジパンが練り込まれており、バターがたっぷりと使われているため、濃厚で豊かな風味が楽しめます。
焼き上げた後にバターと粉砂糖でコーティングされることで保存性が高まり、クリスマスを待つアドベント期間中に少しずつスライスして食べるのがドイツの伝統的な習慣です。
シュトーレンの名前の由来
シュトーレンという名前は、ドイツ語で「坑道」や「地下道」を意味する「Stollen」という言葉から来ています。
日本ではシュトーレンという読み方で定着していますが、ドイツ本国ではシュトレンと発音されます。
この独特な半円形で長い形が坑道に似ていることから、この名前が付けられたとされています。
また、白い粉砂糖がたっぷりとまぶされた見た目が、白いおくるみに包まれた幼子イエスを表現しているという宗教的な解釈もあります。
シュトーレンの材料
シュトーレンの基本的な材料は、小麦粉と酵母を使った生地です。
生地
この生地には、バターがふんだんに使われており、リッチな味わいを生み出しています。
ドライフルーツは、あらかじめ洋酒に漬けられてから練り込まれます。
レーズン、オレンジピール、レモンピールなどが使われ、酸味と甘みが複雑な風味を作り出します。
さらに、アーモンドやくるみなどのナッツ類が加えられ、香ばしさと食感のアクセントになります。
シナモン、ナツメグ、カルダモンなどのスパイスも、奥深い香りを与えます。
マジパン
シュトーレンの材料の中で、マジパンは特に重要な役割を持っています。
マジパンとは、粉末状にしたアーモンドと砂糖を混ぜて固めた洋菓子のことです。
シュトーレンに使用されるマジパンは、砂糖の比率が低く配合されており、生地全体にしっとりとした食感と豊かな風味を与えます。
シュトーレンの製法
まず、ドライフルーツやナッツ、スパイスを練り込んだ生地を作り、発酵させます。
その後、水分量を減らすために高温で焼き上げ、保存性を高めます。
焼き上がった直後に、まだ温かいうちに溶かしたバターにくぐらせてコーティングします。
最後に、たっぷりの粉砂糖をまぶして完成となります。
この製法により、シュトーレンは時間が経ってもおいしさを保つことができます。
シュトーレンの歴史
シュトーレンの歴史は、中世ヨーロッパまで遡ることができます。
シュトーレンは14世紀のドイツ、ザクセン州のドレスデンで生まれたという説が有力です。
1330年頃には、パン職人のギルドがキリスト司教にクリスマスの贈り物として献上したという記録が残っています。
バターの使用許可
初期のシュトーレンは、宗教上の理由からバターの使用が限られており、質素なものでした。
ザクセン選帝侯らがローマ法王にバターの使用許可を求めた結果、1491年に「バター書簡」と呼ばれる文書によってバターの使用が許可されました。
これにより、シュトーレンは現在の豊かな味わいを持つ菓子へと発展しました。
シュトーレンとクリスマスの関係
シュトーレンは、クリスマスを待つ期間「アドベント期間」に毎日少しずつ食べる習慣があります。
これは、クリスマスまでの時間を大切に過ごし、心の準備をするという宗教的な意味を持っています。
スパイスがクリスマスと結びつき、シュトーレンはクリスマス菓子として定着しました。
シュトーレンの食べ方
シュトーレンには、ドイツの伝統的な食べ方があります。
ドイツでは、まず真ん中で半分に分け、その後中央部分から薄くスライスして必要な分だけを切り分けます。
こうすることで、残ったシュトーレンの切り口同士を合わせることができ、乾燥を防ぎながら保存できます。
味の変化を楽しむ
シュトーレンは、時間の経過とともに味が変化していきます。
洋酒に漬けたドライフルーツやマジパンの風味が生地になじんでいき、味わいが深まります。
この変化を楽しみながら、アドベント期間を通じて毎日一切れずつ食べることで、クリスマスまでの時間をより豊かに過ごすことができます。
シュトーレンの種類
クリストシュトレン
クリストシュトレンは、キリストの名を冠した最も基本的なタイプです。
小麦粉、バター、ドライフルーツ、ナッツ、スパイスなどで作られます。
ドレスナーシュトレン
ドレスナーシュトレンは、発祥の地ドレスデンで作られ、厳格な条件を満たしたもののみがこの名称を使用できます。
使用材料やバター、マジパンの含有量などに細かい規定があります。
マジパンシュトレン
マジパンシュトレンは、棒状にしたマジパンを生地の中心に入れて焼き上げたもので、マジパンの風味をより強く感じられます。
ブッターシュトレン
ブッターシュトレンは、バターの含有量が多く、バター以外の油脂材料の使用が禁止されています。
日本でのシュトーレン
シュトーレンは1969年に日本に紹介され、徐々に広まりました。
現在では、クリスマスシーズンになると多くの場所で購入できます。
チョコレートや抹茶、ゆずなどを使った日本独自のアレンジ版も登場し、様々な味わいを楽しむことができます。
シュトーレンに合う飲み物
シュトーレンは、甘さ控えめの飲み物と良く合います。
苦味のある飲み物との組み合わせ
コーヒーや紅茶、ほうじ茶などの、適度に苦味のある飲み物との相性が良いです。
シュトーレン自体が甘みとコクを持つため、飲み物の苦味が口の中をさっぱりとさせ、バランスを整えます。
ワインとの組み合わせ
赤ワインや白ワインと合わせて楽しむことも可能です。
シュトーレンのドライフルーツやスパイスの風味が、ワインの香りと良く調和します。
特に、渋みの少ない赤ワインや、フルーティーな白ワインが推奨されます。
まとめ
シュトーレンは、その独特な形や製法、そして食べ方のひとつひとつに、深い歴史と文化的な意味が込められています。
白い粉砂糖は、おくるみに包まれた幼子イエスを表し、その見た目には宗教的な信仰が反映されています。
また、洋酒に漬けられたドライフルーツや、バター、マジパンなど、贅沢な材料が使われるようになった背景には、「バター書簡」にまつわる歴史があります。
このように、シュトーレンは時間をかけて少しずつ味わうことで、クリスマスを待つ期間を豊かに過ごすという文化を体験させてくれる食べ物です。