国際会議「TICAD9」と株式会社明治の革新的な取り組み

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私たちが普段何気なく食べているチョコレートの裏側には、壮大な国際的な取り組みがあります。

2024年8月20日から22日にかけて神奈川県のパシフィコ横浜で開催された「TICAD9」という国際会議を通じて、お菓子メーカーの明治がどのように革新的な活動を世界に発信したのかを詳しく見ていきましょう。

目次

TICAD9とは

TICAD9とは、「Tokyo International Conference on African Development(アフリカ開発会議)」の第9回目の会議のことです。

これは1993年に日本政府が主導して始まった国際会議で、アフリカの国々が自らの力で発展できるように支援することを目的としています。

この会議は、単に政府同士が話し合うだけでなく、民間企業も積極的に参加することが大きな特徴です。

なぜなら、アフリカの発展には、ビジネスを通じた経済の交流が欠かせないからです。

TICAD Business Expo&Conference

会議と同時開催された「TICAD Business Expo&Conference」という大きな展示会は、日本貿易振興機構(JETRO)が主催しました。

この展示会の中には、「Japan Fair」というコーナーがあり、日本企業が自社の製品や技術を展示する場が設けられました。

これは、アフリカから来た政府の偉い人やビジネス関係者に対して、日本の優れた技術を直接見てもらい、将来のビジネスチャンスにつなげることを狙いとしています。

明治が参加した背景

日本の代表的なお菓子メーカーである明治が、この重要な国際会議に参加したのには理由があります。

カカオ豆とアフリカの関係

明治の主力商品であるチョコレートを作るのに欠かせないカカオ豆は、その約7割がアフリカで生産されています。

特に西アフリカのコートジボワールとガーナは、世界で最も多くのカカオ豆を作っています。

つまり、明治にとってアフリカは、事業の土台を支える大切な地域なのです。

カカオ生産が抱える課題

しかし、カカオ農家の人たちは多くの問題を抱えています。

小規模な農家が多く、天候不順や病気、市場価格の変動などで収入が安定しないことがあります。

また、より良いカカオを作るための知識や技術が十分に広まっていないという問題もあります。

さらに、地球温暖化の影響でカカオを育てやすい地域が変わってきていることも、農家の人々にとって大きな悩みとなっています。

メイジ・カカオ・サポート

こうした状況を良くするために、明治は「メイジ・カカオ・サポート」という独自の支援プログラムを行っています。

このプログラムでは、明治の担当者が実際にカカオ農家を訪れ、農家が抱える具体的な問題に合わせて、一つひとつ支援をしています。

例えば、品質の良い苗木をあげたり、収穫後の発酵技術を教えたりするなど、農家それぞれの状況に合わせたお手伝いをすることで、カカオ生産がずっと続けられるように支えています。

カカオの新たな価値創造

2022年からは、明治はさらに新しい取り組みを始めました。

「ひらけ、カカオ。」というスローガンを掲げ、カカオの新たな価値を創造することに挑戦し始めたのです。

アップサイクルという考え方

これまでのチョコレート作りでは、カカオ豆の中身だけを使い、外側の殻にあたる「種皮」は捨てられていました。

しかし、明治は「この捨てられている部分にも価値があるのではないか」と考え、新しい技術開発に取り組みました。

これは「アップサイクル」という考え方で、ゴミになるものを、より価値の高い新しい製品に生まれ変わらせることを意味します。

カカオバイオプラスチックの開発

その結果、開発されたのが「カカオバイオプラスチック」という新しい素材です。

これは、カカオの種皮を原料に作られた、植物由来のプラスチックです。

石油から作られるプラスチックは分解されにくく環境に残ってしまいますが、カカオバイオプラスチックは微生物によって分解されやすく、環境への負担を大幅に減らすことができます。

カカオから生まれた美容成分「カカオセラミド」

明治は、カカオの捨てられる部分から、さらに「カカオセラミド」という美容成分を作ることに世界で初めて成功しました。

セラミドは、肌の水分を保ち、外部の刺激から肌を守る大切な成分です。

これまでセラミドは動物や化学合成によって作られていましたが、明治はカカオという新しい原料からセラミドを作る道を開きました。

TICAD9での技術紹介と製品展示

今回のTICAD9で、明治はこれらの革新的な技術を世界に向けて紹介しました。

公式記念品としてのボールペン

最も注目されたのは、日本の文房具メーカーであるゼブラ社と共同開発した特別なボールペンでした。

ゼブラ社の人気商品にカカオバイオプラスチック技術を使い、TICAD9の公式記念品として作られました。

このペンは、アフリカ各国の首脳や関係者など、会議の参加者全員に配られました。

これは、アフリカで生まれたカカオの廃棄物が、日本の技術で価値ある製品に変わり、再びアフリカのリーダーたちの手に戻るという、素晴らしい循環を象徴しています。

カカオの可能性を広げる展示

明治のブースでは、「カカオはチョコレートだけのものではない」というメッセージが掲げられました。

カカオバイオプラスチックを使った食品トレーや、美容成分「カカオセラミド」を配合した「カカオボーテ」という美容チョコレートなど、さまざまな製品が展示されました。

これにより、カカオが食品だけでなく、文房具や包装材料、さらには美容分野でも新しい価値を生み出せる可能性が示されました。

持続可能な社会への貢献

複数の課題を同時に解決

明治の取り組みは、単に新しい技術や商品を作っただけではありません。

環境問題の解決、アフリカの経済発展への貢献、資源の有効活用、そして新しい市場の創造という、いくつかの大切な目標を一つの技術で同時に達成しようとしています。

カカオの廃棄部分に価値が生まれれば、農家の人たちは新しい収入源を得ることができ、経済的な状況が良くなる可能性があります。

グローバルな役割と今後の展望

TICAD9のような国際的な場で技術を紹介することは、これらの取り組みを世界に広める絶好の機会です。

明治の事例は、これからの企業が目指すべき持続可能なビジネスモデルとして、他の企業にも良い影響を与えるでしょう。

明治の挑戦は、カカオ産業の未来を変えるだけでなく、農業と製造業が一緒になって、新しい産業を生み出す可能性も秘めているのです。

明治のTICAD9参加は、単なる展示会への出展ではなく、より良い未来に向けた大切な一歩だったのです。

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