クイニーアマンとは|名前の意味や由来、どこの国の食べ物

クイニーアマンとは何か
バターと砂糖が織りなす、カリカリ・もちもちの贅沢菓子
フランス西部、ブルターニュ地方。その海風が吹き抜ける港町で生まれたのが「クイニーアマン」というお菓子です。表面は飴のようにカリカリと硬く、中はしっとり、もちっとした食感。噛むたびにバターと砂糖の濃厚な香りが広がります。
一見すると小さな焼き菓子ですが、その製法は非常に手がかかり、まるでクロワッサンを作るかのような緻密な工程を経て完成します。日本では1990年代の終わりに注目され、多くの洋菓子店やパン屋で一斉に取り扱われるようになりました。今ではすっかり人気の定番スイーツの一つです。
クイニーアマンの特徴
外見
内側
- しっとりとした質感
- もちもちとした弾力
- バターがジュワッと染み出す
クイニーアマンは、パン生地をベースにして作られます。その生地に大量のバターと砂糖を何層にも折り込み、高温で焼き上げることで、二つの対照的な食感が同時に生まれるのです。
クイニーアマンはパン?お菓子?
クイニーアマンを分類しようとすると、パンなのか、お菓子なのかという疑問に直面します。
製法を見れば、発酵させたパン生地を使っているという点でパンの技術が使われています。
しかし、大量のバターと砂糖を使い、デザートとして楽しまれるという点では、お菓子としての性格を強く持っているのです。
このように、クイニーアマンはパンとお菓子という二つのカテゴリーの境界線上に位置する、どちらの要素も併せ持つ存在だと理解するとよいでしょう。
クイニーアマンの名前の由来
クイニーアマンという名前は、フランス西部のブルターニュ地方で話されているブルトン語に由来します。
ブルトン語は、私たちがよく知るフランス語とは異なる独自の言語体系を持っており、今でもこの地方では使われ続けています。
「クイニー(kouign)」はケーキ、「アマン(amann)」はバターを意味します。この名前を直訳すると「バターケーキ」となりますが、実際のお菓子を見ると、一般的なケーキとはまったく異なる姿をしていることに気づくでしょう。
実際はバターを織り込んだパン生地を使用し、ケーキというよりもデニッシュやパイに近い存在です。
生地にはたっぷりのバターと砂糖を折り込み、高温で焼くことで、外はキャラメリゼされたようにカリッと、中はジュワッとバターが染みた食感に。バターの豊かな風味と、カラメルの香ばしさ。素材はシンプルなのに、驚くほど奥深い味わいが楽しめます。
クイニーアマンの発祥起源
誕生した場所
ブルターニュ地方は、フランスの西端に位置し、大西洋に面した半島部分を占めています。海に囲まれた冷涼な気候が牧草地の育成に適しており、古くから酪農が営まれてきました。
誕生した経緯
19世紀半ばのドゥアルヌネでは、小麦粉が不足するという状況がありました。
パンを焼く職人であったスコルディア氏は、この困難を乗り越えようと考えます。幸いにも、地元では良質なバターが豊富に手に入りました。そこで彼は、限られた小麦粉を有効に活用するため、生地に大量のバターを加えることを思いついたのです。
バターを加えれば生地のかさが増し、少ない小麦粉でも多くのパンを作れるのではないか。そう考えた彼の試みは、しかし予想外の結果を招きました。あまりにも多くのバターを加えたため、生地はべたついてまとまらず、通常のパンとして成形することができなくなってしまったのです。
普通であれば廃棄されるはずの失敗作でした。しかしスコルディア氏は、貴重な材料を無駄にすることに抵抗を感じました。そこで、その失敗した生地をそのまま焼いてみることにしたのです。
すると驚くべきことが起こりました。焼き上がった生地は、予想以上に香ばしく、深い味わいを持っていたのです。
この偶然の産物を周囲の人々に試食してもらうと好評を得ました。次第に町の人々の間で評判となり、時を経て、この失敗から生まれたお菓子はドゥアルヌネの町を代表する銘菓へと成長していったのです。
ブルターニュ地方での位置づけ
- フランス全土で知られているわけではない
- ブルターニュ地方特有の郷土菓子
- 家庭で作るより店舗で購入するのが一般的
- ドゥアルヌネには昔ながらの製法を守る老舗が存在
現在でも、発祥の地であるドゥアルヌネの町には、伝統的な製法を守り続けている店があります。
クイニーアマンの歴史:日本への伝来
このフランスの郷土菓子が日本に伝わったのは1998年前後のこと。この時期、日本の洋菓子業界では一つの動きがありました。それは、まだ日本では一般にあまり知られていない世界各地の伝統菓子を紹介しようという取り組みでした。
そしてフランス菓子について深い知識を持つ職人たちが、ブルターニュ地方のこのお菓子に着目したのです。
クイニーアマンは百貨店のスイーツ売り場や、製法にこだわりを持つベーカリーなどで販売されるようになりました。1998年頃から取り扱う店が増え、多くの人々の目に触れるようになっていったのです。
こうして、ブルターニュ地方の郷土菓子は、日本でも広く知られる存在となっていきました。
日本の消費者に受け入れられた要因
- 味の特徴
- 視覚的な魅力
- 黄金色の生地
- カラメルのツヤのある表面
- 手のひらに収まるサイズ感
- 名前の響き
- 日本語にも英語にもない独特の音
- 異国情緒を感じさせる
- 記憶に残りやすい
当時の日本では、ここまでバターと砂糖を前面に出した焼き菓子は珍しいものでした。一般的な洋菓子では、バターや砂糖は他の材料と調和させて使うことが多かったからです。クイニーアマンのように、バターと砂糖そのものの味わいを堂々と主張するお菓子は、日本人にとって新鮮に映りました。
日本独自のアレンジ
日本に入ってきた後、クイニーアマンは伝統的な製法を基本としながらも、様々な変化を遂げてきました。日本の職人たちは、基本形を大切にしながらも、独自のアレンジを加えるようになったのです。これらのアレンジは、日本の四季や食文化を反映したものとなっています。
洋風のアレンジ
- チョコレート入り
- カスタードクリーム入り
- りんご、洋ナシなどの果物入り
和風のアレンジ
- 抹茶味
- ほうじ茶味
- 小豆を組み合わせたもの
季節限定商品
- 春:桜を使ったもの
- 夏:柑橘類を加えたもの
- 秋:栗、さつまいもを組み合わせたもの
- 冬:チョコレートを強化したもの
日本での販売形態の多様化
店頭販売
- 焼きたてをその場で購入
- 専門店やベーカリーで提供
- 食感と香りを最も楽しめる形態
冷凍販売
- 自宅に持ち帰って焼き直す方式
- 家庭のオーブンで専門店に近い味を再現
- 保存が利くため買い置きが可能
冷凍した状態で販売する商品の登場により、消費者は自宅に持ち帰り、家庭のオーブンで焼き直すことができるようになりました。この方式は、焼きたての美味しさを自宅で楽しみたいという需要に応えるものとなりました。
クイニーアマンの派生形「クイニェット」
クイニーアマンから派生したバリエーションとして、クイニェットというものが存在します。
フランス語では、名詞の語尾に「エット(-ette)」をつけると「小さな」という意味を表す言葉になります。
つまりクイニェットは、文字通り「小さなクイニーアマン」という意味なのです。クイニーアマンをより気軽に楽しめるようにした派生品として人気があります。
サイズによる楽しみ方の違い
従来のクイニーアマンは、クイニーアマンは、フランス・ブルターニュ地方で親しまれる伝統的なバター菓子で、直径10cm前後の手のひらサイズが一般的。バターと砂糖がたっぷり使われているため、一個食べるとかなりの満足感があります。
これに対してクイニェットは、一口サイズに小型化されています。食べ歩きをする際や、複数個をお土産として購入したい時に便利な形態として考案されました。基本的な製法や使用する材料は同じであり、外側のカリッとした食感と、内側のもちっとした食感を楽しむことができます。
クイニーアマンの売り場と商品
ヤマザキパンのクイニーアマン
| 商品名 | 発売時期 | カロリー | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 生クイニーアマン | 2024年5月 | – | 生クリーム入り練乳風味クリームをサンド |
| おいもとあんこのクイニーアマン | 2024年11月 | 459kcal | つぶあんとさつまいもあん、ごまトッピング |
| バター香る クイニーアマン | 2025年3月 | – | 期間限定(3月8日~14日出荷分) |
| クイニーアマン(粒あん&ホイップ) | 2025年6月 | 464kcal | チルドデザート、粒あんとホイップクリーム |
ヤマザキパンでは、様々なタイプのクイニーアマン商品を製造しています。
冷凍タイプの「極生クイニーアマン」は、家庭のオーブントースターで温め直すことで、外はカリッと中はもちっとした食感を楽しむことができます。価格帯は商品によって異なりますが、おおむね100円台から200円台で購入可能です。
ヤマザキパンの商品は、季節や時期によって新しいフレーバーが登場するため、定期的に店頭をチェックすると新しい味わいに出会えるでしょう。
セブンイレブンのクイニーアマン
| 商品名 | 発売時期 | 価格 | カロリー |
|---|---|---|---|
| セブンプレミアム クイニーアマン 3個入 | 2024年10月15日 | 181円 | 194kcal/個 |
| クイニーアマン(復刻版) | 2024年10月29日 | – | 361kcal |
| あんクイニー | 2025年10月7日 | 203円 | 366kcal |
セブンイレブンでは、期間限定でクイニーアマン商品を展開しています。
2024年10月15日に発売された「セブンプレミアム クイニーアマン 3個入」は、ザクザクとした食感とバター風味豊かな味わいが楽しめる商品です。販売地域は、東北、関東、甲信越、北陸、東海、近畿、中国、四国、九州となっていました。
2024年10月29日には、「1998年に人気だったクイニーアマン」が復刻版として登場しました。この商品は直径約8センチほどの手のひらサイズです。
さらに2025年10月7日からは、あずき餡を入れた「あんクイニー」が発売されています。
ローソンのクイニーアマン
| 商品名 | 発売時期 | 価格 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| バター香るクイニーアマン | 2025年3月18日 | 149円 | 生地にバター飴を巻き込んで焼き上げ |
| クイニーアマンサンド 苺バタークリーム | 2025年3月18日 | 160円 | 苺ジャムと苺バタークリームをサンド |
| ショコラクイニーアマン | 2025年10月21日 | 171円 | チョコレートフレーバー |
| おいものクイニーアマン 紅はるか | 2025年10月28日 | 171円 | さつまいも使用 |
2025年3月18日、ローソンは専門店品質を目指したクイニーアマン2品を発売しました。これらの商品は、ローソンの商品開発担当者が韓国の専門店で見た商品からヒントを得て開発されました。
「バター香るクイニーアマン」は、生地にバター飴を巻き込んで焼き上げ、噛めば噛むほどバターの風味が口の中に広がります。
「クイニーアマンサンド 苺バタークリーム」は、発酵バター入りマーガリンを使用したデニッシュ生地で、酸味のある苺ジャムと練乳を使用した苺バタークリームがサンドされています。
2025年10月には新フレーバーも登場し、フレーバーの展開が続いています。
ファミリーマートのクイニーアマン
| 商品名 | 発売時期 | 価格 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| デニッシュメロンパン×クイニーアマン | 2025年10月7日 | 185円 | 裏側がクイニーアマン仕立て |
| チーズケーキデニッシュ×クイニーアマン | 2025年10月7日 | 198円 | 裏側がクイニーアマン仕立て |
| アップルパイタルト×クイニーアマン | 2025年10月7日 | 198円 | 裏側がクイニーアマン仕立て |
| おいものクイニーアマン | 2024年9月24日 | 250円 | おいもホイップとスイートポテトあん、冷やして食べる |
| ヘーゼルナッツのクイニーアマン | 2025年2月11日 | 168円 | 435kcal |
2025年10月7日、ファミリーマートは「オモテもウラもおいしいパン」シリーズとして、人気のパンをひっくり返すと裏側がクイニーアマン仕立てになっている商品3種類を発売しました。
これらの商品は、人気のパンの底に発酵バター風味のあめフィリングを敷いて焼き上げることで、表面はパン本来の味わいを楽しみつつ、裏返すとクイニーアマンのようなカリッとした食感を味わえる仕組みになっています。
また、2024年9月24日には「おいものクイニーアマン」が発売されました。おいもホイップとスイートポテトあんを包んだ、冷やして食べるタイプのクイニーアマンです。
2025年2月11日には「ヘーゼルナッツのクイニーアマン」が発売され、アメフィリングとヘーゼルナッツを巻き込んだ商品となっています。
カルディのクイニーアマン
カルディコーヒーファームでは「ぬって焼いたらクイニーアマン」という商品が販売されています。これは食パンに塗って焼くだけでクイニーアマンのような味わいを楽しめるスプレッドです。
中身は柔らかなクリーム状で、ショートニングをベースにバターや砂糖、キャラメルパウダーなどが混ぜ込まれています。冷蔵ではなく通常の売り場に置かれており、直射日光を避けて30度以下で保存できます。開封後も30度以下で保存する必要があり、冷えると固まってしまうため、真夏で室温が高くなりすぎる場合は冷蔵庫に移し、使用前に早めに取り出しておくとよいでしょう。
食パンにたっぷりと満遍なく塗り、オーブントースターで焼くと、表面がカリカリ・サクサク、内側はしっとり・ふんわりとした食感になります。デニッシュ食パンに塗ると、生地が層になっているためクイニーアマンらしい食感がさらにアップします。クロワッサンに塗って焼くアレンジも可能で、表面がこんがりパリパリに仕上がります。
この商品は発売当初から人気が高く、一時期は店頭で品切れになることもありました。
2025年3月時点では、カルディのオンラインストアおよび店頭で購入可能となっています。ただし、クリームが溶けてヒーターに垂れると発火の恐れがあるため、焼く際はパンをオーブン皿にのせる必要があります。
カルディでは、フランスから輸入された本格的なクイニーアマンや、フランス風のバター菓子を見つけることができる場合もあります。ただし、これらは店舗や時期によって品揃えが異なるため、確実に購入したい場合は事前に店舗に確認するとよいでしょう。
クイニーアマンの伝統的な作り方
折り込み作業
基本的な手順
- パン生地を作る
- 生地を長方形に伸ばす
- バターを生地の上に置く
- 生地でバターを包み込む
- 再度伸ばして折りたたむ
- 冷蔵庫で休ませる
- この工程を複数回繰り返す
この作業は「折り込み作業」と呼ばれ、クロワッサンを作る時と同じ技法です。この工程を何度も繰り返すことで、生地とバターが何十層にも重なった状態を作り出します。
クイニーアマンの場合、バターだけでなく砂糖も一緒に折り込んでいきます。
この点が、製法をさらに複雑にしている要因です。砂糖には湿気を吸いやすいという性質があり、また温度が上がると溶けやすくなります。
- 室温が高すぎる場合:バターが柔らかくなりすぎて生地に混ざり、層が作れない
- 室温が低すぎる場合:バターが硬くなって生地を伸ばす時に割れる
- 湿度が高い場合:砂糖が水分を吸って溶け、生地がべたつく
このため、作業する部屋の温度や湿度を適切に管理することが極めて重要になります。プロの職人は、季節や天候によって作業の進め方を微調整しているのです。
焼成
折り込み作業が完了したら、生地を適切な大きさに切り分け、型に入れます。続いて焼成の工程に移りますが、ここでも高い技術が必要です。バターは熱で溶けると液体になり、生地の層が崩れてしまうことがあります。そのため、焼く時間や温度の調整はほんの少しの差で仕上がりを左右するほど繊細な作業なのです。
クイニーアマンの家庭での作り方
家庭でクイニーアマンを作ることも可能です。レシピ自体は基本的な材料だけで構成されているため、特別な材料を揃える必要はありません。ただし、折り込み作業には時間と根気が必要です。
基本的な材料
必要な道具
- 麺棒:生地を伸ばすために使用
- オーブン:高温で焼成できるもの
- 冷蔵庫:生地を休ませる場所
- 型:成形に使用(マフィン型など)
クイニーアマンの簡易的な作り方
完全に本格的なクイニーアマンと同じものにはなりませんが、手軽にその雰囲気を味わいたい時には便利な方法です。この方法であれば、折り込み作業の手間を大幅に省くことができます。
家庭で作る際の重要なポイントは、温度管理です。
バターが溶けすぎないように、作業の合間に生地を冷蔵庫で休ませることが成功の鍵となります。また、最初から完璧を目指すのではなく、何度か作って感覚をつかむことも大切です。
クイニーアマンのカロリー
| サイズ | カロリー(目安) |
|---|---|
| 通常サイズ(直径約10cm) | 約300〜400kcal |
| クイニェット(一口サイズ) | 約100〜150kcal |
| コンビニサイズ(小型) | 約200〜300kcal |
クイニーアマンを食べる際に考慮すべき点として、カロリーがあります。
このお菓子は、大量のバターと砂糖を使用しているため、他の焼き菓子と比べてカロリーは高めです。ただし、これはサイズや製法によって大きく変わります。
バターと砂糖をたっぷり使った贅沢な味わいを楽しむお菓子ですので、カロリーを気にする場合は、食べる量やタイミングを調整するとよいでしょう。
小型のクイニェットを選ぶ、あるいは一個を数回に分けて食べるといった工夫も考えられます。
まとめ
クイニーアマンは、19世紀のブルターニュ地方で、小麦粉不足という困難な状況の中から偶然生まれた焼き菓子でした。パン職人スコルディア氏の失敗から生まれたこのお菓子は、発祥の地では長く愛され続け、やがて海を越えて日本にも伝わりました。
1998年頃に日本で知られるようになってから、現在では定番の焼き菓子の一つとして定着しています。シンプルな材料だけで作られるにもかかわらず、折り込みの技術や焼き方によって、その味わいや食感は大きく変わります。
今では、専門店で本格的なものを楽しむこともできれば、コンビニやスーパーで手軽に購入することもできます。また、家庭で作ることにチャレンジすることも可能です。各地の職人たちがそれぞれの工夫を加えながら、このお菓子は今も作り続けられています。
もしまだ食べたことがない方がいれば、専門店で本格的なクイニーアマンを味わってみてください。バターと砂糖が織りなす香ばしさを、きっと体験できるはずです。





