イトウ製菓とは
イトウ製菓は、1952年の創業以来、70年以上にわたってクッキーとビスケットの製造に特化してきた日本の製菓メーカーです。
森永製菓や明治、グリコといった幅広いお菓子を手がける総合製菓メーカーとは一線を画し、一つの分野に経営資源を集中させることで、独自の専門性と高い技術力を築いてきました。
その製品は、「ミスターイトウ」というブランド名で多くの人々に親しまれています。
ビスケットに特化した強み
イトウ製菓がクッキーとビスケットに特化し続けることには、深い理由があります。
多くの企業が売上拡大のために商品の種類を増やす中で、イトウ製菓は「おいしくて、安心して食べられるクッキーづくり」というたった一つの目標に集中することを選びました。
この経営方針が、他社にはない独自の強みを生み出しています。
イトウ製菓は、会社の経営資源、つまりお金や人材、時間をクッキーとビスケットの品質向上と技術開発に集中的に投資してきました。
この選択によって、他社が真似できないほどの専門的な知識と製造技術を蓄積することが可能になりました。
これにより、同社の製品は高い品質を維持し続け、消費者の信頼を獲得しています。
長年愛される「ミスターイトウ」ブランド
イトウ製菓の製品は「ミスターイトウ」というブランド名で、市場に広く浸透しています。
このブランドは、イトウ製菓の技術力と品質の象徴として多くの消費者に認識されています。
ベーシックシリーズ:40年以上のロングセラー
このブランド価値を支えているのが、同社の主力商品である「ベーシック」シリーズです。
このシリーズは「バタークッキー」「バターサブレクッキー」「チョコチップクッキー」の3種類から構成されています。
1981年11月の発売から40年以上が経った現在でも、イトウ製菓を代表する商品として、多くの人々に愛され続けています。
お菓子の流行は変化が激しく、通常は数年で市場から姿を消す商品がほとんどです。
しかし、ベーシックシリーズがこれほど長い期間にわたって支持されているのは、「クッキー本来のおいしさを大切にする」という基本コンセプトに徹底的にこだわっているから。
この考え方に基づき、流行に左右されない普遍的なおいしさを追求したことで、世代を超えて愛される商品となりました。
最新データから見る驚異的な成長と市場の変化
イトウ製菓のベーシックシリーズの強さは、近年の販売データからも明らかです。
小売業界で広く使われているKSP-POSデータという販売分析システムによると、2024年の販売金額は驚くべき成長を記録しています。
これらの数字は、発売から40年以上が経過した商品が、今でも新しい顧客を獲得し続けているという、非常に珍しい事実を示しています。
しかし、2025年に入ると、前年の高成長の反動もあり、「バタークッキー」と「バターサブレクッキー」の販売は微増にとどまりました。
それでもなんと「チョコチップクッキー」は19%増と二桁の成長を維持しています。
この動向は、消費者の好みがより細分化していることを物語っている考えられます。
2025年秋季に実施した品質改良
イトウ製菓は、この市場の変化に対応するため、2025年秋にベーシックシリーズの品質改良を実施しました。
クッキーやビスケットは、気温が下がる秋冬シーズンに消費が増加する傾向があります。
特に年末年始は贈答品としての需要も高まります。
同社は、この需要期に合わせて改良商品を投入することで、再びシリーズ全体を成長軌道に乗せる戦略を立てています。
品質改良には、イトウ製菓の長年にわたる技術力が集約されています。
バタークッキーの改良:サクサク食感の追求
バタークッキーは、よりサクサクとした食感へと改良されました。
クッキーのサクサク感を生み出すためには、小麦粉の配合比率、バターの質と量、そして焼く温度と時間など、複数の要素を精密に調整する必要があります。
これは、長年培ってきた製造ノウハウと高い品質管理技術があってこそ可能となる、職人技のようなものです。
イトウ製菓のクッキーへの深い理解と情熱が、この繊細な食感の実現につながっています。
バターサブレクッキーの改良:二段階の「サクホロ」食感
バターサブレクッキーは、「サクホロ」とした食感になりました。
「サクホロ」とは、口に入れた瞬間にサクサクとした歯ごたえを感じた後、ほろほろと口の中で崩れていく二段階の食感のことです。
この独特で心地よい食感を安定して作り出すためには、原材料の選定から製造工程の管理まで、非常に高度な技術力が求められます。
イトウ製菓は、この複雑な食感を見事に商品として安定させることに成功しました。
パッケージのリニューアルと内容量
品質改良と同時に、パッケージも新しくなりました。
ベーシックシリーズの3商品すべてで、内容量がひと目でわかるように表記が変更されました。
これらの商品は、メーカーが小売価格を決めず、販売店が自由に価格を設定するオープン価格で提供されています。
イトウ製菓の新商品
焼きチョコタルト ホワイトブリュレ
2025年9月1日に発売された「焼きチョコタルト ホワイトブリュレ」は、「ちょっと贅沢、ちょっと大人な」がコンセプトの「タルト」シリーズの新商品です。
この商品の最大の特長は、「アフターデポ製法」という独自の技術が使われていることです。
通常、焼き菓子は生地と中身を一緒に焼きますが、この製法では生地を先に焼いてから、後でホワイトチョコのフィリングを絞り入れます。
この画期的な方法によって、表面は香ばしく、中はとろけるような、これまでの焼きチョコにはない新しい食感を実現しています。
新プレッツェルシリーズ:日本人好みの味わいを追求
実はイトウ製菓は、日本で初めてプレッツェルの製造・販売を開始したパイオニアです。
ドイツ発祥のプレッツェルを日本人の味覚に合わせて改良を重ね、独自の風味を作り上げてきました。
現在の「プレッツェル」シリーズは、日本人の好みに合わせたクセの少ない味わいが特長です。
そのプレッツェルの新商品として、以下の2種類が発売されました。
やみつきチェダーチーズ味
コクのあるチェダーチーズの風味が口いっぱいに広がり、一度食べ始めると止まらなくなる美味しさです。
濃厚なチーズの味わいは、お子様から大人まで幅広い層に愛されるでしょう。
さらに、カリッとしたプレッツェルの食感とチーズの風味が絶妙にマッチし、まさに商品名通り「やみつき」になる味わいです。
塩わさび味
わさびのツンとした辛みと醤油のまろやかなうま味が絶妙なバランスで組み合わされた、日本ならではの味わいです。
わさびの刺激的な香りが、プレッツェルの香ばしさを引き立て、飽きのこない後味を生み出しています。
ビールや日本酒などのおつまみとしても最適な、和のテイストが光る一品です。
イトウ製菓の未来
これらの商品展開を通じて見えてくるのは、イトウ製菓が単なる伝統的なお菓子メーカーではなく、常に技術革新と市場の変化への対応を続けている企業だということです。
40年以上愛されるベーシックシリーズの継続的な改良、独自製法による新商品開発、そして日本初のプレッツェル製造という歴史的な挑戦は、すべて同社の高い技術力と深い消費者理解を示しています。
特に重要なのは、専業メーカーとしてのメリットを最大限に活かしている点です。
クッキーとビスケットに特化することで、この分野での技術的な蓄積は他社の追随を許さないレベルに達しており、それが商品の品質と独自性につながっています。
また、市場の変化に対する感度も高く、販売データを詳細に分析しながら適切なタイミングで商品改良や新商品投入を行う戦略性も備えています。
イトウ製菓は今後も、日本のクッキー・ビスケット業界において、独特のポジションを維持し続けることでしょう。
総合製菓メーカーとは異なる専業メーカーならではの強みを活かし、品質と技術力に基づいた商品開発を継続することで、消費者の支持を獲得し続けているのです。
この70年以上にわたる一貫した経営姿勢こそが、イトウ製菓という企業の本質を物語っています。