タルトという言葉を聞くと、多くの人が洋菓子のタルトを思い浮かべるかもしれません。
しかし、愛媛県松山市には、有名な「一六タルト」に代表されるように、洋菓子のタルトとは全く異なる「松山のタルト」という郷土菓子があります。
この記事では、松山のタルトの特徴と歴史を主軸に、洋菓子のタルトとの違いを解説します。
松山のタルトとは
松山のタルトは、薄く焼いたカステラ生地で餡を巻いたロールケーキ状の和菓子です。
細長い筒状をしており、輪切りにして食べるのが一般的です。
見た目は洋菓子のタルトとは似ておらず、表面は薄い茶色をしており、一見するとバウムクーヘンのような外観を持ちます。
カステラ生地のやわらかな食感と、中に巻かれた餡のしっとりとした口当たりが特徴です。
松山のタルトの起源
松山のタルトの起源は江戸時代にさかのぼります
1647年に松山藩主であった松平定行がポルトガルから持ち帰ったとされる菓子が始まりとされています。
ポルトガル語で様々な焼き菓子を指す「torta」(トルタ)という言葉が、日本に伝来した際に「タルト」として定着したと考えられています。
ただし、現在のポルトガルのトルタと松山のタルトは製法も外観も大きく異なっており、日本に伝わった後、独自の発展を遂げた菓子といえます。
松山のタルトの材料
松山のタルトの材料として柚子があげられます。
愛媛県は柚子の産地としても知られています。
薄く焼いたカステラ生地に、柚子風味の白餡や小豆餡を塗り、それを巻いて作られます。
そのため、断面を見ると美しい渦巻き模様が現れます。
現在では、従来の柚子餡に加えて、チョコレートや抹茶、季節の果物を使った餡など、様々な種類も作られています。
洋菓子のタルトとの違い
松山のタルトは、同じ名前を持つ洋菓子のタルトと全く異なる菓子です。
この二つのタルトは、起源、製法、外観、そして材料が異なります。
起源の違い
洋菓子のタルトは、中世ヨーロッパで発展したもので、元々は肉や魚などを入れた食事でした。
これは、食材を長期間保存するための工夫でもありました。
一方、松山のタルトは、江戸時代にポルトガルから伝わった後、日本独自の発展を遂げた和菓子です。
製法の違い
洋菓子のタルトは、小麦粉とバターを混ぜた生地を皿状に成形し、具材をのせて焼くという製法です。
これに対し、松山のタルトは、薄く焼いたカステラ生地に餡を塗って巻くという製法です。
外観の違い
洋菓子のタルトが皿状であるのに対し、松山のタルトはロールケーキのような筒状をしています。
材料の違い
洋菓子のタルトがバターや小麦粉を主材料とするのに対し、松山のタルトはカステラ生地と餡、そして柚子を使います。
まとめ
同じ「タルト」という名前を持つ洋菓子のタルトと松山のタルトは、全く異なる菓子です。
洋菓子のタルトは、皿状の生地に具材をのせた焼き菓子で、中世ヨーロッパから発展しました。
松山のタルトは、カステラ生地で餡を巻いた和菓子で、江戸時代に日本独自の発展を遂げました。
両者はそれぞれ異なる文化的背景を持ち、それぞれの歴史の中で育まれてきた、価値ある食文化の一部といえるでしょう。