パチパチと弾ける食感が特徴的なお菓子は、過去に死亡事故の噂が広まったことがあります。
この記事では、パチパチパニックやドンパッチといったお菓子に関連する死亡事故説の真相について、商品の歴史や製造技術を順を追って解説していきます。
パチパチするお菓子の仕組みと歴史
パチパチするお菓子は、キャンディーの中に炭酸ガスを閉じ込めるという特殊な技術で作られています。
口の中でキャンディーが溶けると、封じ込められていた炭酸ガスが一気に放出され、パチパチという音と刺激が生まれます。
アメリカでの誕生
この技術が初めて使われたのは、1970年代後半のアメリカでした。
アメリカのゼネラルフーズ社が「ポップロックス」という名前で、このお菓子を発売しました。
高圧で炭酸ガスをキャンディーに封じ込める製造工程は非常に複雑で、当時この技術を持っていたのはごく一部のメーカーでした。
日本での展開
日本では1979年頃、味の素ゼネラルフーズ(現在のAGF)がこのポップロックスのライセンス契約を結び、「ドンパッチ」という商品名で販売を開始しました。
ドンパッチは、それまで日本に存在しなかった食感のお菓子として、子どもたちを中心に話題になりました。
炭酸ガスの圧力が非常に高く、人によっては「痛い」と感じるほど強い刺激が特徴でした。
死亡事故説の発生
この強烈な刺激が、後に商品の販売に影響を与える問題を引き起こすことになります。
噂の拡散
ドンパッチが販売されてしばらくすると、「大量に食べると危険」「口の中で爆発してやけどをした」「胃の中で爆発して死亡した人がいる」といった、不安を煽るような噂が広まり始めました。
特に、「炭酸飲料と一緒に大量摂取すると死亡する」という話は、多くの人に恐怖心を与えました。
噂が生まれた背景
これらの噂が広まった背景には、いくつかの要因が考えられます。
まず、お菓子の持つ前例のない強烈な刺激が、人々に「危険なのではないか」という不安を抱かせました。
また、「炭酸ガス」という言葉と「爆発」という表現が結びつき、消費者の間で漠然とした恐怖心が生まれたことも影響しました。
噂に対する企業の対応
ゼネラルフーズは、広まった噂を否定し、商品の安全性を証明するために対応を行いました。
ゼネラルフーズは、5年間にわたる安全性の調査を実施し、ドンパッチに健康被害を引き起こす要因がないことを確認しました。
アメリカでも日本でも、ドンパッチやポップロックスによる死亡事故は一件も報告されていませんでした。
しかし、一度広まった不安を完全に払拭することは困難でした。
ドンパッチの製造中止
ドンパッチは、最終的に2000年に製造が中止されました。
中止の理由
公式には製造中止の理由は発表されていません。
しかし、長年にわたる風評被害が売上に影響を与え、事業継続が困難になった可能性は考えられます。
類似商品「わたパチ」の販売終了
ドンパッチの製造中止後も、同じような仕組みを持つお菓子は販売されていました。
わたパチは長い間販売されていましたが、2016年8月をもって製造・販売が終了しました。
明治製菓は、この件について事前の告知や公式な終了理由を公表していません。
「わたパチ」の構造
1988年に明治製菓から発売された「わたパチ」は、ふわふわの綿菓子の中にパチパチ弾けるキャンディーが入っている構造でした。
口の中でまず綿菓子が溶け、その後にキャンディーの刺激が感じられる、二段階の食感が楽しめる商品でした。
わたパチのキャンディーも、炭酸ガスを封じ込める技術で作られていました。
死亡事故説との関連性
わたパチの突然の販売終了は、インターネット上で様々な憶測を生みました。
「ドンパッチの死亡事故説が影響したのではないか」という推測もその一つでした。
しかし、ドンパッチの製造中止からわたパチの販売終了までは16年という時間が経過しており、直接的な関連性は薄いと考えられます。
明治製菓は、事故や健康被害が原因で生産を終了する場合は公表する方針を持っています。
わたパチに関して特別な発表がないことから、安全上の問題が原因ではないと推測されます。
パチパチパニックの現状
現在も類似商品として「パチパチパニック」が販売されています。
パチパチパニックの安全性
パチパチパニックは明治産業が製造しており、これまでに死亡事故が発生したという確実な報告はありません。
ドンパッチの時と同様に、様々な噂が存在しますが、これらは科学的根拠に基づかない都市伝説です。
炭酸ガス入りキャンディーと炭酸飲料を同時に大量摂取することは推奨されませんが、これが直接的に死亡に繋がるという医学的証拠もありません。
まとめ
パチパチ系のお菓子に関する死亡事故説は、商品の持つ独特な刺激と炭酸ガスという成分への漠然とした不安から生まれたものです。
しかしドンパッチ、わたパチ、パチパチパニックのいずれにおいても、実際に死亡事故が発生した事例は確認されていません。
本件の真相は定かではありませんが、商品の生産終了は、売上の減少や製造コストなど、経営上の判断によるものが大半です。
事実に基づかない噂が、商品の販売に影響を与える可能性もあり、近年はSNSの発達によって噂も拡散されやすいため、食品業界はより世間の関心についてよくチェックしておくことが重要になります。