赤福氷とは
赤福氷は、伊勢を代表する和菓子店「赤福」が提供するかき氷です。
冷たい氷の中に、特別な餡と餅が入っていることが特徴です。
夏季限定で販売される商品として知られています。
赤福氷について深く知るには、まずこの商品を生み出した「赤福」という会社から理解を深める必要があります。
赤福という会社について
創業と歴史
赤福は、宝永4年(1707年)に創業した、300年以上の歴史を持つ和菓子店です。
三重県伊勢市にあり、伊勢神宮の内宮の鳥居前町にお店を構えています。
この場所は、伊勢神宮を参拝する人々が必ず通る道沿いにあるため、古くから多くの人が訪れる場所でした。
赤福という店名を持つこの会社は、長く伊勢の地で商いを続けてきました。
赤福餅
赤福が全国的に知られるようになったのは、**「赤福餅」**という和菓子を通してでした。
赤福餅は、伊勢を代表する名物として定着し、伊勢を訪れる多くの人々に愛される商品になりました。
しかし、夏場になると暑さのために、温かい和菓子よりも冷たいものを求める人が増えてきます。
そこで赤福は、夏の季節に適した新しい商品の開発に取り組むことになりました。
赤福氷の誕生
開発のきっかけ
赤福氷が誕生したのは、昭和36年(1961年)のことです。
当時の日本では、夏のレジャーとして海水浴が広く親しまれていました。
特に三重県の二見浦は、伊勢神宮からも近く、参拝と海水浴を組み合わせて楽しむ人々で賑わっていました。
赤福の経営者は、このような暑い夏の日に海水浴を楽しむお客さんに、何か冷たくて美味しいものを提供できないかと考えました。
商品化までの道のり
その発想から生まれたのが、赤福氷の原型でした。
しかし、最初から現在のような完成された形だったわけではありません。
赤福氷は誕生後も、お客さんの反応を見ながら改良を重ねていきました。
冷たい氷の中に入れる餡や餅の質感、抹茶蜜の配合、氷の削り方など、さまざまな要素について試行錯誤が繰り返されたと考えられています。
赤福氷の構成
純氷
現在の赤福氷の構成要素の一つ目は、純氷を削って作られたかき氷です。
この氷は、口どけの良さを重視して作られており、舌触りが滑らかになるように配慮されています。
抹茶蜜
二つ目の要素は、氷の上にかける抹茶蜜です。
この抹茶蜜は単純な甘いシロップではありません。
特製の蜜と抹茶の粉末を合わせて作られており、抹茶の香りを引き立てるように特別に調合されています。
この抹茶蜜は、ただ甘いだけでなく、氷と一体になるような工夫がされています。
これが赤福氷の風味を構成する上で重要な要素となっています。
餡と餅の工夫
氷の中の餡と餅
赤福氷の最も大きな特徴は、氷の中に入っている餡と餅です。
これらは氷の中に別々に入れられており、スプーンで掘り進めると現れます。
一口食べるたびに、異なる食感と味わいを楽しむことができます。
ここで重要なのは、この餡と餅が、通常の赤福餅に使われているものとは違う特製品であることです。
なぜ特製品が必要なのか
なぜ特製の餡と餅が必要なのかを理解するためには、冷たい環境が食材に与える影響を考える必要があります。
通常の餡や餅を冷たい氷の中に入れると、温度の低下によって硬くなってしまいます。
また、冷たさによって味覚が鈍くなるため、常温で食べる時と同じ味の濃さでは物足りなく感じられます。
さらに、氷が溶ける時に生じる水分によって、餡や餅の味が薄まってしまう可能性もあります。
餡と餅の開発
これらの問題を解決するため、赤福では赤福氷専用の餡と餅を開発しました。
餡については、冷たさの中でもなめらかな口あたりを保ち、小豆本来の香りが感じられるよう工夫されています。
餅についても、冷えても硬くならない特別な製法で作られており、氷の中でもやわらかな食感を維持できるようになっています。
このような技術的な工夫により、冷たい氷と和菓子という、一見すると合わない要素を見事に調和させることに成功したのです。
赤福氷を味わう
食べる時の体験
赤福氷を実際に食べる際の体験について詳しく見てみましょう。
まず目に入るのは、器にこんもりと盛られた白い氷です。
この氷の表面には緑色の抹茶蜜がかけられており、見た目にも涼しげな印象を与えます。
スプーンで氷を崩しながら食べ進めると、氷の中から甘いこしあんとやわらかい白餅が現れます。
味わいの特徴
口の中では、氷の冷たさ、抹茶蜜の香り高い甘味、こしあんのとろりとした甘さ、そして餅のやわらかな食感が混ざり合います。
これらの要素が、複層的な味わいを生み出します。
この赤福氷には、冷たいほうじ茶も付いてきます。
これは食べる体験を完結させるための重要な要素です。
ほうじ茶の役割
甘いかき氷を食べた後にほうじ茶を飲むことで、口の中がすっきりとし、最後まで美味しく食べることができます。
このような細やかな配慮も、長年にわたって愛され続ける理由の一つと言えるでしょう。
ほうじ茶は、味のバランスを整えるための役割を担っています。
アレルゲン情報
アレルゲンについての情報も重要です。
赤福氷には、特定原材料等に該当するアレルゲンは含まれていないとされています。
これは、多くの人が安心して楽しめることを意味しています。
家族連れや様々な体質の人々が一緒に食べられる商品として配慮されていることが分かります。
赤福氷の販売
販売期間
赤福氷は、夏季限定の商品として位置づけられています。
毎年の販売期間は、概ね4月下旬頃から10月中旬頃までです。
気温の上昇とともに販売が開始され、涼しくなってくると販売が終了します。
ただし、店舗によって販売開始日や終了日が若干異なるため、確実に食べたい場合は事前に各店舗の情報を確認することが必要です。
2025年の販売事例
2025年の販売例を見ると、多くの店舗で4月19日から販売が開始されました。
これには内宮前支店、五十鈴川店、外宮前店などが含まれます。
本店別店舗は、4月24日からの販売開始となりました。
販売終了日については、10月13日に終了する店舗と10月14日に終了する店舗があります。
店舗によって販売スケジュールに違いがあることがあります。事前に確認しておきましょう。
販売場所
代わりに、本店の目の前にある**「本店別店舗」**で提供されています。
これは、本店が赤福餅の販売に特化しているのに対し、赤福氷は専用の設備が必要なためと考えられます。
本店別店舗では、入り口で食券を購入し、それを持って注文するシステムになっています。
価格
価格は800円(税込)です。
これは氷菓としては決して安くない価格ですが、専用の餡や餅、特製の抹茶蜜などを考慮すると、妥当な価格設定と言えるでしょう。
電話予約は受け付けていない
電話予約は受け付けていないため、食べたい場合は直接店舗を訪れる必要があります。
開店してすぐの時間帯は席が空いていることが多く、ゆっくりと食べることができます。
赤福氷の伊勢での位置づけ
地元伊勢での赤福氷の位置づけを見ると、これは単なる商品を超えた文化的な存在になっていることが分かります。
地元の人々の間では、暑くなってくると「今年はもう赤福氷を食べたわ」といった会話が挨拶代わりに交わされます。
このような会話は、赤福氷が季節の到来を告げる風物詩として地域に根付いていることを示しています。
まるで桜の開花やセミの鳴き声と同じように、赤福氷の販売開始が夏の訪れを感じさせる一つの指標となっているのです。
三重県外での展開
三重テラスでの販売
近年では、三重県外での販売機会も設けられています。
2025年9月には、東京・日本橋の三重テラスで3日間限定の実演販売が実施されました。
この販売は9月21日から23日まで行われ、前売券制での販売となりました。
前売券は30分刻みの時間指定券として販売され、多くの注目を集め、完売しました。
東京での同時販売
この東京での販売と同時に、定番の赤福餅12個入も数量限定で販売されました。
価格は1,300円(税込)で設定され、自宅用や贈答用として多くの人に利用されました。
また、白黒餅8個入(1,100円税込)やオリジナルグッズなども併せて販売されました。
これは、三重の食文化を首都圏に紹介する機会となりました。