ラクトアイスが「食べるプラスチック」と呼ばれる理由を徹底解説

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私たちがコンビニエンスストアやスーパーマーケットで手軽に購入できる冷たいデザートの中に、実は「食べるプラスチック」という衝撃的な表現で呼ばれている商品があることをご存知でしょうか。この物騒な名前で呼ばれているのがラクトアイスです。

目次

ラクトアイスが「食べるプラスチック」と呼ばれる理由

ラクトアイスが「食べるプラスチック」と呼ばれる理由は、主に植物性油脂を加工する過程で生じるトランス脂肪酸の人工的な性質と、それが健康にもたらすリスク、そして海外での厳しい規制にあります。

この表現は比喩的なものであり、ラクトアイスが実際にプラスチック素材で作られているわけではありません。

しかし、トランス脂肪酸が自然界にはほとんど存在しない人工的な脂肪酸であり、その分子構造がプラスチックの人工的な構造と重ね合わせられたことで、この強い表現が生まれました。

以下より、この結論に至るまでの詳細な背景を、初歩から順を追って解説していきます。

ラクトアイスの定義

日本の食品衛生法では、冷凍デザート類を乳成分の含有量によって4つのカテゴリーに厳密に分けています。

この法律による分類は、私たちがお店でアイスを選ぶときに、そのアイスが「牛乳が多いか」「油が多いか」などがすぐにわかるようにするための、大切なルールです。

アイスの分類基準は乳成分の量で決まる

この分類の基準となるのは、アイスの中にどれくらいの量の「乳固形分」と「乳脂肪分」が含まれているかという2つの数値です。この数値がアイスの品質と栄養を決定します。

乳固形分とは

乳固形分とは、牛乳に含まれている水分以外の全ての成分を指します。

これには、私たちにとって大切なタンパク質やカルシウム、乳糖などの栄養素が含まれており、アイスの栄養価や牛乳の風味の濃さを決める要素となります。乳固形分の量が多ければ、それだけ牛乳由来の栄養が豊富だと言えます。

乳脂肪分とは

乳脂肪分は、牛乳に含まれている油分、つまり脂質のことです。

この成分が、アイスを食べたときの「コク」や「なめらかな舌触り」を生み出す主な要因となります。乳脂肪分が多いほど、アイスクリームのように濃厚で口どけの良い食感になります。

4つのアイスの種類と乳成分の基準を比較する

スクロールできます
種類乳固形分の量乳脂肪分の量
アイスクリーム15パーセント以上8パーセント以上
アイスミルク10パーセント以上3パーセント以上
ラクトアイス3パーセント以上規定なし
氷菓3パーセント未満規定なし

日本の法律で定められた、4つの冷凍デザートの分類基準は上の表の通りです。

この表を見るとラクトアイスは、乳固形分がわずか3パーセント以上あれば良く、乳脂肪分については特に規定がないことがわかります。この乳成分の少なさが、後述する植物性油脂の使用へとつながります。

ラクトアイスに使用するもの

ラクトアイスは、法律の基準を見ると、牛乳由来の成分が他のアイスに比べて非常に少ないことがわかります。

しかし、実際にラクトアイスを食べてみると、見た目や食感は白くてクリーミーで、牛乳のような風味を感じることがあります。

牛乳がほとんど入っていないのに、なぜこのような乳製品らしい風味を感じることができるのかを説明します。

植物性油脂

ラクトアイスの原材料表示を見ると、牛乳由来の乳脂肪の代わりに植物性油脂が使われていることがわかります。これが、クリーミーさの主な要因です。

植物性油脂は、大豆油、パーム油、ココナッツ油などの植物から抽出された油のことで、牛乳から得られる乳脂肪よりもはるかに安価で入手できます。そのため、製造コストを抑えるためにラクトアイスでは植物性油脂が主に使用されることが多いです。

植物性油脂は乳脂肪と異なり、そのまま使用しても私たちが期待するアイスクリームのような滑らかな質感は得られません。また、油と水は自然な状態では決して混ざり合わない性質を持っています。

これらの課題を解決し、滑らかなアイスを作るために、製造過程で様々な食品添加物が使用されます。

食品添加物

油(植物性油脂)と水(水分や砂糖水など)を均一に混ぜ合わせ、滑らかな状態を保つために、ラクトアイスの製造ではいくつかの食品添加物が重要な役割を果たします。

乳化剤

油と水を強制的に混ぜ合わせる働きがあるのが乳化剤という添加物です。

乳化剤は、油の粒と水の粒の間に橋渡しをするような働きをすることで、本来混ざらない油と水を均一に混ぜ合わせ、安定した状態にします。

この働きを乳化といい、マヨネーズやマーガリンの製造でも同様の原理が使われています。

安定剤

さらに、乳化によって混ぜ合わせた状態を長期間維持し、アイスの結晶が大きくならないようにするために安定剤が加えられます。

この安定剤によって、ラクトアイス特有の、溶けにくい食感や、アイスクリームらしい滑らかな見た目が保たれます。

また、流通の過程で温度変化があっても品質が変化するのを防ぐ目的もあります。

香料と着色料

少ない牛乳成分でもアイスクリームらしい風味を出すために香料が使用されます。

また、製品に食欲をそそる色をつけるために着色料も使用されます。

これらの添加物によって、乳成分が少なくても消費者が期待するアイスらしい製品になります。

「食べるプラスチック」の比喩が生まれた理由を解明

ラクトアイスが「食べるプラスチック」という表現で例えられるようになった背景には、使用されている植物性油脂を加工する過程で生成されるトランス脂肪酸という物質の存在があります。

トランス脂肪酸の性質

トランス脂肪酸は、植物性油脂を固形化したり安定化させたりする工程で作られる物質で、自然界にはほとんど存在しない人工的な脂肪酸です。

この物質の分子構造は、自然界にある脂肪酸とは大きく異なっており、人体にとって処理が困難な性質を持っていることが指摘されています。

具体的には、分子の「トランス型」と呼ばれる特殊な構造が、体内で代謝されにくい原因となります。

トランス脂肪酸とプラスチックの共通点

トランス脂肪酸が「食べるプラスチック」という表現で例えられる理由は、その人工的な分子構造にあります。

プラスチックは、石油などの原料から人工的に合成された物質であり、自然界には存在しない構造を持っています。トランス脂肪酸も同様に、自然界の脂肪酸とは異なる構造を持つ人工的な物質であることから、この比喩が生まれました。

さらに、トランス脂肪酸もプラスチックも、人体にとって代謝や分解が困難であるという共通点も、この比較を裏付ける要因となっています。

トランス脂肪酸の影響

医学研究により、トランス脂肪酸の摂取は健康に様々な悪影響を与えることが明らかになっています。

血液中のコレステロールバランスの悪化

トランス脂肪酸の摂取は、血液中のコレステロールバランスを悪化させることがわかっています。

具体的には、体に悪い影響を与える悪玉コレステロール(LDL)を増加させる一方で、体に良い影響を与える善玉コレステロール(HDL)を減少させます。

このバランスの変化は、血管が硬くなる動脈硬化や、心臓の病気(心疾患)のリスクを高める要因となります。特に心臓病は、世界的に大きな健康問題の一つです。

炎症の悪化

トランス脂肪酸は、体内の炎症反応を促進する可能性も指摘されています。

これにより、免疫機能の低下やアレルギー症状の悪化を引き起こす可能性も懸念されています。

体内で不要な炎症が起こりやすくなることが問題視されています。

世界と日本におけるトランス脂肪酸規制の違い

こうした健康リスクを受けて、世界各国ではトランス脂肪酸に対する規制が強化されていますが、日本国内の状況は異なります。

世界各国では、国民の健康を守るために厳しい規制が導入されています。

アメリカと欧州連合(EU)

アメリカでは2018年に食品への使用が原則として禁止されました。

アメリカでは、トランス脂肪酸を含む食品を「安全でない食品添加物」として法的に位置づけ、食品業界に段階的な使用停止を義務付けました。

欧州連合(EU)でも、食品に含まれるトランス脂肪酸の量について、厳格な含有量制限が設けられています。

アジア諸国

韓国タイ、インドなどのアジア諸国でも、トランス脂肪酸の使用制限や、製品への表示義務が導入されています。

これは、世界的にトランス脂肪酸の危険性が広く認識され、国が国民の健康を守るために動いていることを示しています。

日本のトランス脂肪酸に対する見解

一方、日本ではこのような厳格な規制は存在していません。

厚生労働省は、日本人のトランス脂肪酸摂取量が国際基準を下回っているため、現時点では規制の必要性は低いとの見解を示しています。

世界保健機関(WHO)は、トランス脂肪酸の摂取を総エネルギー摂取量の1パーセント未満に抑えることを推奨していますが、日本人の平均摂取量はこの基準内に収まっているというデータがあります。

海外でラクトアイスが「食べるプラスチック」と呼ばれるようになった背景には、このような規制の厳しさの違いがあります。

トランス脂肪酸の危険性が広く認識され、法的にも使用が制限されている国々では、これを含む食品に対する消費者の警戒心が高まっているのです。

ラクトアイスの普及理由

ラクトアイスが市場で広く普及している理由の一つは、その製造コストの安さにあります。

天然の乳製品は、牛の飼育環境や季節による価格変動があり、品質管理にも多大なコストがかかります。

一方、植物性油脂は安定供給が可能で、価格も比較的安定しています。

また、乳化剤などの添加物を巧みに使用することで、少ない乳成分でもアイスクリームのような味わいを実現できるため、製造業者にとっては利益率の高い商品となります。

これが、安価なラクトアイスが豊富に流通している主な理由です。

ラクトアイスの栄養

乳脂肪分が少ないということは、牛乳由来のカルシウム、タンパク質、ビタミンA、ビタミンB群などの栄養素も少ないということを意味します。

ラクトアイスはこれらの栄養素を豊富に含む食品ではありません。アイスクリームと比較すると栄養価は低いです。

代わりに植物性油脂と砂糖が主成分となるため、カロリーは決して低くありません。特に植物性油脂を多く使うことで、乳脂肪分が少なくてもカロリーや脂質が高くなる傾向があります。

つまり、ラクトアイスは栄養価が低い割にカロリーが高いという、栄養学的には好ましくない特徴を持った食品となっているのです。

消費者が適切に商品を選ぶための知識

消費者が適切な選択をするためには、商品の表示を正しく読み取る能力が必要です。

種類別表示の確認ポイント

冷凍デザート製品のパッケージには必ず「種類別」という表示があり、そこに「アイスクリーム」「アイスミルク」「ラクトアイス」「氷菓」のいずれかが記載されています。

この種類別表示を確認することで、その商品に牛乳の成分がどれくらい含まれているかをすぐに判断できます。ラクトアイスと表示されていれば、牛乳成分が少ないことがわかります。

原材料表示の確認ポイント

また、原材料名は使用量の多い順に記載されています。

そのため、原材料の最初のほうに「植物油脂」「植物性油脂」「ショートニング」「マーガリン」などが表示されている場合は、乳成分よりもこれらの油脂が多く使われていることを意味するため、トランス脂肪酸が含まれている可能性があることに注意が必要です。

近年ではトランス脂肪酸を低減した油脂を使用する製造業者も増えています。

健康的にラクトアイスと付き合う方法

すべてのラクトアイスが健康に害をもたらすというわけではありません。

近年、健康志向の高まりを受けて、トランス脂肪酸を使用しない製法で作られたラクトアイスや、より自然な原料を使用した商品も登場しています。製造技術は日々進化しています。購入の際には、原材料をよく確認することが大切です。

また、摂取頻度や量を適切に管理すれば、深刻な健康被害をもたらす可能性は低いと考えられています。どんな食品でも、過剰に摂取すれば体に負担がかかるため、おやつは一日200キロカロリー以内を目安にすることが推奨されています。

手作りで添加物の心配を避ける方法

家庭でアイスクリームを手作りすることも、添加物の心配を避ける有効な方法の一つです。牛乳、生クリーム砂糖、卵黄といったシンプルな材料だけで、安全で美味しいアイスクリームを作ることができます。手作りであれば使用する材料を完全にコントロールできます。

まとめ

結論として、ラクトアイスが「食べるプラスチック」と呼ばれる理由は、使用される植物性油脂に含まれるトランス脂肪酸の人工的な性質と健康リスク、そして海外での厳格な規制との対比にあります。

この表現は比喩的なものであり、ラクトアイスが実際にプラスチック素材で作られているわけではありません。しかし、この比喩が生まれた背景には、現代の食品製造における化学的な加工技術と、それに伴う健康リスクに対する消費者の懸念があります。

私たちは正確な知識を持って商品を選択し、バランスの取れた食生活を心がけることが大切です。何を食べているかを理解した上で、適度に楽しむことができれば、食の喜びを失うことなく健康を維持できるでしょう。

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