スイーツ・洋菓子市場のまとめ|2024年の動向、2025年~2026年の見通し

株式会社富士経済による市場調査
株式会社富士経済は2025年10月10日、国内のスイーツ市場に関する包括的な調査結果を「パン&スイーツ市場の全貌・課題分析 2025」として発表しました。
この調査が実施された背景には、原料価格の高騰により消費者の価格意識が高まっているという市場環境の変化があります。小麦粉や砂糖、バター、鶏卵といった製菓の基本材料が値上がりを続ける中で、洋菓子市場がどのような対応を取り、消費者の行動がどう変化しているのかを捉えることが、この調査の目的です。
調査では製品の種類だけでなく、販売チャネルという視点からも市場を分析しています。製品分類と販売形態という二つの軸で市場を見ることで、それぞれの商品がどのような経路で消費者に届き、各チャネルがどのような戦略を展開しているのかが明らかになります。
調査の対象範囲
洋菓子市場の調査は、製品の種類と販売チャネルという二つの軸で行われています。製品の種類という視点では、どのような商品が市場に存在するのかを分類し、販売チャネルという視点では、それらの商品がどこで販売されているのかを整理しています。
製品種類別
| 製品分類 | 主な特性 | 市場での位置づけ |
|---|---|---|
| チルド洋菓子 | 冷蔵保存が必要、新鮮な素材を使用、賞味期限は短め | スイーツ市場全体の約30%を占める |
| ドライ洋菓子 | 常温保存が可能、日持ちが長い、贈答用途が多い | 贈答品として選ばれやすい |
| チョコレート | 専門店市場が活発、季節性が強い | バレンタインデーを中心に需要が高まる |
チルド洋菓子
チルド洋菓子は冷蔵保存が必要な商品群で、スイーツ市場全体の約30%を占めています。生クリームや卵、フルーツといった新鮮な素材を使用しているため、賞味期限は短めに設定されています。
ケーキ
ケーキは洋菓子の代表格です。ショートケーキの柔らかなスポンジと生クリームの組み合わせ、チーズケーキの濃厚な味わい、チョコレートケーキの深いカカオの風味。それぞれが異なる魅力を持ち、異なる場面で選ばれています。誕生日や記念日には華やかなデコレーションケーキが、日常のデザートにはシンプルなケーキが選ばれる傾向があります。
ロールケーキ
ロールケーキはスポンジ生地でクリームを巻いた菓子で、カットして提供されます。一本で複数人分の量があり、家族での消費に適しています。シンプルな構造ながら、クリームの種類や生地の工夫により、様々なバリエーションが生まれています。
シュー・エクレア
シュー・エクレアはクリームを詰めた菓子で、手軽に食べられることが特徴です。一個単位で購入しやすく、日常的なおやつとして人気があります。カスタードクリーム、生クリーム、チョコレートクリームといった種類があり、好みに応じて選べます。
ドライ洋菓子
ドライ洋菓子は常温保存が可能で、比較的日持ちする商品群です。この特性は、贈答用として選ばれやすい理由となっています。個包装されている商品が多く、職場や家庭で複数人に配る際に便利です。
バウムクーヘン
バウムクーヘンは層状に焼き上げた菓子で、切り口の年輪のような模様が特徴です。結婚式の引き出物や、お祝いの贈り物として選ばれることがあり、縁起の良い菓子として認識されています。しっとりとした食感と、素朴な味わいがあります。
パウンドケーキ
パウンドケーキはバターを使った焼き菓子で、日持ちが良いことが特徴です。シンプルな配合ながら、バターの風味が豊かで、コーヒーや紅茶との相性が良いとされています。
ドーナツ
ドーナツは揚げ菓子で、専門店での販売が活発です。専門店では様々な種類のドーナツが提供されており、トッピングやフレーバーのバリエーションが豊富です。店内で揚げたての商品を提供する店舗もあります。
チョコレート
チョコレートは専門店での販売が活発な分野です。カカオの産地や配合、製造方法にこだわった商品が展開されており、専門店はこうした細かな違いを訴求することで顧客の関心を引きつけています。
バレンタインデーを中心とした季節性の強さも、チョコレート市場の特徴です。2月にはギフト需要が集中し、売上が大きく伸びます。近年ではカジュアルギフトや自家消費での購入も増えており、年間を通じた需要の平準化が進んでいます。かつてはバレンタインデーに売上が集中していましたが、今では日常的に楽しむ商品としても定着しつつあります。
販売チャネル別
| 販売チャネル | 提供価値 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 洋菓子店 | 商品の質、独自性、職人の技術 | 専門店としての品揃え、店内製造、季節商品の展開 |
| 流通洋菓子 | 価格優位性、入手の容易さ | 日常的な購入機会、手頃な価格設定 |
| 外食 | 店舗での体験、飲食との組み合わせ | デザートメニューとしての提供 |
洋菓子店
洋菓子店という専門店での販売は、洋菓子市場の主流となっています。専門店は、品質や味わいを重視する消費者に支持されており、それぞれの店舗形態が異なる強みを持っています。
店内製造の洋菓子店
店内製造を行う洋菓子店では、生ケーキやタルトといった新鮮な商品を提供します。ショーケースに並ぶ色とりどりのケーキは視覚的な訴求力があり、来店客の購買意欲を高めます。店頭で実物を見ながら選べるという体験は、通信販売や流通洋菓子では得られない価値です。
季節限定商品や新商品を定期的に投入することで、リピート客を確保する戦略を取っています。季節ごとに新しい商品が登場することで、次回来店時への期待感が生まれます。
チョコレート専門店
チョコレート専門店は、カカオの産地や配合にこだわった商品を展開しています。どの国のカカオ豆を使うか、カカオの含有率をどの程度にするかによって、チョコレートの味わいは大きく変わります。専門店はこうした細かな違いを説明することで、チョコレートの奥深さを伝え、顧客の関心を引きつけています。
店舗では、試食を提供することで、味わいの違いを実際に体験してもらう取り組みも行われています。カカオ70%と85%の違いを食べ比べることで、自分の好みを見つけられます。こうした体験型の販売手法が、顧客の満足度を高めています。
百貨店催事場
百貨店の催事場での販売は、チョコレート専門店にとって重要な販路です。バレンタインデーやホワイトデー、クリスマスといったギフト需要が高まる時期には、百貨店に特設売り場が設けられます。百貨店という場所は、贈答品を選ぶ際に安心感を与える効果があります。
催事場では、複数のブランドが一堂に集まるため、消費者は様々な商品を比較しながら選べます。普段は遠方にある専門店の商品も、催事場であれば手に入ります。この利便性が、催事場の大きな魅力となっています。
流通洋菓子
流通洋菓子は、工場で大量生産された商品が量販店やコンビニエンスストア、ドラッグストアで販売される形態です。価格優位性と入手の容易さが強みとなっています。
量販店
量販店では多様な商品が並び、まとめ買いも可能です。家族向けの複数個入りのパック商品が充実しており、日常的な消費に適しています。専門店では1個単位で買うことが多いですが、量販店ではこのプリンを4個パックで買っておこうといった買い方ができます。家族全員分をまとめて購入できることは、買い物の手間を減らすことにつながります。
量販店の洋菓子売り場は、チルド商品とドライ商品で区画が分かれています。チルド商品は冷蔵ケースに陳列され、ドライ商品は常温の棚に並びます。この配置により、消費者は目的に応じて商品を探しやすくなっています。
チルド商品売り場
チルド商品売り場には、プリン、ゼリー、シュークリームといった個包装のデザートが並び、食後のデザートや子どものおやつとして購入されます。夕食の献立を考える際に、デザートも買っておこうという流れで購入されることが多く、食事の一部として洋菓子が位置づけられています。
チルド商品売り場では、新商品の投入が活発です。季節のフルーツを使った商品や、話題の味わいを取り入れた商品が次々と登場し、消費者に新鮮さを提供しています。棚の配置も定期的に変更され、目新しさを演出する工夫が凝らされています。
コンビニエンスストア
コンビニエンスストアでは、単身世帯や少人数世帯に向けた個食サイズの商品が中心です。仕事帰りや夜遅い時間でも購入できる利便性があり、急な来客時の手土産や、自分へのご褒美として選ばれています。
近年では、コンビニエンスストアの洋菓子は品質が向上しており、専門店に近い味わいを手頃な価格で楽しめるようになっています。製菓技術の向上により、専門店にも劣らない商品が並んでいます。
ドラッグストア
ドラッグストアでは、価格競争力を活かした低価格商品が並びます。日用品の購入ついでに洋菓子も買うという購買行動が見られ、計画的な買い物よりも衝動買いが起きやすい環境となっています。
ドラッグストアの洋菓子売り場は、店舗の奥やレジ前に配置されることが多くあります。日用品を探して店内を回る間に洋菓子売り場を通り、ついでに購入するという動線設計がなされています。
外食
外食チャネルでは、コーヒーショップやファミリーレストランが洋菓子を提供しています。これらの業態では、食事のあとのデザートとして、あるいは単独でスイーツを楽しむために訪れる顧客がいます。
コーヒーショップ
飲み物と一緒にケーキやタルトを提供しており、店内での時間を楽しむ場として機能しています。友人との会話を楽しみながら、あるいは一人で読書をしながら、コーヒーとケーキを味わうという過ごし方があります。
ファミリーレストラン
子ども向けのデザートから大人向けの洋菓子まで、幅広いメニューを揃えています。家族連れでの食事の際、食事の締めくくりとしてデザートメニューが利用されています。
洋菓子市場の2024年の動向
2024年の洋菓子市場は、前年を上回る実績となりました。原料価格の高騰という逆風がある中での成長は、洋菓子が日本人の食生活において欠かせない存在であることを示しています。価格が上がったからといって、人々が洋菓子を食べなくなるわけではありません。購入の仕方や選ぶ商品を調整しながらも、洋菓子を楽しむという習慣は維持されています。
鶏卵不足の変化
2024年の洋菓子市場における転換点は、鶏卵不足の緩和でした。前年まで続いていた供給不安が解消されたことで、洋菓子メーカーは製造計画を立てやすくなり、新商品の開発や既存商品の増産に取り組めるようになりました。
鶏卵不足の原因
| 発生時期 | 主な原因 | 影響 |
|---|---|---|
| 2022年〜2023年 | 鳥インフルエンザの流行 | 感染拡大防止のための大量殺処分、生産量の急減 |
| 供給減少期 | 養鶏場での生産停止 | 鶏卵価格の上昇、洋菓子の製造困難化 |
2022年から2023年にかけて、日本では鳥インフルエンザの流行により鶏卵の供給が大きく減少しました。感染が確認された養鶏場では、感染拡大を防ぐために大量の鶏が殺処分されました。一つの養鶏場で感染が見つかれば、その施設全体の鶏を処分しなければならないという厳格な措置により、生産量は急激に落ち込みました。
供給が減少する一方で需要は変わらないため、鶏卵の価格は上昇しました。洋菓子メーカーにとっては原料コストの増加を意味し、価格改定を検討せざるを得ない状況に追い込まれました。一部のメーカーでは商品の販売を一時的に休止したり、卵の使用量を減らした代替レシピを開発したりといった対応を迫られました。新商品の開発計画も次々と延期され、市場には停滞感が漂っていました。
鶏卵は洋菓子製造において中心的な役割を果たす材料です。ケーキのスポンジ生地は卵の気泡性によってふんわりとした食感を実現しており、シュークリームの皮は卵の力で膨らみます。プリンやカスタードクリームは卵の凝固性を活かした商品であり、これらの製造には大量の卵が必要不可欠です。供給不足は、こうした商品の製造そのものを困難にしました。
鶏卵不足の解消
| 回復時期 | 改善内容 | 効果 |
|---|---|---|
| 2024年前半〜中盤 | 鳥インフルエンザ流行の収束、養鶏場での生産再開 | 供給量の着実な増加 |
| 2024年春〜夏 | 生産体制の整備完了 | 新商品開発の再開、流通洋菓子の品揃え拡充 |
2024年に入ると、鳥インフルエンザの流行が収束し、養鶏場での生産が徐々に回復していきました。新たな鶏を導入して生産体制を整えるには数ヶ月の時間を要しますが、年の前半から中盤にかけて供給量は着実に増加しました。養鶏場は感染予防策を強化しながら、慎重に生産を拡大していきました。
鶏卵の供給が安定したことで、洋菓子メーカーは安心して生産計画を立てられるようになりました。前年に見送らざるを得なかった新商品の開発が再開され、春から夏にかけて多くの新商品が市場に投入されました。流通洋菓子の棚には、季節のフルーツを使ったケーキや、新しい味わいのプリン、見た目が華やかなカップデザートといった商品が次々と並び、消費者の選択肢が大きく広がりました。メーカーの担当者たちが温めていたアイデアが、ようやく形になって店頭に並んだのです。
値ごろ感のある商品が人気
2024年の洋菓子市場では、値ごろ感のある商品が消費者の支持を集めました。原料価格の高騰により多くの商品で価格改定が実施される中、消費者は価格と内容量、品質のバランスを慎重に判断するようになっています。単に安い商品が売れるのではなく、納得できる価値があるかどうかが問われています。
大容量ロールケーキ
大容量のロールケーキは、家族での消費に適した商品として好調でした。通常のロールケーキよりも長さがあり、切り分けることで複数人で楽しめます。1本あたりの価格だけを見ると高めに感じられるかもしれませんが、1人あたりに換算すると専門店のケーキを買うよりも割安になるという計算が成り立ちます。
週末の家族団らんや、子どもの友達が遊びに来た時のおやつとして、大容量ロールケーキは重宝されています。今日はみんなでケーキを食べようという時に、わざわざ専門店まで出かけなくても、日常的な買い物のついでに購入できる利便性が評価されています。流通洋菓子として量販店で販売されているため、野菜や肉を買うのと同じ動線で手に取れることも、購入のハードルを下げています。
小型ホールタルト
| 特徴 | 内容 |
|---|---|
| サイズ | 通常のホールケーキよりも小さめ |
| 適量 | 2人〜3人で食べきれる量 |
| 対象世帯 | 単身世帯、夫婦2人世帯 |
| 用途 | 小さなお祝い、記念日 |
小型のホールタルトも好調でした。従来のホールケーキは6人から8人分という大きさで作られることが多く、単身世帯や夫婦2人の世帯では、大きなケーキを買っても食べきれずに余ってしまうという問題がありました。小型タルトは、そうした声に応える形で開発された商品です。ちょうど良い量というのは、思いのほか大切な要素です。
タルトは見た目が華やかで、フルーツがたっぷり載っているものは特別感があります。誕生日や記念日といった小さなお祝いの場面で、専門店のケーキほど高価ではないものの、それなりの満足感が得られる商品として選ばれています。今日は二人の記念日だから何かケーキでもという時に、手が届く価格で華やかさも備えた小型タルトは、適切な選択肢となっています。
低単価シュークリーム
| 特徴 | 内容 |
|---|---|
| 価格帯 | 1個100円前後 |
| 用途 | 日常的なおやつ、食後のデザート、休憩時間の楽しみ |
| 製造方法 | 工場での大量生産により品質を保ちながら価格を抑制 |
| バリエーション | カスタードクリーム、生クリーム、チョコレートクリーム |
低単価のシュークリームは、日常的なおやつとして根強い人気があります。1個100円前後という価格帯は、子どものおやつや仕事の合間の気分転換として購入しやすい設定です。財布から小銭を出すだけで買えるという手軽さが、繰り返し購入されることにつながっています。
シュークリームは製造技術が確立されており、工場での大量生産が可能です。そのため、品質を保ちながら価格を抑えることができます。流通洋菓子としてコンビニエンスストアや量販店で販売されているシュークリームは、クリームの量や種類にバリエーションがあり、その日の気分で好みのものを選べます。カスタードクリームの優しい甘さ、生クリームの軽やかな口当たり、チョコレートクリームの濃厚な風味。どれを選んでも、ささやかな幸せを感じられる価格です。
付加価値商品の展開
値ごろ感のある商品が好調である一方で、付加価値を高めた商品も市場には存在します。消費者の購買行動は単純な二極化ではなく、購買シーンによって判断基準を使い分けています。平日の普通のおやつには手頃な商品を、週末の家族団らんには少し贅沢な商品をという使い分けが自然に行われています。
洋菓子店での戦略
洋菓子店では、ケーキやシュー・エクレアで付加価値商品を投入し、レギュラー商品とのラインアップで多様な顧客の獲得につなげました。付加価値商品とは、素材の質や製法へのこだわりを前面に出した商品のことです。
有名パティシエが監修した商品、産地を限定した素材を使った商品、製造工程で手間をかけた商品といった具合に、価格の高さに見合う価値を明確に提示しています。なぜこの価格なのかという理由が消費者に伝わることで、納得して購入してもらえます。北海道産の生クリームを使ったケーキであれば、そのクリームの濃厚さが味わいに表れます。ベルギー産のチョコレートを使ったエクレアであれば、カカオの香りが際立ちます。
洋菓子店の戦略は、幅広い価格帯の商品を揃えることで、日常的な来店から特別な日の利用まで対応できる体制を整えることです。普段は手頃な価格のレギュラー商品を買う顧客も、誕生日や記念日には付加価値商品を選ぶことがあります。この店なら、どんな時にも選べる商品があるという信頼感が、顧客との長期的な関係を築く基盤となっています。
流通洋菓子での戦略
| 付加価値商品の位置づけ | 内容 |
|---|---|
| 価格 | 通常の流通洋菓子よりは高めだが、専門店よりは手頃 |
| 特徴 | 素材へのこだわり、有名パティシエの監修 |
| 用途 | 自分へのご褒美、小さなお祝い |
流通洋菓子においても、付加価値商品の投入が見られました。量販店のチルド商品売り場には、素材にこだわったプリンや、有名パティシエが監修したケーキといった商品が並んでいます。これらの商品は通常の流通洋菓子よりも価格が高めに設定されていますが、専門店で買うよりは手頃です。
この絶妙な価格設定が、ちょっと贅沢したいという気持ちに応えています。今日は頑張ったから自分へのご褒美にという時や、二人だけの小さなお祝いという場面で選ばれています。流通洋菓子の付加価値商品は、専門店に足を運ぶ時間がない消費者にとって、日常の買い物の中で特別感を味わえる選択肢となっています。
洋菓子市場の2025年の見通し
| 見通し項目 | 内容 |
|---|---|
| 市場規模の動き | 伸びを維持 |
| 成長の要因 | 新商品投入の活発化、消費者の使い分け行動への対応 |
2025年の洋菓子市場は、伸びを維持する見込みです。2024年に回復基調が明確になった市場は、その勢いを保ちながら成長を続けると予測されています。
新商品投入の活発化
鶏卵の供給が安定したことで、メーカーは新商品の開発に積極的に取り組める環境が整いました。2025年も、流通洋菓子を中心に新商品の投入が活発に行われる見込みです。
新商品は市場に新鮮さをもたらします。消費者は常に新しい味わいや食感を求めており、定番商品だけでは飽きられてしまいます。季節のフルーツを使った商品、新しい製法で作られた商品、他の食品との組み合わせを試みた商品といった挑戦的な商品が、市場を活性化させます。
メーカーは市場調査や消費者の声を基に商品開発を行います。SNSでの反響や、店頭での販売状況を分析し、次の商品開発に活かします。ヒット商品が生まれれば、それがブランドイメージの向上にもつながります。
消費者の使い分け行動
消費者は購買シーンによって判断基準を使い分けています。この使い分け行動は、今後も続く見込みです。
日常的な消費では価格を重視し、特別な機会には品質や付加価値を求める。このメリハリのある消費行動に対応するため、企業は複数の価格帯での商品展開を続けます。低価格帯、中価格帯、高価格帯という三層の価格戦略により、異なるニーズに応えることができます。
また、洋菓子から菓子パンへ、外食から持ち帰りの洋菓子へといった、カテゴリー間での需要移動も起きています。価格改定が相次ぐ中で、消費者は同じ満足感を得られるのであれば、より手頃な選択肢を探します。こうした需要の流れを捉えることが、市場拡大の鍵となります。
洋菓子市場のチャネル別戦略
2025年の洋菓子市場では、流通洋菓子において製品カテゴリーごとに異なるアプローチが取られる見込みです。画一的な戦略ではなく、商品の特性に応じた柔軟な対応が求められています。
チルド洋菓子のアプローチ
| アプローチ | 内容 |
|---|---|
| 商品タイプ | 付加価値商品 |
| 訴求ポイント | 素材の質、製法へのこだわり |
| 具体例 | 有名パティシエ監修商品、産地限定素材使用商品、手間をかけた製造工程の商品 |
流通洋菓子のチルド洋菓子では、付加価値商品が需要を獲得し伸びを維持するとみられます。消費者は日常的な消費では値ごろ感のある商品を選びますが、週末や特別な日には少し高めの商品を選ぶという使い分けをしています。
付加価値商品は、素材の質や製法へのこだわりを訴求することで、通常商品との差別化を図っています。有名パティシエが監修した商品、産地を限定した素材を使った商品、製造工程で手間をかけた商品といった具合に、価格の高さに見合う価値を提示しています。
流通洋菓子の付加価値商品は、専門店の商品と比較すると価格は手頃でありながら、通常の流通洋菓子よりは特別感があるという中間的な位置づけです。この絶妙なバランスが、自分へのご褒美や小さなお祝いの場面での需要を捉えています。
ドライ洋菓子のアプローチ
| アプローチ | 内容 |
|---|---|
| 商品タイプ | 値ごろ感のある商品 |
| 対象用途 | 自家消費向け |
| 商品形態 | 複数個入りパック商品、大容量商品 |
ドライ洋菓子では、値ごろ感のある商品が需要を獲得する見込みです。バウムクーヘンやパウンドケーキといったドライ洋菓子は、贈答用としても自家消費用としても使われますが、流通洋菓子では特に自家消費向けの手頃な価格帯の商品が中心となります。
ドライ洋菓子は常温保存が可能で日持ちするため、まとめ買いがしやすい商品です。家族でのおやつとして、あるいはストックしておいて必要な時に食べるという用途に適しています。
価格を抑えながらも一定の品質を保つため、製造工程の効率化や原料調達の工夫が行われています。シンプルな配合にすることで原料コストを下げる、大量生産により製造コストを削減するといった取り組みにより、値ごろ感のある価格設定が実現されています。
流通洋菓子のアプローチ
流通洋菓子では、多くの品目で季節感を訴求したフレーバー展開や新商品が投入されており、市場の伸びが続くとみられます。
季節感の訴求は、消費者に今しか食べられないという限定性を感じさせ、購買意欲を高める効果があります。季節限定商品は、レギュラー商品を購入している顧客に対して追加の購買機会を提供します。普段は同じ商品を買っている人でも、季節限定のフレーバーが出れば試してみたいと思うものです。こうした試し買いが、ブランドへの関心を維持し、リピート購入につながります。
新商品の投入も活発です。消費者の嗜好は変化し続けており、常に新しい味わいや食感を求める層が存在します。メーカーは市場調査や消費者の声を基に商品開発を行い、ヒット商品を生み出すことを目指しています。新商品が話題になれば、SNSでの拡散や口コミによる認知拡大が期待でき、ブランドイメージの向上にもつながります。
まとめ
| 市場構造 | チルド洋菓子が中心、洋菓子店での販売が主流 |
|---|---|
| 2024年の動向 | 鶏卵不足の緩和により新商品投入が活発化、値ごろ感のある商品と付加価値商品の両方が好調 |
| 2025年の見通し | 伸びを維持、新商品投入の継続、消費者の使い分け行動への対応 |
洋菓子市場は、チルド洋菓子を中心に構成されており、洋菓子店という専門店での販売が主流となっています。この構造は、洋菓子が品質や味わいを重視する商品であることを反映しています。
2024年の市場は、前年を上回る実績となりました。鶏卵不足の緩和により流通洋菓子の新商品投入が活発化し、値ごろ感のある大容量ロールケーキ、小型ホールタルト、低単価シュークリームが好調でした。一方で洋菓子店は付加価値商品を展開し、レギュラー商品とのラインアップで多様な顧客を獲得しました。
2025年の見通しとしては、市場の伸びが維持される見込みです。鶏卵の供給が安定したことで、新商品投入が継続されます。流通洋菓子では、チルド洋菓子は付加価値商品が、ドライ洋菓子は値ごろ感のある商品が需要を獲得するとみられます。季節感を訴求したフレーバー展開や新商品投入も活発であり、市場は成長を続ける見込みです。
洋菓子市場は、原料価格の高騰という課題に直面しながらも、消費者の使い分け行動に対応した商品展開により、成長を維持しています。鶏卵不足という供給面の制約が解消されたことで、市場は再び活性化し、2026年も着実な成長が期待されています。



