ゴディバの新ブランド「Gバターズ」が狙うカジュアルギフト市場
高級チョコレートの代名詞として知られるゴディバが、2025年5月に新しいスイーツブランド「Gバターズ」を立ち上げました。
ゴディバの新ブランド「Gバターズ」は、変化するギフト市場、特にカジュアルギフト市場を狙った戦略的な商品展開です。高級感よりも高揚感を重視したパッケージデザイン、3000円前後という手頃な価格設定、バターとチョコレートという魅力的な素材の組み合わせ、そして限定的な店舗展開による希少性の演出という、複数の要素が組み合わさっています。
カジュアルギフト市場は、新型コロナウイルスの流行以降、身近な人との関係を大切にする傾向の高まりとともに成長しています。Gバターズは当初の想定を超えて幅広い年齢層に受け入れられており、顧客の声を反映した商品開発も進行中です。高級チョコレートの代名詞であるゴディバが、カジュアルギフト市場でどのような地位を築いていくのか、今後の展開が注目されます。
ゴディバというブランド
ゴディバは1926年にベルギーのブリュッセルで創業した、プレミアムチョコレートのブランドです。
上質なカカオを使用した高品質なチョコレートと、美しいパッケージデザインが特徴で、プレミアムチョコレートの代名詞として広く認知されています。
お中元やお歳暮、誕生日プレゼント、記念日の贈り物など、様々な場面で選ばれてきました。贈る側も受け取る側も、ゴディバという名前が持つ高級感と信頼性を理解しているため、ギフトとして安心して選べるブランドです。
Gバターズというブランドの誕生
ゴディバから2025年5月に生まれたのが「ゴディバターズ」という新ブランドです。
2025年7月に常設店舗をオープンする際に、ブランド名を「Gバターズ」に変更しています。「G」という頭文字だけを残すことで、ゴディバとのつながりを示しつつ、新しいアイデンティティを確立しています。
Gバターズは、ゴディバの強みであるチョコレートと、焼き菓子に欠かせないバターを主役に位置付けたスイーツブランドです。
チョコレート専門店としてのイメージが強いゴディバが、焼き菓子という新しい分野に進出したことになります。
Gバターズの商品構成
主力商品のバターサンド
一番人気の商品がバターサンドです。チョコレートとバターを合わせたクリームをサブレ(バターを多く使ったサクサクとした食感のクッキー)でサンドし、中にフィリングを入れたものです。
4種類の味があり、1個から購入できますが、4個入りのセットは2592円(税込)です。
ガレットとフィナンシェ
| 商品 | セット内容 | 価格 |
|---|---|---|
| ガレット 6個入り | ガレット デュオ 3個、ガレット ショコラ 3個 | 2700円(税込) |
| フィナンシェ 6個入り | フィナンシェ ノワール 3個、フィナンシェ アンバー 3個 | 2700円(税込) |
ガレットは伝統的なフランスの焼き菓子を、ショコラティエ(チョコレート職人)がアレンジした商品です。フィナンシェは、ベルギー産の発酵バターを使用した、しっとりとした食感の焼き菓子です。
どちらも1個から購入できる設定です。
顧客の声から生まれたアソートメント
2025年12月1日発売の「G バターズ アソートメント 8個入」は、フィナンシェとガレットが4個ずつ入った商品です。価格は3780円(税込)で、缶のパッケージに入っています。
売り場に「フィナンシェとガレットが入ったパッケージが欲しい」という声が多く寄せられたことから開発されました。顧客の要望を商品開発に反映させた事例です。
Gバターズのパッケージデザイン
- バターサンド:天面にマーブル模様、側面に少女のイラスト
- フィナンシェ:味見をしたくなる衝動を少女のイラストで表現
- ガレット:味見をしたくなる衝動をウサギのイラストで表現
- アソートメント:蓋に少女のイラスト、側面にマーブル模様
パッケージデザインは、デザインユニット「KIGI」が手掛けています。
各商品に印象的なイラストやグラフィックが用いられています。
マーブル模様は、バターとチョコレートが混ざり合う様子を視覚的に表現し、商品の特徴を直感的に伝えています。
従来のゴディバとの違い
従来のゴディバは金色を基調とした高級感あふれるパッケージでしたが、Gバターズは赤色を採用し、イラストやマーブル模様といった遊び心のある要素を取り入れています。高級感よりも、見た瞬間に「なんだろう」と思わせるインパクトや、気持ちが盛り上がる高揚感を重視したデザインです。
ギフト市場の構造的変化
新型コロナウイルスがもたらした変化
ゴディバ ジャパンのマーケティング本部でベイクドカテゴリーなどを担当する奥村和子氏によると、新型コロナウイルスの流行以降、ギフト市場が変化しており、近年需要が高まっているのが身近な人に贈るカジュアルギフトです。
リモートワークの普及により職場での人間関係が希薄になった一方で、家族や親しい友人との関係を大切にする傾向が強まりました。日常の中で小さな幸せを見つけたり、自分を労ったりすることの重要性が再認識されるようになったのです。
フォーマルギフトとカジュアルギフトの違い
従来のギフト市場は、お中元やお歳暮といったフォーマルな贈答品が中心でした。目上の人や取引先など社会的な関係性の中で贈られ、誰もが喜ぶような定番商品が選ばれる傾向がありました。
一方、カジュアルギフトは身近な人に気軽に贈る贈り物です。友人、家族、恋人など親しい関係性の人に贈られることが多く、自分へのご褒美としての購入も含まれます。相手が好きなものや自分が気に入ったものなど、パーソナルなものが選ばれる傾向があります。
パッケージデザインに求められる役割
カジュアルギフトのパッケージデザインに求められる役割は、高級感ではなく、高揚感を演出することです。高揚感とは、気持ちが盛り上がり、ワクワクするような感覚のことです。パッケージを見た瞬間に「素敵!」「欲しい!」と思わせる力が必要なのです。
Gバターズのデザイン戦略
印象的なイラストやマーブル模様、赤色を採用した狙いはここにあります。
赤色は情熱や活力を連想させる色であり、視覚的にも目を引きやすい色です。金色が格式や伝統を感じさせるのに対し、赤色は現代的で親しみやすい印象を与えます。
味見をしたくなる衝動を表現した少女やウサギのイラストは、商品を見た人の食欲を刺激し、「食べてみたい」という気持ちを引き出します。
Gバターズの価格設定
| 商品 | 価格 | 3000円との関係 |
|---|---|---|
| バターサンド 4個入り | 2592円 | 3000円以下 |
| ガレット 6個入り | 2700円 | 3000円以下 |
| フィナンシェ 6個入り | 2700円 | 3000円以下 |
| アソートメント 8個入り | 3780円 | 3000円超(缶入り特別仕様) |
奥村氏によると、カジュアルギフトの価格帯としては3000円がボーダーラインです。あまりに高額だと相手に気を遣わせてしまったり、自分へのご褒美として購入するにはハードルが高くなったりします。一方で、ある程度の価格であることで、特別感や品質への期待も生まれます。
主力商品はすべて3000円以下に設定されています。どの商品も1個から購入できる点も、気軽さを重視した戦略の一環です。
12月発売のアソートメントは3780円と3000円を超えていますが、缶という再利用可能な容器を採用し、二種類の商品を組み合わせた特別仕様です。それでも4000円は超えない価格設定になっています。
Gバターズのターゲット層
当初の想定ターゲット
Gバターズは当初、感度が高い女性(新しいものやトレンドに敏感で、デザインや品質にこだわりを持つ女性)をターゲットにしていました。女性は一般的にギフトを贈る機会が男性よりも多く、デザインへのこだわりも強い傾向があるためです。
実際の購買層
しかし実際に発売すると、幅広い年齢層が購入していることがわかりました。若い女性だけでなく、中高年の女性や男性の購買もあったのです。バターとチョコレートという素材の組み合わせ、焼き菓子という親しみやすいカテゴリー、印象的でありながら親しみやすいパッケージデザインが、性別や年齢を超えて受け入れられました。
ゴディバというブランドの信頼性も、幅広い層の購買を後押ししたと考えられます。
Gバターズの店舗展開
常設店舗は、2025年7月にオープンした「Gバターズ 東武池袋店」のみです。それ以外は期間限定店舗でしか購入できません。これまでに、グランスタ東京や三越日本橋店などで期間限定店舗を展開してきました。
店舗数が少ないということは、「ここでしか買えない」という希少性を生み出します。この希少性が消費者の興味を引き、購買動機につながっています。ゴディバという誰もが知っている有名ブランドが展開している商品でありながら、どこでも買えるわけではないという状況は、独特の価値を生み出します。





