人気のチョコマシュマロとは|流行った理由・定着した理由

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ドイツ発のチョコマシュマロは、ASMR動画をきっかけに日本で注目されました。しかし、多くのSNS発ヒット商品とは異なり、一時的なブームで終わらず定番商品として成長しています。その背景には、音の質の良さ、アレンジの多様性、品薄状態が生んだ継続的な注目、そして小売店の販売戦略の変更がありました。

ドン・キホーテの海外菓子カテゴリーは、チョコマシュマロの牽引により前年比5倍の売上を記録。仕入れが安定した2025年7月に売上が最大化したという事実は、潜在的な需要の高さを示しています。

ドイツで生まれたハリボーとディックマンズのチョコマシュマロが、日本のSNSで話題になった後、一時的なブームで終わらず定番商品として定着しつつあります。この記事では、ASMR動画をきっかけに注目されたチョコマシュマロが、なぜ継続的に売れ続けているのか、その背景を詳しく見ていきます。

目次

チョコマシュマロとは何か

チョコマシュマロとして日本で話題になっているのは、ドイツの2つのブランドの商品です。それぞれ特徴が異なりますが、SNS上ではまとめて「チョコマシュマロ」と呼ばれることが多くなっています。

両ブランドに共通するのは、チョコレートのパリッとした食感と、中のふわふわとした食感の両方を同時に楽しめる点です。外側の薄いチョコレートを噛むと「パリッ」という音がして、続いて内側のマシュマロやメレンゲを噛むと「もさっ」とした音がします。この2種類の食感と音の組み合わせが、商品の大きな魅力となっています。

ハリボー チョコマシュマロ

ハリボーの商品は、もったりとした食感の棒状マシュマロチョコレートで包んだものです。マシュマロ部分は密度が高く、しっかりとした弾力があります。外側のチョコレートコーティングと、内側のマシュマロという2層構造になっています。

ディックマンズのチョコマシュマロ

ディックマンズからは「スーパーディックマンズ」や「ミニディックマンズ トリオ」などが販売されています。これらはマシュマロではなくメレンゲをチョコレートで包んでおり、マシュマロよりも軟らかい口当たりが特徴です。形状もドーム型で、底面にウエハースが敷かれている点も特徴的です。ミニディックマンズ トリオには、ビター、ホワイト、ミルクの3種類のチョコレートが入っています。

チョコマシュマロが人気になった理由

ASMR動画から火がついた

チョコマシュマロが最初に注目されたのは、英語圏のSNSでした。ASMR(自律感覚絶頂反応)動画という、食品を食べる時のそしゃく音を楽しむ動画で取り上げられたことがきっかけです。ASMR動画は、音によって心地よさやリラックス効果を感じるコンテンツとして人気があります。

チョコマシュマロは、外側のチョコレートを噛んだ時のパリパリッとした音と、内側を噛んだ時のもさっとした音が、ASMR動画として視聴者に好まれました。この音の心地よさが、動画を見た人たちの間で評判を呼び、トレンドとなったのです。

日本への上陸

英語圏で始まったこのトレンドは、2024年早々に日本へ上陸しました。Googleトレンドのデータを見ると、2024年2月頃から「チョコマシュマロ」という言葉が検索されるようになっています。直後から「ハリボー チョコマシュマロ」も検索されるようになり、日本の消費者の間で急速に認知が広がったことがわかります。

ディックマンズについては、正式名称は「ディックマンズ」ですが、SNS上では末尾の「ズ」を抜いて「ディックマン」と表記されることが多くなっています。検索トレンドでも「ディックマン」という表記で検索されている様子が確認できます。

バレンタインシーズンの盛り上がり

2025年2月のバレンタインシーズンには、「チョコマシュマロ」の検索数が急上昇しました。これは手作りチョコレートの材料としてチョコマシュマロが注目されたためです。バレンタインという季節性のイベントと結びついたことで、一時的に検索数が大きく伸びました。

バレンタインシーズンが終わった後、検索数は落ち着いたように見えます。多くのSNS発の流行商品は、このタイミングで消費者の関心が薄れていきます。しかし、チョコマシュマロはその後も継続的に売れ続けているのです。

ドン・キホーテでのチョコマシュマロ販売

大手ディスカウントストア「ドン・キホーテ」を運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスの谷口智昭氏によると、ハリボーとディックマンズが海外菓子カテゴリーの売り上げを大きく牽引しています。

海外菓子カテゴリー全体で、前年同期と比較して5倍の売り上げを記録したというのは、驚異的な成長率です。この成長の中心にあるのが、チョコマシュマロの2つのブランドなのです。

スポット商品から定番商品へ

当初、チョコマシュマロは一時的に仕入れるスポット商品として扱われていました。スポット商品とは、トレンドに合わせて短期間だけ販売する商品のことです。しかし、谷口氏によると、2024年10月後半からは海外菓子の定番商品棚で展開するようになり、扱いが変わりました。

この変更は、チョコマシュマロの需要が一時的なものではなく、継続的に見込めると判断されたことを意味します。目立つワゴンなどでの陳列に加えて、定番商品棚に並べることで、消費者がいつでも購入できる体制を整えたのです。

売上のピークは仕入れが安定した時期

谷口氏が指摘する興味深い点は、海外菓子カテゴリーの売上が最大となったのは2025年7月だったということです。この時期は、バレンタインシーズンから数ヶ月が経過しており、SNSでの初期の盛り上がりからも時間が経っています。

売上のピークがこの時期になった一因は、長らく続いていた品薄状態が解消され、仕入れが安定したことにあります。つまり、需要は高い水準で続いていたものの、供給が追いついていなかったために売上が伸び悩んでいた可能性があるのです。仕入れが安定したことで、ようやく需要に応えられるようになり、売上が最大化したと考えられます。

チョコマシュマロの魅力

ASMR動画に適した音の良さ

チョコマシュマロが定番商品化できた第一の理由は、ASMR動画に適した「いい音」を出せることです。そしゃく音を楽しむASMR動画で流行するためには、聞いていて心地よい音を出す必要があります。

チョコマシュマロは、マシュマロやメレンゲがチョコレートに包まれているという構造上、2種類の音を楽しめます。外側を噛んだときに出るパリパリッとした音と、内側を噛んだときに出るもさっとした音の組み合わせが、ASMR動画として視聴者に好まれています。この音の質が、継続的に動画が投稿される基盤となっているのです。

アレンジレパートリーの豊富さ

チョコマシュマロのアレンジ例
  • 冷凍して食べる
  • あぶって食べる
  • をかけて食べる
  • 生クリームを付けて食べる

谷口氏が「これまで他のASMRで流行した海外菓子も見てきたが、チョコマシュマロは食べ方の工夫のレパートリーが多い商品だ」と語っているように、アレンジの多様性が大きな特徴です。

TikTokで検索すると、チョコマシュマロを使った様々な食べ方が投稿されています。

これらのアレンジによって、おいしい食べ方や「いい音」の新しい出し方についての工夫が広がり、動画のレパートリーが増えています。視聴者は「自分もその食べ方を試してみたい」と思い、実際に商品を購入して試すという流れが生まれています。

品薄状態が生んだ継続的な注目

皮肉なことに、品薄状態が続いたことも定番商品化につながった要因の一つです。流行当初からドン・キホーテを含む小売店で品薄状態が続いたことで、TikTokでは「チョコマシュマロをやっと発見した」「ここの店にあった」といった、商品情報に関する動画も多く投稿されるようになりました。

商品が手に入りにくい状況が続くことで、見つけた時の喜びが大きくなり、それがSNSでの投稿につながります。そして、その投稿を見た他の人が「自分も欲しい」と思うという循環が生まれたのです。結果として、一時的なブームで終わらず、継続的にSNSで取り上げられる状況が維持されました。

谷口氏は「ハリボーとディックマンズは、一度に在庫を多量に確保できないことから、品薄状態が続いた。だからこそ、買いたい消費者全員の手になかなか渡らず、『やっと見つけた』と取り上げるインフルエンサーが定期的に出現し、トレンドが継続したのではないか」と分析しています。

多くの商品が一時的な消費で終わる理由

SNSをきっかけに流行した商品の多くは、一時的な消費で終わってしまいます。これは、SNSの特性として新しい話題が次々と生まれ、消費者の関心が移りやすいためです。また、多くの商品は食べ方や楽しみ方のバリエーションが限られているため、一度試したら満足してしまい、リピート購入につながりにくいという側面もあります。

チョコマシュマロが定番化できた理由

要因効果
音の質ASMR動画として継続的に投稿される基盤
アレンジの多様性新しい楽しみ方の発見と投稿の継続
品薄状態発見の喜びが投稿を促進
小売店の対応定番商品棚での展開により購入機会の増加

チョコマシュマロが定番化できたのは、複数の要因が重なったためです。

これらの要因が相互に作用し合うことで、一時的なブームを超えて定番商品としての地位を確立しつつあります。商品自体の魅力だけでなく、供給状況や小売店の販売戦略も、定番化に寄与していることがわかります。

チョコマシュマロの事例は、SNS時代における商品の定番化には、単に話題になるだけでは不十分であることを示しています。継続的に新しいコンテンツが生まれる余地があること、そして実際に商品を手に取りやすい環境が整っていることが重要なのです。

アレンジの多様性は、消費者が能動的に関わる余地を生み出します。「自分なりの食べ方を見つけたい」「新しい音を出してみたい」という動機が、継続的な購入と投稿を促します。また、品薄状態が続いたことで商品の希少性が高まり、それが逆に消費者の購買意欲を刺激するという、予期せぬ効果も生まれました。

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