株式会社GOLD STARとは|韓国トレンドスイーツを日本に届ける企業
2025年12月、3Dフルーツアイスという立体造形アイスが日本中で話題になりました。この商品を販売しているのが株式会社GOLD STARです。しかし、この会社について詳しく知っている人は多くありません。
GOLD STARは一体どのような企業なのか。どんな商品を扱い、どのような戦略で日本市場に挑んでいるのか。今回は、韓国発のトレンドスイーツを次々とヒットさせているGOLD STARについて、その企業構造から主力商品、ビジネスモデルまで詳しく解説していきます。
GOLD STARとは
株式会社GOLD STARは、東京都に本社を置く企業です。代表取締役は尹 炯植(ユン・ヒョンシク)氏が務めています。この会社は単独で設立されたわけではなく、東証グロース市場に上場している株式会社ジェリービーンズグループの連結子会社という位置づけです。
連結子会社とは、親会社が議決権の過半数を保有し、実質的に支配している子会社のことを指します。つまりGOLD STARは、ジェリービーンズグループの傘下にありながら、独自の事業展開を行っている企業です。この体制により、グループ全体の経営資源やノウハウを活用しながら、専門的な事業に集中できる体制が整っています。
ジェリービーンズグループとの関係性
親会社である株式会社ジェリービーンズグループは、東京都台東区に本社を置き、代表取締役を宮崎明氏が務めています。このグループは東証グロース市場に上場しており、一定の財務基盤と市場からの信頼を得ている企業です。
グロース市場とは、2022年4月に東京証券取引所が再編した際に新設された市場区分で、高い成長可能性を持つ企業が上場する市場です。ここに上場しているということは、将来的な成長性が期待されている企業であることを意味します。
GOLD STARがジェリービーンズグループの子会社として機能することで、資金調達や経営管理といった面でのサポートを受けながら、韓国トレンドスイーツという専門分野に特化した事業を展開できる体制が構築されています。
事業の中核となるコンセプト
GOLD STARの事業コンセプトは明確です。それは「韓国で話題になったスイーツを、日本市場に適した形でローカライズして展開する」というものです。単に韓国の商品をそのまま輸入するのではなく、日本の消費者の嗜好や市場特性に合わせた調整を行った上で販売しています。
このアプローチの背景には、韓国と日本の文化的な近さと、同時に存在する微妙な違いへの理解があります。韓国で成功した商品の核となる魅力を保ちながら、パッケージデザイン、商品名、価格設定、販売チャネルなどを日本向けに最適化することで、成功確率を高めているのです。
GOLD STARの主力商品ラインナップ
クリーミーヨーグルトボール
クリーミーヨーグルトボールは、2024年10月に発売されたGOLD STARの主力商品のひとつです。この商品は発売後すぐに全国的なヒットを記録し、GOLD STARの名前を日本市場に広めるきっかけとなりました。
この商品の特徴は、ヨーグルト風味のアイスをボール状に成形し、食べやすさと見た目の可愛らしさを両立させている点です。韓国では既に人気商品として定着していたものを、日本の流通事情や価格帯に合わせて調整した形で展開しています。
ヨーグルト系のアイスは健康志向の消費者にも受け入れられやすく、また子供から大人まで幅広い年齢層に訴求できる味わいです。この商品の成功により、GOLD STARは韓国トレンドスイーツの導入企業としての地位を確立しました。
悪魔チョコビンス
悪魔チョコビンスは、韓国で人気のデザート「ビンス(빙수)」を日本市場向けにアレンジした商品です。ビンスとは韓国式のかき氷のことで、きめ細かい氷の上に様々なトッピングを乗せたデザートを指します。
悪魔チョコビンスは、チョコレート味を前面に出し、濃厚な味わいと見た目のインパクトを重視した商品設計になっています。「悪魔」という名称も、その濃厚さや中毒性の高さを表現するキャッチーなネーミングとして機能しています。
この商品は、韓国カフェ文化が日本でも浸透しつつある時期に投入されたこともあり、韓国カフェを自宅で体験したいという消費者のニーズに応える形で受け入れられました。
アサイーヨーグルトボール
アサイーヨーグルトボールは、クリーミーヨーグルトボールの派生商品として展開されています。アサイーとは南米原産のスーパーフードで、抗酸化作用が高く健康志向の消費者に人気の食材です。
この商品は、ヨーグルトボールの食べやすさや可愛らしさという基本構造を維持しながら、アサイーという健康的なイメージを加えることで、より幅広い消費者層にアプローチしています。特に美容や健康に関心の高い女性層からの支持を集めています。
ハートティラミス
ハートティラミスは、ティラミス風味のデザートをハート型に成形した商品です。ティラミスはイタリア発祥のデザートですが、韓国ではカフェメニューとして独自の進化を遂げており、その韓国風アレンジを日本に導入した形です。
ハート型という形状は、バレンタインデーやホワイトデー、記念日などのイベント需要を狙った設計です。見た目の可愛らしさと、ティラミスという既に日本でも馴染みのある味わいを組み合わせることで、受け入れられやすい商品になっています。
3Dフルーツアイス
3Dフルーツアイスは、2025年12月1日に発売された最新商品です。この商品については別記事で詳しく解説していますが、マンゴー、ピーチ、ストロベリー、レモン、グレープの5種類のフレーバーで展開されています。
この商品の特徴は、果物の形を立体的に再現した造形美と、外側のホワイトチョココーティングと内側のソルベという二層構造にあります。韓国のコンビニGS25で発売1ヶ月で100万本を突破し、世界30カ国以上で展開されている商品を、日本市場向けにローカライズして投入しました。
GOLD STARのビジネスモデル
独占代理店契約の仕組み
GOLD STARのビジネスモデルの核心は、海外メーカーとの独占代理店契約にあります。例えば3Dフルーツアイスの場合、2025年8月27日に中国河南省の淇航食品有限公司と独占代理店契約を締結しています。
独占代理店契約とは、特定の地域(この場合は日本)において、その商品を販売する権利を独占的に保有する契約のことです。これにより、GOLD STARは日本国内で淇航食品の商品を販売できる唯一の企業となります。
この契約形態のメリットは複数あります。まず、製造設備を自社で保有する必要がないため、初期投資を抑えることができます。次に、既に海外で実績のある商品を扱うため、商品開発のリスクが低減されます。そして、独占権を持つことで競合他社の参入を防ぎ、市場での優位性を確保できます。
ローカライゼーション戦略
GOLD STARの強みは、単なる輸入販売ではなく、日本市場向けの徹底したローカライゼーション(現地化)を行っている点です。この戦略は複数の要素から構成されています。
まず、商品名の最適化です。3Dフルーツアイスという名称は、日本の消費者にとって分かりやすく、かつ商品の特徴を直感的に伝える名前になっています。元々の韓国や中国での名称をそのまま使うのではなく、日本語として自然で覚えやすい名前に変更しています。
次に、パッケージデザインの調整です。日本の流通チャネル(コンビニやスーパーの陳列棚)に適したサイズや形状、視認性の高いデザインを採用しています。また、日本の消費者が好む色使いやフォント選択にも配慮しています。
価格設定も重要な要素です。日本のアイス市場における価格帯を分析し、プレミアムアイスとしてのポジショニングを考慮した上で、498円(税抜)という価格を設定しています。この価格は、日常消費型のアイスよりは高いが、特別な体験を求める消費者が受け入れられる範囲に収まっています。
流通チャネル戦略
GOLD STARは、大手コンビニチェーン、大手スーパー、大手量販店という3つの主要チャネルを同時に攻略する戦略を取っています。これは単一チャネルに依存するリスクを分散しながら、幅広い消費者層にリーチするための選択です。
コンビニチェーンは、若年層や都市部の消費者に対するリーチ力が強く、新商品の話題性を活かしやすいチャネルです。特にセブン-イレブン、ローソン、ファミリーマートという大手3社との取引により、全国規模での展開が可能になります。
スーパーは、家族での購入や複数個のまとめ買いに適したチャネルです。イオン、西友、ライフといった大手スーパーでの展開により、郊外や住宅地の消費者層にもアプローチできます。
量販店(ドン・キホーテなど)は、価格競争力と品揃えの豊富さが特徴で、複数のフレーバーを同時に購入したい消費者にとって利便性が高いチャネルです。
マーケティングとプロモーション戦略
GOLD STARは、SNS時代に適応したマーケティング戦略を展開しています。その中心にあるのが、インフルエンサーとのコラボレーションです。
3Dフルーツアイスの発売に際しては、SNS総フォロワー数約300万人を誇るインフルエンサーのおさき氏とコラボレーションセットを販売しました。このセットには、5種類のフレーバーを各2個ずつ詰め合わせた計10個セットに加え、おさき氏の生写真5枚が同梱されています。
このアプローチには複数の狙いがあります。まず、インフルエンサーのファン層に直接商品を訴求できます。次に、インフルエンサー自身がSNSで商品を紹介することで、オーガニックな拡散が期待できます。そして、限定パッケージという希少性を付加することで、コレクターズアイテムとしての価値も生み出しています。
また、ローンチイベントの開催も重要な戦略です。2025年11月28日に渋谷のMAGNET by SHIBUYA109で開催された3Dフルーツアイスの発表会には、アイスクリーム評論家のアイスマン福留氏と、MINAMI、さくら、おさきという3名の人気インフルエンサーが登壇しました。
このイベントは、商品の認知度を高めるだけでなく、メディアに取り上げられやすいニュース性を持たせる効果があります。登壇者からの絶賛コメントは、そのまま商品の信頼性を高める証言となり、消費者の購買意欲を刺激します。
GOLD STARが成功した理由
韓国トレンドの先読み能力
GOLD STARの大きな強みは、韓国で流行しているスイーツのトレンドを早期に察知し、日本市場に導入するタイミングを見極める能力です。韓国のスイーツ市場は、日本よりも変化のスピードが速く、SNS映えする商品が次々と生まれています。
韓国カフェ文化やK-POPの影響により、日本の若年層の間では韓国のトレンドに対する関心が高まっています。GOLD STARは、この文化的な流れを読み、韓国で既に人気が実証された商品を、最適なタイミングで日本に導入することで、ヒットの確率を高めています。
SNS時代に適応した商品選定
GOLD STARが扱う商品には共通点があります。それは「撮りたくなる」「投稿したくなる」ビジュアルを持っていることです。クリーミーヨーグルトボールの丸い可愛らしい形状、ハートティラミスのハート型、3Dフルーツアイスの本物そっくりの立体造形など、すべてがSNS映えを意識した設計になっています。
現代の消費行動において、特に若年層は商品を購入する前にSNSで情報を収集し、購入後には自分の体験をSNSで共有します。GOLD STARの商品は、この「撮りたくなる→投稿される→広がる」というサイクルを生み出すことを前提に選定されています。
これは、従来の広告宣伝に多額の費用をかけるのではなく、商品自体が持つバズ性によって自然に拡散されることを狙った戦略です。結果として、マーケティングコストを抑えながら高い認知度を獲得することが可能になります。
既存の成功事例の活用
GOLD STARが扱う商品の多くは、韓国や他の国で既に成功実績がある商品です。3Dフルーツアイスの場合、韓国のコンビニGS25で発売1ヶ月で100万本を突破し、世界30カ国以上で展開されています。
この実績は、商品の品質や消費者受容性が既に証明されていることを意味します。ゼロから商品を開発する場合、市場に受け入れられるかどうかは不確実ですが、海外での成功事例がある商品は、リスクが大幅に低減されます。
ただし、海外で成功した商品がそのまま日本でも成功するとは限りません。だからこそGOLD STARは、ローカライゼーションに力を入れ、日本の消費者の嗜好や市場特性に合わせた調整を行っています。
グループ企業としての優位性
GOLD STARは単独企業ではなく、ジェリービーンズグループの連結子会社であることが、ビジネス展開において優位性を生んでいます。
まず、資金調達の面です。親会社であるジェリービーンズグループは東証グロース市場に上場しており、一定の財務基盤があります。これにより、新商品の導入や在庫確保、マーケティング活動に必要な資金を、比較的容易に調達できる環境があります。
次に、流通ネットワークです。グループとしての取引実績や信用力があることで、大手コンビニチェーンやスーパーとの取引交渉を有利に進めることができます。新規参入企業が大手流通と取引を開始するのは容易ではありませんが、既存のネットワークを活用できることは大きなアドバンテージです。
さらに、経営ノウハウの共有です。親会社が持つ事業運営のノウハウや、過去の成功・失敗事例を参考にすることで、効率的な事業展開が可能になります。
GOLD STARが直面する課題と今後の展望
継続的なヒット商品の創出
GOLD STARの最大の課題は、一発屋に終わらず、継続的にヒット商品を生み出し続けることです。スイーツ市場はトレンドの変化が激しく、今日のヒット商品が来年も売れ続ける保証はありません。
クリーミーヨーグルトボールの成功、そして3Dフルーツアイスの話題性と、これまでは順調にヒット商品を生み出していますが、この勢いを維持するには、常に次の商品を準備しておく必要があります。韓国のトレンドを監視し続け、日本市場に適合する商品を見極める能力が、今後も問われ続けます。
価格帯の高さと市場の受容性
GOLD STARの商品は、一般的なコンビニアイスと比較して価格が高めに設定されています。3Dフルーツアイスの537円(税込)という価格は、日常的に購入するには躊躇する消費者も少なくありません。
この価格帯は「体験価値」を含めた設定であり、特別な日やイベント、SNS投稿目的での購入を想定しています。しかし、この市場セグメントがどの程度の規模を持ち、どの程度持続可能なのかは、まだ不透明な部分があります。
経済状況の変化や消費者の価値観の変化によって、高価格帯のスイーツ市場が縮小する可能性もあります。GOLD STARには、価格帯の妥当性を検証し続け、必要に応じて商品構成や価格戦略を調整する柔軟性が求められます。
競合他社の参入リスク
GOLD STARが韓国トレンドスイーツで成功を収めると、当然ながら競合他社も同様のビジネスモデルに注目します。既に、韓国発のスイーツやデザートを扱う企業は複数存在し、市場は徐々に競争が激しくなっています。
GOLD STARが独占代理店契約を結んでいる商品は保護されますが、類似商品や代替商品が登場する可能性は常にあります。特に、大手食品メーカーがこの市場に参入してくれば、資金力や流通力で圧倒される危険性もあります。
この脅威に対抗するには、単に商品を輸入販売するだけでなく、ブランド力の構築、消費者との関係性の強化、独自のマーケティング能力の向上が必要です。
季節性と通年販売の難しさ
アイス商品は、夏季に売上が集中する季節性の高い商品です。GOLD STARは冬季に3Dフルーツアイスを投入しており、冬のイベント需要を狙っていますが、冬季のアイス市場は夏季と比較して規模が小さいのが現実です。
通年で安定した売上を確保するには、季節に応じた商品ラインナップの調整や、アイス以外の商品カテゴリーへの展開も検討する必要があります。例えば、夏季向けの冷たいデザート、冬季向けの温かいスイーツなど、季節に合わせた商品展開が求められます。
グローバル展開の可能性
3Dフルーツアイスは、中国発、韓国育ち、世界30カ国展開という経緯を持つ商品です。この事例は、GOLD STARにとって逆の方向性、つまり日本で成功した商品を海外に展開する可能性を示唆しています。
日本のスイーツや食品は、海外でも高い評価を受けています。GOLD STARが日本市場で培ったローカライゼーションのノウハウは、日本商品を海外に展開する際にも活用できる可能性があります。
現時点では日本国内市場に集中していますが、将来的には東南アジアや北米など、日本の食文化に関心が高い地域への展開も視野に入れることができるでしょう。
サステナビリティへの対応
現代の消費者は、特に若年層を中心に、環境への配慮や社会的責任を重視する傾向が強まっています。GOLD STARの商品は、透明ドームやホルダーなど、比較的多くのパッケージ材料を使用しています。
今後は、パッケージの環境負荷を低減する取り組みや、原材料の持続可能な調達、フードロスの削減など、サステナビリティに関する課題に対応していく必要があります。これは単なるコスト要因ではなく、ブランド価値を高め、消費者からの支持を得るための投資と捉えるべきです。
まとめ
株式会社GOLD STARは、ジェリービーンズグループの連結子会社として、韓国発のトレンドスイーツを日本市場に導入する事業を展開しています。代表的な商品には、クリーミーヨーグルトボール、悪魔チョコビンス、アサイーヨーグルトボール、ハートティラミス、そして2025年12月に発売された3Dフルーツアイスがあります。
同社のビジネスモデルの核心は、海外メーカーとの独占代理店契約により、既に海外で実績のある商品を日本市場向けにローカライズして販売することです。商品名、パッケージデザイン、価格設定、流通チャネルなど、あらゆる面で日本の消費者と市場特性に合わせた調整を行っています。
特に、SNS時代に適応した商品選定とマーケティング戦略が同社の強みです。インフルエンサーとのコラボレーション、ローンチイベントの開催、商品自体が持つSNS映えするビジュアルなど、自然な拡散を生み出す仕組みを構築しています。
今後の課題としては、継続的なヒット商品の創出、高価格帯市場の持続可能性、競合他社の参入への対応、季節性の克服などがあります。しかし、ジェリービーンズグループという後ろ盾と、これまでの成功実績を考えれば、GOLD STARは日本のスイーツ市場において重要なプレイヤーとしての地位を確立しつつあると言えるでしょう。





