菓子・スイーツ企業の海外展開ガイド|地域別の特徴と戦略

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日本の菓子・スイーツ企業が海外展開を検討する際、それぞれの地域には異なる市場特性や消費者の嗜好が存在しています。成功するためには、各地域の文化、規制、流通構造を理解し、それに合わせた戦略を立てることが必要です。この記事では、世界の主要地域ごとに、市場の特徴、菓子文化、そして展開時に注意すべきポイントを解説していきます。

目次

菓子・スイーツ企業の海外展開の基本条件

温度と湿度への対応

環境条件影響を受けやすい商品必要な対策
高温チョコレート、クリーム系耐熱性のある配合、断熱包装
高湿度クッキー焼き菓子防湿包装、乾燥剤の使用
高温多湿ほぼ全ての菓子総合的な品質設計の見直し

菓子は製品の特性上、保管や輸送時の温度・湿度の影響を大きく受けます。チョコレートは高温で溶けてしまいますし、クッキーは湿気を吸うと食感が損なわれてしまうからです。

東南アジアや中東のように高温多湿、あるいは高温乾燥の地域では、商品の品質を保つための特別な設計が求められます。包装材の選定、保管条件の管理、賞味期限の設定など、日本国内とは異なる対応が必要になるのです。

温度や湿度に強い製品であれば、幅広い地域への展開が可能になります。海外展開を考える際は、自社製品がどの程度の温度・湿度変化に耐えられるかを事前に確認することが大切でしょう。

宗教とアレルゲンへの配慮

対応項目主な地域具体的な要件
ハラール認証東南アジア、中東豚・アルコール不使用、専用ライン
コーシャ認証欧米の一部ユダヤ教の食事規定に準拠
アレルゲン表示欧米、オセアニア詳細な成分表示と注意喚起

食品は宗教や文化と密接に関わっています。イスラム教徒が多い地域ではハラール認証が必要ですし、ユダヤ教徒向けにはコーシャ認証が求められることもあるのです。これらの認証を取得するには、原材料から製造工程まで、定められた基準を満たす必要があります。

アレルゲン表示も地域によって基準が異なります。欧州では非常に厳格な表示が求められますし、北米でもグルテンフリーやナッツアレルギーへの対応が重視されているのです。

宗教やアレルゲンへの配慮は、単なる法規制対応ではありません。その地域の消費者に受け入れられるための前提条件といえます。この配慮を怠ると、市場に参入すること自体が難しくなってしまうでしょう。

価格と流通の仕組み

地域タイ価格設定の特徴流通の特徴
高所得地域プレミアム価格が可能複数段階の流通、高い手数料
中所得地域段階的な価格設定が有効日系小売やECの活用
ギフト市場高価格帯が受容される季節性が強い

各地域の所得水準や物価は大きく異なります。日本で適正だった価格が、そのまま海外で受け入れられるとは限りません。東南アジアの一部の国では、中間層が拡大しているとはいえ、日本と同じ価格帯では高すぎて手が出ない層も多いからです。

また流通構造も地域によって違いがあります。北米では小売店への手数料が高く、商品が店頭に並ぶまでに多くのマージンが発生します。中東では高級品市場が発達しており、プレミアム価格でも受け入れられやすい反面、ギフト需要が中心となるため販売時期が限定されることもあるのです。

価格設定は、現地の所得水準、競合製品の価格、流通コスト、そして自社製品の位置づけを総合的に考えて決める必要があります。

東アジアの菓子・スイーツ市場

含まれる国・地域台湾・香港・韓国
親日度高い
日本食の受容広く浸透している
商品回転非常に速い

東アジアは親日度が高く、日本食への受容性が高い地域です。日本の菓子やスイーツは「品質が高い」「安全」「おいしい」というイメージを持たれており、これは大きな強みとなります。

味の好みやパッケージデザインの文脈も日本と近いため、日本で成功した商品をそのまま展開しても受け入れられやすい土壌があるのです。日本語のパッケージがそのまま「本物感」として評価されることもあります。

この地域では、日本企業であることそのものがブランド価値になるといえるでしょう。ただしその分、品質への期待値も高く、期待を裏切ると評価が一気に下がる可能性もあります。

SNSの活用方法

東アジアでは新商品の回転が速く、SNSを起点にしたヒットが作りやすい環境があります。特に若い世代はInstagramやTikTokなどで新しい商品を発見し、友人と共有することを楽しんでいるのです。

見た目が美しい商品、ユニークなパッケージ、限定感のある商品は、SNSで話題になりやすく、それが購買につながります。視覚的な魅力が購買動機として重要な位置を占めているわけです。

マーケティング戦略としては、商品の味だけでなく、どう撮影されるか、どうシェアされるかまで考えた設計が有効です。インフルエンサーとの連携も、この地域では効果的な手法となります。

競争環境への対応

課題具体的な内容対策
模倣似た商品の素早い登場早期の商標登録、独自技術の確保
価格競争低価格類似品の出現ブランド価値の継続的な発信
知財保護取り締まりに時間がかかる事前の権利確保が重要

一方で東アジアは模倣が起きやすく、価格競争も激しい地域です。ヒット商品が出ると、すぐに似た商品が市場に登場することがあります。知的財産権の保護は法律上は整備されていますが、実際の取り締まりには時間がかかることも多いのです。

価格競争も激しく、似たような商品が低価格で登場すると、顧客がそちらに流れてしまう可能性があります。単に商品を投入するだけでなく、ブランドのストーリーや独自性を継続的に発信し続けることが重要になるでしょう。

模倣対策としては、商標登録や意匠登録を早期に行うこと、そして模倣が難しい独自技術や製法を持つことが有効です。また価格競争に巻き込まれないよう、プレミアムな位置づけを維持する努力も必要になります。

中国・台湾の菓子・スイーツ市場

贈答の習慣

主な機会中秋節、春節、ビジネスシーン
代表的な商品、高級焼き菓子
重視される要素パッケージの豪華さ、ブランドの格
市場規模菓子市場の重要な柱

中国台湾では、2026年も中秋節の月に代表されるように、祝祭日に親しい人へ菓子を贈る贈答文化が根強く残っています。この文化は日本のお歳暮やお中元に似ていますが、規模はさらに大きく、菓子市場の重要な柱となっているのです。

贈答用の菓子は、自分で食べるための菓子とは異なる基準で選ばれます。パッケージの高級感、ブランドの格、贈る相手への敬意を表現できるかどうかが重視されるわけです。贈答市場を狙う場合は、味だけでなく、見た目の豪華さや箱の作りにも投資する必要があります。

贈答文化は季節性が強く、特定の時期に需要が集中します。在庫管理や生産計画を立てる際には、この季節変動を考慮することが大切でしょう。

消費者の健康意識

近年は中国台湾でもヘルシーや天然素材へのこだわりが強まっています。低糖質や地元産の高品質な食材を使ったプレミアムな菓子が好まれる傾向にあるのです。

これは経済発展に伴う消費者の意識変化を反映しています。基本的な食の安全が確保された後、次に求められるのは健康への配慮です。糖分の取りすぎを気にする人が増え、添加物の少ない自然な菓子への需要が高まっているわけです。

日本の菓子は「素材を大切にする」「添加物が少ない」というイメージがあり、この健康志向のトレンドとも合致しています。原材料の品質や製造工程の丁寧さを訴求することが、差別化の鍵となるでしょう。

SNSでの拡散力

中国では伝統的な焼き菓子に加え、若者の間でインスタ映えする斬新なデザインのスイーツがSNSを通じて爆発的にヒットする土壌があります。特に都市部の若い世代は、新しいものを試すことに積極的で、SNSでの発信も活発です。

ある店舗で珍しいスイーツが登場すると、それがSNSで拡散され、数日のうちに行列ができることもあるのです。この現象は「網紅(ワンホン)」と呼ばれ、SNSで有名になった商品や店舗を指す言葉です。

ただしこのようなヒットは一過性のものになりやすく、次々と新しい話題が現れます。継続的な成功のためには、一発屋に終わらず、定番商品としての地位を確立する戦略が必要になるでしょう。

東南アジアの菓子・スイーツ市場

経済環境の変化

含まれる国タイ・ベトナム・インドネシア・フィリピン・シンガポールなど
人口動態増加が継続
経済成長中間層の拡大
市場予測2026年まで高い成長率

東南アジアは人口増加と経済成長が続いている地域です。2026年までにアジア太平洋地域は世界の砂糖菓子市場で最も高い成長率を示すと予測されています。

この成長の背景には、中間層の拡大があるのです。かつては限られた富裕層しか購入できなかった商品が、中間層にも手が届くようになってきました。この中間層は「ご褒美需要」として、自分へのご褒美や家族へのちょっとした贅沢として、質の良い菓子を購入する傾向があります。

また日系小売店やECサイトも東南アジアで展開を広げており、日本製品を購入できる場所が増えています。これは日本企業にとって、現地での販売基盤を構築しやすい環境が整ってきたことを意味するわけです。

ハラール対応の実務

対象国インドネシア、マレーシア、ブルネイなど
禁止原材料豚由来、アルコール
製造要件専用ライン、または適切な洗浄
認証機関複数存在、国により異なる

東南アジアで特に重要なのがハラール対応です。インドネシアは世界最大のイスラム教徒人口を抱える国であり、マレーシアやブルネイでもイスラム教徒が多数を占めています。

ハラール認証を取得するには、豚由来の原材料を使わないことはもちろん、アルコールを含まない、動物性の原材料は適切な方法で処理されたものを使う、といった基準を満たす必要があるのです。製造ラインも専用のものを使うか、適切な洗浄を行う必要があります。

ハラール認証の取得には時間とコストがかかりますが、イスラム教徒の多い市場に参入するためには避けて通れません。逆にハラール認証を取得すれば、その地域での信頼性が大きく高まり、市場シェアを獲得しやすくなるでしょう。

気候への商品対応

東南アジアは年間を通じて高温多湿な気候です。このような環境では、チョコレートが溶けやすい、クッキーが湿気を吸って柔らかくなってしまう、カビが発生しやすいといった問題が起きやすくなります。

商品設計の段階から、高温多湿に耐えられる仕様にする必要があるのです。包装材を工夫して湿気を遮断する、保存料を適切に使用する、賞味期限を短めに設定するといった対応が考えられます。

またコールドチェーン(低温物流)が日本ほど整備されていない地域もあり、輸送や保管の段階でも品質管理に注意が必要です。現地の物流事情を事前に調査し、それに耐えられる商品づくりが求められるでしょう。

価格戦略の工夫

所得レベル適した戦略具体例
高所得層プレミアム商品シンガポール向け高級品
中間層段階的価格設定容量の異なる複数展開
成長層エントリー商品小容量で手頃な価格

東南アジアでは、所得水準が国によって、また都市部と地方で大きく異なります。シンガポールのような高所得国もあれば、ベトナムやフィリピンのように平均所得がまだ低い国もあるのです。

日本と同じ価格で販売すると、多くの消費者にとって高すぎて手が出ない商品になってしまう可能性があります。かといって大幅に値下げすると、品質への投資ができなくなり、ブランドイメージも損なわれかねません。

価格帯の最適化が重要になります。現地の所得水準に合わせた商品ラインナップを用意する、容量を小さくして単価を下げる、といった工夫が有効でしょう。プレミアム商品とエントリー商品を両方用意し、幅広い層にアプローチする戦略も考えられます。

気候と食文化

東南アジアの菓子文化を語る上で、気候の影響は無視できません。暑い気候を背景に、冷たいスイーツや飲料が好まれる傾向があるのです。かき氷のようなデザート、冷たい甘い飲み物アイスクリームなどが日常的に消費されています。

2026年の新たなトレンドとして、腸活に良いとされるサゴ(ヤシの澱粉)など、健康機能を持つ食材を取り入れたスイーツへの注目が高まっています。サゴは東南アジアで伝統的に食べられてきた食材ですが、それを現代的なスイーツに取り入れる動きが出てきているのです。

このような現地の食材や嗜好を理解し、それを取り入れた商品開発ができれば、現地の消費者により深く受け入れられる可能性が高まるでしょう。

中国大陸の菓子・スイーツ市場

市場の規模と参入方法

人口規模約14億人
市場特性巨大かつ成長継続
推奨参入法越境ECからスタート
主要プラットフォーム天猫国際、京東全球購

中国大陸は市場規模と伸びが大きく、成功すれば大きなリターンが期待できる市場です。14億人という人口規模は、どの企業にとっても魅力的に映ります。

越境ECから入って実績を作りやすいという特徴があるのです。越境ECとは、中国国内に拠点を置かず、日本から直接中国の消費者に販売する形態です。これにより現地法人を設立する前に、市場での反応を確かめることができます。

天猫国際(Tmall Global)や京東全球購(JD Worldwide)といった越境ECプラットフォームは、日本企業の参入を支援する体制を整えています。まずはこれらのプラットフォームで販売を開始し、一定の実績ができたら現地生産や現地法人の設立を検討する、という段階的なアプローチが現実的でしょう。

規制と通関の手続き

中国市場では規制・通関・表示に関する課題があります。食品の輸入には厳格な検疫があり、必要な書類も多岐にわたるのです。成分表示や栄養表示も中国語で正確に記載する必要があり、日本語のラベルをそのまま使うことはできません。

また食品添加物の基準も日本とは異なります。日本で使用が認められている添加物が、中国では使用できないこともあるのです。商品を輸出する前に、使用している原材料や添加物が中国の基準に適合しているか確認する必要があります。

規制は頻繁に変更されることもあり、常に最新情報をキャッチアップする体制が求められます。現地の専門家や輸入代行業者と連携することが、スムーズな参入の鍵となるでしょう。

知的財産の管理

リスク具体的な内容対策
模倣品類似パッケージの商品出現早期の商標登録
商標先取り本家が使えなくなる参入前の権利確保
法的対応時間とコストがかかる予防的な権利保護

中国では知財や模倣の問題が指摘されています。人気商品が出ると、似たパッケージの類似品が市場に出回ることがあるのです。商標を先に登録されてしまい、本家が中国市場に参入できなくなるケースもあります。

中国への展開を考える際は、事前に商標登録を行うことが不可欠です。商品名だけでなく、ロゴや特徴的なパッケージデザインについても、可能な限り権利を確保しておく必要があります。

また模倣品が出回った際の対応策も考えておく必要があるでしょう。法的措置を取ることもできますが、時間とコストがかかります。模倣が難しい独自技術を持つこと、ブランドの世界観を丁寧に育てることで、模倣品との差別化を図ることも重要な戦略となります。

マーケティング費用の管理

中国ではKOL(Key Opinion Leader:インフルエンサー)依存のマーケティング費用が高騰しています。中国の消費者は、有名なKOLが推奨する商品を信頼して購入する傾向が強く、企業はKOLとの契約に多額の費用を投じているのです。

人気KOLの起用費用は年々上昇しており、これが参入障壁となることもあります。かといってKOLを使わないと、商品を知ってもらうこと自体が難しくなるジレンマがあるわけです。

KOLに頼りすぎないマーケティング戦略も重要です。商品の品質で口コミを広げる、独自のコミュニティを育てる、複数の小規模なKOLと連携するといった方法が考えられるでしょう。

北米の菓子・スイーツ市場

市場の位置づけ

含まれる国米国・カナダ
市場の成熟度高い
消費者の関心健康、品質、ストーリー
日本製品の強みプレミアム性、ヘルシー

北米は成熟した巨大市場ですが、健康志向と高品質への関心が高い市場でもあります。プレミアムやヘルシーな商品、つまり低糖・グルテンフリーといった特徴を持つ商品や、日本発というストーリーが刺さりやすい環境があるのです。

米国の消費者は、単に安いものを求めるのではなく、健康に良いもの、環境に優しいもの、倫理的に作られたものに価値を見出す層が増えています。このような消費者は、多少高くても品質の良い商品を選ぶ傾向があります。

日本の菓子は「職人技」「繊細な味わい」「美しい見た目」といったイメージがあり、プレミアム市場にフィットするわけです。日本発であることそのものが差別化要因になり、付加価値として認識されます。

健康志向のトレンド

2026年の北米では「罪悪感の少ない間食(Guilt-free snacking)」が主要トレンドとなっています。これは、間食を楽しみたいけれど健康への悪影響は避けたいという消費者心理を表しているのです。

高品質ダークチョコレート、ナッツを使った商品、プロテインバー、低カロリーのスナックなどが、この需要に応える商品です。砂糖の量を減らしたり、人工甘味料の代わりに天然の甘味料を使ったり、栄養価の高い原材料を使用したりすることで、罪悪感を減らす工夫がされています。

日本の菓子は伝統的に甘さが控えめで、素材の味を生かした商品が多いという特徴があります。この特徴は、罪悪感の少ない間食を求める北米消費者のニーズと合致しており、大きな強みとなり得るでしょう。

流通の段階的展開

段階チャネル特徴
第1段階日系・アジア系店舗参入しやすい、実績作り
第2段階地域小売チェーン認知度の拡大
第3段階大手小売チェーン大規模展開、高い要求水準

北米では流通が広く、手数料も重いという特徴があります。製造業者から卸売業者、さらに小売店へと商品が流れる過程で、それぞれがマージンを取るため、最終的な小売価格は製造原価の数倍になることもあるのです。

またウォルマートやコストコといった大手小売チェーンに商品を置いてもらうには、厳しい基準をクリアする必要があります。価格競争力、安定供給能力、品質管理体制などが問われます。

まずは日系やアジア系チャネルから始め、主流小売へ段階的に拡大する戦略が現実的です。日系スーパーやアジア系の食品店は、日本の商品を扱うことに慣れており、受け入れられやすい環境があります。そこで実績を作り、認知度を高めてから、徐々に主流の小売チェーンへの展開を目指すわけです。

既存の菓子文化

北米では伝統的にチョコレート(M&M’s、スニッカーズ)、グミハリボー)、ポテトチップスなどのカジュアルなスナックが日常的に消費されています。これらは大量生産され、手頃な価格で販売される商品です。

一方で日本産の「ハイチュウ」や「抹茶味のキットカット」など、独特の食感やフレーバーを持つ日本ブランドの菓子は定番の人気を確立しています。これは北米の消費者が、日常的なスナックとは別に、特別な体験を提供する菓子にも価値を見出していることを示しているのです。

ハイチュウのモチモチとした食感は北米のグミキャンディーにはない特徴であり、抹茶という日本独特のフレーバーも新鮮に受け止められています。日本の菓子が持つユニークな特徴を前面に出すことが、北米市場での差別化につながるでしょう。

欧州の菓子・スイーツ市場

国ごとの文化的違い

含まれる国イギリスフランスドイツ・イタリアなど
カフェ文化国ごとに根強い伝統
菓子の嗜好国別に大きく異なる
共通の関心クラフト、サステナビリティ

欧州では伝統的なカフェ文化が日常生活に溶け込んでおり、国ごとに根強い好みが分かれます。イタリアでは立ち飲みスタイルのエスプレッソ文化、オーストリアでは長居して楽しむカフェ文化というように、同じカフェ文化でも国によってスタイルが異なるのです。

菓子についても国ごとの伝統があり、それぞれの国の消費者は自国の菓子に誇りを持っています。フランスではマドレーヌフィナンシェといった焼き菓子、マカロンなどの職人技が光るスイーツが文化の中心です。

欧州市場では、既存の菓子文化と競合するのではなく、日本独自の価値を提案することが重要になります。欧州にはない食感、フレーバー、製法を持つ商品であれば、新しい選択肢として受け入れられる可能性があるのです。

品質への評価基準

評価項目消費者の関心求められる対応
クラフト性職人の手作業製造工程の透明性
原材料産地と品質トレーサビリティの確保
包装環境配慮サステナブル素材の使用

欧州ではクラフト、原材料の産地、サステナブルな包装への評価が高い傾向があります。大量生産された画一的な商品よりも、職人が丁寧に作った商品、原材料の出所が明確な商品が好まれるわけです。

サステナビリティ(持続可能性)への関心も高く、環境に配慮した包装材を使用していること、フェアトレードの原材料を使用していることなどが、購買の判断材料となります。プラスチック包装を避け、紙やバイオ素材を使用することが求められることもあるのです。

日本の菓子メーカーが欧州に展開する際は、製造工程での環境配慮、原材料調達の透明性、包装材の選択などについて、明確に説明できる準備が必要でしょう。

食品規制への対応

欧州は添加物・表示・アレルゲンなどの基準が厳しい地域です。EU(欧州連合)には統一された食品規制がありますが、さらに各国独自の基準が上乗せされることもあります。

食品添加物については、EUで認可されたもの以外は使用できません。日本では一般的に使われている添加物が、EUでは認可されていないこともあるのです。またアレルゲン表示は非常に詳細で、微量のアレルゲンが混入する可能性がある場合も、その旨を表示する必要があります。

欧州への輸出を考える際は、商品の配合を見直す必要が出てくることもあるでしょう。輸送距離が長いため保存性を高めたいところですが、使える添加物に制限があるため、工夫が求められます。

輸送と商品選定

日本から欧州への輸送は時間がかかり、コストも高くなります。輸送距離に耐える品質を持つ商品を選ぶこと、SKU(商品の種類)を絞り込むことが有効です。

賞味期限が短い商品は、輸送中に賞味期限が大幅に減ってしまい、店頭に並ぶころには残りの期限が短くなってしまいます。欧州向けには、比較的賞味期限の長い商品を選ぶことが現実的でしょう。

またSKUを絞り込むことで、それぞれの商品の出荷量を増やし、輸送効率を高めることができます。多品種を少量ずつ輸出するよりも、人気商品に絞って大量に輸出する方が、コスト効率が良くなるわけです。

市場環境の変化

2026年のトレンドとして、環境への配慮と、原料のカカオ高騰に伴う「チョコ以外」の焼き菓子の拡充が進んでいます。カカオの価格は気候変動や産地の政情不安などの影響で変動しやすく、近年は価格が上昇傾向にあるのです。

チョコレートメーカーは、チョコレート以外の焼き菓子のラインナップを増やす動きを見せています。マドレーヌフィナンシェクッキーなど、カカオを使わない焼き菓子に力を入れることで、原材料コストの変動リスクを分散しているわけです。

日本の焼き菓子メーカーにとっては、この動きがチャンスとなる可能性があります。日本の焼き菓子は繊細な味わいと美しい見た目が特徴であり、欧州の消費者にも受け入れられる素地があるからです。

中東の菓子・スイーツ市場

経済環境と購買力

含まれる国UAE・サウジアラビアなど(GCC諸国)
経済基盤石油による豊かさ
購買力富裕層・中間層ともに高い
価格受容性プレミアム価格が通りやすい

中東、特にGCC(湾岸協力会議)諸国であるUAEやサウジアラビアは、高い購買力を持つ層が多く、高級品市場が活発です。石油による豊かな経済を背景に、富裕層や中間層の購買力が高いのです。

この地域では、輸入物の高品質な菓子がステータスとして扱われる場面もあります。高級ブランドのチョコレートや、美しくパッケージされた菓子は、自分へのご褒美や、大切な人への贈り物として選ばれます。

プレミアム価格が通りやすい市場であるため、品質を追求した商品を適正な価格で販売できる環境があるわけです。価格競争に巻き込まれることなく、ブランド価値を維持しながら事業を展開できる可能性が高いのです。

ギフト市場の構造

機会時期特徴
ラマダン明け(イード)イスラム暦による年間最大の贈答機会
結婚式通年豪華なギフトが好まれる
ビジネスシーン通年関係構築の手段

中東では高所得層のギフト需要が強いという特徴があります。ラマダン明けのイード、結婚式、ビジネスの場でのお礼など、様々な場面で高級な菓子が贈られるのです。

ギフト用の商品は、見た目の豪華さと高級感が特に重視されます。金箔をあしらったパッケージ、重厚な箱、美しいリボンなど、贈る相手への敬意を表現できるデザインが求められます。

日本の菓子は包装の美しさや丁寧さで定評があり、これは中東のギフト市場と相性が良いといえるでしょう。和の美意識を取り入れたパッケージデザインは、欧米のデザインとは異なる新鮮さを提供できます。

ハラール認証の要件

中東市場ではハラール認証が必須となります。GCC諸国はイスラム教が国教であり、ハラール認証のない食品は販売できないことが一般的なのです。

中東向けのハラール認証は、東南アジア向けよりもさらに厳格な場合があります。認証機関も複数あり、どの機関の認証を取得するかによって、流通できる国や店舗が変わることもあります。

中東への展開を本格的に考えるなら、早い段階でハラール認証の取得を検討する必要があるでしょう。製造ラインの整備から認証取得まで、相応の時間と投資が必要になることを見込んでおくべきです。

現地の食文化

中東では伝統的に、非常に甘いデーツ(ナツメヤシ)や焼き菓子をコーヒーと共に楽しむ文化があります。デーツは天然の甘味を持つ果実で、中東では古くから親しまれてきた食材です。

またナッツ類も好まれており、ピスタチオ、アーモンド、ヘーゼルナッツなどを使った菓子が人気なのです。日本の菓子を中東向けにアレンジする際、これらの食材を取り入れることで、現地の嗜好に合った商品を作ることができます。

近年は欧米や日本のブランドが「プレミアム・ギフト」として都市部で広く受け入れられています。伝統的な中東の菓子とは異なる、新しい味わいや食感を持つ商品が、特に若い世代や国際的な感覚を持つ層に支持されているわけです。

気候への技術対応

課題対策
高温(夏季50度近く)融点の高い油脂の使用
チョコレートの溶解断熱性の高い包装材
品質維持完全温度管理の物流

中東は夏季に気温が50度近くに達することもある地域です。このような環境では、チョコレートの耐熱性が課題となります。通常のチョコレートは、高温下では溶けてしまい、商品として成立しなくなってしまうのです。

中東向けのチョコレート商品には、特別な配合や製法が必要になります。融点の高い油脂を使用する、包装材に断熱性の高いものを使う、輸送や保管を完全に温度管理された環境で行うといった対応が求められるわけです。

あるいはチョコレート以外の商品、たとえば焼き菓子やキャンディー類で参入することも一つの戦略です。これらの商品は高温への耐性が比較的高く、中東の気候でも品質を保ちやすいのです。

オセアニアの菓子・スイーツ市場

市場の基本特性

含まれる国オーストラリア・ニュージーランド
アジア系人口比較的多い
日本食の浸透一定の認知度
市場規模中規模

オセアニア、特にオーストラリアとニュージーランドは、アジア系人口と日本食の浸透があり、試験市場に向く地域です。試験市場とは、本格的な海外展開の前に、小規模で商品を投入して反応を見る市場のことです。

この地域にはアジア系移民が多く住んでおり、日本の食品や文化に親しみを持つ層が一定数存在します。また日本食レストランも多く、日本の食材や調味料を扱う店舗も充実しているのです。日本の菓子を受け入れる土壌があります。

市場規模は北米や欧州ほど大きくありませんが、その分競争も緩やかで、新規参入のハードルが比較的低いといえるでしょう。ここで成功事例を作り、ノウハウを蓄積してから、より大きな市場へ展開するという戦略が有効です。

規制と検疫の厳格さ

オセアニアでは食品規制と検疫が厳格です。オーストラリアもニュージーランドも島国であり、外来種の侵入を防ぐため、輸入食品に対して厳しいチェックを行っています。

原材料の申告、添加物の使用基準、製造工程の記録など、求められる書類や情報が多岐にわたるのです。また検疫では、未加工の農産物や特定の動物性原材料を含む商品は、輸入が制限されることもあります。

事前に輸入規制を詳しく調査し、必要な書類を準備することが不可欠でしょう。専門の輸入代行業者や、現地の食品流通に詳しいパートナーと組むことで、スムーズな参入が可能になります。

消費者の価値観

オセアニアの消費者は健康志向が強く、原材料への関心も高い傾向があります。オーガニック食品、添加物の少ない食品、地元産の原材料を使った食品などが好まれるのです。

日本の菓子は、素材の味を生かす製法や、添加物を最小限に抑える傾向があり、この健康志向とマッチします。原材料の品質や産地を明確に訴求することで、差別化を図ることができるでしょう。

また「和」の要素、たとえば抹茶、黒ゴマ、柚子といった日本独特の食材を使った商品は、健康的でエキゾチックな選択肢として受け入れられやすいのです。機能性を訴求できる素材であれば、さらに強みとなります。

菓子・スイーツ企業が海外展開に成功するための戦略

地域選定の考え方

ここまで見てきたように、菓子の海外展開では地域適性が成否を分けます。温度・湿度耐性、宗教やアレルゲンへの対応、価格帯と流通マージンという3つの要素を軸に、自社製品がどの地域に適しているかを見極めることが第一歩となるのです。

すべての地域に同時展開することは現実的ではありません。自社の強みを生かせる地域、参入障壁が比較的低い地域から始め、段階的に展開を広げていく戦略が有効でしょう。

また一つの地域での成功事例は、他の地域への展開の際に説得材料となります。どの地域で最初の成功を収めるかを慎重に選ぶことが、長期的な海外展開戦略において重要なのです。

現地化の程度

アプローチ維持する要素変更する要素
コア保持型品質、製法、ブランド価値パッケージ、フレーバーの一部
二本立て型グローバル商品は変更なしローカル商品は現地向け
段階調整型初期は日本仕様反応を見て徐々に調整

海外展開では、現地化(ローカライゼーション)と独自性の維持のバランスが課題となります。現地の嗜好に完全に合わせると、日本ブランドとしての独自性が失われてしまいます。逆に日本のやり方を押し通すと、現地の消費者に受け入れられない可能性があるわけです。

効果的なアプローチは、核となる価値は維持しつつ、パッケージや味付けの一部を現地向けにアレンジすることです。たとえば日本的な繊細さや品質の高さは維持しながら、フレーバーに現地で人気の素材を取り入れるといった方法が考えられます。

またグローバル商品とローカル商品の両方を展開する戦略もあるでしょう。どの国でも通用する普遍的な商品と、特定の国向けにカスタマイズした商品を組み合わせることで、幅広いニーズに対応できます。

パートナーの選び方

海外展開を自社だけで行うことは困難です。現地の規制、流通、消費者嗜好を深く理解しているパートナーと組むことが、成功への近道となります。

現地の輸入代行業者、流通業者、小売チェーンなどと良好な関係を築くことで、市場参入がスムーズになるのです。また現地の日系企業や、同じ業界の先行企業から情報を得ることも有益です。

ただしパートナー選びは慎重に行う必要があります。自社のブランド価値を理解し、長期的な関係を築ける相手を選ぶことが大切でしょう。短期的な利益だけを追求するパートナーでは、ブランドが毀損されるリスクがあります。

投資回収の期間

海外展開はすぐに結果が出るものではありません。市場調査、認証取得、流通網の構築、ブランド認知の向上など、多くのステップを踏む必要があり、それぞれに時間とコストがかかるのです。

短期的な収益を求めすぎると、必要な投資を削ってしまい、結果として失敗するリスクが高まります。少なくとも3年から5年の中期的な視点で、投資回収の計画を立てることが現実的でしょう。

最初の数年は赤字でも、市場での地位を確立できれば、その後の成長で回収できる可能性があります。海外展開は将来への投資であり、短期的な損益だけで判断すべきではないのです。

世界の菓子・スイーツ市場は、それぞれの地域に独自の文化や嗜好があり、一律の戦略では成功しません。しかし各地域の特性を理解し、適切な戦略を立てることで、日本の菓子企業にも大きなチャンスがあります。自社の強みを生かせる市場を見極め、段階的に展開を進めることが、海外展開成功への道筋となるでしょう。

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