明治の2026年経営戦略|独自価値の最大化とグローバル展開

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明治の八尾文二郎社長は、2026年の経営戦略として「明治ならではの独自価値」を最大化することを目指すとの方針を示しました。2024年度を初年度とする「2026中期経営計画」の最終年度となる2026年は、「市場・事業・行動」を変えることで、グローバル企業への進化を加速させていく考えです。この方針の背景には、原材料コストの高騰や世界情勢の不安定さという外部環境の変化があります。

目次

2026中期経営計画の位置づけ

計画期間2024年度~2026年度(3年間)
2026年の位置最終年度
基本方針「市場・事業・行動」を変える
目標明治ならではの独自価値」の最大化

計画の期間と2026年の意味

2026年は「2026中期経営計画」の最終年度にあたります。中期経営計画とは、企業が3年から5年程度の中期的な視点で立てる経営の方向性と目標を示すものです。明治の場合は2024年度から2026年度までの3年間を計画期間としています。

最終年度である2026年は、計画で掲げた目標を達成する年として位置づけられています。つまり過去2年間で積み上げてきた取り組みの成果を形にし、計画全体を完遂する重要な年になるのです。

変えるべき3つの要素

明治が変えようとしているのは「市場・事業・行動」の3つです。市場を変えるとは、新しい市場を創出したり、既存市場での位置づけを変えたりすることを指します。事業を変えるとは、事業の構造や提供する価値を変革することです。行動を変えるとは、社員の働き方や企業文化を変えることを意味します。

この3つを同時に変えることで、企業全体の変革を実現しようとしています。一つだけを変えるのではなく、三位一体で変革を進めることが、明治の戦略の特徴といえます。

グローバル企業への進化が目指す姿

明治は「一歩先を行く価値」を提供できるグローバル企業への進化を加速させるとしています。一歩先を行く価値とは、顧客の現在のニーズに応えるだけでなく、まだ顕在化していない将来のニーズを先取りして提供する価値のことです。

グローバル企業への進化とは、日本国内だけでなく世界各地で事業を展開し、それぞれの地域で価値を提供できる企業になることを意味します。明治はすでに海外展開を行っていますが、それをさらに加速させることで、真のグローバル企業を目指しているのです。

2025年の経営環境の振り返り

経済環境に影響を与えた要因

要因影響内容
原材料コスト高騰が継続
エネルギーコスト高騰が継続
円安経済全体に影響
世界情勢不安定さが継続

2025年は、引き続き原材料・エネルギーコストの高騰や円安傾向が経済全体に影響を及ぼした一年となりました。原材料コストの高騰とは、製品を作るために必要な材料の価格が上がることです。明治のような食品メーカーにとって、牛乳、カカオ、砂糖などの原材料は事業の基盤となるものですから、その価格上昇は経営に大きな影響を与えます。

エネルギーコストの高騰も同様に重要な問題です。工場を稼働させるための電気代や、物流にかかる燃料費などが上昇すると、製品を作って届けるコストが増加してしまうのです。

円安傾向も影響を及ぼしました。円安とは円の価値が他の通貨に対して下がることで、海外から原材料を輸入する際のコストが増加する要因となります。明治はカカオなど海外から輸入する原材料を多く使用しているため、円安の影響を受けやすい構造にあります。

世界情勢の不安定要因

世界情勢も依然として不安定さが続きました。特にウクライナや中東をめぐる緊張の継続が挙げられています。これらの地域での紛争は、直接的な影響だけでなく、エネルギー価格の変動や物流ルートの混乱など、間接的にも経済に影響を与えます。

米国、中国をはじめとした各国の政治動向も、グローバルな経済環境に大きな不確定要因をもたらしています。政治的な決定が通商政策に影響し、それが企業の事業活動に波及することがあるのです。明治はこうした影響を注視しながら経営を行っていることが分かります。

2026年の経営環境の見通し

消費者の意識変化

2026年を展望すると、健康志向やウェルネスへの関心が引き続き高まることが予想されています。ウェルネスとは、身体的な健康だけでなく、精神的・社会的にも良好な状態を目指す考え方です。

現代の消費者は、単に空腹を満たすためだけでなく、健康維持や向上につながる食品を求める傾向が強まっています。この流れは2026年も継続すると明治は見ています。

一方で、物価高騰による消費者の生活防衛意識も今後も続くことが予想されています。生活防衛意識とは、物価が上がる中で家計を守るため、支出を慎重に判断する消費者の姿勢を指します。消費者は健康に関心を持ちながらも、価格にも敏感になっているという、一見矛盾する状況が続くのです。

環境変化への対応方針

こうした環境変化の中で、明治は失敗を恐れず挑戦できる企業風土を醸成するとしています。企業風土の醸成とは、社員が新しいことに挑戦しやすい雰囲気や仕組みを組織の中に作り出すことです。

変化が激しい時代には、従来のやり方に固執するのではなく、新しい試みを続けることが求められます。しかし新しいことに挑戦すれば、当然失敗のリスクもあります。そのリスクを恐れずに挑戦できる文化を作ることが、イノベーションを生み出す土台となるのです。

スピード感を持って「明治ならではの独自価値」を創出し、国内はもちろん、グローバルでの社会課題の解決に貢献していきたいと明治は考えています。社会課題の解決とは、企業活動を通じて社会が抱える問題を改善していくことで、現代の企業に求められる役割となっています。

独自価値を創出した新商品

機能性表示食品ヨーグルトの開発

商品名明治ヘモグロビンA1c対策ヨーグルト
発売時期2025年10月
特徴世界初の機能性表示
使用素材MI-2 乳酸菌
選定元6500種類以上の乳酸菌株

2025年10月には、明治イノベーションセンターで保有する6500種類以上の乳酸菌株から選び抜かれた独自素材の乳酸菌「MI-2 乳酸菌」を使用したヨーグルトを発売しました。このヨーグルトは、ヘモグロビンA1cの低下をサポートする機能性表示食品として、世界で初めて発売されたものです。

ヘモグロビンA1cとは、血液中のヘモグロビンに糖が結合したもので、過去1~2か月の平均血糖値を反映する指標です。この値が高いと糖尿病のリスクが高まるため、健康管理において重要な指標となっています。

6500種類以上という膨大な数の乳酸菌株から、特定の機能を持つものを選び抜くことは、長年の研究開発の蓄積があって初めて可能になります。これこそが「明治ならではの独自価値」の一例といえるでしょう。

生ねり製法を使った新商品

カカオとミルクを丁寧に練り合わせる明治独自の技術「生ねり製法」で作った菓子「生のときしっとりミルク」を発売しました。この商品は予想を上回る好調な売れ行きを記録したことを受け、パッケージをリニューアルし、販売エリアを全国に拡大して1月13日から全国発売されます。

生ねり製法とは、原材料を低温で丁寧に練り合わせることで、素材本来の風味を生かしながら、独特の食感を実現する技術です。この技術は明治が長年培ってきたものであり、他社には真似のできない製法となっています。

当初は限定的なエリアでの発売だったものが、好評を受けて全国展開に至ったことは、消費者に受け入れられる独自価値を創出できた証といえます。

ビフィズス菌配合の粉ミルク

日本で初めてビフィズス菌を配合した乳児用粉ミルク「明治ほほえみ」「同らくらくキューブ」を発売しました。明治が保有する300株以上のライブラリーから、乳児のために厳選した独自の「ビフィズス菌OLB6378」を採用しています。

ビフィズス菌は腸内環境を整える働きを持つ善玉菌の一種です。母乳には自然にビフィズス菌が含まれていますが、粉ミルクにビフィズス菌を配合することで、母乳に近づけた栄養設計を実現しました。

明治は次の100年に向けても乳幼児ミルク市場で重要な社会的責任を果たしていきたいと考えています。乳幼児の栄養は、その後の成長や健康に大きな影響を与えるため、粉ミルクメーカーには高い品質と安全性が求められます。この分野で社会的責任を果たすことは、企業としての使命といえるでしょう。

海外市場での展開戦略

中国での事業展開

商品名明治おいしい牛乳
発売時期2025年7月
特徴日本と同じ技術・製法を使用
目的主要経済圏での事業展開加速

中国においては、2025年7月に「明治おいしい牛乳」を発売しました。日本で展開している「明治おいしい牛乳」と同じ技術・製法を利用することで、その価値を認めてもらい、中国の主要経済圏での事業展開を一層加速させていきたいと考えています。

日本で培った技術をそのまま海外に展開することは、品質の高さを保証する戦略です。「明治おいしい牛乳」は日本国内で長年愛されてきたブランドであり、その信頼性を中国市場でも訴求していく考えです。

中国は世界最大級の消費市場であり、特に中間層の拡大によって高品質な商品への需要が高まっています。このような市場で日本品質の商品を展開することは、明治のグローバル戦略において重要な位置を占めています。

アジアでの事業強化

アジアにおいては、カカオ事業や粉ミルク、流動食などのニュートリション事業を強化し、現地の人の栄養課題を解決する商品を展開していきます。

ニュートリション事業とは、栄養に関する事業の総称で、粉ミルク、流動食、栄養補助食品などが含まれます。アジア各国では経済発展の段階や生活習慣の違いによって、それぞれ異なる栄養課題を抱えています。

明治はそれぞれの地域の課題に合わせた商品を開発・展開することで、現地の人々の健康に貢献していく方針です。これは単に商品を売るだけでなく、社会課題の解決を通じて事業を成長させる戦略といえます。

欧米でのブランド展開

商品名ハローパン
商品分類チョコレートスナック
評価ブランドの世界観が高く評価
戦略一層の拡大を図る

欧米においては、ブランドの世界観が高く評価されているチョコレートスナック「ハローパンダ」を中心に一層の拡大を図ります。

「ハローパンダ」はパンダの形をしたクッキーの中にチョコレートが入った商品で、かわいらしいデザインと品質の高さで海外でも人気を集めています。ブランドの世界観とは、商品が持つイメージや雰囲気の統一感を指し、パッケージデザイン、広告表現、商品の味わいなどが一体となって作り出されるものです。

欧米市場では日本発の商品として独自性を訴求しやすく、「ハローパンダ」のような個性的なブランドが受け入れられやすい土壌があります。明治はこの強みを生かして、欧米での事業拡大を進めていく考えです。

業務用BtoB事業の成長

明治アプリケーションセンターの役割

業務用のBtoB事業については、2023年4月に開設した明治アプリケーションセンターが機能し、顧客に対して強みである乳領域とカカオ領域の複合提案を行うことができました。

BtoB事業とは、企業が他の企業を顧客として行う事業のことです。明治の場合、食品メーカーや飲食店などに原材料や加工品を提供する事業を指します。

明治アプリケーションセンターは、顧客企業の商品開発を支援する施設です。乳製品とカカオ製品の両方を扱う明治だからこそできる複合提案、つまり乳とカカオを組み合わせた新しい商品の提案などを行っています。

新技術の導入による価値創出

設備名オーラルマップス
種類咀嚼プロセスシミュレーター
導入最新型機
活用分野クリーム・バター、カカオ

さらなる成長への布石として、咀嚼プロセスシミュレーター「オーラルマップス」の最新型機を新たに導入しました。クリーム・バター、カカオを中心にさらなる成長を追求し、取引先とも連携しながら新たな価値を創出していきたいと考えています。

咀嚼プロセスシミュレーターとは、食品を口に入れてから飲み込むまでの咀嚼の過程を再現・分析する装置です。人が食べ物を噛んで飲み込む際に、どのように食感が変化するか、どのタイミングで味が広がるかなどを科学的に分析できます。

この装置を使うことで、おいしさの理由を科学的に解明したり、目指す食感を実現するための配合を設計したりすることができます。取引先企業との共同開発においても、このような科学的なアプローチが新しい価値創出につながるのです。

2025年度上期の業績状況

全社の売上状況

2026中期経営計画の2年目となる2025年度の上期の売上高は、微増収で推移しました。微増収とは、前年と比べて売上が少し増加したことを意味します。

価格改定によりコスト上昇分の吸収に取り組むと同時に、既存品の付加価値提案強化や新商品の売上拡大に注力したことにより、増収となりました。

価格改定とは商品の価格を見直すことで、原材料コストの上昇分を販売価格に反映させる対応です。単に価格を上げるだけでなく、付加価値の提案を強化することで、顧客に価格上昇を納得してもらう努力も同時に行っています。

事業別の状況

事業名前年同期比
カカオ事業上回る
フードソリューション事業上回る
デイリー事業並み

事業別ではカカオ事業、フードソリューション事業は前年同期を上回り、デイリー事業は前年同期並みとなりました。

カカオ事業はチョコレートなどの商品を扱う事業です。フードソリューション事業は業務用の食材や加工品を提供する事業を指します。デイリー事業は牛乳やヨーグルトなどの日配品を扱う事業です。

カカオ事業とフードソリューション事業が好調だったことは、新商品の投入や付加価値提案が効果を上げたことを示しています。デイリー事業は前年並みの水準を維持しており、安定した基盤事業としての役割を果たしているといえます。

2025年下期の経営方針

通期計画の達成に向けた取り組み

2025年下期は、通期計画の9350億円の売上高完遂に向けて取り組みを続けます。通期計画とは1年間全体の計画のことで、上期と下期を合わせた数字です。

引き続き、原材料価格の高騰や消費動向の変化への対応を継続するとしています。外部環境の変化は一時的なものではなく、今後も続くと予想されるため、継続的な対応が必要だという認識です。

新市場創出への挑戦

独自価値を持った新商品を投入し、新市場創出を目指していきたいと考えています。新市場創出とは、これまで存在しなかった市場を作り出すことです。

既存の市場で競争するだけでなく、新しい価値を提供することで新しい市場を生み出すことが、持続的な成長につながります。明治が掲げる「一歩先を行く価値」とは、まさにこのような新市場を創出する力を指しているのです。

明治の戦略が目指す方向性

独自価値を軸にした成長戦略

明治の戦略全体を通じて一貫しているのは、「明治ならではの独自価値」を追求する姿勢です。独自価値とは、他社には提供できない、明治だけが提供できる価値のことです。

6500種類以上の乳酸菌株から選び抜いた素材、独自の生ねり製法、300株以上から厳選したビフィズス菌など、明治が長年蓄積してきた研究開発の成果が独自価値の源泉となっています。

この独自価値を商品として具現化し、国内外の市場に展開していくことが、明治の成長戦略の核心といえるでしょう。

グローバルと国内の両輪での展開

明治は国内市場での地位を維持しながら、同時に海外展開を加速させる両輪の戦略を取っています。中国、アジア、欧米それぞれの市場特性に合わせた商品展開を行うことで、グローバル企業への進化を目指しているのです。

国内では新しい機能性を持った商品や、独自製法による高付加価値商品を投入し、海外では日本品質を訴求したり、現地の栄養課題を解決したりする商品を展開します。それぞれの市場で求められる価値を提供することが、真のグローバル企業になるために必要なのです。

社会課題の解決を通じた事業成長

明治が繰り返し強調しているのは、社会課題の解決に貢献することです。ヘモグロビンA1c対策、乳幼児の栄養、アジアの栄養課題など、様々な社会課題に対して、自社の技術や知見を活用した解決策を提供しています。

これは単なる社会貢献活動ではなく、事業成長の戦略そのものです。社会が必要としている価値を提供することで、事業として成長し、その成長がさらなる社会貢献を可能にするという好循環を目指しているのです。

2026年は中期経営計画の最終年度として、これらの戦略を結実させる重要な年となります。明治がどのように「一歩先を行く価値」を実現していくのか、今後の展開が注目されます。

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