【2026年】百貨店のバレンタイン催事|カカオ高騰中でも広がる体験型チョコレート市場
カカオ高騰による購買行動の変化
消費者の値上げの実感
| 調査項目 | 結果 |
|---|---|
| 値上げを実感した人 | 6割以上 |
| 2025年の売上げ | 過去最高を更新 |
| 2026年の予算(自分用・本命) | 8~9割が「増やす」または「同じ」 |
松屋が自社メールマガジン会員に実施した調査から、消費者の購買行動が明らかになっています。
消費者の購買意欲
上記の調査結果を見れば、2025年商戦では6割以上の人が商品の値上げを実感したことが分かります。それにもかかわらず、利用者が買い控えることはなく、売上げは過去最高を更新しました。
この結果は、百貨店のバレンタイン催事が単なる価格競争の場ではないことを示しています。消費者は価格の上昇を認識しながらも、それを上回る価値を見出して購入しているということです。
2026年の予算についても、自分用や本命ギフトでは8割から9割の人が「増やす」か「同じ」の意向を示しています。カカオ高騰による価格上昇が続いても、バレンタインデーにおける支出意欲は維持されている状況です。
百貨店のバレンタイン催事への影響
百貨店のバレンタイン催事では、カカオ高騰の影響がほとんどみられないという特徴があります。
バレンタインのチョコレート購入は日常とは異なる消費行動です。スーパーやコンビニで買う板チョコやチョコレート菓子であれば、価格上昇によって購入を控える動きが出てきます。一方で百貨店のバレンタイン催事は、特別な日のための購入であり、贈り物や自分へのご褒美という用途が中心です。
こうした用途では、価格よりも品質や特別感が重視されます。選ばれる商品の基準は、数十円、数百円の価格差よりも、相手に喜んでもらえるか、自分が満足できるかです。
松屋銀座店の取り組み
国産素材の活用
| 国内ブランド | 前年比3割増 |
|---|---|
| 使用素材 | 国産素材 |
| 目的 | 差別化 |
| 具体例 | 沖縄産カカオを使用したチョコレート |
松屋銀座店では、国産素材を使用した国内ブランドチョコを3割増やしています。
この取り組みは、円安対策というよりは差別化を目的としています。円安によって輸入チョコレートの価格が上昇しているという状況はありますが、国産素材の採用は単なるコスト対策ではなく、商品の独自性を高めるための戦略です。
沖縄産カカオを使用したチョコレートなど、話題性のある商品を用意。沖縄は日本国内でカカオ栽培に取り組んでいる数少ない地域の一つで、その希少性が商品の付加価値を高めています。
ライブ体験の提供
| 参加ブランド数 | 74ブランド |
|---|---|
| 実演販売ブランド数 | 23ブランド(前年比1増) |
| 新企画 | 有名パティシエによるコース体験 |
松屋銀座店のバレンタイン催事では、物販以上に特徴的な取り組みとして、ライブ体験の提供があります。
会場で仕立てる様子まで楽しんでもらうという考え方です。チョコレートを買うだけでなく、作られる過程を見る、職人の技術に触れる、という体験そのものが価値になっています。
催事に参加する74ブランドのうち、実演販売は昨年より1つ増えて23ブランドが実施。約3分の1のブランドが実演を行っていることになり、催事全体の特徴として定着しています。
コース体験という新しい試み
| 開催回数 | 一日4回 |
|---|---|
| 定員 | 各回10席限り |
| 価格 | アルコールペアリング付きで18,700円 |
| 予約方法 | ネット予約・事前決済 |
有名パティシエによるコース体験は、初めて予約制で提供されます。
この企画は、従来のバレンタイン催事とは一線を画すものです。単にチョコレートを購入する場ではなく、食体験を楽しむ場として催事を再定義しています。
一日4回、各回10席限りという設定は、限定性と特別感を演出します。誰でも参加できるわけではなく、予約できた人だけが体験できるという希少性が価値を高めているのです。
担当者(小泉翔バイヤー)の意図
イベントを担当する小泉翔バイヤーは、この企画の意図を説明しています。
「満足度の高い食体験を提供する新しい方法として、コースを企画した」という言葉からは、体験価値への重点移行が読み取れます。物販だけでは提供できない満足を、食体験という形で実現しようとしています。
会場の混雑という課題にも言及しています。「催事がにぎわう半面、会場の混雑度が増し、お待ちいただくことも増えている」という現状があります。人気が高まれば高まるほど、待ち時間が発生し、かえって顧客満足度が下がる可能性があります。
ネット予約で決済も事前に完了した上で来店してもらうことにより、体験そのものの満足度が高まるという考え方です。会場で支払いの手続きをする時間が不要になり、体験に集中できます。また事前に席が確保されているという安心感も、満足度を高める要素です。
開催期間
| 開催期間 | 2月4日~14日 |
|---|---|
| 期間の長さ | 11日間 |
| 前年との比較 | 4日短い |
松屋銀座の会期は2月4日から14日までです。
曜日周りの関係もあって昨年より4日短くなっています。開催期間が短いということは、一日あたりの売上げを高める必要があることを意味します。限られた日数で成果を上げるために、商品構成や体験企画の密度を高めています。
そごう・西武の取り組み
チョコレートパラダイスというコンセプト
そごう・西武は、以前から「チョコレートパラダイス」を掲げてバレンタインの範ちゅうを超えた提案を続けてきました。
このコンセプトには、バレンタインデーという特定の日に縛られない催事を作るという意図があります。2月14日だけが特別な日ではなく、その前後を含めた期間全体がチョコレートを楽しむ時期であるという位置づけです。
そごう横浜店では1月21日から開始し、2月14日を超えて15日まで伸ばしています。約3週間以上という長期間の開催により、様々なタイミングで訪れる顧客を取り込めます。
早期から開催することで、じっくり選びたい人、混雑を避けたい人、給料日後に購入したい人など、多様なニーズに対応できます。2月14日を過ぎても継続することで、バレンタインデー後に自分用や割引商品を求める層も取り込めます。
1月の売上げ拡大
| 1月の売上げ推移 | 数年で大幅に伸長 |
|---|---|
| 2025年の1月売上げ構成比 | 約30% |
| 顧客ニーズ | バレンタインに縛られていない |
担当する杉田大樹マーチャンダイザーは、1月の売上げについて説明しています。
「1月の売上げは数年で大幅に伸長し、25年は約30%を占めた」という数字は、催事期間の前倒しが成功していることを示しています。催事全体の3割が1月に発生するということは、もはや2月だけのイベントではなくなっています。
「お客さまのニーズはバレンタインに縛られていない」という指摘は、消費者の行動変化を捉えています。2月14日に向けて準備するのではなく、1月から2月にかけてチョコレートを楽しむという行動パターンが定着しています。
チョコレート以外の品揃え
| 項目 | 2025年 | 2026年 |
|---|---|---|
| チョコ以外の品揃え割合 | 10% | 30% |
| チョコ以外の売上げ | 基準 | 前年の4倍 |
そごう・西武の特徴的な取り組みとして、チョコレート以外の商品展開があります。
「むしろチョコにすら縛られておらず、チョコ以外の売上げは前年の4倍に伸びている」という状況です。バレンタインデーという名称はチョコレートと強く結びついていますが、実際の消費者ニーズはより広範囲に及んでいます。
チョコレート以外の品揃え割合は、前年が10%、今年は30%に高めています。3倍に拡大することで、需要開拓を進めています。これもカカオ高騰への対策というより、催事そのものの拡張を意図したものです。
チョコレート以外とは具体的に何を指すのか、資料からは明確ではありませんが、一般的には焼き菓子、ケーキ、和菓子、ドリンク、雑貨なども含まれると考えられます。バレンタインデーを、チョコレートに限定されないギフトの機会として捉え直しています。
チョコレート商品の強化
| 日本初上陸ブランド | フランスから4ブランド導入 |
|---|---|
| 限定品 | 前年より大幅に増加 |
| 西武池袋本店の取り組み | 食品フロア・館内カフェとのコラボ |
チョコレート以外を増やす一方で、チョコレート商品のブラッシュアップも進めています。
日本初上陸の4ブランドをフランスから導入するのをはじめ、同社限定品を前年より大幅に増やしています。ジャンルを広げながらも、チョコレートという中核商品の魅力を高めることで、両面からの成長を図っています。
フランスからの新ブランド導入は、本場のチョコレート文化を紹介する意味があります。フランスはベルギーやスイスと並んでチョコレートの伝統が深い国で、職人技術や洗練されたデザインが特徴です。
限定品を増やすことで、ここでしか買えないという希少性を演出します。どの百貨店でも買える商品ではなく、そごう・西武でしか手に入らない商品があることが、足を運ぶ動機になります。
改装中の対応
改装途中で催事場を十分に確保できない西武池袋本店では、別の工夫を施しています。
通常のバレンタイン催事では、特設会場を設けて多数のブランドを集めますが、改装中はそのスペースが確保できません。この制約を逆手に取り、食品フロアの店舗や館内カフェとのコラボによるバレンタイン企画に力を入れています。
既存の店舗やカフェがバレンタイン限定メニューや商品を提供することで、催事場とは異なる形で催事を展開できます。カフェで食べられるバレンタインデザート、食品フロアで販売されるバレンタイン限定パッケージなど、様々な形が考えられます。
売上げ目標
そごう・西武は、期間中の売上げとして前年比10%増を計画しています。
チョコレート以外の品揃えを3倍に増やし、1月の売上げが全体の3割を占め、限定品を大幅に増やすという複合的な取り組みによって、この目標を達成しようとしています。
10%増という数字は、カカオ高騰による価格上昇だけでは達成できません。来客数の増加、客単価の向上、購入点数の増加など、複数の要素を改善する必要があります。
百貨店催事の進化の方向性
体験価値への移行
松屋もそごう・西武も、物販だけでなく体験価値の提供に力を入れています。
松屋は実演販売やコース体験を通じて、チョコレートを作る過程や食べる体験そのものを商品化しています。そごう・西武はカフェとのコラボなどにより、その場で楽しむ体験を提供しています。
この方向性は、オンライン販売との差別化という側面もあります。チョコレートを買うだけであれば、インターネットでも可能です。しかし体験は、実際にその場に行かなければ得られません。
百貨店という場所が持つ価値を再定義する試みでもあります。単なる売り場ではなく、特別な時間を過ごす場所として位置づけることで、来店する理由を作り出しています。
ジャンルの拡張
そごう・西武が示すように、バレンタイン催事はチョコレートの枠を超えつつあります。
チョコレート以外の商品が3割を占めるということは、もはや「チョコレート催事」ではなく「バレンタイン催事」あるいは「ギフト催事」と呼ぶべき状態です。消費者のニーズに合わせて柔軟にジャンルを広げることで、新しい需要を掘り起こしています。
この拡張は、カカオ高騰というリスクの分散にもなっています。チョコレートだけに依存していると、原料価格の変動が直接影響しますが、複数のジャンルに分散することで、リスクを軽減できます。
期間の長期化
両社とも、催事期間を長く設定しています。
そごう横浜店は1月21日から2月15日まで、約3週間以上の開催です。松屋銀座は11日間と短くなっていますが、これは会場の都合によるもので、方向性としては長期開催が主流です。
期間を長くすることで、来店タイミングの選択肢が増えます。週末しか来られない人、平日の空いている時に来たい人、給料日後に来たい人など、様々な都合に対応できます。
売上げを特定の数日間に集中させるのではなく、長期間にわたって分散させることで、店舗運営の効率も上がります。スタッフの配置、在庫管理、混雑の緩和など、運営面でのメリットもあります。
まとめ
百貨店のバレンタイン催事は、カカオ高騰という逆風の中でも成長を続けています。
松屋は国産素材の活用とライブ体験の提供により、商品の独自性と体験価値を高めています。有名パティシエによるコース体験という新しい試みは、催事の概念を大きく広げるものです。
そごう・西武はチョコレートパラダイスというコンセプトのもと、バレンタインデーという日付の制約を超え、ジャンルの枠も超えた展開を進めています。1月の売上げが3割を占め、チョコレート以外の商品が4倍に伸びているという事実は、消費者ニーズの変化を捉えた結果です。
両社に共通するのは、価格競争ではなく価値競争という方向性です。カカオ高騰による価格上昇を、商品や体験の質を高めることで乗り越えようとしています。消費者も値上げを実感しながら、それを上回る満足を得られれば購入を続けるという行動を示しています。
バレンタイン催事は今や、チョコレートを買う場所から、チョコレートを中心とした食文化を楽しむ祭典へと進化しています。この進化は今後も続くと考えられます。





