生クリームでケーキをデコレーションする基本|量・固さ・塗り方のポイント
手作りケーキの仕上がりを大きく左右するのが、生クリームのデコレーションです。スポンジを焼くことよりも、クリームを均一に塗る作業のほうが難しいと感じる方は少なくありません。
この記事では、デコレーションに必要な生クリームの量の目安から、用途別の固さの違い(分立て)、ナッペ(塗り作業)の基本的な流れ、道具の選び方まで、作業全体の設計図として解説します。
まず知っておきたい|デコレーション用クリームの基本設計
生クリームの選び方:乳脂肪35〜40%が扱いやすい
デコレーション用には、乳脂肪分35〜40%の純生クリーム(動物性)が向いています。45%以上になるとホイップが早い反面、泡立てすぎると即座にボソボソになるため、初心者には扱いにくい面があります。一方で35%未満では十分な固さが出にくく、ナッペ中にクリームが垂れやすくなります。
プロの現場では35%と45%をブレンドして40%前後に調整する方法もあります。2種類を1対1で合わせるだけで、扱いやすさと風味のバランスを取りやすくなります。
植物性クリームはホイップの安定性が高く崩れにくいため、長時間展示するケーキや、室温が高い環境でのデコレーションには向いています。ただし風味と口溶けは動物性に劣るため、食べておいしさを重視するなら動物性が基本です。
ケーキのサイズ別・生クリームの必要量の目安
| ケーキのサイズ | 目安の人数 | 必要なクリームの量の目安 |
|---|---|---|
| 4号(直径12cm) | 2〜3人 | 約150〜200ml |
| 5号(直径15cm) | 4〜5人 | 約200〜300ml |
| 6号(直径18cm) | 6〜8人 | 約300〜400ml |
| 7号(直径21cm) | 8〜10人 | 約400〜500ml |
「クリームが途中で足りなくなった」「大量に余ってしまった」というのはデコレーション初心者によくある失敗です。あらかじめ量の目安を把握しておくと、計画的に準備できます。
この数字はサンド・ナッペ・絞り飾りをすべて含めた合計の目安です。初めてデコレーションする場合は多めに用意しておくと安心です。余ったクリームの活用法は「生クリームの使い切りレシピ」の記事で紹介しています。
分立てとは何か|用途ごとにクリームの固さを使い分ける
「分立て」は固さを表す言葉
| 固さの段階 | 見た目の目安 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 6分立て | すくうとトロトロと落ちる。形を保てない | ムース・ソースへの混ぜ込み |
| 7分立て | すくうとゆっくり落ちる。落ちた跡がすぐに消える | ナッペの本塗り・スポンジへの塗り |
| 8分立て | すくうと盛り上がる。落ちた跡がしばらく残る | 絞り袋での飾り・サンド用(中に挟む) |
| 9〜10分立て | ツノがしっかり立つ。ボソつきはじめる | 絞り袋での立体的な飾り(熟練向け) |
レシピに「7分立て」「8分立て」と書かれているのは、クリームの固さを段階で表した言葉です。数字が大きくなるほど固く、10分立てになると分離直前のボソボソした状態になります。デコレーションでは、用途ごとに適した固さが異なることが重要なポイントです。
なぜ用途によって固さを変えるのか
スポンジの外側を覆うナッペに固すぎるクリームを使うと、パレットナイフで塗るときに引っかかりが生まれてスポンジの表面が傷つきます。逆に柔らかすぎると重力で垂れてしまい、均一な厚さに仕上げられません。7分立てがナッペに適しているのは、まだ流動性を持ちながらも薄く均一に伸ばせる固さだからです。
一方、スポンジの間に挟むサンドクリームは、ケーキ全体の構造を支える役割があります。8分立てのしっかりした固さにすることで、上段のスポンジをのせたときに崩れにくくなり、カットしたときにも断面が美しくなります。
実際に一つのボウルで効率よく作業する場合は、最初にクリーム全体を7分立てに泡立てておき、その後ボウルの端に寄せた一部をさらに固く泡立てて8分立てに仕上げる方法が使いやすいです。
ナッペの基本|スポンジにクリームを塗る作業
ナッペとは何か
「ナッペ」はフランス語で「覆う」を意味する製菓用語で、ケーキの表面にクリームを塗って覆う作業のことです。外側を均一に仕上げることで見た目が整うだけでなく、スポンジの乾燥を防いで翌日まで品質を保つ役割もあります。
ナッペは「下塗り」と「本塗り」の2段階で行います。
下塗りの役割
スポンジを切ると、断面からポロポロとした細かいかけら(クラム)が出ます。これが表面のクリームに混ざり込むと、仕上がりが汚れたように見えてしまいます。下塗りは薄くクリームを全体に塗ってクラムを閉じ込めるための作業で、この段階ではスポンジが透けていても問題ありません。下塗りが終わったら、一度冷蔵庫で10〜15分ほど冷やしてクリームを落ち着かせてから本塗りに移ると、仕上がりが格段によくなります。
本塗りのポイント
本塗りは7分立てのクリームを使い、スポンジが透けなくなるまで均一に塗っていきます。回転台を使うと作業がスムーズです。パレットナイフは大きく動かさず、回転台を手前から奥に向けて回しながら、パレットナイフをほぼ固定した状態でクリームを均していきます。
何度もなでるほどクリームのツヤが失われてボソついてくるため、なるべく少ない手数で仕上げることが美しい表面を作るコツです。クリームが足りない場所には少量ずつ足しながら調整します。一度に完璧に仕上げようとせず、少し多めにのせてから余分を削り取るイメージで作業すると均一になりやすいです。
上面と側面の順番
上面から塗り始め、側面に移るのが一般的な手順です。上面のクリームが側面に垂れてきたものを利用しながら側面に塗り広げると、クリームを無駄なく使えます。側面を塗り終えたら、上面の縁に盛り上がったクリームをパレットナイフで内側に向けて押し込みながら整えます。この「角出し」と呼ばれる作業でケーキの縁がシャープに見え、全体の印象が引き締まります。
回転台がない場合の代替方法
回転台は作業を大きく助けてくれる道具ですが、なくても代用できます。フラットな大皿や、直径が同程度の鍋のふたの上にケーキをのせ、皿ごと少しずつ手で回しながらパレットナイフを当てる方法です。回転台に比べると難しくなりますが、慌てずゆっくり作業することで十分きれいに仕上がります。
パレットナイフがない場合は、まな板用の平らなスクレーパーやバターナイフで代用できます。回転台とパレットナイフはそろえておくと後々のお菓子作りにも繰り返し使えるため、デコレーションを続けたい場合は早めに用意しておくのをおすすめします。
絞り袋を使ったデコレーション
口金の種類と絞り模様の関係
| 口金の種類 | 絞り出される形 | 主な使い方 |
|---|---|---|
| 丸口金 | 丸いドットや縦線 | ボーダー・文字・点描 |
| 星口金(8切り) | 花状・リボン状の波形 | ロゼット・貝殻模様・縁の装飾 |
| 葉っぱ口金 | 葉の形 | フルーツの周りの装飾 |
| サントノーレ口金 | 細長い楕円 | 上品な縞模様・お花の形 |
絞り袋にセットする口金の形状によって、絞り出した模様が変わります。
初めてデコレーションする場合は、星口金1本あれば上面と縁にロゼット(花形の渦巻き)を絞るだけで華やかに仕上がります。絞り用のクリームは8分立てのやや固めを使い、均一な力で絞ることが均一な模様を作るコツです。絞る前に余分なクリームを手の上で少し絞り出してから本番に臨むと、最初の形が安定します。
まとめ|デコレーションは「設計してから始める」のが成功のカギ
生クリームのデコレーションで失敗しやすいのは、「見切り発車」で始めてしまうことです。ケーキのサイズから必要量を計算し、用途別の分立ての目安を理解し、下塗り→冷やす→本塗り→絞り飾りという工程の順序を把握してから作業を始めることで、結果が大きく変わります。
「ナッペが難しい」と感じる場合は、本番のケーキの前に古いパンなどで何度か塗る練習をするだけでも、感覚がつかみやすくなります。クリームの状態は気温や作業時間によって刻々と変わるため、手の感触と視覚両方でクリームの様子を確認しながら進めることが上達の近道です。




