植物性クリームの使い分け|動物性との選び方、向いている料理とお菓子
ケーキのデコレーションをするとき、クリームパスタを作るとき、どのクリームを選べばいいのか迷ったことはないでしょうか。スーパーには動物性の純生クリームと並んで、「ホイップ」「フレッシュ」と書かれた植物性クリームが売っています。値段も賞味期限も異なるこの2種類は、「用途ごとの向き・不向き」を知っていれば迷わず選べるようになります。
この記事では、植物性クリームがどういう食品なのかという基本から、動物性との作業性・保存性の違い、そして「この場面にはどちらを使うべきか」という実用的な使い分けの判断軸まで、順を追って解説します。原料・味・色の詳しい比較は「生クリームとホイップクリームの違い」の記事にまとめているため、ここでは使い分け判断に特化して説明します。
植物性クリームとは何か
「植物性クリーム」は生クリームの代用品として開発された
植物性クリームは、乳脂肪(牛乳由来の脂肪)の代わりにパーム油・ヤシ油・菜種油・大豆油などの植物性油脂を原料として作られたクリーム状の食品です。植物性油脂だけでは自然にはクリームの質感にならないため、乳化剤・安定剤・香料などの添加物を加えて人工的にクリームに近い状態に仕上げています。
法律上(乳等省令)、「生クリーム(クリーム)」と表示できるのは乳脂肪のみを原料とし、添加物を一切含まない動物性クリームに限られます。植物性クリームはパッケージに「乳等を主要原料とする食品」と表示され、商品名は「○○ホイップ」「○○フレッシュ」といった名称になります。「植物性生クリーム」という呼び方は通称であり、厳密には「生クリーム」ではありません。
なぜ植物性クリームが作られたのか
動物性の純生クリームは風味の豊かさに優れていますが、製造コストが高く、保存期間が短く(未開封で約2〜3週間)、温度変化に弱いという扱いにくさがあります。こうしたデメリットを補うために、植物性油脂を活用して低コスト・長期保存・安定した作業性を実現したのが植物性クリームです。業務用として普及し、現在は家庭用にも広く流通しています。
動物性と植物性の主な違い
| 項目 | 動物性(純生クリーム) | 植物性クリーム |
|---|---|---|
| 保形性・安定性 | 温度に敏感で崩れやすい | 安定していて崩れにくい |
| 分離のしやすさ | 泡立てすぎると分離しやすい | 乳化剤の働きで分離しにくい |
| 賞味期限(未開封) | 約2〜3週間 | 約1〜2ヶ月 |
| 価格の目安(200ml) | 300〜500円前後 | 100〜200円前後 |
原料・色・味・食感・作業性・価格の詳しい比較は「生クリームとホイップクリームの違い」の記事でまとめています。ここでは、この記事の本題である「向いている場面・向かない場面」の判断に直結する点だけ押さえておきます。
動物性クリームは乳脂肪ならではのコクと風味があり、加熱料理にも対応できますが、温度変化に弱く分離しやすいという扱いにくさがあります。植物性クリームは乳化剤の働きで安定性が高く崩れにくい反面、風味は動物性に劣り、加熱すると分離するため料理には向きません。
この「加熱できるかどうか」と「風味を重視するかどうか」の2点が、向いている場面・向かない場面を分ける核心です。
植物性クリームが向いている場面・向かない場面
向いている場面
長時間のデコレーション展示
保形性が高く、気温が上がっても崩れにくいため、販売展示やイベント向けのケーキのデコレーションに向いています。
コストを抑えたいお菓子作り
風味よりも量や扱いやすさを重視する場面、たとえばロールケーキの中のクリームや量を多く使うレシピでは、植物性クリームはコストパフォーマンスが高い選択肢です。
乳アレルギーへの配慮
乳脂肪を含まない製品であれば、乳アレルギーのある方が食べられるケースがあります。ただし商品によっては乳成分が含まれる場合もあるため、パッケージの成分表示を必ず確認が必要です。
真っ白に仕上げたいケーキ
動物性クリームのわずかな黄みが気になる場合、真っ白な植物性クリームのほうが見た目の仕上がりがきれいになることがあります。
向かない場面
加熱を伴う料理
クリームパスタ・シチュー・グラタンなど、火を通す料理には植物性クリームは不向きです。熱を加えると乳化剤の効果が落ちて分離しやすくなるため、料理の仕上がりに影響が出ます。加熱調理には動物性の純生クリームを使うのが基本です。
素材の風味を活かしたいお菓子
チョコレートケーキ・クレームブリュレ・パンナコッタなど、クリームの風味や口溶けが仕上がりに大きく影響するお菓子には、動物性クリームのほうが向いています。植物性クリームでは後味に植物油脂特有の風味が残ることがあります。
素材そのものの味を引き立てたい用途
フルーツの風味を引き立てるサンドクリームや、スポンジの味を邪魔したくない場面では、乳脂肪の自然な風味がある動物性クリームのほうが仕上がりが豊かになります。
コンパウンドクリームについて
動物性と植物性を混ぜた「いいとこ取り」の選択肢
乳脂肪と植物性脂肪を混合した「コンパウンドクリーム」という製品もあります。「コンパウンド」は混合物という意味で、動物性の風味と植物性の作業性・保形性を両立させることを目的に作られています。
動物性と植物性の配合比率は製品によって異なり、乳脂肪が多いほど風味が豊かになり、植物性脂肪が多いほど扱いやすさが増します。市販品では「コンパウンド」と表記されているものもありますが、裏面の原材料欄に「植物油脂」が含まれていれば、動物性と植物性の混合タイプと判断できます。
なお、コンパウンドクリームも「乳等を主要原料とする食品」の表示になり、純生クリームとは別の扱いになります。
まとめ:どちらを選ぶかは「何に使うか」で決まる
植物性クリームは扱いやすさ・保形性・コスト・保存期間に優れており、加熱しない用途のデコレーションや量を多く使う場面に向いています。一方で加熱調理には不向きで、風味と口溶けは動物性クリームに劣ります。
動物性の純生クリームは乳脂肪ならではの豊かな風味と口溶けが魅力で、加熱調理にも対応できます。ただし扱いに注意が必要で、コストと保存期間でも植物性に劣ります。
「おいしさ・風味を重視するなら動物性、扱いやすさ・コスト・保形性を重視するなら植物性」という基本的な考え方を軸に、つくるものに合わせて選ぶとよいでしょう。





