2026年アジア投資先調査|インド独走、タイ・カンボジア順位後退

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アジア太平洋地域に進出する日系企業の駐在員を対象とした調査で、2026年のアジアで最も有望な投資先としてインドが3年連続で1位となりました。回答者全体の半数がインドを選び、2位のベトナムとの差を大きく広げています。一方、2025年に国境地帯で武力衝突したタイとカンボジアは順位を落としました。この調査結果から、アジア市場における投資環境の変化と、日系企業が重視する要素が見えてきます。

目次

調査の実施概要と回答状況

調査が行われた期間と規模

実施期間2025年12月8日~17日
有効回答数589件
調査主体NNA
対象者アジア太平洋地域に進出する日系企業の駐在員

この調査はNNAが2025年12月8日から17日にかけて実施し、589件の有効回答を得ました。対象となったのはアジア太平洋地域に実際に駐在している日系企業の担当者です。現地で業務に携わる駐在員の声を集めることで、実態に即した評価が得られる仕組みになっています。

調査では「2026年のアジアで最も有望な投資先」について質問し、その理由も複数回答で尋ねています。さらに自由記述の回答も集めることで、数値だけでは分からない背景や具体的な状況も把握できるようにしました。

駐在員の視点が持つ意味

この調査が駐在員を対象としている点には意味があります。駐在員は現地の経済状況、インフラの整備状況、労働市場の動向などを日々体感しながら仕事をしています。そのため本社から見た判断とは異なる、現場に根ざした評価を示すことができるのです。

また駐在員は複数の国や地域の情報を比較検討する立場にあることも多く、相対的な評価を行う能力も持っています。このような立場からの回答だからこそ、投資先としての実際の魅力や課題が浮き彫りになるといえます。

インド|過去最高の圧倒的な支持

過去最高となった支持率の推移

インドの支持率順位備考
2024年35.8%1位初めて1位を獲得
2025年38.8%1位2年連続1位
2026年50.3%1位初めて半数を超える

調査の結果、回答者の50.3%がインドをアジアで最も有望な投資先に選びました。インドが半数を超えたのは調査開始以来初めてのことです。2024年に初めて1位となってからわずか2年で、支持率を14.5ポイントも伸ばしたことになります。

2025年と比較しても11.5ポイントの拡大を示しており、インドへの期待が加速度的に高まっていることが分かります。この数字は単なる人気投票ではなく、実際に現地でビジネスを行う駐在員たちが、インドの投資環境を高く評価していることを示しています。

支持される理由の内訳

理由回答率
市場に成長性があるから97.3%
労働コストが安いから25.0%
生産拠点として有望だから17.9%

インドを選んだ理由として、回答者の97.3%が「市場に成長性があるから」を選びました。この数字は突出しており、他の理由を大きく引き離しています。つまりインドへの投資を考える際、ほぼすべての駐在員が市場の成長性を最も重視しているのです。

「労働コストが安いから」は25.0%、「生産拠点として有望だから」は17.9%と、これらの要素も評価されていますが、市場の成長性と比べると副次的な理由といえます。インドは製造拠点としてだけでなく、販売市場としての魅力が圧倒的に高く評価されているわけです。

14億人の巨大市場への期待

自由記述の回答からは、14億を超える人口を擁する巨大市場への強い期待が読み取れました。インドは2023年に中国を抜いて世界最多の人口を持つ国となっており、この人口規模が大きな魅力となっています。

インドネシアの四輪・二輪車・部品関連企業の駐在員は「人口など市場ポテンシャルが高い」と評価しています。フィリピンの機械・機械部品関連企業からは「人口も増加し内需が強い」との声が寄せられました。人口が多いだけでなく、今後も増加が見込まれることが、長期的な市場の成長を期待させているのです。

中国のその他の製造業からは「優秀な人たちも多く、人材確保の面で有利ではと推測している」との意見がありました。インドは人口が多いだけでなく、高等教育を受けた人材も豊富です。IT分野などで優秀な人材を多く輩出しており、こうした人材面での強みも投資先としての魅力を高めています。

メーク・イン・インディア政策の影響

インド政府は製造業振興策「メーク・イン・インディア」を掲げ、製造業の発展に力を入れています。この政策は2014年に開始されたもので、インドを世界の製造拠点にすることを目指しています。

インドネシアの貿易・商社関連企業の駐在員は「日系各社が積極的に設備投資をしているため」インドを選んだと回答しています。政府の政策によって投資環境が整備され、それが実際の投資を呼び込むという好循環が生まれているのです。

他の日系企業が投資を進めていることも、後に続く企業にとっては安心材料となります。先行企業の成功事例や失敗事例から学ぶことができ、リスクを軽減しながら参入できるからです。

課題として指摘される点

一方で、台湾の石油・化学・エネルギー関連企業からは「インフラが脆弱であり時間はかかる」との意見もありました。インドは経済規模に対してインフラ整備が追いついていない面があり、これが事業展開の障害となることがあります。

道路、港湾、電力供給などのインフラは、製造業や物流業にとって事業の基盤となるものです。これらが十分に整備されていないと、生産効率が下がったり、物流コストが上昇したりする可能性があります。しかしこの指摘も「時間はかかる」という表現から、長期的には改善されると考えられていることが分かります。

中国との関係性における位置づけ

インドネシアの貿易・商社関連企業からは「中国の影響が近隣国に比べて相対的に少ない」ことを期待する回答も寄せられました。中国がアジアの経済・貿易の分野で存在感を高める中で、中国への依存度を下げたいと考える企業にとって、インドは有力な選択肢となっているのです。

地政学的なリスクを分散する観点から、特定の国に過度に依存しない投資戦略を取る企業が増えています。インドは中国と並ぶ人口規模を持ちながら、政治体制や外交方針が異なるため、リスク分散の受け皿として期待されているといえます。

ベトナム|3年連続2位の安定した評価

3年連続2位の意味

ベトナムの支持率順位
2024年26.4%2位
2025年26.4%2位
2026年22.1%2位

ベトナムは回答者の22.1%が最も有望な投資先として選び、3年連続で2位となりました。ただし支持率は前年から4.3ポイント縮小しており、インドとの差が広がっています。

それでもベトナムが2位を維持していることは、投資先としての安定した評価を示しています。インドほどの急成長はないものの、確実な投資先として認識され続けているのです。

支持される理由の構成

理由回答率
市場に成長性があるから63.1%
生産拠点として有望だから49.2%
労働コストが安いから45.4%

ベトナムを選んだ理由として最も多かったのは「市場に成長性があるから」で63.1%でした。インドと比べると割合は低いものの、6割以上の回答者が市場の成長性を評価しています。

注目すべきは「生産拠点として有望だから」が49.2%と高い割合を示している点です。インドでは17.9%だったことと比較すると、ベトナムは生産拠点としての評価がより高いことが分かります。「労働コストが安いから」も45.4%と、生産拠点に関連する要素が重視されているのです。

消費市場としての魅力

ベトナムのその他の製造業からは「購買意欲が高く、適度に貯蓄しているため」との回答が寄せられました。ベトナムの消費者は購買意欲が旺盛でありながら、無計画な消費ではなく計画的な貯蓄も行っているという評価です。

これは市場として健全な状態を示しています。購買意欲が高いということは市場が活発であることを意味し、貯蓄があるということは将来的な購買力の持続性を示唆しているからです。

生産拠点としての競争力

台湾の機械・機械部品関連企業からは「まだ賃金が安い」との回答がありました。ベトナムでは最低賃金が引き上げられているものの、他国と比較するとまだコスト面での優位性があるという評価です。

生産拠点を選ぶ際、労働コストは重要な判断材料となります。ベトナムは人件費の上昇が続いていますが、それでも周辺国と比べて競争力を保っているため、製造拠点としての魅力が維持されているのです。

インドネシア|前年から変動なしの3位

3位を維持した評価

支持率5.6%
前年比1.9ポイント縮小
順位3位(前年から変動なし)

インドネシアは支持率5.6%で3位となり、前年から順位に変動はありませんでした。支持率は前年比で1.9ポイント縮小していますが、3位という位置は維持しています。

インド、ベトナムと比べると支持率は大きく下がりますが、それでも有望な投資先として一定の評価を得ているといえます。

評価される要素

インドネシアを選んだ理由は「市場に成長性があるから」「労働コストが安いから」「生産拠点として有望だから」の順に多くなっています。これらはインドやベトナムと共通する評価軸であり、インドネシアもこれらの点で一定の魅力を持っていることが分かります。

インドネシアの四輪・二輪車・部品関連企業からは「外国企業の受け入れに積極的」との自由回答がありました。政府や地域社会が外国企業を歓迎する姿勢を持っていることは、投資環境として重要な要素です。

タイの四輪・二輪車・部品関連企業からは「豊富な人的資源と資源を背景とした経済成長力」との声がありました。インドネシアは約2億7000万人の人口を持ち、さらに天然資源も豊富です。これらが経済成長の基盤となっているという評価です。

タイとカンボジア|順位後退

国境紛争が与えた影響

国名2025年順位2026年順位変動
タイ4位6位2ランク後退
カンボジア8位11位3ランク後退

前年から順位を落としたのがタイとカンボジアです。タイは前年の4位から6位に、カンボジアは8位から11位にそれぞれ後退しました。この順位後退の背景には、2025年7月下旬に起きた国境紛争があります。

タイとカンボジアは国境地帯で大規模な衝突に至り、両国の陸路国境が閉鎖される事態となりました。この衝突は一時的なものではなく、長期化している国境紛争の一環として発生したものです。

タイプラス1モデルへの影響

国境閉鎖は「タイプラス1」モデルを採用している日系企業に影響を及ぼしました。このモデルは、タイの生産拠点から部材を陸送で調達し、労働集約工程をカンボジアで担うという分業体制です。

タイは製造業の集積があり、部品供給網が整備されています。一方カンボジアは労働コストが安く、組立などの労働集約的な工程に適しています。この2国間で分業することで、コスト効率と品質を両立させる戦略が「タイプラス1」なのです。

しかし国境が閉鎖されると、部材の輸送ができなくなり、生産活動が停止する可能性があります。実際に事業を行っている企業にとって、このような事態は深刻なリスクとなります。

停戦後の不透明感

2025年12月27日に停戦にこぎ着けたものの、長期化している国境紛争の和平プロセスが進展するかが焦点になります。停戦は戦闘の一時的な停止を意味しますが、根本的な問題が解決されたわけではありません。

駐在員たちは今後の展開を注視しているものの、予測が難しい状況です。このような不透明感が、投資先としての評価を下げる要因となっているのです。投資判断においては、将来の見通しが立つことが重要であり、紛争リスクがある地域は避けられる傾向があります。

投資先が見出せない回答の背景

該当なしと答えた割合

調査では「該当なし・分からない」との回答も8.1%ありました。この割合は決して小さくなく、約12人に1人が明確な投資先を挙げられなかったことになります。

この回答の背景には、世界情勢の不確実性の高まりがあります。地政学的な緊張、経済の先行き不透明感、通商政策の変化など、様々な不確定要素が投資判断を難しくしているのです。

駐在員から寄せられた悲観的な声

インドネシアの小売り・卸売り関連企業からは「アジア地域の見通しが立たない」との声がありました。現場で日々ビジネスを行っている駐在員でさえ、先行きを予測することが困難だと感じているのです。

中国の石油・化学・エネルギー関連企業からは「国際的に景気が良いとは決して言えず、投資をするほどの有望な市場が現状ない」との回答が寄せられました。世界経済全体の停滞感が、アジア市場への投資意欲を抑制している面があるといえます。

韓国の石油・化学・エネルギー関連企業からは「関税問題、地政学リスクなどがあり、先行きが見通せない」との意見がありました。米中対立に代表される地政学リスクや、各国の通商政策の変化が、投資環境の不透明感を増しているのです。

不確実性の時代における投資判断

これらの回答は、現在の投資環境がいかに複雑で予測困難になっているかを示しています。かつては経済指標や市場規模だけで投資判断ができましたが、今は政治的な要素、安全保障上の考慮、通商関係の変化など、多くの要素を考慮する必要があります。

そのため一部の駐在員は、どの国が有望かを断定することができず、「該当なし・分からない」という回答を選んだのです。この慎重な姿勢は、リスク管理を重視する企業文化の表れともいえます。

調査結果が示す投資環境の変化

インドの独走状態が意味すること

今回の調査で最も顕著なのは、インドへの支持が圧倒的であることです。半数を超える駐在員がインドを選んだという事実は、アジア投資市場におけるインドの位置づけが大きく変化したことを示しています。

かつてアジアへの投資といえば、中国が圧倒的な存在でした。しかし現在は中国以外の選択肢として、インドが最も有力な候補となっているのです。これは世界的な投資の流れの変化を反映しているといえます。

市場の成長性が最優先される傾向

インド、ベトナム、インドネシアのいずれにおいても、「市場に成長性があるから」が選択理由の上位に来ています。これは日系企業の投資戦略において、市場の成長性が最も重視されていることを示しています。

かつては製造拠点としての魅力、つまり労働コストの安さや生産効率が重視されていました。しかし現在は、生産した製品を販売する市場としての魅力がより重視されるようになっているのです。これは日系企業が、生産拠点の確保だけでなく、現地市場での販売拡大を目指していることを意味します。

リスク要因が投資判断に与える影響

タイとカンボジアの順位後退は、政治的リスクや安全保障上のリスクが投資判断に大きな影響を与えることを示しています。どれほど経済的に魅力的な市場であっても、紛争リスクがあれば投資先としての評価は下がるのです。

また「該当なし・分からない」という回答の増加は、不確実性そのものが投資の障害となっていることを示しています。企業は予測可能な環境で事業を行いたいと考えるため、先行きが見えない状況では投資判断を保留する傾向があります。

アジア投資市場の今後の展望

この調査結果は、アジア投資市場が新たな段階に入ったことを示唆しています。インドという明確な有望市場が存在する一方で、地政学的リスクや経済の不透明感が投資判断を複雑にしています。

日系企業にとって、今後のアジア投資戦略は、市場の成長性を追求しつつも、リスクの分散と管理を同時に行う必要があるでしょう。インドへの期待が高まる中で、その期待が実際の投資成果につながるかどうかは、今後の動向を注視していく必要があります。

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