バウムクーヘンとは
バウムクーヘンは、ドイツで生まれた特別な焼き菓子です。その名前はドイツ語で「木の年輪」という意味を持っています。お菓子を切ってみると、たしかに木の年輪そっくりの美しい模様が現れます。この独特な見た目と、そこに込められた縁起の良い意味が、バウムクーヘンが日本でとても人気になった理由の一つです。
バウムクーヘンってどんなお菓子?
バウムクーヘンは、見た目がとても特徴的なお菓子です。切った断面を見ると、まるで木の年輪のような同心円(どうしんえん)の模様が何層にも重なっています。これは偶然できるものではなく、手間ひまをかけた特別な作り方から生まれるものです。
見た目が木の年輪に似ているため、日本では縁起が良いお菓子として扱われます。年輪が少しずつ増えていく様子は、時間の流れや成長、長寿を表します。そのため、結婚式のお祝いや、長生きを祝うプレゼントによく使われているのです。
バウムクーヘンの作り方
バウムクーヘンの年輪模様は生地を何層にも重ねて焼くことで作られています。ここからはその作り方について詳しく解説します。
職人の技が光る「塗って焼く」の繰り返し
バウムクーヘンを作るには、まず、くるくる回る太い棒に、お菓子のもとになる生地を薄く塗ります。その後、その棒ごとオーブンで焼いて、塗った生地の表面をしっかり固めます。
表面が焼けたら、また生地を薄く塗り、再びオーブンで焼くのです。この「塗って焼く」という作業を、何十回も根気よく繰り返します。こうして一層ずつ生地が重なっていくことで、年輪のような模様ができあがるのです。
繊細な職人技が必要
<p>この作業は、とても繊細な技術が必要です。生地の塗り方が少しでも厚くなったり薄くなったりすると、年輪の模様がきれいにできません。また、オーブンの温度や焼き加減をこまめに調整しないと、生地が焦げたり、逆に生焼けになったりしてしまいます。そのため、おいしいバウムクーヘンを作るには、熟練した職人さんの技術が欠かせません。</p>
日本にやってきたバウムクーヘンの歴史
バウムクーヘンは、日本でとても愛されているお菓子ですが、もともとはドイツのお菓子です。どのようにして日本に広まったのでしょうか。
ドイツ人の職人が伝えた大正時代
日本に初めてバウムクーヘンが伝わったのは、今から100年以上も前の大正時代です。第一次世界大戦中に日本にいたドイツ人のお菓子職人、カール・ユーハイムさんによって、このお菓子が紹介されました。彼は、日本の展示会でバウムクーヘンを焼き、多くの人にそのおいしさを伝えました。
昭和から平成にかけてのブーム
戦後、バウムクーヘンは日本のデパートや洋菓子店で売られるようになり、少しずつ広まっていきました。特に、昭和40年頃には、お菓子屋さんたちがバウムクーヘン作りに力を入れたことで、一度目のブームが起こります。その後も、贈り物として選ばれる定番のお菓子として、日本の食卓に根付いていったのです。
「焼きたて」がバウムクーヘンブームを再燃させた!
日本の人たちにすっかり定着していたバウムクーヘンですが、2006年頃、再び大きな注目を集めることになります。そのきっかけを作ったのが、「クラブハリエ」というお店でした。
「見せる」ことで価値を高めた販売方法
クラブハリエは、ただおいしいバウムクーヘンを作るだけでなく、売り方にも工夫をしました。お店の厨房をガラス張りにし、お客様の目の前で、大きなバウムクーヘンを専用の機械で切り分ける実演販売を始めたのです。
この「焼きたて」を思わせるような演出は、見る人をわくわくさせ、多くの人がその光景を見ようとお店に集まりました。お客様は「焼きたてをその場で切り分けてもらえる特別感」に魅力を感じ、連日長い行列ができました。
商品自体はもともとあるバウムクーヘンと大きく変わりません。しかし、見せ方や売り方を変えることで、バウムクーヘンは「作りたてのフレッシュなもの」という新しい魅力を持つことができたのです。これが、第二次バウムクーヘンブームの火付け役となりました。
見た目だけでなく、中身も大切
もちろん、演出だけでは長く人気は続きません。クラブハリエが成功した一番の理由は、バウムクーヘン自体の品質がとても高かったことです。日本人の好みに合うように、しっとりとした食感にしたり、研究を重ねて作られたおいしさが、多くの人から愛されることにつながりました。
時代とともに進化するバウムクーヘン
クラブハリエの成功に続き、「東京ばな奈」で知られる会社も「ねんりん家」というバウムクーヘン専門店を出しました。こうして、似たようなコンセプトのお店が次々と増え、バウムクーヘンの人気はさらに高まっていきました。
贈り物として定着した理由
この第二次ブームで、バウムクーヘンはさらに多くの場面で活躍するようになりました。お歳暮やお中元などの季節の贈りものとして選ばれるようになったり、結婚式では「年輪のように夫婦の絆が重なっていくように」という願いを込めて、引き出物として大人気になりました。
また、東京駅や羽田空港など、人が多く集まる場所でも、お土産としてとても人気があります。日持ちがよく、持ち運びやすいことも、お土産として選ばれる理由の一つです。
今後のバウムクーヘン
バウムクーヘンは、もともとドイツのお菓子でしたが、日本独自の進化を遂げてきました。ただ単に流行が繰り返されたのではなく、販売方法や見た目、そして味の工夫によって、全く新しい魅力を手に入れたのです。</p>
これは、昔からある商品でも、見せ方や考え方を変えることで、新たな価値を生み出すことができるということを教えてくれます。これからもバウムクーヘンは、日本の人々に愛され続ける特別なスイーツとして、私たちの生活の中にあり続けるでしょう。