チェリーパイとは｜ドラマ『ツイン・ピークス』の影響

チェリーパイとは

チェリーパイは、アメリカを代表する人気のデザートです。甘酸っぱいさくらんぼをふんだんに使い、サクサクとしたパイ生地に包んで焼き上げたこのお菓子は見た目にも美しく味も絶品。そのおいしさの秘密は、さくらんぼが持つ自然な酸味と、砂糖のやさしい甘さが混ざり合う、絶妙なバランスによるものです。ひと口食べると、ジューシーで香ばしい味わいが口いっぱいに広がります。

チェリーパイの構造

ボトムクラスト （底のパイ生地）	パイの土台となる部分。さくらんぼのフィリングをしっかりと支えます。
さくらんぼのフィリング	酸味のあるさくらんぼと、甘くとろみのあるソースでできています。
上のパイ生地	パイのふたのような部分で、模様をつけることもあります。

チェリーパイは、上記の3つの部分からできています。

チェリーパイの上のパイ生地には、「ラティス」と呼ばれる格子（こうし）模様がよく使われます。これは、見た目をおしゃれにするだけではありません。焼いているときにフィリングから出る蒸気を逃がす役割があり、パイ生地が水分でベタベタにならず、サクサクとした食感を保てるのです。ラティスは、見た目と機能を兼ね備えた大切な工夫なのです。

チェリーパイの中に入っているフィリングは、さくらんぼの果汁（かじゅう）、砂糖、とろみをつける材料を合わせて作ります。焼くことでこの材料がゼリーのように固まり、さくらんぼを包み込んでくれます。このとろみのおかげで、パイを切ったときに中身があふれ出さず、きれいに仕上がるのです。

チェリーパイ使われるさくらんぼの種類

種類	特徴	パイとの相性
サワーチェリー （タルトチェリー）	酸味が強く、生では食べにくいが、加熱するとおいしさが増します。	パイの甘さとよく合うため、定番の材料です。代表品種は「モンモランシー」。
スイートチェリー	甘みが強く、そのままでもおいしく食べられる品種。	砂糖の量を控えめにすることで、自然な甘さが引き立ちます。日本では「佐藤錦」などが使えます。

チェリーパイに使うさくらんぼは主に上記の2種類があります。

また、生のさくらんぼが手に入りにくいときは、冷凍や缶詰を使うこともできます。

冷凍さくらんぼ	解凍すると水分が出やすいため、とろみを強くつける工夫が必要です。
缶詰のさくらんぼ	シロップをよく切ってから使うのがコツです。

チェリーパイブームのきっかけ

1990年代、日本で一時的に「チェリーパイ」が話題になったことをご存じでしょうか？

そのきっかけとなったのが、アメリカのミステリードラマ『ツイン・ピークス』でした。

ドラマ『ツイン・ピークス』とは？

『ツイン・ピークス』は、1990年から1991年にかけて放送されたアメリカのテレビドラマです。

映画監督デビッド・リンチが手がけ、ミステリーと不思議な雰囲気が混ざったストーリーが話題に。

小さな町で起こる事件や、ちょっと変わった住民たちの日常が描かれ、多くのファンを魅了しました。

チェリーパイとコーヒーの名シーン

物語の主人公、FBI捜査官のクーパーは、地元のダイナー（食堂）でチェリーパイとコーヒーを楽しみます。

そのときのセリフがこちら。

「このチェリーパイは最高だ。」

この一言とともに映し出される、赤いさくらんぼが詰まったパイと湯気の立つコーヒーの映像。見ているだけで食べたくなるようなシーンが何度も登場して多くの人の記憶に残りました。

日本でチェリーパイブームが起きた理由

『ツイン・ピークス』は日本でも放送され、大きな人気を集めました。

その影響で「チェリーパイってどんな味？」「食べてみたい！」と感じた人が増え、一時的なチェリーパイブームが起きたのです。

• 東京や大阪のカフェやレストランでチェリーパイを出す店が増加
• 百貨店の食品売り場でも販売されるように
• 雑誌にレシピが掲載され、家庭で手作りする人も登場

しかし、このブームは長くは続きません。次々に新しいスイーツが登場し、世の中の関心は別のお菓子へと移っていきました。

アメリカでのチェリーパイの歴史

18〜19世紀	ヨーロッパから移住してきた人々が、さくらんぼでパイを作るようになる
19世紀中頃	ミシガン州やワシントン州でチェリーの栽培が盛んになる
20世紀	家庭用オーブンの普及とともに、一般家庭でも作られるようになる
第二次世界大戦後	豊かな時代の象徴として、家庭料理の定番に

アメリカでは、チェリーパイはただのスイーツではありません。

下記のように家族や地域とのつながりを感じさせる、特別なお菓子です。

• 特別な日の定番：感謝祭やクリスマスなどに欠かせないデザート
• 母の味の象徴：お母さんから子どもへ、レシピが受け継がれることも多い
• 地域イベントの主役：フェスティバルやバザーで人気の手作りスイーツ
• 地域の誇り：チェリーの名産地では、品評会や大会も行われる

チェリーパイの作り方

チェリーパイの栄養と健康へのはたらき

チェリーパイに入っているさくらんぼには、体にいい栄養がたくさん含まれています。ここでは、さくらんぼの栄養と、それが体にどんなふうに良いかを説明します。

さくらんぼにふくまれる栄養

ビタミンC	風邪をひきにくくしたり、体の調子を整える
食物繊維	おなかの調子をよくして便秘を防ぐ
カリウム	血圧をよい状態に保つのに役立つ
クエン酸	疲れた体を元気にする
アントシアニン	さくらんぼの赤い色のもと。体を守るはたらきがある

さくらんぼは小さいけれど、健康を助ける大切な栄養がぎゅっとつまっています。

ちなみにアントシアニンは、さくらんぼの赤い色素の正体です。体を守るパワーがあります。

• 体のサビを防ぐ：体の中にたまる悪いもの（活性酸素）を減らして、老化や病気を防ぐ。
• 目を守る：長い時間、目を使ったあとに疲れをとる助けになる。
• 血管を健康に保つ：血管がかたくなるのを防ぐ可能性がある。
• 炎症をおさえる：体の中の炎症を減らす力がある。

ただし、効果を感じるには毎日続けて食べることが大切です。チェリーパイは砂糖もたくさん使っているので、健康を考えるなら生のさくらんぼも一緒に食べると良いでしょう。

チェリーパイのカロリー

チェリーパイはとても美味しいので、つい食べ過ぎてしまうことがあります。ここではカロリーと、健康に気をつけながら楽しむ方法をお伝えします。

チェリーパイのカロリー	1切れ（約120g）で320〜380キロカロリーくらい。ご飯一杯よりも少し多い。
カロリーのもと	バター（1gあたり約7.4キロカロリー）と砂糖（1gあたり約4キロカロリー）が主な原因。
食べる量の目安	1日に1切れくらいがちょうど良い。ダイエット中は半分か週に1回がオススメ。
食事のバランス	チェリーパイだけでなく、野菜や魚なども食べてバランスよく。デザートとして楽しもう。
食べるタイミング	動きまわる日中に食べると、体がカロリーを使いやすい。夜遅くは控えめに。

チェリーパイをおいしく食べる工夫

温度で変わるチェリーパイの味わいを楽しむ

焼きたて	パイがサクサクで香ばしく、フィリングから湯気が立ちます。さくらんぼの香りが広がり、甘酸っぱさが引き立ちます。少し冷ましてから食べましょう。
常温	味のバランスが良く、フィリングとパイがよくなじみます。多くの人にとって「一番ちょうどいい」と感じられる状態です。
冷やして	さくらんぼの酸味がはっきり感じられ、さっぱりとした後味になります。夏場にぴったりの食べ方です。
温め直し	冷めたパイは、オーブントースターで2分ほど温めると、焼きたてのようなサクサク感が戻ります。電子レンジを使う場合は、短時間ずつ様子を見ながら加熱しましょう。

チェリーパイは、食べる温度によって香りや食感が変わります。いろいろな温度で試してみるのも楽しい方法です。

飲み物との相性を楽しむ

コーヒー	苦味とチェリーパイの甘酸っぱさがよく合います。特に深煎りのコーヒーがぴったりです。
アールグレイ	ベルガモットの香りがさくらんぼの酸味とよく合います。上品な味わいになります。
ダージリンやアッサム	紅茶の渋みが甘さとのバランスをとり、さっぱりと楽しめます。
ほうじ茶・玄米茶	香ばしい香りがチェリーパイの甘さを引き立てます。和風の組み合わせもおすすめです。
赤ワイン・シャンパン	さくらんぼのフルーツ感と調和し、大人向けの味わいになります。

チェリーパイは、飲み物と組み合わせることでさらにおいしさが引き立ちます。おすすめの飲み物をご紹介します。

トッピングでさらに豪華に楽しむ

バニラアイス	温かいパイと冷たいアイスの温度差が楽しく、甘酸っぱさと甘みが絶妙にマッチします。
ストロベリーアイス	同じベリー系の風味で、より濃厚なフルーツの味わいが楽しめます。
ホイップクリーム	甘さ控えめでふんわり軽い食感がパイに合います。自家製なら砂糖は少なめにしましょう。
カスタードクリーム	卵のコクが加わって、味に深みが出ます。手作りなら優しい味わいに仕上がります。
ナッツ類	アーモンドやピーカンナッツを軽く炒ってのせると、香ばしさとカリッとした食感が加わります。
粉砂糖・シナモン	仕上げに少しふりかけると、見た目が華やかになります。シナモンはスパイシーな香りのアクセントに。

チェリーパイにちょっとしたトッピングを加えるだけで、見た目も味もグレードアップします。

まとめ

チェリーパイは、甘酸っぱさと香ばしさが調和した、アメリカを象徴するスイーツです。その魅力は、構造や材料の工夫に加え、文化や歴史との深い結びつきにもあります。日本では『ツイン・ピークス』によって一時的なブームを迎えましたが、本場アメリカでは今もなお特別な日の定番として愛され続けています。基本の作り方を押さえれば、家庭でも本格的な味を楽しめるのも魅力のひとつ。ぜひ一度、自分で焼いてみてはいかがでしょうか。