チューインガムは日本で長い歴史を経て単なる嗜好品から文化的な象徴へと発展しました。
その背景には欧米文化の影響やその時代の日本独自の価値観やライフスタイルの変化が反映されています。
ここでは日本市場への登場から普及までの歴史を詳しく見ていきます。
チューインガムとは
チューインガムは、甘い風味を持つ弾力のあるゴム質の菓子です。
糖類、軟化剤、風味料、人工甘味料、そしてガムベースという弾力のある素材から作られています。
ガムベースは樹脂やワックス、エラストマー(ゴム状物質)などが含まれ、これが特有の噛み心地を生み出しているのです。
チューインガムはさまざまなフレーバーや形状があり、子供から大人まで幅広い層に親しまれています。
さらに、噛むことでリフレッシュ感を得たり、口の中を清潔に保つ効果があり、さらにストレス解消や集中力向上といった心理的な効果も期待されています。
チューインガムの発祥起源
チューインガムが日本に初めて登場したのは1913年(大正2年)のことです。
アメリカのリグレー社が製品を持ち込み、新聞や雑誌を使った広告戦略で話題を呼びました。
新聞や雑誌を使った宣伝活動は、日本の消費者にとって新鮮で特に都市部で注目を集めました。
ガムは斬新な商品として受け入れられ、1915年(大正4年)には「リグレー株式会社」が設立されて販売が本格化。
海外製品という特別感も手伝い、高級な嗜好品として人気を得ました。
1920年代のチューインガム
1920年代の東京では欧米文化が取り入れられ、若者の間でモダンな価値観が広がっていました。
この時期に登場した「モダンボーイ」や「モダンガール」、通称「モボ」「モガ」は、チューインガムを都会的で洗練されたライフスタイルの象徴と見なしました。
特に銀座などの繁華街ではガムを噛むことがトレンドとして定着し、ガムは単なる菓子ではなくファッションアイテムの一部とされました。
日本産のガムが初登場
日本国内で初めてガムを製造したのは1928年(昭和3年)の新高製菓です。
しかし、当初は原材料の不足や製造技術の課題から安定した供給が難しく、普及には時間がかかりました。
戦後の1948年(昭和23年)にはロッテやハリスがガム市場に参入。
戦後復興期の需要拡大とともに国産ガムが本格的に普及し始めました。
第二次世界大戦後のチューインガム
第二次世界大戦後、進駐していたアメリカ軍がチューインガムを配布したことが、ガムを日本に浸透させる一因となりました。
アメリカ文化の影響を受けた日本人にとって、ガムは「モダン」や「自由」を象徴する存在になります。
ロッテの創業者である重光武雄は、この流れをいち早く察知して国産ガムの開発に取り組みま、積極的に市場開拓を進めました。
彼は「ガムは戦後日本の文化を象徴する菓子になる」と信じ、積極的に市場開拓を進めました。
ロッテ創業!ガムブランドの地位を獲得
1948年に創業したロッテは、最初の製品として「台紙付三角風船ガム」が発売しました。
この製品は、三角形の台紙にガムが固定されている独特の形状で、特に子どもたちに人気を博しました。
ちなみに「ロッテ」という名前は、ゲーテの『若きウェルテルの悩み』に登場するシャルロッテから取らています。
文学的な響きと高級感を兼ね備えたこの名称を採用して日本市場でのガムブランド戦略に成功しました。
1950年代のチューンガム
1950年代、物価統制が緩和されたことでガム製造に必要な材料が容易に手に入るようになりました。
これによりブドウ糖や水飴を使用した新しいガムが登場し、風船ガムやフルーツ味の製品が市場に投入されました。
また、製造工程の技術革新によってガムの柔らかさや味の持続性が大幅に向上。これらの変化が消費者の幅広いニーズに応える商品展開を可能としました。
グリーンガムの登場と大ヒット
1957年、ロッテから発売された「グリーンガム」は、チューインガムの歴史において画期的な商品でした。
「お口のエチケット」というキャッチフレーズが受け入れられ、特に若者の間でヒットしたのです。
ミントの爽やかな味わいと洗練されたデザインが支持を集め、日常的なエチケットアイテムとして定着しました。
この商品はガムを嗜好品から日常的なエチケットアイテムへと進化させた代表例と言えます。
1980年代のチューンガム
1980年代に入ると健康志向の高まりを背景に、機能性を持つガムが次々と登場しました。
特にキシリトールガムは虫歯予防効果が科学的に証明され、歯科医からの推薦もあり大ヒット。
また、リラックス効果のある成分を配合したガムや集中力を高めるカフェイン入りガムなど、多様な製品が開発されました。
現代のチューンガム
近年、ガム市場では味や形状だけでなく環境への配慮が重要視されています。
例えばプラスチックフリーの包装材や土に還る材料を使用したガムが開発されるなど、サステナブルな製品が増えています。
また、持ち運びに便利なコンパクトサイズやリサイクル可能なパッケージ包材も考えられています。
まとめ
チューインガムは単なる菓子にとどまらず、日本におけるモダン文化や生活スタイルの変化を象徴する存在です。
アメリカ文化の影響を受けた戦後の時代から健康志向や環境配慮を重視する現代に至るまで、ガムは日本人の価値観や暮らしに寄り添いながら進化を遂げていました。
チューインガムの日本市場での普及の過程は単なる食品としての役割を超えた深い文化的背景を持っています。
ガムの歴史を振り返ることで日本人の価値観の移り変わりを感じ取ることができます。