普段何気なく口にしているクッキーとビスケット。実はこの二つの関係は、想像以上に複雑で興味深いものです。一見すると同じようなお菓子に見えますが、国によってその定義が大きく異なります。今回は、この焼き菓子の奥深い世界を紐解いていきましょう。
クッキーはビスケットの一種
まず根本的な話から始めましょう。ビスケットとは本来、小麦粉、砂糖、油脂、乳製品から作られる焼き菓子の総称です。この広い意味でのビスケットには、クッキー、クラッカー、乾パン、プレッツェル、パイ、そしてクリームサンドビスケットまで含まれます。つまり、クッキーはビスケットの一種というのが正確な関係性なのです。
クッキーとビスケットの言葉の語源
ビスケットの語源
ビスケットの語源は、ラテン語の「ビス・コウトゥス」で、「2度焼かれたもの」という意味です。古代ヨーロッパでは、航海や遠征の際に日持ちを良くするため、パンを2度焼いて水分を抜いていました。これがビスケットの起源とされています。
クッキーの語源
一方、クッキーの語源は、オランダ語の「クオキエ」で、「小さなお菓子」という意味です。アメリカに渡ったオランダ人がこのクオキエを作ったところ大人気となり、アメリカ全土に広まりました。
国によって異なる定義
クッキーとビスケットの定義は、国によって大きく異なります。クッキーとビスケットは、海外では同じものとして扱われることがほとんどです。しかし日本、アメリカ、イギリスでは、それぞれの文化に合わせて独自の定義が確立されています。
日本における定義
日本では、全国ビスケット協会が定めた独自のルールがあります。このルールは、消費者の間で「クッキーの方が高級」という認識があったため、混乱を避ける目的で1971年に制定されました。
日本独自のクッキーの定義 この規約によって、クッキーは以下の条件を満たすものと定められました。
この条件を満たさないものは、すべてビスケットに分類されます。そのため、スーパーやコンビニで売られているクッキーは、形が不ぞろいなものが多く見られますが、これは「手作り風」という条件を満たすためなのです。
アメリカにおける定義
アメリカでは、日本で食べられているようなビスケットやクッキーはすべて「クッキー」と呼ばれます。逆にアメリカで「ビスケット」と言うと、スコーンに似た「クイックブレッド」のことを指します。これは、バターやショートニングを加えてベーキングパウダーで膨らませて作られるため、中はふわふわ、外はサクサクとした食感が特徴です。グレイビーソースをかけて食事としても楽しまれます。
イギリスにおける定義
イギリスでは、アメリカとは正反対です。日本のビスケットやクッキーのような焼き菓子は、すべて「ビスケット」と呼ばれます。紅茶文化が根付くイギリスでは、紅茶にビスケットを浸して食べる人も多くいます。「どのビスケットが紅茶に合うか」という話題がメディアでも頻繁に取り上げられています。
日本におけるクッキーとビスケットの食感の違い
日本のルールでは、クッキーとビスケットは材料の配合が異なります。この違いが、それぞれの食感を生み出しています。
ビスケットの食感
日本でビスケットと呼ばれるものは、砂糖や油脂を控えめにして、水分を多めに作られます。そのため、パリッとした軽くて硬い食感が特徴です。
クッキーの食感
一方、クッキーは砂糖や油脂が多く、水分を控えめにした生地で作られます。これにより、サクサクとした歯ざわりが楽しめます。
その他の焼き菓子の種類
クッキーやビスケットの他にも、似たような焼き菓子がいくつかあります。これらの違いも見ていきましょう。
サブレ
サブレは、フランスで生まれた焼き菓子です。小麦粉が多く使われるクッキーやビスケットに対して、サブレはショートニングやバターの使用量が多く、ベーキングパウダーはほとんど使われません。語源には諸説ありますが、「砂」を意味するフランス語の「サブル」に由来するという説が有力です。
クラッカー
クラッカーもビスケットの一種です。イーストを使って生地を発酵させ、高温で短時間に焼き上げるため、サクサクとした軽い口当たりが特徴です。発祥はアメリカで、オーブンで焼いているときの音から、その名前が付けられたと言われています。
まとめ
普段何気なく食べているクッキーとビスケットですが、その違いは国によって大きく異なります。日本では、独自のルールで明確に分けられており、これは見た目や材料の配合で決まります。しかし、海外では文化的な背景から、それぞれ異なる呼び名や定義を持っています。
時代とともにこれらの区分の意味合いは薄れてきましたが、それぞれの国で独自の発展を遂げてきた、これらの愛すべき焼き菓子たち。その歴史や文化に思いを馳せながら楽しむと、いつものおやつの時間がもっと味わい深いものになるでしょう。おいしいお茶と焼き菓子で過ごすひとときは、まさに万国共通の幸せな時間なのです。